【生駒市の北コミュニティセンターで、ピアノ伴奏土居由枝さん】
生駒市の北コミュニティセンターで26日「松村容子フルートコンサート」が開かれた。古典派のバッハやモーツァルトから、印象派のドビュッシー、超絶技巧で有名なパガニーニ、アルゼンチンの作曲家ピアソラ、さらに日本の唱歌までという幅の広い構成。アンコールも含め15曲でフルートの魅力をたっぷり堪能させてもらった。ピアノ伴奏は土居由枝(よしえ)さん。(写真㊧松村さん、㊨土居さん)
松村さんは大阪教育大学特別教科音楽課程フルート専攻卒業、同大学院修了。その後、英国や米国に渡って研鑽を積み、海外オーケストラと協奏曲を協演したり、ウィーンフィル首席フルーティストの故ヴォルフガング・シュルツ氏親子とジョイントリサイタルを開くなど多彩な演奏活動を展開、後進の指導や病院でのボランティア活動などにも力を注いでいる。現在は大阪府立夕陽丘高校音楽科フルート講師。ピアノの土居さんは松村さんと同じく大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コース卒業後、同大学院修了。第18回吹田音楽コンクールピアノデュオ部門第2位(1位なし)。現在は大阪樟蔭女子大学児童学部非常勤講師などとして活躍している。
1曲目はバッハの『管弦楽組曲第2番』よりポロネーズとバディネリ。続いてグルックの『妖精の踊り』、モーツァルトの『アンダンテ』。古典派に続いて19世紀フランスの作曲家ビゼーのオペラ『カルメン』よりハバネラと組曲『アルルの女』よりメヌエットの2曲。第1部最後はドップラーの『ハンガリー田園幻想曲第1部』だった。松村さんは1曲ごとにエピソードを交えながら分かりやすく紹介してくれた。
「バッハの管弦楽組曲は4つの舞曲でできています。貴族階級が確立したのはバロック時代で、貴族には乗馬、剣術、そして踊りという3つの条件が不可欠でした」「日本とハンガリーの間には『塩』など発音が似た単語が多い、お尻に蒙古斑がある、音階が似ている――など共通点が多い」。横溝正史が推理小説「悪魔が来りて笛を吹く」を執筆中、毎晩のように近くの学生が練習を重ねるドップラーの『ハンガリー田園幻想曲』が聞こえてきたそうだ。このドップラーの名曲、国内のフルートコンサートでは定番の1つだが「ヨーロッパでは演奏される機会がほとんどない」という。なぜだろうか。
後半はパガニーニの『カプリース』、続いてリムスキー=コルサコフの『くまんばちの飛行』から始まった。目にも止まらない速さの指使いやハチの羽音に似た独特な音色(巻き舌によるフラッター奏法)などに、観客からは溜め息も漏れていた。この『くまんばちの飛行』のハチは、実はクマバチではなくてマルハナバチだったという。フォーレの『ファンタジー』、ドビュッシーの『シリンクス』(この曲だけ無伴奏だった)、そしてピアソラの代表曲『リベルタンゴ』と続いた。
松村さんは毎回、演奏会の中に日本の曲も織り込んできたという。この日も最後の3曲は『荒城の月』によるファンタジア(安田芙充央編曲)、『ふるさと』によるポエム(同)、『浜辺の歌』だった。アンコールは『小さな木の実』(ビゼー作曲)。短い休憩を挟んでたっぷり2時間10分。フルートとピアノの呼吸もぴったり。実に内容の濃い演奏会だった。