万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

“習近平思想”の実像-思想ではなく“意思の支配”では?

2017年10月18日 15時49分26秒 | 国際政治
【中国共産党大会】習近平総書記「富強の社会主義強国に」 30年の長期目標 南シナ海の人工島造成を正当化 
本日10月18日、中国の北京では、24日までの7日間の日程で5年に一度の中国共産党全国代表大会が開催されています。今年の第19回党大会は、とりわけ、習近平独裁体制が成立するか否かに関心が集まっており、その試金石となるのは個人名を冠する“習近平思想”の行方です。

 報道によりますと、その表現はどうであれ、“習近平思想”が党規約の改正に際して新たに書き込まれるのは確定的なそうです。それでは、習近平思想とは、どのようなものなのでしょうか。

 習近平思想の登場は、中国にあって、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論と並んで、習近平氏個人に対して特別な権威が付与されたことを意味します。だだし、習近平氏個人が政治思想史に残るような新たな思想を編み出したと言うわけではなく、あくまでもマルクス・レーニン主義の枠内でのお話であり、しかも、識者の解説によれば、習氏に対する評価は、先人達の思想と将来における“中華民族の復興”や“中国の夢”と結びつけたところにあるそうです。言い換えますと、思想そのものではなく、過去の思想の実現に向けた実践面での貢献こそが、習氏をして、“習近平思想”の主としての地位を与えているのです。

 そしてこの実践面の強調は、今般の党大会の様子からも窺えます。例えば、習政権第一期の実績として、国際社会から違法行為として厳しい批判を浴びている南シナ海の軍事基地化や一帯一路構想の推進が挙げられたそうです。これらの積極的な対外活動は、過去の共産主義思想とは無関係ですので、むしろ、“中国の夢”が前面に押し出されていると言うことができます。その一方で、将来的な目的としては、中国共産党創立から100周年に当たる2021年までに、国民が余裕のある生活を送ることができる小康社会を、中華人民講和国の建国から100周年に当たる2049年には富強、民主、文明、調和を実現した社会主義を実現するとし、中国が国際社会において主導的な地位に上り詰めるシナリオを描いているのです。これらの内外における長期的目標は極めて抽象的であり、かつ、陳腐ですらありますが、習氏にとって最も重要なことは、その実践者が習氏その人である、ということなのでしょう。

 こうした”実行者”の側面の強調に注目しますと、今後、中国では、 “習近平思想”という名の下で、個人独裁が開始される可能性は相当に高いように思えます。そして、ここで言う“思想”とは、統治や統合の在り方に関する考察から導き出された思想という一般的な意味ではなく、習近平氏個人の“意思”なのではないでしょうか。政治権力を掌握した特定の個人の“意思による支配”、それは、独裁に他ならないと思うのです。

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