万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日銀の脱デフレ政策の失敗-タックスヘイブンも一因では?

2016年06月12日 14時01分58秒 | 日本経済
 パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから流出した『パナマ文書』は、世界各国で様々な波紋を広げ、アイスランドでは早々首相が辞任する事態に至りました。その一方で、日本国のマスメディアは、腰が引けた報道が多く、国民の多くは釈然としない感情を抱いております。

 ネット上に公開された『パナマ文書』には、富裕層の個人名のみならず、大企業や宗教法人も名を連ね、タックスヘイブンの利用は明らかです。日本国からタックスヘイブンへの流出した金額は、ケイマン諸島だけで50兆円を超えると推計されており、全世界のタックスヘイブンを含めれば100兆円を超えるかもしれません。安倍政権誕生以来、日銀の”異次元緩和”により超円高が収まり、日本企業は増益を記録しています。昨今は、円高に振れてはいますが、超円高是正による日本企業の競争力回復は、アベノミクスの最も成功した一面とも言えます。ところが、財務相の統計によりますと、法人税収入は、2015年に法人税率を29%に引き下げたこともあってか、それ程には伸びておりません。この法人税収の低い伸び率は、おそらく、富裕層、企業、並びに、宗教法人等による租税回避行動と関係しているのでしょう。そして、こうした企業の租税回避行動は、超円高が是正されながら、何故、日銀の脱デフレ政策が失敗したのかを説明しているように思えます。たとえ企業等が収益を挙げたとしても、日本国内に資金が留まらず、常に海外に流出している状態では、インフレに転じるはずもありません。

 もっとも、莫大な資金がタックスヘイブンから日本国に還流することで、特定市場でのバブルや過度なインフレが発生しても問題ではありますが、内部留保や余剰資金を賃上げや国内投資に向けたならば(現状では外国企業のM&A資金とも…)、個人消費の伸びによる内需拡大によるGDPの押し上げ効果も期待できたはずです。今からでも遅くはありませんので、デフレ脱却、歳入増、経済成長、国民所得の上昇などの側面から、法規制の強化などを通して、タックスヘイブンに逃避している資金の国内還流を促進すべきと思うのです。

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日本国の外国人起業特区は国籍を問わない?

2015年03月07日 15時41分09秒 | 日本経済
 日本国政府は、外国人が起業しやすいように、条件を緩和した特区を設ける方針のようです。この特区、全ての国籍の外国人に開放するのでしょうか。

 仮に、外国人起業特区において国籍を全く問わないとしますと、当然に、中国籍や北朝鮮籍の外国人も特区の優遇措置の下で起業することが予測されます。しかしながら、これらの諸国では、外国人の企業の自由が許されておりませんので、一方的に、日本国側が、特権を付与するようなものです。せめて相互主義にしませんと、不平等条約の国内法化となります。また、台湾では、中国との間の投資・サービス協定の締結が激しい学生運動を引き起こしましたが、日本国も、中国系の安価な製品やサービス業の進出によって市場を侵食され、やがて中国経済に飲み込まれるリスクが高まります。しかも、設立された中国系企業が、資金を持て余している共産党幹部やその親族が出資する、あるいは、経営するともなれば、政治的リスクも無視できなくなります(対中防衛力を増強しても、内側から支配されてしまう…)。加えて、朝鮮半島リスクも懸念されます。朝銀の存在が示すように、国交が存在しないにも拘わらず、在日北朝鮮人による起業は既に可能なようです。しかしながら、朝銀救済で日本国から多額の公的資金が投入されたように、北朝鮮人が起業した企業が何らかの問題を起こした場合、日本国政府が責任を負わされる可能性があります。もっとも、この問題は北朝鮮に限らず、日本国の法律に基づいて設立された企業は、どこの国に所属する法人なのか、という問題を提起しています。WTOなどでは、所属先の国の政府が損害を受けたと主張する企業に代わって紛争の当事者として解決に当たりますが、日本国政府は、新たに特区で起業された法人の保護義務を負うのでしょうか。

 中国、韓国、北朝鮮といった諸国は、法の支配を尊重しておりませんので、特区の設置により、日本国においてこれらの諸国系の企業が増加しますと、日本市場のリスクも比例して上昇することでしょう。リスクに対する甘さは、将来、回復困難な災難を招くことになるのではないかと思うのです。

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日本国の”経済戦略”はゴールドマン・サックスのため?

