万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日銀の脱デフレ政策の失敗-タックスヘイブンも一因では?

2016年06月12日 14時01分58秒 | 日本経済
 パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから流出した『パナマ文書』は、世界各国で様々な波紋を広げ、アイスランドでは早々首相が辞任する事態に至りました。その一方で、日本国のマスメディアは、腰が引けた報道が多く、国民の多くは釈然としない感情を抱いております。

 ネット上に公開された『パナマ文書』には、富裕層の個人名のみならず、大企業や宗教法人も名を連ね、タックスヘイブンの利用は明らかです。日本国からタックスヘイブンへの流出した金額は、ケイマン諸島だけで50兆円を超えると推計されており、全世界のタックスヘイブンを含めれば100兆円を超えるかもしれません。安倍政権誕生以来、日銀の”異次元緩和”により超円高が収まり、日本企業は増益を記録しています。昨今は、円高に振れてはいますが、超円高是正による日本企業の競争力回復は、アベノミクスの最も成功した一面とも言えます。ところが、財務相の統計によりますと、法人税収入は、2015年に法人税率を29%に引き下げたこともあってか、それ程には伸びておりません。この法人税収の低い伸び率は、おそらく、富裕層、企業、並びに、宗教法人等による租税回避行動と関係しているのでしょう。そして、こうした企業の租税回避行動は、超円高が是正されながら、何故、日銀の脱デフレ政策が失敗したのかを説明しているように思えます。たとえ企業等が収益を挙げたとしても、日本国内に資金が留まらず、常に海外に流出している状態では、インフレに転じるはずもありません。

 もっとも、莫大な資金がタックスヘイブンから日本国に還流することで、特定市場でのバブルや過度なインフレが発生しても問題ではありますが、内部留保や余剰資金を賃上げや国内投資に向けたならば(現状では外国企業のM&A資金とも…)、個人消費の伸びによる内需拡大によるGDPの押し上げ効果も期待できたはずです。今からでも遅くはありませんので、デフレ脱却、歳入増、経済成長、国民所得の上昇などの側面から、法規制の強化などを通して、タックスヘイブンに逃避している資金の国内還流を促進すべきと思うのです。

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