梅雨空に月を拝めるのはありがたい
妊娠中の女は月を見てはいけない、といういわれが韓国にあるらしい
ずいぶん前韓国に女たちだけで旅行に行ったとき、その日は満月で、地球のどこにいても満月は美しいねえと騒いでいたら、韓国のおばあさんが、なんとも美しい日本語で
「皆様の中でどなたか妊娠なさっていらっしゃる方はいませんでしょうね」
「ええもちろんですわ」(別にいばるはなしではない)
と胸を張ってこたえる女たち
「なら存分に楽しむとよろしいわ」
「奥様はどうしてそんなに日本語がお上手なのですか?」
「日本人の妻でした」
「ーーーー」
呆気に取られてどうして日本人の妻だったのか、なぜ妊婦が月を見てはいけないのかを聞きそびれてしまったことがある
「きっとかぐや姫よろしく、月が子供を連れていくのかもね」
お気楽な女たちの結論
月を眺めると時々その時の情景を思い浮かべてしまう
どうして?がまだわからない
また占星術の大家でも
「月は怖い」
とおっしゃっている方もいる。その方の本も出ていて取り寄せたが、月の好きなチャ子ちゃん先生はなんだか怖くてまだ一ページも読んでいない
前に貝紫染の取材をしたとき、メキシコまで行った方の話では
「貝が月夜の晩に岩に上がってくるので、その時貝を捕まえて口を開け、内臓の液を糸にこすりつけて、また口を閉ざして海に返す」
その岩場はつるつる滑って危険なところで、若い男たちの仕事になっていて、液で刷り込んだ糸を海水で洗い、満月の月の光にてらすと、緑が勝った青色になり、その糸を今度は太陽に当てるときれいな紫になるのだという。其処からもう色は退色しない。陰と陽、月と太陽の合作の貝紫
「いってみたい」
「女はだめ」とすげなく却下
その話を聞いてしばらくしたら「帝王紫」として京都あたりから大流行してきたが
チャ子ちゃん先生は前に聞いた貝紫を染める満月のメキシコの海の情景に惹かれる