2015年03月06日 15時27分23秒 | 日本経済
 本日の日経新聞に、日本国の電力自由化に伴う電力先物3商品の導入に関する記事が掲載されておりました。そもそも、電力市場の自由化とは、その実、電力市場が投機の場となることをも意味しておりますし、結局は電力料金の値上がりを招きますので、反対の声も少なくありません。

 ところで、この記事で、もう一つ注目されることは、今月6日に始まる協議会に、ゴールドマン・サックス証券が金融の専門家が招かれていることです。近年の動きを見て気付くことは、日本国の国家戦略と銘打ちながら、ゴールドマン・サックスへの利益誘導が露骨なほどに目立っていることです。再生エネ法が施行され時には、ゴールドマン・サックスは、3000億円の投資を計画し、韓国のLS産電と組んで日本最大のメガソーラ事業を開始しています。また、年金基金の運用の多様化に際しても、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、昨年から、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを運用委託先に選定しました。日本国政府が何らかの政策を実施するたびに、ゴールドマン・サックスの名が挙がるのですから、否が応でも不自然さが目につきます。しかも、インフラ事業や公的事業に集中しており、どの事業も、結局、日本国民の負担が増えるものばかりなのです。また、ゴールドマン・サックスは、採用を通じての人脈作りにも周到であり、福田康夫元首相やソフトバンクの孫氏などの親族も社員との情報も伝わっております。

 かつては、政治家による利益誘導は国内の問題とされましたが、市場のグローバル化を背景に、外資系企業への利益誘導も懸念しなければならない時代を迎えているのかもしれません。経産省には、国民の利益を第一に考えて、政策を立案していただきたいと思うのです。

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”日本人人質事件”に関する「イスラム国(ISIL)」の誤算

2015年01月27日 15時16分45秒 | 日本経済
イスラム国殺害脅迫 二階氏「止める手立てあった」渡航制限の検討を求める(産経新聞) - goo ニュース
 「イスラム国(ISIL)」は、高度なサイバー技術を有しているとも伝えられ、人員のリクルートや全世界への宣伝もネットを駆使しています。いわば、ネットのプロなのですが、少なくとも”日本人人質事件”に関しては、ネット効果に関する誤算があったようです。

 第一の誤算は、一般の日本国民に人質への感情移入をさせることができなかったことです。中東の人質事件の”狼少年化”については以前のブログ記事で指摘しましたが、日本国民の多くは、後藤氏の所属する団体、並びに、その支援団体に対して距離感を抱いています(テロリスト側に近いのではないかとする疑い…)。狙いとしては、後藤氏の母親を登場させたり、本人が救出を訴えるビデオを公開することで日本人の情に訴え、国民的な救出運動が起き、政府への圧力となることを期待したのでしょうが、この狙いは外れ、むしろ距離感は縮まるどころか、広がってしまいました。「I AM KENJI」運動の参加者も、むしろ外国人の方が多いくらいです。第二の誤算は、日本国では、ネットの拡散力は、人質救出支援の輪を広げるのではなく、人々を震え上がらせる存在であるはずの「イスラム国(ISIL)」を、茶化す方向に働いたことです。英紙では、ツイッタ―を通して「イスラム国(ISIL)」メンバーの画像を加工したユーモラスなコラが多数出現したことで「イスラム国(ISIL)」の権威を失墜させた、と評されたとも伝わります(つい、黒覆面のメンバーの頭に悪魔の角を生やし、後ろに尻尾が見えるコラボレーションが思いついてしまう…)。実のところ、風刺の効果とは、こうしたところにあります。第三の誤算とは、日本国民の主たる関心が、事件そのものよりも、この事件の背景に向いてしまったことです。この点は第一の誤算とも通じており、ネット情報には、マスコミが報じない事実や隠されている背景の推測が少なくありません。そして第4として挙げられるのは、ネット世論も一般世論も、イスラム過激派の残虐行為がネットを通して周知されたこともあって、”テロリストには屈するな”の方向に傾いたことです。

