く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ヒトリシズカ(一人静)> 清楚な佇まいを静御前の舞姿にたとえて

2014年04月12日 | 花の四季

【仲間には花穂が2本以上の「フタリシズカ」も】

 この山野草、優美な名前を誇らしげに思っているに違いない。この名前を付けてもらっていなかったら、これほど注目も集めなかったかもしれない。艶のある4枚の葉に囲まれて中央から1本の花穂が伸びる清楚な佇まいを、白拍子の静御前が舞う姿にたとえて「一人静」と名付けられた。

 センリョウ科の多年草で、北海道~九州の丘陵や低山の林床に自生する。花期4~5月。花といっても花弁もガクもなく、長さ3cmほどの穂に白い花糸がブラシ状に左右に伸びるだけ。それが化粧道具の眉刷毛(はけ)に似ていることから「マユハキソウ(眉掃草)」とも呼ばれる。静御前が源義経に従って身を隠した吉野にちなんで「ヨシノシズカ」の別名も。

 仲間に花穂が2本以上の「フタリシズカ(二人静)」もある。花期はヒトリシズカよりやや遅く、花穂は時に5本もあるそうだ。片岡寧豊著の『万葉の花』(青幻舎)によると、万葉集に出てくる「つぎね」がヒトリシズカまたはフタリシズカを指すともいわれる。その一方で、これは植物名ではなく「数多く続く嶺々」という説もあるそうだ。

 近縁の「キビヒトリシズカ」は近畿以西に分布する。「キビ」は最初に見つかった「吉備」地方に由来し、草丈や花糸がヒトリシズカより長いのが特徴。環境省は「絶滅の危機が増大している」として絶滅危惧Ⅱ類に登録し、都道府県段階でも岡山、山口、福岡など8県で絶滅危惧種になっている。ヒトリシズカは鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類、和歌山県で準絶滅危惧種。「きみが名か一人静といひにけり」(室生犀星)。

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