万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウクライナ危機は第三次世界大戦を招くのか?

2022年02月22日 18時12分50秒 | 国際政治

 ウクライナ東部をめぐっては、ロシアのプーチン大統領が、親ロシア派の支配下にある地域に、「ドネツク人民共和国」並びに「ルガンスク人民共和国」と称する二つの独立独立を承認したことから、事態は新たな局面を迎えつつあります。ロシア軍の侵攻を既定路線とする、あるいは、軍派遣を既に命令したとする報道も相次いでおり、ウクライナとの戦争が第三次世界大戦を招くとする憶測も飛び交っております。

 

 過去の二度の世界大戦は何れもドイツが’主犯格’と見なされがちですが、その実、ロシアも深くかかわっております。第一次世界大戦にあってはセルビアのバックはロシアでしたし、ポーランド侵攻を機とした第二次世界大戦に至っては、ソ連邦(ロシア)こそドイツの共犯者に他なりません。それでは、今般のウクライナ危機も、第三次世界大戦の引き金となるのでしょうか。

 

 ウクライナ情勢は、同国のNATO加盟問題と密接に結びついており、ロシアによるウクライナへの干渉は、同国の親米欧政権によるNATO加盟に対する牽制とする見方もあったほどです。仮に、今日、ウクライナがNATOの一員であったとしますと、ウクライナにおけるロシア軍の侵攻は、過去の二度の大戦と同様に、即、第三次世界大戦を引き起こすこととなったことでしょう。否、今日の多国間の軍事同盟にあっては、より明確に条約において集団的自衛権が明記されていますので、全NATO加盟国は、ロシア軍によるウクライナに対する侵略を自国への攻撃と見なしたはずです。

 

 しかしながら、現状にあってウクライナのNATO加盟は日の目を見ておらず、たとえロシア軍がウクライナ領を侵犯したとしても、多国間の軍事同盟条約を介して陣営間の戦争へと戦火が広がる可能性はそれ程には高くはないのかもしれません。NATOのメンバーであるアメリカ、並びに、ヨーロッパ諸国の政府、並びに、世論が、ウクライナのNATO加盟に対して必ずしも積極的ではなかった理由も、ロシアとの間に軍事的なリスクを抱えている同国の加盟に伴う‘世界大戦リスク’を敏感に感じ取っていたからなのでしょう。

 

 連鎖作用のある軍事同盟条約の側面からしますと、三度目の世界大戦のリスクは低いと見なさざるを得ないのですが、仮に、過去の世界大戦との間に類似点があるとしますと、それは、ヒトラーによるズデーデン地方の割譲要求であるのかもしれません。ズデーテン地方は、チェコスロヴァキア領の一部でありながら、ドイツ系住民が居住していた地域であったからです。この点、ウクライナ東部の2州にはロシア系住民が多数居住しており、ロシアに軍事介入、並びに、分離独立の口実を与えています。そして、ズデーテンの割譲問題が歴史にあって悪名高きミュンヘンの宥和を招いた点を考慮しますと、今般のウクライナ問題は、第三次世界大戦の前哨戦とする見方も成り立つのかもしれません。

 

 もっとも、今日のロシアが、第三次世界大戦をも覚悟しつつ、今後、第二次世界大戦時のポーランド侵攻と同様にロシア系住民が居住していない地域や国に対しても侵略を企てる意志や能力を備えているかどうかは、疑わしい限りです。この点からしますと、むしろ、今般のウクライナ危機にあってはジョージアのケースに近い展開も予測されましょう。同国では、ロシアによって1992年にアブハジア紛争が、2008年には南オセチア紛争が仕掛けられており、ロシアは、両地域を「アブハジア共和国」、並びに、「南オセチア共和国」として国家承認しています。つまり、ロシアの真の狙いは、ウクライナに対しても東部に親ロ派の独立国家群を建設し、ロシアの勢力範囲に組み込む、あるいは、‘ソ連邦’を復興することにあるのかもしれません(背後の超国家勢力からすれば、エネルギー資源や各国のエネルギー政策、あるいは、全世界のコントロール?)。この見方からしますと、ロシアが演出する‘第三次世界大戦の恐怖’は、瀬戸際作戦を展開する際の‘脅し文句’ということになりましょう。

 

 ウクライナの歴史からしますと、同地域で全世界を揺さぶる紛争が発生することも頷けるのですが、この問題、各国首脳による会談の設置といった方法では同様の紛争の繰り返しとなり、抜本的な解決は困難となりましょう。軍事大国の介入に口実を与える民族混住地域において発生する紛争については、第三次世界大戦を回避するという意味においても(ミュンヘンの宥和をも避ける…)、話し合い解決とは異なる別のアプローチが必要なように思えるのです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする