万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第三次世界大戦シナリオにおける北朝鮮の役割

2024年11月21日 09時53分09秒 | 国際政治
 2024年10月末、NATOのマルク・ルッテ事務総長は、ロシア西部のクルスク州にて北朝鮮兵士が戦闘に加わっている事実を確認したと公表しています。クルスク州は、8月以降、ウクライナ軍の越境攻撃により占領されており、ロシア側は同地域を奪回すべく、目下、5万人規模の兵を結集させているとされます。ウクライナのゼレンスキー大統領に因れば、同ロシア軍のうち、北朝鮮兵は凡そ1万1千人程度であり、既にウクライナ軍との交戦による戦死者も報告されているそうです。頓に北朝鮮の動きが目立ってきたのですが、その背景には、第三次世界大戦シナリオが透けて見えるようにも思えます。

 北朝鮮によるロシアへの援軍の派兵は、両国間の軍事同盟に基づいています。両国の間では2024年6月19日に締結された「包括的戦略パートナーシップ条約」では、ソ連邦崩壊の際に失効したソ朝友好協力相互援助条約と同様に、一方が攻撃を受けた際の集団的自衛権の発動が定められているからです。軍事同盟とは、平時には抑止効果が期待されて締結されるものですが、同条約の場合、当事者となるロシアがウクライナと戦争状態にあるために有事における軍事同盟となり、これは、北朝鮮による事実上の参戦を意味することとなります。戦争状態が存在する状態における軍事同盟の成立が、戦火の拡大を招くのは、第二次世界大戦の前例を見ても明らかです。仮に第三次世界大戦計画が存在するとすれば、ロシアと北朝鮮との間の軍事同盟は、同シナリオに沿っているとする見方も成り立つのです。

 しかも、ロシアが自国領として併合した地域での軍事活動が見られるものの、北朝鮮兵の主たる戦場がクルスク州であることは重要です。何故ならば、現在、ウクライナ軍がロシア領を軍事占領しているため、ロシア側から見れば、ウクライナ軍の‘侵攻’が自国に対する国際法上の‘侵略行為’に当たるからです。これまで、ロシア側は自らの軍事介入を‘特別軍事作戦’と見なし、戦争という表現を避けてきました。しかしながら、ウクライナ軍が国境を越えた以後は、正当防衛権の行使としての防衛戦争を主張し得ることになります。つまり、それが主観に依るものであれ、ロシア側は、国連憲章にあって合法行為とされる集団的自衛権の行使を主張し得る立場を得たことにもなりましょう。同時に、北朝鮮側も、自国の派兵を条約に基づくものとして正当化できるのです。

 北朝鮮兵の戦闘参加については、フランスのマクロン大統領が注目すべき発言を行なっています。今月18日、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたG20の首脳会議において、マクロン大統領は、バイデン米大統領がロシア本土を攻撃する長距離ミサイルの使用を認めた件に関連して、「過小評価してはならないこの紛争の重大な変化、すなわち北朝鮮軍の戦争参加によって触発されたものと理解している」と述べたのですから。マクロン仏大統領と言えば、ロスチャイルド銀行に勤めた経歴の持ち主ですが、同発言は、現状を分析したと言うよりも、作成済みのエスカレーションのシナリオを説明したのかもしれません。マクロン仏大統領の発言の他にも、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーといった北欧諸国では、戦争等の危機に対する‘準備’を促すパンプレットが相次いで国民に配布されております。懐疑的に見れば、あたかもヨーロッパを戦場と化すことが合意済み事項のような対応は、人々が戦争へと流されてゆく‘時代の空気’を醸し出すための、第三次世界大戦に向けた‘戦争モード’の演出であるかのようなのです。

 北朝鮮と言えば朝鮮戦争の当事国であり、同戦争は終結しておらず休戦状態にあります。今日に至るまで同国が軍事独裁体制を敷いている理由も、隣国韓国、並びに、国連軍の主力となったアメリカとの間に続く敵対関係にあるのですが、このことは、ロシア・ウクライナ戦争が東アジアに飛び火する可能性をも示しています。政情不安定が報告されている中国を動かして台湾侵攻をもって個別の戦争をリンケージさせるよりも、北朝鮮を利用する方が容易に第三次世界大戦を引き起こせるものと判断し、第三次世界大戦のシナリオの遂行者が路線を変更したとの憶測も成り立ちます。何れにしましても、北朝鮮がアジアを戦場とする戦争リスクを高めたことは否めないのです。

 以上の推測が事実に近いならば、日本国とウクライナとの軍事的な協力関係を強化すればするほど、日本国も戦争に巻き込まれる可能性が高まることとなりましょう。この点、今に至って振り返ってみますと、2024年6月13日にウクライナとの間に締結された「日・ウクライナ支援協力アコード極めて極めて危険な一歩であったように思えてきます。同アコードにつては、ロイターなどの海外報道機関は、「日・ウクライナ首脳が会談、10年間の安全保障協定に署名」と報じています。日付は6月13日であり、ロシアと北朝鮮との間で「包括的戦略パートナーシップ条約」が締結される三日前となります。両サイドの動きが連動しているとしますと、第三次世界大戦シナリオの存在は、ますます信憑性を帯びてくるのです(つづく)。

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