【ヨーロッパ東南部原産、明治中頃に渡来】
モクセイ科の落葉低木で、4~5月頃、紫色の小花を無数に付けて、周りに強い芳香を放つ。原産地はヨーロッパ東南部。日本には明治中期に渡来した。寒さに強く涼しい地域を好むため、北海道や東北の公園や庭園などに多く植えられている。花は香水の原料にも。色はライラック色と呼ばれる明るい紫が一般的だが、白や赤、ピンク系のものや八重咲きのものもある。
ライラックは英名の「Lilac」から。フランス語は「Lilas」でリラと呼ばれ、パリではマロニエとともに愛されてきた。宝塚歌劇を代表する歌「すみれの花咲く頃」はドイツ映画の主題歌が原曲。パリでシャンソン化され「リラの花咲く頃」として歌われていたものを、演出家の白井鐵造が訳詩して1930年上演の「パリ・ゼット」の中で初めて披露された。
和名は「ムラサキハシドイ(紫丁香花)」。ハシドイはライラックと同じ仲間で、日本の山野に自生し、6~7月頃、白い花をびっしり付ける。ライラックの筒状の小花は先端が4つに分かれるが、まれに5つのものがあり、ヨーロッパでは幸運を呼ぶとして「ラッキーライラック」と呼ばれているそうだ。ただ白花を家の中に入れると不吉なことが起きるといわれ、病気見舞いへの持参は禁物とされている。
ライラックは札幌市の「市の木」(1960年選定)。毎年5月には約400本が咲き誇る大通公園で「さっぽろライラックまつり」が開かれる。56回目となる今年は16~25日に開催の予定(別会場の川下公園は31日~6月1日)。海外では米国ニューハンプシャー州の州花になっている。ちなみに釧路市の市の木はハシドイ。「さりげなくリラの花とり髪に挿し」(星野立子)。