万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海問題ー米の対中”戦略的忍耐”も終焉するのか?

2017年03月29日 14時16分42秒 | 国際政治
中国、南沙の工事ほぼ完了=南シナ海全域で軍用機運用か―米研究所
 アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告によると、スプーラトリ諸島における中国による人工島の軍事基地化は最終段階となり、何時でも戦闘機や移動式ミサイルを配備できる状況に至っているそうです。その意味するところは、国際仲裁裁判の判決無視による一方的な現状の変更に他ならず、中国は、”公海の侵略”を含む国際犯罪を白昼堂々と実行しているのです。

 北朝鮮もまた、六か国協議といった宥和的な”話し合い路線”の裏をかくように核・ミサイル開発を継続し、今日、その開発も最終段階に到達していると報じられています。近日中に核実験に及ぶ可能性も取り沙汰されており、朝鮮半島の緊張は高まる一方です。こうした展開に堪忍袋の緒が切れたアメリカのトランプ政権は、”戦略的忍耐”の時期は過ぎたとして、金正恩体制の崩壊をも視野に入れた先制攻撃をも検討しているそうです。政策転換を後押ししたのは、北朝鮮の核保有を許せば、アメリカが核攻撃の対象となるとする危機感です。そして、北朝鮮の核保有はNPT体制の崩壊をも意味しており、今の時点で北朝鮮を阻止できなければ、国際情勢が一気に流動化することは目に見えています。

 上述した北朝鮮に対する”戦略的忍耐”放棄の経緯は、南シナ海をめぐる中国との関係にもそのまま当て嵌まります。仮に、国際仲裁の判決において違法と判断された「九段線」の主張や南シナ海の軍事基地化を見過ごすことがあれば、国際法秩序そのものが崩壊の危機に瀕すると共に、太平洋を含むアメリカの安全が著しく脅かされるからです。南シナ海に配備されると予測されているのは、弾道ミサイル搭載可能な最新鋭の原子力潜水艦であり、配備が完了し、中国軍が太平洋を自由に移動できるようになりますと、アメリカは、最早、陸上のミサイル基地の破壊のみでは、中国の核攻撃を防ぎきれなくなります。太平洋のどこからでも、核攻撃が可能となるのですから。

 こうした中国や北朝鮮の戦略は、平和を人質とした瀬戸際作戦であり、国際社会や他の諸国が対抗措置を採ろうものなら、軍事行動を仄めかして脅し、既成事実を積み重ねています。しかも、自らの違法行為は棚に上げて、全責任を”刺激した”相手国に被せようとしているのです。このような卑怯、かつ、危険な行為がまかり通るようでは、人類の未来に希望を見出すことはできません。アメリカの”戦略的忍耐”の時期は、近い将来、中国に対しても終焉するのではないかと思うのです。

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