 「イスラム国(ISIL)」は、ネットをも支配できると過信したのでしょうが、ネットは常識的な人々が多く住む世界でもありますので、それは所詮無理というものです。ネットでの「イスラム国(ISIL)」の誤算は、常識や良識を前にした過激思想敗北の兆しなのではないかと思うのです。

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アベノミクスの第2幕-新自由主義の独断場は勘弁

2014年12月15日 15時44分54秒 | 日本経済
衆院選2014 アベノミクス第2幕へ 次は再増税環境作り(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、投開票された衆議院選挙において与党が圧勝したことから、アベノミクスの第二幕が開くこととなりました。第一幕では、超円高の是正などによる企業収益の改善が見られるなど一定の効果を上げたのですが、果たして第二幕では、どのようなシナリオが展開されるのでしょうか。

 実のところ注目されますのは、三番目の矢とされる成長戦略です。何故ならば、この分野では、パソナ会長の竹中氏に代表される新自由主義派の影響力が強く、第二幕では、この方針で規制緩和や民営化等が追求される可能性があるからです。総選挙によって廃案とはなったものの、労働者派遣法の改正なども、派遣労働を固定化させることによる人材派遣業者への利益誘導ではないか、との疑惑を生んでしました。規制=悪・民営化=善とみなす新自由主義派のスタンスでは、当然の方針なのでしょうが、規制緩和と民営化が結びついた結果、パソナといった民間派遣業者に官公庁の仕事が委託され、中間マージンの発生による財政負担が生じることとなりました。新自由主義者とは、市場の活力を引き出すために自由化を訴えるのではなく、結局のところ、政府の利権を漁り、中間搾取を目指す利権団体なのではないかと疑ってしまいます。また、国家戦略特区などの案も、外国人優遇策では、日本企業にとりましては、競争条件においてハンディーを課せられるようなものです。

 規制とは一般的なルールのことですので、本来は、ルールなき状況をカオスと表現するように、必要な規制も当然にあります。多種多様な規制の中から阻害要因に過ぎない不要なものを見つけ出して撤廃することこそ規制緩和の基本であり、規制=悪の構図は極端ですし、民営化も、公的権力の私物化や利益誘導となれば、国民を害することになります。アベノミクスの第2幕では、新自由主義の独断場になることだけは、ご勘弁いただきたいと思うのです。

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税収の伸びで消費税増税10%上げを判断しては?

2014年11月28日 11時08分20秒 | 日本経済
税収 17年ぶり高水準 当初の想定上回り 51兆円台に(産経新聞) - goo ニュース
 今年度の一般会計税収の伸びは、17年ぶりの高水準を記録したそうです。消費税率の8%上げに伴う増収以外にも、所得税と法人税の伸びが顕著なそうです。後者の伸び率は、アベノミクスによる賃上げと企業業績の回復の効果が、数字で表れたとも言えます。

 ところで、政府は、増収分を商品券の配布?といった補正予算の財源の一部に振り向ける方針なそうですが、増収分を財政再建に充てれば、消費税率の10%上げは必要ないのではないでしょうか。今回の数字では、所得税と法人税も増収となり、国債の金利も低下傾向にあるため、利払いも減少しているはずです。つまり、この調子で歳入の拡大傾向が続けば、消費税率を10%に上げなくても、財政再建の目標を達成し、プライマリー・バランスの均衡が実現するならば、消費税上げの根拠とされてきた日本国の財政や日本国債に対する信用は維持することができるのです。消費税上げの延期に際して、安倍首相は、不景気を条件とした景気条項の撤廃を明言しましたが、逆に、好景気を条件とした景気条項を新たに設けてもよいのではないかと思うのです。

