第165話. 気になった音楽(27) 山下達郎『Blow』 

2018-08-20 00:23:13 | 気になった音楽
湖畔人です。

さて、戦争関係の記事を色々と書いて来ましたが、音楽もその絡みで一曲紹介させていただければと思います。

今回は、山下達郎さんの『Blow』と言う曲のご紹介です。

この曲はシングル『アトムの子』と一緒に92年に一度シングルとしてリリースされており、後日、アルバム『RARITIES』にも収録された曲です。元々この曲は、92年の『アメリカズ カップ'92』というヨットレースのテーマ・ソングとして作られた曲だったようで、ヨットを想定して作られた曲、もしくは、“その手の”情景に抜群にフィットするように、と作られた曲のようです。

ただ、以前も私にとって大橋トリオの『SHE』の時にも起きた様に、作者の本来の意図とは違ったイメージでリスナーの記憶に刻まれるケースがあるかと思うのですが、私にとってはこの曲も、それに該当する曲でして、いつからか私にとってこの曲は特攻の戦士達が南の海に向けて飛んで行くシーンを連想させる曲として定着してしまっているのです。
作者である達郎さんに言ったら怒られてしまいそうですが、その経緯はうろ覚えなのですが、確か、百田尚樹さんの『永遠の0』が映画として流行っていた頃で、私もその映画を観ていて大分色々と考えさせられたのですが、ちょうど同じ頃You tubeで達郎さんの曲をよく聴いていて、特にこの『Blow』と言う曲が気に入っていて、この曲の海や空の広く青い空間を連想させるような涼やかなシンセの音色と、推進力がありそうなエンジン音を連想させるベースの音色がゼロ戦のプロペラの回転する音のように聞こえてしまって、そして、“もしも もう一度 生まれ変わるのなら 空を自由に駆ける鳥のように なりたい・・・ 風の中を生きていたい 頬を膨らませ さあ 僕を縛る全てのもの 吹き飛ばしながら・・・“と言う歌詞が、まるで特攻の若者達の本音を聞いているように感じられてしまって、いつの間にか僕の中では、この曲が特攻の歌として定着してしまったのです。
実際は特攻の戦士達は、別に洗脳されて死をも恐れぬ殺人ロボットのようになっていた訳でも何でも無くて、死ぬのは怖いと怯えていた青年達だったと、特攻隊員達がよく足を運んだ食堂の女将は言っていたようです。故郷があり、家族がいて、好きな人がいる、ごく普通の青年達だったが、ただ、愛する家族を、兄弟を、友を、恋人を、そして故郷を敵国の侵略から守りたい、ただその一心で自らの命を捧げ敵の侵攻を防ぐんだ、と心に決め、しかし一方で葛藤と不安も抱えながら、特攻に臨んだといいます。でも戦場に行く途上には、自分が今なそうとしている自爆攻撃という悲惨な現実とは真逆の丸で天国のように美しい青い空と青い海が眼前に広がっており、敵艦に衝突するその瞬間までは、この青い世界に身も心も溶かしていたい、敵艦に衝突するその瞬間までは、次に生まれた時の楽しい事を想像していたい、もし生まれ変わるなら、今度は人殺しの為ではなくて、もっと別の目的で是非もう一度訪れてみたいな、そして、この美しい空も海も喜びと共にもう一度味わい直してみたいな、と言うような事をもし仮に彼らが想像したとしても別に何の不思議でもないし、いやむしろ出来ればそうして欲しかったな、わずかに残った人生を楽しく違った未来や来世を想像することで過ごしてもらえたなら良かったな、と、そんな事をこの曲を聴きながら思っていました。
特攻の皆様も、きっとその多くは既に生まれ変わっているのかと思いますが、叶うならば、なるだけ優しい御両親の元に生まれ変わって頂いて、前世で亡くなる前に想像していたような明るく楽しい人生を今世においては是非エンジョイしてもらえたなら嬉しいな、今世は青い空も海もしっかり楽しんでもらえたら嬉しいな、そんな事を思いながら、今年もまたこの曲を聴き直している所です。推進力も感じるけど、まるで瞑想でもしているかのような静けさをも感じる、そんな不思議な名曲だと思います。お薦めします。

湖畔人

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