金融政策についてはいわゆる「リフレ派」と「反リフレ派」が激しい論争をしてきている。日銀の白川総裁のころはどちらかというと反リフレ派が優位で、金融政策もアメリカ、イギリスなどの量的緩和にはおよび腰で、リフレ派からはデフレ経済の元凶と集中攻撃を受けていた。
浜田宏一はリフレ派のいわば親分で、欧米の金融理論を日銀は理解しようとしないと攻撃。その意見は安倍首相のアベノミクスの根拠となっていく。この本はまだ安倍首相登場前で教え子でもある白川総裁に冷たくあしらわれ、日銀、財務省と癒着しているマスコミにも受け入れられていなかったころに書かれたもので、理論的経済本ではなくて自分の学者人生を振り返りつつ、一般向けに啓蒙したものです。その分、統計資料とか図表は少ないから.あまり理屈ぽくないのですが、その分読みやすい。
文章は丁寧ですが政府も日銀もそして学会もマスコミもどうして俺の言うことをわかってくれないんだという憤懣があふれ出ています。これこそが今の標準的な金融理論でアメリカでもヨーロッパでも中央銀行はみんなやっているのに、このままではデフレで日本はダメになってしまう、日本は正しい金融政策さえあれば復活するんだということです。
ところで安倍政権になって潮目が変わります。浜田教授の意見が入れられ黒田日銀総裁が就任すると2%のインフレ目標を掲げ無制限の量的金融緩和が実施されます。結果として1ドル70円台まで進んでいた円高は急激に円安に振れ、今では110円台も視野に入っています。株価も日経平均で16000円を超え、アベノミクスと称賛されるのです。
インフレ目標を定め量的金融緩和によって為替を円安に導きデフレから脱却して日本経済は復活する。
まさに理論通りの展開だったのですが、ここにきてアベノミクスにも陰りが見えてきている。消費税アップの影響で消費は落ち込み経済成長率は伸びていない。頼みの輸出は輸出量としては増えておらずJカーブ効果も出てこない。株価も16000円台が上限みたい。賃金も上がらず、円安の逆効果で物価だけ上がっていく。このままでは再度の消費税アップも危うい…
ここで「反リフレ派」の野口悠紀雄の著書です。この本も週刊ダイヤモンドなどに連載していたものをまとめたものなので、一般人向けで、Q&A形式で書かれているので読みやすいのですが、結構統計図表が多く数字も頻繁に出てくるので我慢して読む覚悟が要ります。
出版は2014年2月ですのでアベノミクスの評価としては最適かと思いますが、若干後出しじゃんけん的要素はありますね。異次元金融緩和によって恩恵を受けたのは一部の輸出産業であり大企業なのですが、製造業全体では減益になっている。円安は輸入原材料の価格を上げており、日本全体としては今やマイナス効果のほうが大きい。アベノミクスで膨れ上がった期待バブルも崩壊してきている。
異次元金融緩和によって日本銀行は巨額の国債を購入しているのですが、マネタリーベースは大きく増大しているのですが、マネーストックの増加額はその2分の1程度。マネタリーベースの増加によって信用創造が生じ、マネーストックがマネタリーベースの増加額の数倍規模で増加することが期待されていたのですが、資金需要はなかったということです。金融緩和の効果は国債を購入することによる財政ファイナンスだった。
また為替が円安に振れたことは金融緩和の効果ではなくてユーロ危機の鎮静化によるものであって、為替レートを決めるのは日本の政策よりも海外の要因で動くということです。
ただこの点でいえば、リーマンショック、ユーロ危機に際して日本がひとり欧米と違うスタンスで金融政策を行っていたことが急激な円高をもたらしたということはあると思いますけど。
今や日本経済は貿易立国ではなく、意外かもしれませんが世界でも貿易依存度の低い国であり、就業構造からいえば製造業の占める割合は2割を切り、卸小売業よりも少ない。GDPでの付加価値で見ても18%。円安の恩恵を被るセクターは少数派なのです。加えて輸出産業では円安でもドル建ての価格を下げるのではなく利益を確保しています。もはや価格競争でしか売れない製品を日本は作っていなくて、あの円高時代にも売れる製品を作っていたのですが、円安になって製品価格を安くして輸出数量を増やすという行動には出る必要はないのです。
データのとらえ方、解釈、評価は議論があるところですが、正直言って異次元金融緩和はグローバルスタンダードかもしれませんが、どことなくいかがわしさを感じます。
でも反リフレ派はどうすればいいのかというと野口悠紀雄の処方箋もいまいち迫力に欠き切った張ったの政策論争では実現可能性というか受け入れられにくい面があるのかな。少なくてもリフレ派は円安と株高は実現できたので、その事実の重みは効果大ですし、政治的には大きな力です。
言ったのが額賀大臣というのはちょっとサプライズですが浜田教授が言われた「学者としてはそれが正しいでよいが、政治家は、そしてあなたのような政策アドバイザーは、それがどうしたら実現できるかを考えなくては」という言葉を噛みしめなければいけないのでしょう。
