万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

“政界再編劇”の怪-自民党は党勢拡大に動かないのか?

2017年10月02日 15時43分14秒 | 日本政治
「政党」のニュース 小池百合子都知事の新党「希望の党」の結成によって、日本国の政界は、政党の枠組の再編に向けた混乱が続いております。この混乱ぶりに、今日の政党というものが、政治的信条や政策方針を共にする人々の集まりではなく、利権の獲得を目指した選挙協力団体である疑いを濃くするのですが、今般の一件でさらに疑惑が増したのは、“政界再編劇”と称されたように、一連の騒動は、最初から特定のシナリオに沿っているのではないか、というものです。

 マスメディアは、意図してか、「希望の党」をめぐる野党側の分裂や解党の動きにのみに国民の関心が集中するように報じています。マスメディアに流された人々は、今般の政界再編を、新党結成を機とした野党間の駆け引きと離合集散のプロセスとして眺めていることでしょう。裏切りあり、騙し合いあり、抜け駆けあり、置き去りあり、復讐あり…、視聴者を惹きつけるドラマ的要素には事欠きません。しかしながら、与党の側に視線を転じますと、不可解な点があるのです。それは、与党側には、全く以ってこの政界再編の波に乗ろうとする気配が感じられないことです。

 常識的に考えれば、政界再編は、野党のみならず、与党にとりましても党勢拡大の絶好のチャンスとなるはずです。特に憲法改正を悲願としてきた安倍首相は、改正案の発議に各議院の総議員数の3分の2の賛成を要するため、一議席でも多く衆議院の議席数を増やしたいはずです。選挙後の結果を見て、新党、あるいは、何れかの既存政党と合わせてこの数に達すればよいと考えているのかもしれませんが、最も確実な方法は、自らの政党の議席数拡大をおいて他はありません。野党各党の中には、極左系は別としても、「希望の党」よりも、むしろ自民党との間に親和性が高い議員も少なくないはずです。それにも拘らず、自民党は、積極的に野党の議員を“リクルート”しようともしていませんし、野党側からも、これまでのところ、自民党への移籍を希望する議員は出現していません。傍観者を決め込んでいるようにも見えるのです。

森友・加計学園問題で支持率を落としたとはいえ、直近の世論調査の数字が正確であれば、自民党に投票すると回答した有権者が最も多く、「希望の党」との比較では、自民党は凡そ後者の2倍の数字を得ています(小選挙区制では極めて有利…)。自らが懸念するほど支持率が落ち込んでいるわけでもありませんので、その静観姿勢は不可思議なのです。

そこで思い出されるのは、2013年3月に自民公明両党から提案された中小政党優先枠の設置案です。この案は、比例代表の150議席の内60議席を中小政党に予め割り当てるとする案でしたが、事前に議会の議席を割り振るという自由選挙の原則に反する手法は、かつて、東欧諸国で採用されていた統制方法に類似しています。今般の政界再編劇には外部にシナリオライターがおり、日本国の与野党を背後から操っていると推測される理由は、野党のみならず、自らの党勢拡大を“自粛”している与党側の不可解な行動にもあるのです。日本の政治は、表向きは、自由で民主的な選挙が実施されているように見えながら、その実、外部の“見えざる手”によって巧妙に操作されているのでしょうか。あるいは、日本の政界が”談合”体質であるが故の内発的な現象なのでしょうか。何れにしましても、与野党何れの政党からも問題提起や具体的な提案はありませんが、真に改革を必要としているのは、日本国の政治システムではないかと思うのです。

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コメント (4)
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