 来年度には、先日の政経労の三者合意により、さらなる賃上げが予定されております。この合意により、所得税のさらなる増収が見込まれますし、輸出関連を中心に企業業績も好転してきております。歳入の増加を条件とした消費税10%の見送りが、国民に対する”ボーナス”の約束ともなれば、日本経済の復活に向けての国民の活力をも引き出すのではないでしょうか(少なくとも、現在、アベノミクスの恩恵を受けていない人々にも確実なるメリットなる…)。

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アベノミクスの三本の矢-束ねる力が弱いのでは?

2014年11月20日 15時33分21秒 | 日本経済
日銀、政府との間に“すきま風”も 「約束違反。官邸にはしごを外された」(フジサンケイビジネスアイ) - goo ニュース
 アベノミクスを説明する際に登場してくるのが、毛利元就の”三本の矢”の故事です。元就は、三人の子息を前にして”1本の矢ではすぐ折れてしまうけれども、矢を三本束ねれば、決して折れることはない”と諭したと伝わります。

 アベノミクスにおける三本の矢とは、端的に言えば、一本目の矢:金融政策(量的緩和)、二本目の矢:財政政策(機動的出動)、三本目の矢:市場政策(賃上げ・経済成長戦略…)の三者を意味しています。これらの政策を同時に、かつ、効果的に実施すれば日本経済も安泰ということになりますが、問題がないわけではありません。経済の仕組みからしますと、三本の矢の間の繋がりが希薄なようなのです。一本目の矢は、民主党政権時代の超円高を是正し、輸出関連の企業の収益を改善したことにおいて、三本目の矢への波及ルートがあります。この場合、増収となった輸出関連企業が、賃上げ、円安によるマイナス影響を受けた部品メーカーに対する製品価格の値上げ容認、新たな製品開発分野への投資…などに資金を振り向けますと、一本目の矢と三本目の矢の結束がさらに強まります。しかしながら、日銀による量的緩和の主たる手段とは、金融機関に対する買いオペですので、市場に供給されたマネーは、一先ずは金融機関の手持ち資金となります。このことは、潤沢な資金を供給された金融機関が、二本目と三本目の矢に資金を供給しないことには、一本目の矢の効果が限定的となることを意味しています。二本目の矢との連携を強めるためには、金融機関が国債を購入して財政を支える方法も考えられますが、国債の信用を低下させるリスクがあります。そこで、財政への波及効果は、三本目の矢を経由したGDPの伸びに伴う歳入の増加にこそ期待されるのですが、成長なき増税では、逆にGDPを下げてしまう可能性があります。一方、企業への投資や融資ではなく、金融機関が株式市場で資金を運用するとしますと、株価は全般的に上昇し、民間企業の含み資産も増え、また、政府にとりましても、年金積立金の運用にはプラスの効果はあります。しかしながら、肝心の日本経済を支える企業活動や消費となりますと、GDPの落ち込みや国内の設備投資が伸び悩みが示すように、現状では、波及効果が薄いように見えるのです。

 金融機関に貯めこまれている巨額の手持ち資金が、マネー・ゲームの末の株式市場のバブルとその崩壊に帰結するのでは、元も子もありません。三本の矢の繋がりをフローチャートとして再確認し、束ねる力を強めることこそ、日本経済の復活と成長への道ではないかと思うのです。

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政労使の賃上げ合意―”三方よし”では?

