南沙諸島の領有権争う中国とフィリピン、歩み寄りか―仲裁裁定控え
フィリピンが提訴した南シナ海問題に関する仲裁裁判の裁定は、5月中には示されるとする見通しがありました。しかしながら、既に6月となり、その行方が注目されてきましたが、ここに来まして、中国は、フィリピンを懐柔すべく歩み寄りを試みている報じられております。
報道によりますと、仲裁の裁定において自国が主張する九段線が認められる可能性が低いため、中国が、フィリピンに提訴の取り下げを持ちかけているとする観測が流れているそうです。先のG7で法の支配3原則が示されたように、国際社会は、中国に対して仲裁の結果を順守するよう強く求めています。仮に従わなかった場合には、制裁の対象ともなるため、中国としては、何としての仲裁裁判を潰したいようなのです。そこで、大統領が親中派とされるドゥトルテ氏に交代したのをチャンスに、フィリピンに対して話し合い解決を求めたのでしょう。一方のドゥトルテ大統領は、「交渉の船が静かな海にあり、圧力的な風が吹かないなら、私は中国と2国間で協議することを決めるだろう」と述べたとも伝わり、中国の要求に応えたようにも見えます。しかしながら、仮に、フィリピンが提訴を取り下げ、その後、国連海洋法条約の規定に反する中国有利の合意に達したとしますと、国際法秩序の破壊の責任は、中国からフィリピンに移ることになります。海洋に国際法秩序が確立するチャンスをみすみす逃し、中国の軍事力と不当な領有権主張に屈したことになるのですから。この結末には、おそらく、フィリピン国民も納得しないことでしょう。一方、中国にとりましては、仲裁の決定への不服従に対する批判を回避できるのみならず、フィリピンに責任を押し付けることができます。
これではフィリピンが汚名を着ることになるのですが、他の東南アジア諸国のみならず、フィリピンの突然の豹変ぶりに国際社会も痛く失望することでしょう。時代が、無法時代に向けて逆戻りするのですから。それとも、習主席は、仲裁の裁定内容を予め入手し、先手を打つ形でフィリピンに仲裁内容と同様の措置を約束した上で、提訴取りやめに応じるように説得したのでしょうか。これまでの中国の行動パターンを見ますと、最初に好条件を提示して提訴の道を放棄させた後になって、徐々に圧力をかけながら自らに有利な方向に引き込む公算が高いものと推測されます。自国の名誉のみならず、国際社会の法秩序を維持するためにも、フィリピンは、仲裁裁定の取り下げには応じるべきではないと思うのです。
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フィリピンが提訴した南シナ海問題に関する仲裁裁判の裁定は、5月中には示されるとする見通しがありました。しかしながら、既に6月となり、その行方が注目されてきましたが、ここに来まして、中国は、フィリピンを懐柔すべく歩み寄りを試みている報じられております。
報道によりますと、仲裁の裁定において自国が主張する九段線が認められる可能性が低いため、中国が、フィリピンに提訴の取り下げを持ちかけているとする観測が流れているそうです。先のG7で法の支配3原則が示されたように、国際社会は、中国に対して仲裁の結果を順守するよう強く求めています。仮に従わなかった場合には、制裁の対象ともなるため、中国としては、何としての仲裁裁判を潰したいようなのです。そこで、大統領が親中派とされるドゥトルテ氏に交代したのをチャンスに、フィリピンに対して話し合い解決を求めたのでしょう。一方のドゥトルテ大統領は、「交渉の船が静かな海にあり、圧力的な風が吹かないなら、私は中国と2国間で協議することを決めるだろう」と述べたとも伝わり、中国の要求に応えたようにも見えます。しかしながら、仮に、フィリピンが提訴を取り下げ、その後、国連海洋法条約の規定に反する中国有利の合意に達したとしますと、国際法秩序の破壊の責任は、中国からフィリピンに移ることになります。海洋に国際法秩序が確立するチャンスをみすみす逃し、中国の軍事力と不当な領有権主張に屈したことになるのですから。この結末には、おそらく、フィリピン国民も納得しないことでしょう。一方、中国にとりましては、仲裁の決定への不服従に対する批判を回避できるのみならず、フィリピンに責任を押し付けることができます。
これではフィリピンが汚名を着ることになるのですが、他の東南アジア諸国のみならず、フィリピンの突然の豹変ぶりに国際社会も痛く失望することでしょう。時代が、無法時代に向けて逆戻りするのですから。それとも、習主席は、仲裁の裁定内容を予め入手し、先手を打つ形でフィリピンに仲裁内容と同様の措置を約束した上で、提訴取りやめに応じるように説得したのでしょうか。これまでの中国の行動パターンを見ますと、最初に好条件を提示して提訴の道を放棄させた後になって、徐々に圧力をかけながら自らに有利な方向に引き込む公算が高いものと推測されます。自国の名誉のみならず、国際社会の法秩序を維持するためにも、フィリピンは、仲裁裁定の取り下げには応じるべきではないと思うのです。
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