「北欧めぐり」と言いながらコペンハーゲンからハンブルクにやってきた。ハンブルクはドイツで3番目の大都市。ハンブルク中央駅は、東西南北がよく分からない四角くて巨大。自慢ではないが、ヨーロッパでもあまり道に迷わない方だが、方角を間違えた。というのは、ホテルに荷物を置いて中央駅に戻り、まず目指したのがハンブルク市立美術館。のはずだった。駅のそばにあり、なんなくたどり着き、市立美術館にしては、工芸品ばかりで絵画がないなと思っていたら、なんとリーメンシュナイダーの聖母子像に見(まみ)えた。リーメンシュナイダーがドイツ(やそのほかの国)のどこにあるか、どの作品が見ごたえがあるかは福田緑さんにご教示いただいていたが(「リーメンシュナイダーを歩く」 http://www.geocities.jp/midfk4915/j_top.html)。福田さんの労作は『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』(いずれも丸善プラネット刊)で楽しめる。)、ハンブルクにあると紹介されていたのをよく覚えていなかったので、うれしい驚き。1505年頃の作とされるが、正式には「三日月の上の聖母子像」というそう。そう、ここは市立美術館ではなく「市立工芸博物館」であったのだ。
リーメンシュナイダーに会えたのは、もちろんうれしかったが、工芸博物館はマイセンをはじめドイツが誇る磁器をはじめ、ヨーロッパ、近くはロイヤルコペンハーゲンだの、フランスのリモージュだとか、はては中国の景徳鎮まで、ものすごいコレクションで圧倒されたのだ。間違えて入ったのがこんなに眼福を授けてくれるなんて。疲れを飛ばしてくれる、とはいかず、かなり疲れていてゆっくり見られなかったが、ドレスデンの工芸館に並ぶドイツ(とその他の国)の巧緻と出会える至極贅沢な空間である。夕食はフリカデル(要するにハンバーグ)とビールをいっぱいいただいた。
今回の旅行最後の観光日。予約していたミニチュア・ワンダーランドへ。前日ドイツの巧緻に触れた気がしたが、こちらは現代の巧緻。しょせんプラモ、人形と侮るなかれ。そこは究極までリアリティを追求する職人の技にあふれている。展示コンセプトはハンブルク市街、北欧の都市、アメリカはグランドキャニオンなどと多くはないが、感動したのは、ベルリンの様子が中世の時代から、産業革命を経た近代、ナチスの時代、ベルリンの壁、そして壁崩壊後の現代と時代に沿ってジオラマが展開する特別展。見とれる。歴史絵巻を展示する際、時代考証にはとてつもない労力を割くと聞いたことがある。ここもオタクに突っ込まれないよう細心の注意をはらっているに違いない。そして、常設展の規模とメカの複雑さ。一日が過ぎるのを感じられるよう、昼間のざわめきから夜が更け、真っ暗になり、そして青く開けていく街並み。列車や自動車も夜は車内灯をきちんと点け、飛行機も飛び立ち、着陸する。プラモデル小僧もNゲージおじさんもここに来るがよい。多分一日では足りないだろう、見とれるのに。
前日間違えて行けなかった市立美術館へ。こちらは本当に絵画が充実。特にうれしかったのは、孤高の画家フリードリッヒのコレクションとドイツ表現主義、それもブリュッケの作品が充実していたこと。ノルデやキルヒナーなどブリュッケの作品は、ベルリンのブリュッケ美術館はそろっているが、ドイツ表現主義というとどうしても、ミュンヘン派の青騎士のコレクションが多い。青騎士はマッケなどドイツ人画家は夭逝したのでカンデインスキーなどドイツ人ではない画家が主導したものと思っているが、ブリュッケは、ナチスに迫害されながらも描き続けたノルデ、そして圧倒的な色彩演出のキルヒナーを擁し、こちらの方こそドイツ表現主義の王道のようにも思える。エルンスト・バルラハの彫刻も何点かあり、にんまりしたが、もう旅も最後。体力も限界だ。
アルスター湖遊覧したのは、座って過ごせるから。強い日差しの中を船は湖を一周。泳いでいる人、ボートを揺らしている人、競技艇を漕いでいる人。ハンブルク市民の日常を感じながらこの旅最後の夜に向かう。ネットで見て、なにか感じるものがあったのと、前日フリカデルを食べに行こうとした途中に、その店を目指すカップルのただならぬ意気込みに気になっていたフィレ・オブ・ソウルへ。すばらしい。
