万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

教育無償化はマルクスのマニフェスト

2017年10月09日 15時44分27秒 | 国際政治
自民32%、希望13%…衆院比例選の投票先
今般の衆議院選挙では、自民党のみならず、凡そ全ての政党が、少子高齢化対策として教育への公的投資拡大を主張しています。この分野においては、政党という政党が何れも足並みを揃えているのですが、教育無償化が、マルクスが『共産党宣言』にて主張した基本方針の一つであったことは、あまり知られてはいません。

 『共産党宣言』こそ、1848年に出版された共産主義者のバイブルであり、以後、全世界の共産主義者の信奉を集めてきました。この書物には、最も“進歩”した共産主義国において実現すべき一般的な方策が、十か条からなる政策綱領として纏められています。共産主義者にとりましては、マルクス・エンゲルスから授かった新たなる“十戒”なのでしょうが、その第10項目目には、“すべての児童の公共的無償教育…”が掲げられているのです。

 何故、共産主義者が教育の無償化を目指すのか、その表向きの理由は、教育の機会均等の実現と信じられています。財産の多寡にかかわらず、全ての人々に教育を受ける機会が保障されている社会を目指す方向性においては、共産主義者のみならず、多くの人々の賛意を得ることでしょう。ところが、20世紀に出現した社会・共産主義国家の実体を見ますと、全人民の平等化が共産党員のみの特権階級化となり、財産の公有化が共産党のみによる国有財産の私物化となり、計画経済による豊かな国民生活の実現が国民の窮乏生活となり、自由な労働が国民の奴隷化となり、何れもが悉く目指す目的地と実際の到着地は正反対でした。こうしたあべこべ現象が、労働者や兵士を扇動して起こした共産革命が、その実、世界大のネットワークを有する非国家勢力による詐術的陰謀であったとする説の信憑性を高めているのですが、マニフェストに掲げられた教育無償化についても、隠れた目的があったと推測されるのです。

 それでは、教育の無償化においてマルクスは、何を意図したのでしょうか。おそらくそれは、教育権の独占による伝統的な家庭の破壊、並びに、砂状化された国民の直接的、かつ、全人格的な支配ではなかったかと思うのです。社会・共産主義国では、確かに教育の無償化は実現していますが、幼少より親元から引き離され、共産主義を絶対思想とする洗脳教育が施された結果、国民は、イデオロギーの檻に閉じ込められ、国家、否、共産党、あるいは、独裁者に直接忠誠を誓う存在にこそなれ、国民は、自由な空間を失い、政府が定める型通りの生き方に嵌められてしますのです。男女ともに区別なく労働に従事し、家庭はなく、歴史や伝統もなく、子供達は、国家によって家畜の如くに心身ともに調教されると云う…。全体主義国家の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの『1984年』という小説も、マルクスの『共産党宣言』が出版された1848年という年を意識して命名されているのでしょう。

戦後の日本の教育界も、全国津々浦々にまで日教組が組織され、社会・共産主義勢力が最も深く浸透した領域となりました。その一方で、今日の政治状況は、何れの国も、新自由主義という共産主義の亜流、否、それをも背後から操ってきた非国家勢力本体の強い影響下にあるとされています。何れの政党も、表看板にも政策内容にも若干の違いがあり、対立を装いながらも、共産主義のマニフェストが示した方向性と一致しているとなりますと、少子化対策とは名ばかりであり、いよいよもって、日本国の未来は危ういと言わざるを得ないのです。

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コメント (2)
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