世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。
南シナ海「深刻な懸念」=ASEANが中国批判―外相会合
国家レベルと同様に、国際社会における法の支配の基本構図とは、共通のルールの下における全ての諸国の権利保障にあります。この構図では、全ての諸国は法の前に平等であり、国際法を順守する義務を等しく負います。
全ての人や国の上に共通ルールを設けることにおいて三次元思考-立体思考-を要するのですが、中国など一部の諸国では、この構図を全く理解しようとはしません。何としても二国間対話に持ち込むことで、三次元の問題を二次元に引き下ろそうとするのです。この三次元思考の欠如の主要要因は、共産主義にあると想定されますが、その一つがプロレタリアート独裁、即ち、共産党一党独裁の容認です。階級闘争史観に基づく歴史の法則的展開によって最後の勝者となった共産党より上位のものは一切否定するわけですから、二次元思考-平面思考-に辿りつかざるを得ないのです。そして、想定され得るもう一つの要因は、共産主義による”神の否定”です。法の支配の基本構図が、法の前の平等とセットになることは上述しましたが、この構図は、神の前の平等に類似しています。超越的な存在である神が全ての人々を守護する構図は、ルールが全ての人々や国の権利を護る構図と重なるのです。もっとも、人間は、神の如く全知全能ではありませんので、完璧に公平で正義に適うルールを造るのは難しいのですが、それでも、全ての人や国に適用される共通ルールをつくろうと努力するわけです。
共産主義は、”宗教は麻薬”と称して平然と切り捨てましたが、同時にそれは三次元思考を捨て去り、二次元思考に自らを閉じ込めることにもなりました。そして、二次元思考が動物と変わらないとしますと、やはり、共産主義は、人類の精神性にはそぐわないのではないかと思うのです。
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英国がEU離脱なら「世界恐慌」の引き金に? 勢い増す「離脱派」、日本企業にとっても脅威
EUからの離脱を問う国民投票を今月23日に控え、イギリスでは離脱派の勢いが増しており、各社による世論調査の結果も、軒並み離脱派が残留派を上回っております。イギリスのEU離脱は、いよいよ現実味を帯びてきました。
イギリス国内の残留派が焦りを募らせる一方で、EU内でも、イギリスの離脱派はEUの弱体化を意味するため、懸念が広がっております。こうした中、一つだけイギリスに残留を思い止まらせる方法があるとしますと、それは、EUによる大幅譲歩なのではないかと思うのです。事の発端は、今年2月のキャメロン首相とEUとの最終交渉にあり、イギリス側が折れたため、EUに移民政策等に関する権限を認める形で妥協案が成立してしまいました。言い換えますと、EUへの残留は、事実上、国境管理や難民・移民等に関する主権的な権限のEUへの委譲を意味してしまうのです。離脱派が優勢な理由は、近年の急激な移民増加と相まって、英国の国家主権へのEU側によるに浸食への抵抗感にあり、一般のイギリス国民をして国家消滅の危機感を抱かせているのです。このまま投票日を迎えれば、イギリス国民は離脱を選択することでしょう。
となりますと、唯一、23日の国民投票を中止(過去にも状況の変化により国民投票中止の前例あり…)、あるいは、離脱の決定を防ぐチャンスがあるとすれば、それは、EU側がイギリスに対して、国境管理や難民・移民政策に関する主権的な権限の全面的な返還を申し出ることです。あらゆる犠牲を払ってでも離脱を決意したイギリス人の心情を、EU側も、汲むべきではないかと思うのです。
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フロリダで米史上最悪の無差別乱射 根深い銃問題とヘイトクライムの懸念
昨日、アメリカのフロリダ州オーランドにおいて、忌まわしい銃乱射事件が発生しました。銃撃による死亡者は50名にも上り、犠牲者の数からしますと、アメリカ史上、最大の銃乱射事件ともなりました。
事件の現場が性的少数者の人々が集まるナイトクラブであったことから、犠牲者の大半も、性的少数者であったものと推測されます。この情報から、マイノリティーに対するヘイトクライムとして批判されておりますが、その一方で、特殊部隊に射殺されたマティーン容疑者もまた、マイノリティーであるイスラム教徒であったと報じられております。事件発生後、ISもすかさず犯行声明を公表しており、イスラム過激派のメンバーであった可能性は濃厚です。つまり、犯人もまたイスラム教徒というマイノリティーであるため、事件後の”ヘイト批判”は、どちらに向いているのか曖昧な様相を呈しています。批判の対象が、性的少数者に対するイスラム過激派のヘイトに向けられているのか、それとも、事件後の影響として、今後、強まるであろうイスラム教徒に対する一般の人々のヘイトに向けられているのか、判然としないのです。
この事件、あたかも混沌とする現代社会の縮図のようです。何故ならば、イスラム過激派、テロ、移民問題、性的少数者問題、銃規制、ヘイトクライム…などなど、現代社会が抱えるありとあらゆる不安定要因が、この事件には内包されているからです。とは言うものの、この事件で一つだけはっきりした点があるとすれば、それは、ヘイトされる側であっても、ヘイトクライムを犯し得るというものです(否、自身のヘイトクライムが自らのヘイトに跳ね返っている側面も…)。それ程に、今日の人間社会は複雑なのであり、ヘイトされる側=保護されるべき弱者とする構図は、今や、説得力を失っているのです。フロリダ銃乱射事件は、否が応にも、現代という時代の現実を人々に突き付けているように思えるのです。