2014年11月19日 15時29分41秒 | 日本経済
政労使会議 来春の賃上げ、年内に3者で合意へ(産経新聞) - goo ニュース
 ”三方よし”とは、江戸時代に近江商人の家訓から広まったものであり、”買い手””売り手””世間”の三者の全てが恩恵を受ける取引こそよしとするビジネス理念です。今般、来春の賃上げに関して政労使の三者による合意が成立しましたが、この合意も、”三方よし”なのかもしれません。

 賃上げは、得てして勤労者のみにメリットが集中するかのように考えられがちです。賃金の引き上げは、労働側が経営側に求める要求項目の筆頭でしたし、実際に、賃上げは”労働者が勝ち取るもの”と概念されてきました。しかしながら、経営側にも、賃上げのメリットがないわけではありません。何故ならば、市場経済にあっては、消費者の購買力の上昇こそが、自社の製品の販売数を伸ばす要因となるからです。労使関係は個別の企業の内部関係として見ればゼロ・サムになるものの、企業の多くが賃上げをすれば、市場全体の購買力が高まります。消費者の購買力が高いほど付加価値の高い製品にもニーズが生まれますので、新しい製品の開発投資についてもリスクが減少するのです(この点は、外国企業にとっても日本国は有望な市場となる…)。そして、賃上げは、”世間”、ここでは国家の財政健全化にも貢献します。賃上げに伴い所得税が増収となることに加えて、市場における消費が活発化すれば、消費税による税収も増えるからです。法人税については引き下げが検討されておりますが、それでも企業収益が大幅に改善されれば、歳入増加に繋がるはずです。

 10%への消費増税が延期されたため、当面は8%の消費税率が維持されますが、政労使の賃上げ合意は、延期によって指摘されている財政不安を緩和する効果も期待されます。”三方よし”の結果を得ることができれば、賃上げこそ、アベノミクスの矢の重要な一本となるのではないかと思うのです。

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円安対策は民間協力でできるのでは?

2014年11月14日 11時16分34秒 | 日本経済
7年1カ月ぶり円安ドル高 一時116円20銭付近、米国株高や消費税再増税延期で(産経新聞) - goo ニュース
 報じられるところによりますと、遂に、円相場は116円20銭に下落し、7年1か月ぶりの円安を記録したそうです。解散観測の下、自民党などでは円安対策を選挙公約に加える方針とも伝わりますが、円安対策は、全てとは言わないまでも、民間協力でも可能なのではないかと思うのです。

 円安に振れますと、原料を諸外国から輸入して製品を生産している事業者が打撃を受ける一方で、国際的に価格競争力をアップさせた事業者が恩恵を受けます。言い換えますと、為替相場の変動は、輸入依存の事業者と輸出関連の事業者とでは、正反対の効果が及ぶのです。どちらかに利益が偏る状態にあっては、今般の円安のように、不利益を被る側の事業者から政府に対して円安是正や円安対策を求める不満の声が上がります。公平性が求められるため、政府としても対応に苦慮することになるのですが、仮に、輸出関連の事業者が、原材料費の値上がりで収益悪化に苦しむ部品製造業者に対して、製品価格の値上げを認めるならば(あるいは、価格交渉要求権を認める…)、この問題は半ば解決します。また逆に、円高が亢進して輸出業者が悲鳴を上げる場合には、円高利益に浴している部品製造業者に対して値下げを要求できる権利を認めるならば、この合意は双方にとって為替変動に対するリスク・ヘッジ、つまり、保険ともなります。双方で公式に協定を結べは、少なくとも製造業においては、長期的なリスク回避メカニズムとして機能することが期待できます。

 あらゆる問題に対して政府が対策費として予算を計上し、財政支出を増やしますと、今でも最悪な財政状況はさらに悪化するばかりです。民間で解決できる問題は、民間自らが知恵を絞り、自らの問題として率先して問題解決に当たるべきではないかと思うのです。

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日本の電力市場自由化は”中間搾取”の解禁?-統制経済と新自由主義の握手

2014年10月25日 13時55分03秒 | 日本経済
電力会社に原発の電気、拠出義務づけ…政府検討(読売新聞) - goo ニュース
 電力自由化に向けて、政府は、電力会社に対して原発で発電した電気を卸売り市場に拠出することを義務付ける案を検討しているそうです。この案から推測しますに、日本国の電力自由化とは、その実態は、統制経済と新自由主義が手を結んだ中間搾取の解禁なのではないでしょうか?

