【悪疫解除祈願の法要、〝茅の輪粥〟の無料接待も】
平城宮跡のすぐ東側にある光明皇后ゆかりの尼寺・法華寺(奈良市法華寺町)で17日夕、茅の輪をくぐって悪疫解除を祈願する「蓮華会式」が営まれた。境内には300基を超える灯籠が整然と並べられ、ロウソクの灯りで幻想的な雰囲気。茅の輪くぐりの前には暑い夏を元気に乗り切ってほしいとの願いから、参拝者に「茅の輪粥(がゆ)」が無料接待された。
法華寺は東大寺を創建した聖武天皇のお后、光明皇后の発願で日本の総国分尼寺として創られた。正式名は「法華滅罪之寺」。もともと藤原不比等の邸宅だったものを娘の皇后が宮寺としたのが始まり。本尊は皇后が蓮池のほとりを歩くお姿を写したといわれる国宝の十一面観音立像。門跡寺院として代々、皇族や公家が住職を務めてきたが、昨年、一般出身者としては初めて樋口教香門跡代行が住職に就任した。
蓮華会式は午後7時に始まった。樋口住職をはじめ6人の尼僧が本坊を出て、境内を練り歩いた後、本堂正面に設えられた茅の輪の前に。まずお祓いをし輪の中のカヤの結界を取り除いて、住職を先頭に順番に茅の輪をくぐった。これに一般の参拝者が続いた。本堂内では本尊を前に8時近くまで法要が営まれた。
日が暮れるに従って灯籠や小さなコップ形の灯明が明るさを増し、境内には幻想的な雰囲気が漂った。和紙を貼った灯籠にはそれぞれ施主のお名前と「息災延命」「家内安全」「心願成就」といった願いが書き込まれていた。中には「和」や「平凡」など一言だけのものや「手術成功」「労務災害ゼロ」といったものも。ちなみに灯籠は1基2000円、灯明は500円だった。
境内は蓮華会式が始まる前の午後5時から無料開放された。古い茅葺きの「光月亭」では「茅の輪粥」の無料接待もあった。中央に小豆が載っており、なかなかの美味。小皿に添えられた大きな梅干はそばの庭で収穫したものという。例年400~500食が出るそうだ。庭には花びらの縁がうすいピンク色で彩られた「法華寺蓮」をはじめ、様々な草花や樹木が植えられていた。金宝樹、源平桃、紫式部、桔梗、大山れんげ、花いかだ、利休梅、侘助……。1つ1つに名前も記されていて、尼寺らしい雰囲気と気遣いにあふれた庭園だった。