ドイツは料理の選択肢は少ないが、基本的に美味しいと思っている。が、洗練された料理となるとやはり探さないといけない。フィレ・オブ・ソウルの料理は魚料理もいくつか選べて、前菜のガスパッチョも絶品。お店の勧めるオリジナルワインもグッドで、やっと暗くなってきたハンブルクの夜を、この旅の最後を締めくくったのであった。(リーメンシュナイダー「聖母子」ハンブルク美術工芸博物館) (了)
リーメンシュナイダーに会えたのは、もちろんうれしかったが、工芸博物館はマイセンをはじめドイツが誇る磁器をはじめ、ヨーロッパ、近くはロイヤルコペンハーゲンだの、フランスのリモージュだとか、はては中国の景徳鎮まで、ものすごいコレクションで圧倒されたのだ。間違えて入ったのがこんなに眼福を授けてくれるなんて。疲れを飛ばしてくれる、とはいかず、かなり疲れていてゆっくり見られなかったが、ドレスデンの工芸館に並ぶドイツ(とその他の国)の巧緻と出会える至極贅沢な空間である。夕食はフリカデル(要するにハンバーグ)とビールをいっぱいいただいた。
今回の旅行最後の観光日。予約していたミニチュア・ワンダーランドへ。前日ドイツの巧緻に触れた気がしたが、こちらは現代の巧緻。しょせんプラモ、人形と侮るなかれ。そこは究極までリアリティを追求する職人の技にあふれている。展示コンセプトはハンブルク市街、北欧の都市、アメリカはグランドキャニオンなどと多くはないが、感動したのは、ベルリンの様子が中世の時代から、産業革命を経た近代、ナチスの時代、ベルリンの壁、そして壁崩壊後の現代と時代に沿ってジオラマが展開する特別展。見とれる。歴史絵巻を展示する際、時代考証にはとてつもない労力を割くと聞いたことがある。ここもオタクに突っ込まれないよう細心の注意をはらっているに違いない。そして、常設展の規模とメカの複雑さ。一日が過ぎるのを感じられるよう、昼間のざわめきから夜が更け、真っ暗になり、そして青く開けていく街並み。列車や自動車も夜は車内灯をきちんと点け、飛行機も飛び立ち、着陸する。プラモデル小僧もNゲージおじさんもここに来るがよい。多分一日では足りないだろう、見とれるのに。
前日間違えて行けなかった市立美術館へ。こちらは本当に絵画が充実。特にうれしかったのは、孤高の画家フリードリッヒのコレクションとドイツ表現主義、それもブリュッケの作品が充実していたこと。ノルデやキルヒナーなどブリュッケの作品は、ベルリンのブリュッケ美術館はそろっているが、ドイツ表現主義というとどうしても、ミュンヘン派の青騎士のコレクションが多い。青騎士はマッケなどドイツ人画家は夭逝したのでカンデインスキーなどドイツ人ではない画家が主導したものと思っているが、ブリュッケは、ナチスに迫害されながらも描き続けたノルデ、そして圧倒的な色彩演出のキルヒナーを擁し、こちらの方こそドイツ表現主義の王道のようにも思える。エルンスト・バルラハの彫刻も何点かあり、にんまりしたが、もう旅も最後。体力も限界だ。
アルスター湖遊覧したのは、座って過ごせるから。強い日差しの中を船は湖を一周。泳いでいる人、ボートを揺らしている人、競技艇を漕いでいる人。ハンブルク市民の日常を感じながらこの旅最後の夜に向かう。ネットで見て、なにか感じるものがあったのと、前日フリカデルを食べに行こうとした途中に、その店を目指すカップルのただならぬ意気込みに気になっていたフィレ・オブ・ソウルへ。すばらしい。
ドイツは料理の選択肢は少ないが、基本的に美味しいと思っている。が、洗練された料理となるとやはり探さないといけない。フィレ・オブ・ソウルの料理は魚料理もいくつか選べて、前菜のガスパッチョも絶品。お店の勧めるオリジナルワインもグッドで、やっと暗くなってきたハンブルクの夜を、この旅の最後を締めくくったのであった。(リーメンシュナイダー「聖母子」ハンブルク美術工芸博物館) (了)