これから消費税増税の判断を下すのにますます論争はヒートアップしていくのでしょうが、外野席としては両方をフォローしていくつもりです。
浜田宏一はリフレ派のいわば親分で、欧米の金融理論を日銀は理解しようとしないと攻撃。その意見は安倍首相のアベノミクスの根拠となっていく。この本はまだ安倍首相登場前で教え子でもある白川総裁に冷たくあしらわれ、日銀、財務省と癒着しているマスコミにも受け入れられていなかったころに書かれたもので、理論的経済本ではなくて自分の学者人生を振り返りつつ、一般向けに啓蒙したものです。その分、統計資料とか図表は少ないから.あまり理屈ぽくないのですが、その分読みやすい。
文章は丁寧ですが政府も日銀もそして学会もマスコミもどうして俺の言うことをわかってくれないんだという憤懣があふれ出ています。これこそが今の標準的な金融理論でアメリカでもヨーロッパでも中央銀行はみんなやっているのに、このままではデフレで日本はダメになってしまう、日本は正しい金融政策さえあれば復活するんだということです。
ところで安倍政権になって潮目が変わります。浜田教授の意見が入れられ黒田日銀総裁が就任すると2%のインフレ目標を掲げ無制限の量的金融緩和が実施されます。結果として1ドル70円台まで進んでいた円高は急激に円安に振れ、今では110円台も視野に入っています。株価も日経平均で16000円を超え、アベノミクスと称賛されるのです。
インフレ目標を定め量的金融緩和によって為替を円安に導きデフレから脱却して日本経済は復活する。
まさに理論通りの展開だったのですが、ここにきてアベノミクスにも陰りが見えてきている。消費税アップの影響で消費は落ち込み経済成長率は伸びていない。頼みの輸出は輸出量としては増えておらずJカーブ効果も出てこない。株価も16000円台が上限みたい。賃金も上がらず、円安の逆効果で物価だけ上がっていく。このままでは再度の消費税アップも危うい…
ここで「反リフレ派」の野口悠紀雄の著書です。この本も週刊ダイヤモンドなどに連載していたものをまとめたものなので、一般人向けで、Q&A形式で書かれているので読みやすいのですが、結構統計図表が多く数字も頻繁に出てくるので我慢して読む覚悟が要ります。
出版は2014年2月ですのでアベノミクスの評価としては最適かと思いますが、若干後出しじゃんけん的要素はありますね。異次元金融緩和によって恩恵を受けたのは一部の輸出産業であり大企業なのですが、製造業全体では減益になっている。円安は輸入原材料の価格を上げており、日本全体としては今やマイナス効果のほうが大きい。アベノミクスで膨れ上がった期待バブルも崩壊してきている。
異次元金融緩和によって日本銀行は巨額の国債を購入しているのですが、マネタリーベースは大きく増大しているのですが、マネーストックの増加額はその2分の1程度。マネタリーベースの増加によって信用創造が生じ、マネーストックがマネタリーベースの増加額の数倍規模で増加することが期待されていたのですが、資金需要はなかったということです。金融緩和の効果は国債を購入することによる財政ファイナンスだった。
また為替が円安に振れたことは金融緩和の効果ではなくてユーロ危機の鎮静化によるものであって、為替レートを決めるのは日本の政策よりも海外の要因で動くということです。
ただこの点でいえば、リーマンショック、ユーロ危機に際して日本がひとり欧米と違うスタンスで金融政策を行っていたことが急激な円高をもたらしたということはあると思いますけど。
今や日本経済は貿易立国ではなく、意外かもしれませんが世界でも貿易依存度の低い国であり、就業構造からいえば製造業の占める割合は2割を切り、卸小売業よりも少ない。GDPでの付加価値で見ても18%。円安の恩恵を被るセクターは少数派なのです。加えて輸出産業では円安でもドル建ての価格を下げるのではなく利益を確保しています。もはや価格競争でしか売れない製品を日本は作っていなくて、あの円高時代にも売れる製品を作っていたのですが、円安になって製品価格を安くして輸出数量を増やすという行動には出る必要はないのです。
データのとらえ方、解釈、評価は議論があるところですが、正直言って異次元金融緩和はグローバルスタンダードかもしれませんが、どことなくいかがわしさを感じます。
でも反リフレ派はどうすればいいのかというと野口悠紀雄の処方箋もいまいち迫力に欠き切った張ったの政策論争では実現可能性というか受け入れられにくい面があるのかな。少なくてもリフレ派は円安と株高は実現できたので、その事実の重みは効果大ですし、政治的には大きな力です。
言ったのが額賀大臣というのはちょっとサプライズですが浜田教授が言われた「学者としてはそれが正しいでよいが、政治家は、そしてあなたのような政策アドバイザーは、それがどうしたら実現できるかを考えなくては」という言葉を噛みしめなければいけないのでしょう。
これから消費税増税の判断を下すのにますます論争はヒートアップしていくのでしょうが、外野席としては両方をフォローしていくつもりです。