随分と前に、ご年配者が夜中に目覚めるのがいやで、夕方から水 分を取らない生活を続けているとの話を聞きました。当時は健康に 関しての知識も余り持ち合わせていませんでした。そのため、それ が生活の智恵なのかと感心して聞いていたものです。ところが、そ の方はある日突然意識がなくなり、そのまま何ヶ月も入院したと、 後から聞きました。年を取るうちに段々と、記憶に問題が出るのは 当たり前みたいな風潮があります。それら認知症の症状が全く誤解 で生活習慣病の一つであることが脳科学者達の研究で解明されつ つあります。つい最近まで、ボケ症状になることの心配を現実として 受け入れなければならないのか?との懸念を持っていました。だが、 バランスの良い食事と十分な水分補給、いわゆる脱水症状の回避さ らに習慣的飲酒(適量)を維持するストレスのない生活が認知症から の脱却とのことを知ることによって安心感を得ました。年配者の約4 割の方が栄養失調とのことです。これは生存する最も重要な消化器 系の衰えが原因で、栄養の吸収の衰えが考えられます。内臓を支え る筋肉の構築には少々でも動く軽度のストレッチの一生の継続。バ ランスの良い食事とは、糖分・タンパク質・脂肪を60:20:20(糖分 はお腹持ちの良い、穀類・でんぷん質でとり甘味類は脳では満足感 は得られても、すぐに消費するため間食しやすい)これに野菜類を十 分に取ってミネラルやビタミンを補給する。果物類の糖分はカロリ- が高いので気をつける。食物繊維いっぱいの根菜類や海藻類も胃腸 を活性化するぜん動運動の基、忘れずに毎日食す。これで心配なく 元気でコロリ!の人生!?
記憶障害分からぬ病名=當瀬規嗣解説
認知とは、「それとハッキリ認めること」と国語辞典にあります。法律 用語としても使われる「認知」ですが、れっきとした学術用語でもあり ます。手元の生理学用語集によると、「感覚系を介して得た情報をも とに、外界の事象を把握すること」という意味です。つまり認知は脳 のはたらきの一つであり、私たちは目に映った映像や耳で聞いた音 などを、脳で「それとハッキリ認めて」まわりの様子を知るのです。こ の認知がうまく行かない状態を「失認」といいます。たとえば、眼球や 視神経には全く異常がないのに、脳で見えていると認められない精 神盲や、同様に耳や聴神経には問題がないのに全く聞こえない精神 聾などがあります。これらは、感覚を担当する脳の部分のはたらきが 失われるために起ります。実は、認知が障害された失認と、認知症は イコ-ルではないのです。認知症は2004年に厚生労働省の検討会 で決定された病名です。従来は「痴呆」と呼ばれていたものを言い換 えただけで、新しい病気ではありません。言い換えた理由は「痴呆」 にある負のイメ-ジによる差別的印象をぬぐい去るためでした。です から認知症には認知の障害だけでなく記憶の障害が含まれています。 すっかり広まってしまったので、しかたがないですが、認知症という言 葉は記憶障害の意味が分かりにくく、逆に認知の言葉を誤解されやす く、学者の間では評判がよくありません。どうも、官製のお仕着せは何 事によらず具合の悪いものです。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)