万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

陸上自衛隊ヘリコプター墜落は何を意味するのか?

2023年04月10日 10時45分38秒 | 国際政治
 先日4月6日、陸上自衛隊のヘリコプターが、宮古島分屯基地を離陸してから僅か10分後の午後3時56分頃に、突然に消息を絶つという事件が発生しました。同機は、救難を含む様々な任務に対応し得る多用途ヘリコプター「UH60JA」であり、高い性能を誇っていただけに衝撃が走ることとなったのですが、本事故につきましては、航空事故とする見方が有力なようです。

 陸上自衛隊も、発見された機体の一部等の状況から大凡航空事故と推定しており、一先ずは‘事件性’はないと見なしています。飛行計画を見ますと、宮古島の周辺を1時間20分ほどで偵察飛行するという予定であり、消息を絶った場所は、伊良部島北方3キロの地点なそうです。つまり、事故の現場は日本国の領海内であり、しかも、当日の天候もきわめて良好であったというのですから、何らかの原因で墜落した可能性が高いのです。このため、事故原因としては、通常の航空事故と同様に(1)人為的ミス、(2)機体の不具合、(3)鳥などの衝突の三者が指摘されています。

 しかしながら、その一方で、同事故には、不審な点がないわけではありません。その理由は、同機には、宮古島分屯基地司令と共に、陸上自衛隊第8師団のトップとして今年の3月末に赴任したばかりの坂本雄一師団長が同乗していたからです。また、墜落時の状況からしましても、エンジントラブルや緊急事態が発生した場合に備えた安全着水・脱出システムも働いた形跡がなく、下地島周辺で発見された救命ボートも折り畳まれたままであったそうです。これらの状況は、ヘリコプターが一瞬にして墜落したことを示唆しています。しかも、その前日には、宮古島近海を人民解放軍の空母、「山東」が通過しているのです(2013年4月13日修正)。

 また、日本国を取り巻く国際的な外部状況を見ますと、独裁体制を固めた習近国家主席は、台湾を武力併合する姿勢を見せています。その一方で、台湾の前総統である馬英九氏が中国を訪問した直後に蔡英文現総統がアメリカを訪問し、米下院のマッカーシー議長等と会談の場を設けています(同訪米への対抗措置として、中国は、台湾周辺海域での軍事演習を実施・・・)。さらには、尖閣諸島周辺海域では、中国の人民解放軍の動きも活発化しており、4月2日には、中国海警局の警備船が日本国の80時間を越えて領海に侵入し、日本国政府による国有化以来、最長時間を更新したのです。

 台湾並びに南西諸島周辺海域の波が高まる中での事故であったため、政府の見解や大手メディアの報道をよそに、ネット上などでは、事故ではなく事件ではないか、とする憶測が飛び交かったのも、それ程には不思議なことではありません。上述した事故原因では、外部からの攻撃は省かれていますが、(2)機体の不備にしても、自衛隊の基地や組織内部に工作員が送り込まれているとすれば、墜落するように意図的に整備を怠る、あるいは、密かに機体に工作を施すといったこともあり得ないことではありません。ITが発展した今日では、サイバー攻撃やコントローラーの‘乗っ取り’により遠隔操作によってヘリコプター自身を墜落させることも考えられます。また、(3)の鳥などの衝突につきましても、自然界の鳥類はなく、外部勢力が放った小型の軍用ドローンであった可能性もありましょう。米中対立が先鋭化する現状にあっては、100%事故ではない、とは言い切れない状況にあるのです。

 それでは、事実解明を徹底した結果、自衛隊ヘリコプターの墜落が事故ではなく、事件であったとしますと、日本国は、どのように対応すべきなのでしょうか。この問題を考えるに際して、凡そ二つの可能性があるように思えます。一つは、中国あるいはロシアによる攻撃である場合であり、もう一つはそれ以外の外部者による工作である場合です。前者は、未来の台湾有事並びに現在のウクライナ紛争を睨んだ暗殺行為、あるいは、牽制的な威嚇となり、後者であれば、グローバルな工作部隊を有する世界権力による第三次世界大戦誘発に向けた工作となりましょう。もっとも、表面的には前者に見せかけながら、実際には、後者が中ロを使って実行する場合もありますし、あるいは、米軍やCIAといったアメリカの機関が駒として使われている可能性もありましょう。

 陸上自衛隊ヘリコプターの墜落が安全保障上の重大事件である場合、日本国政府の最優先の課題として据えるべきは、第三次世界大戦の阻止であると言うことです。何れにしましても、開戦に向けた挑発行為、あるいは、誘導工作である可能性が極めて高いからです。ウクライナ紛争でも、事件発生から1年半が経過した今日にあっても、犯行を行なった組織を特定できていないノルド・ストリーム事件も発生しているからです(つづく)。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする