独立行政法人・産業技術総合研究北海道セン タ-(札幌)ジャガイモ水耕栽培に成功した。 水耕栽培はレタスやトマトでは実用化されてい るが、ジャガイモは国内で本格的な研究事例が なかった。収量も露地栽培の約4倍を記録。 通年収穫にめどがつけば、原材料の安定確保が 課題の食品加工会社などから注目されそうだ。 国内の露地物のジャガイモは通常5-11月に かけて収穫されている。このためボテトチップス などの製造会社は、春先の瑞境期には保存したジャガイモを使用 する。だが保存期間が長くなるほどでんぷんが糖に変わり、脂で揚 げると焦げて黒く変色しやすくなる問題があった。同センタ-は水耕 栽培に向け、特製のステンレスケ-スを開発。栄養分を含んだ水を 循環させるもので、茎の生育を助けるため筒で支える工夫も凝らし た。この装置を同センタ-内の研究施設に設置。昨年6月から水耕 栽培に取り組み、光の照射時間や室温などを調整しながら最適な生 育環境を探っていた。その結果、収量は一平方㍍当たり約15㌔と 露地栽培の約4倍を達成した。同センタ-は「装置の改良が進めば、 収量は露地栽培の10倍にもなる可能性も」と期待する。また、水耕 栽培では土壌を通した病害虫感染の危険性が大幅に低くなり、無農 薬栽培ができるようになるほか、ジャガイモではタブ-とさける連作 も可能という。今後の課題は、装置の設置費用などのコスト。今回 の試験では算出していないため、同センタ-は「生産経費を把握し たうえで実用化の可能性を示したい」と話している。
厳しい費用対効果分析を=宮本 勝浩関西大学教授
「道路整備事業財政特別設置法」が衆議院で再可決された。これ で道路特定財源が再び確保されたことになるが、来年度からの一 般財源化がすでに閣議決定されているので、新たな法令により来 年度からはこの財源が道路建設以外にも使われることになる。しか し、道路族議員や関係者は「必要な道路は従来通り造る」と既定し、 実質的にこの財源のほとんどを使い道路を造り続けることができる ともくろんでいる。一方、一般財源化を主張した関係者は、来年度 以降この財源が社会保障や教育などに使うことができると考えて いる。一体どちらが本当なのだろうか。
一般財源から出資
道路特定財源は新たな道路建設に使われてきたが、実はそれ以外 にもすでに造った道路費用の借金返済にかなり充てられてきた。つ まり多くの地域は道路特定財源をあてにして、すでに道路を造ってし まっている。2008年度の国土交通省予算の総道路投資額は約7 兆8千億円。うち道路特定財源からの出費は約4兆9千億円で、一 般財源からも約1兆7千億円が出資されている。残りは財政投融資 や料金収入で補っている。つまり現在でも道路建設は道路特定財源 だけでは不足しているので、一般財源から補てんされているのだ。と いうことは道路特定財源が一般財源化されても、従来通りの道路建 設を続ければ、道路特定財源から社会保障や教育などに使うお金は ほとんどないことになる。
すべて情報公開を
日本の道路はすべてに世界のトップクラスであり、他方子育て支援な どは先進国の中では低い水準であるといわれる。では、どうすれば道 路特定財源を社会保障や教育などに使うことができるようになるだろ うか。それには「必要な道路」の定義が重要だ。地方出身の議員や首 長は「道路は必要」と言う。それでは「必要な道路」とは何か-。よく使 われる評価基準は費用対効果分析だ。費用を分母にして、道路が建 設された後の便益を分子にした比率が「1」を超えると、効果の方が大 きいから道路を建設すべきと評価するものだ。だが費用対効果分析に は問題がある。道路建設後の通行車両数の予想が非常に甘く、関係 省庁が自分たちで試算することが多いことだ。従って、これからの費用 対効果分析は①通行車両に関し甘い予測をせずに現実的な「厳しい 予想をする」②すべての情報を公開③関係省庁で試算させず大学など 第三者研究機関に依頼④その道路以外に他に同額の出費を行った時 との便益効果の比較の実施-などが必要だ。
産業技術総研チ-ム 「原料」入手、簡単に
抜歯した「親知らず」に含まれる細胞から、新型万能細胞「iPS細胞」 をつくることに成功したと、産業技術総合研究所の大田始主幹研究 員らのチ-ムが、東京都内で開かれたシンポジウムで発表した。 iPS細胞はこれまで、主に皮膚からつくられていた。親知らずは通常、 抜歯後に捨てられてしまうため、より入手しやすい上、今回iPS細胞 づくりに使われた細胞は長期保存も可能。再生医療の研究や、将来 の臨床応用の可能性を広げる成果として注目される。チ-ムが使っ たのは、親知らずから取り出した「間葉系幹細胞」という未分化な細 胞。数年間凍結保存してあったのを解凍し、iPS細胞を最初につくっ た山中伸弥・京都大教授が゛皮膚に組み込んだ四種類の遺伝子のう ち、がん遺伝子を除く三遺伝子を導入したところ、iPS細胞ができたと いう。大串研究員によると、将来の医療応用には、拒絶反応の少ない 細胞を素早く準備するため、さまざまな白血球型(HLA)のiPS細胞を バンク化しておくのが現実的だが「たとえ皮膚でも一般の人からもらう のは簡単ではない。捨てられる親知らずなら集めやすい」と指摘。 iPS細胞を長期保存する方法は確立していないが、当面は間葉系幹 細胞の形で保存しておけば、将来のバンク整備にも役立つとしている。