【シューベルト交響曲第2番と「ナブッコ」などイタリアオペラ序曲集】
奈良女子大学管弦楽団の「‘14スプリングコンサート」が20日、橿原文化会館で開かれた。今年で結成45年になる同楽団は1月にイタリアで初の海外演奏会を開催したばかり。今回のコンサートはその報告を兼ねたもので「イタリア公演凱旋記念演奏会」と銘打っていた。ちらしのその文字に引かれて出かけたが、牧村邦彦氏(同楽団常任)の指揮の下、緩急・強弱のメリハリが利いた見事な演奏を披露してくれた。
牧村氏は大阪シンフォニカー交響楽団(現大阪交響楽団)の指揮者として13年間にわたり活躍。とりわけオペラの指揮では定評があり、現在は「ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団」正指揮者、大阪音楽大学非常勤講師などを務める。イタリア演奏旅行(1月14~19日)ではミラノの南にある「ピアツェンツァ市立歌劇場」で、牧村氏の指揮でイタリアオペラ序曲集やシューベルトの交響曲第8番(第9番とも)「ザ・グレイト」を演奏した。ロビーにはその演奏旅行の写真やポスターが飾られていた(下の写真㊨)。
この日の演奏会はシューベルトの交響曲第2番から始まった。シューベルト18歳のときの作品で、第1楽章にはベートーベンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲に少し似た部分も。溌剌(はつらつ)とした第1楽章の演奏が終わると、会場内に期せずして拍手が沸き起こった。それほど熱のこもった演奏だった。第2~第4楽章も統率のとれた演奏が続いた。牧村氏(下の写真㊧)の名指揮の賜物だろう。
後半のイタリアオペラ序曲集の幕開けはヴェルディの「ナブッコ」。その中の合唱曲「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って」は〝第二のイタリア国歌〟といわれる名曲。ヴェルディの葬儀でもこの曲がトスカニーニの指揮で演奏された。それだけにイタリアでの演奏はよほど勇気を要したに違いない。牧村氏もその旋律を受け持ったオーボエ演奏者に向かって「とても怖かったよな」と、当時を正直に振り返っていた。幸い観客からは「ブラボー」の声が掛かったそうだ。
「ナブッコ」の後はロッシーニの「シンデレラ」、ベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」と続き、最後はヴェルディの「シチリアの晩鐘」で締めた。ベッリーニ以外はイタリア公演と同じ曲。演奏者約60人の中には卒業生や男性を含む賛助出演者も含まれていたが、心地よい緊張感を保った演奏が最後まで続いた。アンコールもイタリア公演と同じ「さくら さくら」(H&Y Kurahashi編曲)。これも心に染み入る演奏だった。