 この案における統制経済的な側面とは、”自由化”と銘打ちながら、電力会社に電気卸売市場への電力拠出を義務付けていることです。真の自由化であれば義務付けの必要はなく、電力会社は、自らが製造した電気を卸売市場を介さずに、誰に対しても自由に”産地直売”できるはずです。ところが、政府は、最低価格が実現できる産直方式を否定し(全てではないにしても…)、電力会社から電力を強制的に拠出させたのでは、卸売市場は、国家事業の一つとなります。そして、この”国家卸売市場”に群がるのが、新自由主義者たちです。電気卸売市場には、誰でもが参入できる点で自由ですが、自前の発電設備を保有する発電業者も参入することができます。つまり、卸売市場で買い取った電力を小売りし、その間にマージンを取るのが、彼らのビジネスなのです。おそらく、外国企業もこぞって参入して来るでしょうから、日本国の電気市場は、中間搾取の場となりかねません。

 拠出義務付け対象が、原発の電力に限定されている理由は、やはり、火力や再生エネよりも原発電力の方が安値であるからなのでしょう。つまり、原発で造りだした低価格電力は、卸売市場における事業者の中間搾取で価格が上乗せされ、国民には低価格の恩恵は及ばないことになります。統制経済と新自由主義の握手は、国民にとりましては、最悪のパターンであると思うのです。

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再生エネの欠陥制度-問われる民主党政権の責任

2014年10月19日 15時09分24秒 | 日本経済
小渕経産相辞任へ=「政治とカネ」で引責―首相側に伝達・20日にも表明(時事通信) - goo ニュース
 菅前首相が自らの辞任と引き換えに、国会で可決・成立された再生エネ法。この制度、遂に限界に達し、抜本的な見直しを迫られる状況に至っております。

 再生エネの高値買取制度は、導入時に際して既に重大な欠陥が指摘されておりました。先行して導入したドイツやスペインでは、この時、既にマイナス面が表面化していたのですから、民主党政権の見切り発車の裏には、菅前首相と太陽光発電事業への参入を狙うソフトバンクとの利権絡みの癒着を疑う声もあったのです。通常、先例から行き詰ることが始めから分かっている制度は導入しないものです。不自然で不合理なことには、必ずや何らかの良からぬ思惑が隠れているものですが、この責任は、一体、誰が取るのでしょうか。再生エネ法では、良質の電力供給を安定的に提供する必要性から、電力会社に買い取りを拒否できる権利を認めており、法案が早期に成立したのも、この権利が明記されたからとされています。ですから、今般の電力会社の権利行使は驚くことではないのですが、太陽光発電事業への参入のために既に多額の投資を行ってしまった事業者からは、怨嗟の声も上がっています。再生エネ法を政治的取引まで駆使して強引に通した”つけ”は、結局、後発参入組が、無駄な投資という形で払うことになったのですから(この点、制度の見直しに際しては、最も”得”をした先行組からの買い取りを制限する案は良案…)。その一方で、一般の消費者にとりましては、当制度による電力料金の値上げに歯止めがかかりますので、歓迎すべきことでもあります。再生エネを普及させるためには、価格低下化を促すメカニズムを備える必要がありますし、経済や国民に負担を押し付ける政策は悪政と言うものです。

 民主党は、小渕経産相の政治資金問題を厳しく追及しておりますが、自らの政権時に残した負の遺産については、素知らぬふりを決め込んでいるようです。今般の辞任騒ぎが、制裁エネ制度の見直しを遅らせることがないよう願うばかりです。

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企業戦略の”選択と集中”は正しいのか?-短期戦略と長期戦略

2014年10月18日 15時29分23秒 | 日本経済
 昨日も、日経新聞の社説では、日本企業再生の処方箋として、選択と集中をしきりに勧めておりました。収益性の高い部門に投資を集中し、その他の部門は速やかに切り離すように、と…。しかしながら、この戦略、果たして正しいのでしょうか?

