万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新自由主義勢力による政党再編戦略とは

2017年10月25日 16時28分33秒 | 国際政治
立憲・枝野氏、早急な野党結集を否定=参院民進は存続へ【17衆院選】
衆議院選挙が終わり、いざ蓋を開けてみますと、日本国の政界は、与党自民党の一強に対して野党側が小党に分裂する結果となりました。一党優位体制という点においては解散前とは変わりはないのですが、今般の野党側における政界再編の混乱は、新自由主義勢力による新たなる二大政党制に向けての“仕掛け”の結果であった可能性も否定はできないように思えます。

 本日のダイヤモンド・オンライでは、橘玲氏の「日々刻々」に「立憲民主党が「左派ポピュリズム」ではなく「愛国リベラル」となれば自民党は消滅する!」とするタイトルの記事が配信されておりました。同記事では、希望の党がネオリベラル右派を形成する一方で、立憲民主党が自民党の政策綱領から“女性が活躍できる社会”、“一億総活躍”、“人造り革命”といった政策を‘左からコピー’し、愛国リベラル政党に変身すれば、やがて自民党は消滅し、日本国の政治は、希望の党と立憲民主党との二大政党に移行するのではないか、と予測しております。実際に、立憲民主党の枝野代表は、このシナリオ通りに行動しているように見えますので(ただし、他の議員や党員が枝野代表に追従するかどうかは不明…)、既に、その方向に向けての路線が敷かれているとも推測されます。

 今般の野党再編の騒動は、小池東京都知事の個人的な野望によって引き起こされたとする見解が主流ですが、政界全体の流れを見ますと、その背後には、大局的な再編構想があったのではないでしょうか。その構想とは、まずは保守とリベラルの境界線を曖昧にし、その上で、国民の大半を占める中間層を二つの新たなリベラル政党に吸収する形で、二大政党制へと移行させようというものなのかもしれません(最初の構想では、自民と希望の党による二大政党化であったのかもしれない…)。上述したように、枝野代表は、自らを保守主義者と称し、‘愛国’を強調しております。もっとも、保守系の自民党からコピーした諸政策は、自民党がリベラル化した部分であり、政策の共通性を以って保守化=愛国化したとは言えないのですが、少なくとも、本来の左派色を懸命に隠し、中道路線を打ち出しているのです。

 そこで考えられるのは、フランス政界とも共通しているのですが、新党による中道路線は、マスメディアは“ポピュリズム”として批判的に報じているものの、“行き過ぎたグローバリズム”に刺激されて各国で高まりつつある国民の保守的意識を抑え込み、合わせて中間層を新自由主義勢力に引き込むための、新たな戦略ではないか、ということです。従来の保守対革新の左右対立構図における二大政党制では、新自由主義の立ち位置は不安定であり、居場所を失う可能性さえありました。何故ならば、政治や社会面では国民国家体系の消滅を望む左派に近い立場にありながら(もとより国家への帰属意識は希薄なので、防衛や安全保障については経済利益優先…)、経済面においては、弱肉強食型の自由主義を標榜する点において右派に与しているからです。このまま従来の対立構図が続けば、保守派が左派を圧倒する展開も予測されますし、しかも、これまで共闘関係にあった経済分野においても、保守派が新自由主義とは一線を画する可能性もあります。となりますと、新自由主義勢力が、自らに有利となる政策を各国において実施させるためには、新たな政党政治の枠組みの構築を計画したとしてもおかしくはないのです。

 今日の一般的な国家は、日本国を含めて国民に選択権がある民主主義・国民主権国家です。民主主義国家において外部勢力が政治に介入しようとすれば、特定の政党を自らのコントロール下に置くか、あるいは、凡そ全ての政党を操れる体制を構築する必要があります。仮に、新自由主義勢力が現状に危機感を抱いているとしますと、中間層の取り込みを目指す中道新党の相次ぐ結党は、新たなる二大政党制に向けた下地作りとしても理解されるのです。国民がどちらの政党を選んでも、新自由主義政策が実行される結果となるように…。果たして、この憶測は正しいのか、今後の各党の動きに注目してゆく必要がありそうです。

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