ノドを締め初の呼吸=當瀬規嗣解説
人は「オギャ-」と、うぶごえを出して生まれます。では、赤ちゃんは なぜ声を出して生まれるのか、ご存じでしょうか?世の中に生まれ 出て、その感動で泣いているわけでは、もちろんありません。それ に、いつまでも泣いているわけでもありません。差はありますが、通 常5、6回ぐらい声を出すと、泣きやんで、スヤスヤと眠っています。 専門的には、うぶごえのことを「第一呼吸」と呼びます。世の中に出 てきたときの初めての呼吸が、うぶごえをつくるのです。もちろん声で すから、息を吐いたときに出ます。息を吐くためには、吸わないといけ ません。うぶごえを出す寸前に、赤ちゃんは初めて息を吸うのです。 そうすると、肺が膨らむのです。 お気づきだとは思いますが、お母さ んのおなかにいるときの赤ちゃんの口の周りはすべて羊水で、肺の 中には空気はありません。生まれて、初めて肺に空気が入り風船の ように膨らむのです。ところで、新品の風船は膨らみにくく、しぼみや すいものであることをご存じの方も多いと思います。肺も同じで、息を 吐くときに力を抜くと、せっかく膨らんだ肺はすぐに元通りにしぼんで しまいます。そこで、肺がしぼみにくくするために、ノドを締めて息を吐 きます。これが声を生じさせます。何回か繰り返すと、肺は十分膨ら み、もう普通に息をしても肺はしぼみません。こんな巧妙なことを人は 誰もが経験して、大きくなったのです。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)