 選択と集中の手法とは、GEの最高責任者を務めたジャック・ウェルチ氏が提唱したものであり、2000年以降、企業の経営方針として全世界で採用されてきました。おそらく、日本企業はこの方法の採用が遅れている、とする認識があるのでしょう。しかしながら、入社時に花形部門であった部署が、退職時には、リストラ対象部門となっている事例は少なくありません。また、以前は、日陰であった部署から、突然に新たな革新的技術やヒット商品が生まれることも少なくありません。市場や産業構造が変化しないと仮定すれば、短期戦略として”選択と集中”を実行することは、企業の最大のパフォーマンスを実現することになるのでしょうし、実際に、それを達成した企業もあるのでしょうが、前提を市場や産業構造は時間の経過とともに変化するもの変えますと、企業の変化への対応性という面において、”選択と集中”にはリスクがあります。恐竜の如く、何らかの劇的な変化に晒された場合、ひとたまりもなく絶滅する可能性があるからです。無駄なように見えても、企業内部に様々な成長の芽を育てていた方が、あるいは、周囲の環境の変化に柔軟に対応し、サバイバルには成功するかもしれないのです。

 短期的戦略の採用は、長期的戦略としては失敗することもあり、合理性や収益性の最大化が、時には、組織としての寿命を縮めることもあります。”選択と集中”の戦略については、変化への対応力の弱さの側面から、慎重に検討する必要があるのではないかと思うのです。

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再増税を見送っても日本国債の信頼性維持は可能-”8%の教訓”に学ぶ

2014年10月09日 15時17分40秒 | 日本経済
消費税再増税見送りの可能性が強まる!(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 本年4月より、消費税率が5%から8%に引き上げられたばかりですが、来年10月からはさらに10%に引き上げられる予定です。果たして、このまま消費税を再増税してもよいのでしょうか?

 この判断、4月に8%に引き上げた際の財政効果にこそ学ぶべきではないかと思うのです。4月の8%への引き上げに際しては、各方面から景気減速の懸念が寄せられていました。この懸念に対して、増税賛成論者からは、景気対策としての財政出動によって相殺できるとする主張がなされ、実際に、景気対策費とセットという形で8%増税が実施されたのです。このため、消費税増税による増収分は、財政再建にほとんど寄与せず、平成25年度と26年度の予算を比較しますと、歳入における新規財源債の額は1.6兆円ほどしか減っていません。つまり、8%増税によって財政悪化に歯止めをかけることはできなかったのです。むしろ、増税分は、景気対策費として一部の業界にばら撒かれてしまい、国民一般の消費を喚起する効果はほとんどなかったと考えられるのです。このことは、10%増税においても同様の事態が起きる可能性を強く示唆しております。

 予定通りの再増税を主張する人々は、国際公約であるとか、日本国債の信頼性の低下を根拠としておりますが、8%増税の教訓が学ぶべきは、消費増税に対するピンポイント的な財政出動には消費全般を支える効果はないということです。このことは、逆に、景気対策費分の支出を削ってしまえば、10%に税率を上げなくとも、財政改善は可能であることを示しています。消費税には、”税率を上げれば消費が冷える”というマイナス・スパイラルの性質がありますので、この性質を考慮すれば、消費税率は極力低率となるよう努め、日本財政の国際的な信頼は、上手な財政削減によって取り戻すべきではないかと思うのです。

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企業の法人税率下げと正規雇用拡大をバーターにしては?

