【イチリンソウ(一輪草)】1本の茎の先に径4cmほどの5弁花
キンポウゲ科の多年草で日本の特産種。全国の山地の林床や林縁に自生し、4~5月頃、細長い茎の先端に花を1つずつ付ける。別名に「イチゲソウ(一花草)」。花は直径4cmほどの純白だが、裏側がうす紅色を帯びることから「ウラベニイチゲ(裏紅一花)」とも呼ばれる。
花びらのように見えるのは実はガク片。枚数は通常5枚だが、6~7枚のものも。早春、地上に顔を出して可憐な花を咲かせるが、初夏には花も葉も枯れて休眠状態になる。このため、カタクリやショウジョウバカマなどとともに「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と呼ばれる。
同じ仲間にニリンソウやサンリンソウ、アズマイチゲ、ハクサンイチゲ、ユキワリイチゲ(ルリイチゲ)など。イチリンソウの群生地としては埼玉県川口市の安行赤堀用水沿い斜面林が有名。市指定の天然記念物になっており、地元の「安行みどりのまちづくり協議会」は毎年、開花時期に合わせ「一輪草まつり」を開いている。今年は今月19~20日の予定。「道なき谿(たに)一輪草の寂しさよ」(加藤知世子)。
【ニリンソウ(二輪草)】花はイチリンソウより小型、1輪や3輪の花も
1本の茎に2輪の花を付けることが名前の由来だが、実際には1輪だけや3輪を付けるものもある(この写真でも右側は2輪だが、その左は1輪しか付いていない)。花の直径は2cmほどでイチリンソウより小さく、葉もやや小さい。
春山を代表する草花の1つ。若葉はサンリンソウ(本州中部以北に分布)と同様、山菜として食べられる(イチリンソウは有毒で食用にはならないという)。全国の林地に広く分布しているものの、開発に伴う樹林の減少などで群生地も減少傾向。佐賀県や和歌山県、島根県などでは絶滅危惧種としてリストアップされている。
東京都でも区部では準絶滅危惧種。その東京の板橋区では「区の花」(1980年制定)になっている。区の観光キャラクター「りんりんちゃん」もニリンソウの妖精をイメージして作られたそうだ。板橋区は開花期に合わせ毎年「ニリンソウ月間」(今年は3月21日~4月20日)を定めており、今年も群落がある都立赤塚公園でいま「ニリンソウ展」などを開催中。「二輪草の一輪すこしおくれけり」(岡林英子)。