チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

今更ながら

2022年08月13日 10時24分38秒 | 日記
8月はいろいろと日本のことを考える時間だなあとつくづく思う
そして年を経て見えるものがあるということに驚く
まだ20代の時尊敬する美容家の大関早苗さんに
「チャコさんがもっと年齢を重ねていたらなあ」
とため息ともつかない言葉を聞かされ、「大人ぶっていても理解できないことが多いのだな」と思ったことがる

それは彼女が持っていた塩尻の別荘から車で帰途に就くときっだった
三鷹の高台に瀟洒な自宅を構え、軽井沢と塩尻に別荘を持ち、麹町に事務所と店を構え、日本初の「チャームスクール」も大成功をおさめ、順風満帆どこに悩みがあるんだろう、と若い私には理解が出来ない

自宅に帰る道順に私の家があり、予告もなく突然立ち寄って、夕食の余りをさも美味しそうに食べて、暫く雑談して帰っていく。運転手さんを車で待たしているので、お結びとお茶をもっていくと
「チャコさんのそういうところ、お母さんの躾がいいのよねえ」
「母がやっていたことをまねているだけですよ」
「それが大事なのよ、私は子供たちに母の姿を見せていないのよ」

聴いてはいけない言葉を聞いてしまったとあわてる私に
「二人とも聞いてね」と夫と私に語り始めた
二人の子どもを設けてすぐご主人は戦地へ、そしてそのまま帰らぬ人に、二人の子供を抱えて途方に暮れたけど、その日の糧を稼がねばならず幸い家は焼け残ったので持っていた衣類や家具調度品とお米や野菜に替え、何とか子供たちを育てた。世の中が少し落ち着いた時、女たちはどんな生活になっても身だしなみに心配る、これからは洋服の世界がくる、今まで敵だと思っていた国に美容の勉強に行って、日本の女たちを美しくしたい。そして子供を親戚に預け留学した

勉強をして働いて働いて、美容界からは異端児扱いされ、其れにも屈せず自分の信じる道をひた走り
「でもね、子供にはその母の姿は理解できないのね、当たり前よね、前だけしか向いていなかったんだもの」
答えの出ない私、ただ聞くだけ

塩尻からの帰りも、子どもへの悔悟、美容界との軋轢、そのどの話も経験不足の私は聞く事しかできない
しかし今だったら

いろんな年代の人、いろんな環境の人との付き合いが自分を育ててくれるのだと思うと、先輩たちとの時間がただただ尊とかったなあ、それをつむいで若い世代に伝えて行こう


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