2014年07月17日 16時08分27秒 | 日本経済
 本日、コメントとしていただいた情報によりますと、派遣増加の背景には、派遣社員の雇用にかかる経費は人件費ではなく、材料費として計上されるそうです。つまり、企業は、”材料費”である以上、消費税込みで支払われるため、納税に際して控除できるというのです。

 派遣に潜むこの仕組みによりますと、企業は、派遣雇用の拡大により節税効果が見込める一方で、派遣事業者も、企業と登録社員の両者から利益を上げることができます。その一方で、政府は、企業の節税効果による税収減に見舞われ、国民もまた、派遣形態の一般化により、生活不安を抱えることになります。もちろん、派遣社員の増加は、少子化の主要な要因の一つです。現状では、企業と派遣事業者が”勝ち組”となり、政府と一般の国民が”負け組”となるのです。しかしながら、このままこの制度を維持するとしますと、”勝ち組”であるはずの企業もまた、長期的にはマイナス影響を受けます。国民所得が減少すれば消費が落ち込み、企業収益も減少するからです。派遣事業には”中間搾取者”としての側面のみならず、政治、並びに、社会的なリスクがあることは、再三、本ブログの記事で述べてきましたが、正規社員を増やすことこそ、リスク低減と経済の健全化にとって不可欠な対策です。政府は、今後、企業の法人税率下げに積極的に取り組むそうですが、この企業向けの減税措置、正規雇用の拡大とバーターにしてはどうかと思うのです。法人税率を下げても、それが有効に経済に作用しない限り、経済効果は見込めません。

 法人税率下げについては、財源の問題に加えて、企業優遇策として国民からの批判も少なくありません。しかしながら、法人税率下げが国民所得の上昇と生活の安定に資するのであれば、必ずしも反対すべき政策ではなくなるはずです。認識された以上、悪循環は、早めに断つのが肝要であると思うのです。

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人材派遣業は無用の長物-政府は企業と個人を直接結ぶ全国人材ネットワークの構築を

2014年06月27日 11時03分08秒 | 日本経済
 本日の日経新聞の一面には、「正社員・派遣、幅広く職探し」と題し、厚生労働省が民間の人材仲介事業者に対する規制を緩和する方針を示していることが報じられていました(正社員と派遣の窓口の一本化…)。村田厚労相は、人材派遣業者のパソナから「仁風林」で接待を受けていたそうですし、厚労省の官僚も疑わしい限りですが、そもそも、人材派遣業こそ、就業システムとしては非合理的で非効率なのではないかと思うのです。

 第1の理由は、民間人材会社では、求人企業、並びに、求職者が求めるレベルの信頼性を確保することは難しいことです。例えば、パソナには、創価学会や北朝鮮等との繋がりも指摘されているため、求人会社は、紹介者側のパソナの”人材戦略”に沿った人材が紹介される可能性があります。その一方で、人材会社に登録する側も、一般の日本人では不利な扱いを受けるかもしれません(創価学会信者や北朝鮮系の登録者が優先される?)。人材仲介業とは、信頼性が高く、特定の政治・宗教的なカラーがなく、かつ、全ての顧客に対して中立・公平である必要があります。第2の理由は、人材派遣業は、中間搾取事業であることです。特に派遣業は、企業と登録者との両者から中間マージンを永続的にとり続ける悪徳ビジネスの側面があります。第3の理由は、民間の人材派遣業では、求人面と登録面の両面において人材市場が細分化されてしまうことです。パソナといった大手の他に、有料の民間人材会社は全国で1万7千ほどあるそうですので、日本国の人材市場は、実質、民間人材会社の数だけ分割され、囲い込まれているのです。これでは、求人・求職の双方にとって選択の幅が限られてしまい、かつ、全国レベルでの幅広い人材活用という面からしますと非効率です。

 このような点に鑑みますと、細分化されている現行の人材派遣業は、経済に非効率を強いる無用の長物です。日本国政府は、”規制緩和”という名の利益誘導を以って非効率なシステムを温存させるよりも、逆に、現行のハロー・ワークの刷新を図り、全ての求人・求職情報を集め、全ての求人・求職者がアクセス可能な全国レベルでの単一の人材ネットワークを構築すべきです。高度に発展した情報通信技術は、企業と個人を直接に結ぶシステム構築にこそ活用されるべきなのではないでしょうか。

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