「中干し」延長、稲わら堆肥化 農水省全国10ヵ所で実験へ「京都」達成の追加策に
農林水産省は今春以降、水田から発生するメ タンの排出量を減らす実証実験を10ヵ所で取り 組む。メタンは、地球温暖化の原因となる6つの 温室効果ガスのうちの1つ。排出量は二酸化炭 素(CO2)ほどではないが、同省は「農作業をひ と工夫するだけで、コメの生産性を落とすことなく 削減が可能」とし、京都議定書の目標達成に向けた追加策に盛り込 みたい考えだ。メタン発生源は、廃棄物埋め立て処分場や牛のげっ ぷなど複数あるが、水田を使っりた全国規模の実験は初めて。水田 の土中は空気が遮断されており、酸素のない状態を好む微生物が 有機物を分解して、メタンを発生させている。ただ、コメ作りの過程に は、田植えの約1ヵ月後に水を抜き田を乾かす「中干し」という作業が ある。農水省は、この作業で田んぼが乾くとメタンの発生が止まるこ とに着目。福島県農業総合センタ-の実験で、通常6月に1週間行う 中干しを2週間に伸ばしても収量が変わらず、メタンの発生量は2~5 割減らせることが分かったという。また、収穫後の稲わらは、そのまま 土にすきこんで地力を回復させるのが普通だが、稲わらをいったん田 から出し、牛ふんと混ぜて堆肥にして戻した方が、メタンの排出量を 約四分の一減らせることも分かっている。そこで同省は新年度予算で 5億2100万円を確保。各都道府県に呼び掛け、約10ヵ所の農地で 中干しの延長と稲わらの堆肥化を実行してもらい、メタンの発生量の 変化やコメの品質、収穫量などを調べることにした。このうちの数ヵ所 をモデル地区とし、条件付きで稲わら1㌔当たり20円を助成。堆肥を 作る機械や施設にも補助金を出し、手間のかかる稲わらの堆肥化を 支援する。2年間の実験で成果が確認されれば農家や指導者向けの 手引きをつくり本格普及を目指す。京都議定書が日本に削減を求めて いる温室効果ガスの発生量に占めるメタンの割合は2%(うち水田から の発生は約四分の一)。発生量は少ないものの、メタンの温室効果自 体はCO2の21倍もあり、「農作業をひと工夫するだけで、環境への貢 献度は大きい」と同省環境保全農業対策室は強調する。道内では道立 中央農業試験場が1991年から実験を続け、メタン発生の低減技術な ども蓄積されており、「国との情報交換を密にしたい」(企業情報室)。 千葉大大学院園芸研究科の犬伏和之教授(土壌学)は「メタンの温室 効果は強く、水田で排出量を削減させる実験は重要だ。技術が確立す れば、米作が盛んなアジア諸国への普及も考えられる」と農水省の取 り込みを評価する。北海道洞爺湖サミットの主要議題でもある温室効 果ガス削減をめぐっては、CO2排出量取引精度導入の是非について 経済界の内部や、経済産業省と環境省との間で塩飽の違いが浮き彫 りになっており、農水省としては自らの存在をアピ-ルする絶好の機会 ともとらえているようだ。
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