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パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから流出した『パナマ文書』は、世界各国で様々な波紋を広げ、アイスランドでは早々首相が辞任する事態に至りました。その一方で、日本国のマスメディアは、腰が引けた報道が多く、国民の多くは釈然としない感情を抱いております。
ネット上に公開された『パナマ文書』には、富裕層の個人名のみならず、大企業や宗教法人も名を連ね、タックスヘイブンの利用は明らかです。日本国からタックスヘイブンへの流出した金額は、ケイマン諸島だけで50兆円を超えると推計されており、全世界のタックスヘイブンを含めれば100兆円を超えるかもしれません。安倍政権誕生以来、日銀の”異次元緩和”により超円高が収まり、日本企業は増益を記録しています。昨今は、円高に振れてはいますが、超円高是正による日本企業の競争力回復は、アベノミクスの最も成功した一面とも言えます。ところが、財務相の統計によりますと、法人税収入は、2015年に法人税率を29%に引き下げたこともあってか、それ程には伸びておりません。この法人税収の低い伸び率は、おそらく、富裕層、企業、並びに、宗教法人等による租税回避行動と関係しているのでしょう。そして、こうした企業の租税回避行動は、超円高が是正されながら、何故、日銀の脱デフレ政策が失敗したのかを説明しているように思えます。たとえ企業等が収益を挙げたとしても、日本国内に資金が留まらず、常に海外に流出している状態では、インフレに転じるはずもありません。
もっとも、莫大な資金がタックスヘイブンから日本国に還流することで、特定市場でのバブルや過度なインフレが発生しても問題ではありますが、内部留保や余剰資金を賃上げや国内投資に向けたならば(現状では外国企業のM&A資金とも…)、個人消費の伸びによる内需拡大によるGDPの押し上げ効果も期待できたはずです。今からでも遅くはありませんので、デフレ脱却、歳入増、経済成長、国民所得の上昇などの側面から、法規制の強化などを通して、タックスヘイブンに逃避している資金の国内還流を促進すべきと思うのです。
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英国以外のEU離脱、可能性排除すべきでない=ショイブレ独財務相
EU離脱を問う国民投票を23日に控え、イギリスでは、離脱派と反離脱派との間で激しい舌戦が続いているようです。こうした中、直近の世論調査では、離脱派が10ポイントもリードしているとの報道もあります。
接戦が続いていたものの反離脱派が優勢に推移していただけに、、離脱派の10ポイント・リードは驚きです。イギリス世論は離脱に向けて大きく傾いたことになりますが、一体、何を転機として形勢が逆転したのではないでしょうか。イギリス人の心境の変化には、どうやら首都ロンドンの動向が関係しているように思えます。先日、ロンドンでは、史上初のイスラム教徒の市長が誕生しています。カーン市長は、融和を訴えていますが、ロンドンは首都なわけですから、地方に居住する一般の国民が、移民パワーに脅威を感じたとしてもおかしくはありません(カーン市長は離脱反対派…)。加えて、イギリスの有力経済紙に掲載されたロンドン独立論も、一般のイギリス人にしてみれば、反離脱派からの脅迫と映ったかもしれません。ロンドン独立論とは、時期尚早と断りながらも、仮にイギリスがEUから離脱した場合、将来的には、ロンドンも独立する可能性があるというものです。しかも、移民が多数となった現在のロンドンでは、高度な技能を有する移民を制限するよりも、一般のイギリス人が地方から移入することに制限を加えるであろう、とも言い放っているのです。この言い様では、一般のイギリス人の多くが”けんかを売られた”と感じるはずです。離脱反対派を増やすために書かれたのでしょうが、この論説は、明らかに逆効果です。
離脱派のリードは、国民の懸念に対する反離脱派の無神経、かつ、無理解な態度にも一因がありそうです。23日の国民投票の行方については、いよいよ視界が不透明となってきたように思えるのです。
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警戒監視に万全=NSCで安倍首相ら確認
昨日9日の夜、中国軍艦艇が尖閣諸島の接続水域に入域した件について、本日の新聞記事では、様々な憶測が紹介されています。偶発的事件とする”火消し論”も散見されますが、果たして、中国首脳部はこの事件について、全く関与していなかったのでしょうか。
これらの説を拾ってみると、第一の説は、現場による暴走説です。近年、南シナ海問題が関心を集めていることから、焦りを感じていた東シナ海を管轄する東海艦隊が、上層部へのアピールのために独断で実施したというものです。しかしながら、習政権が、人民解放軍の指揮命令系統の一元化に目途を付けた矢先に起きた事件ですので、トップの指示や許可なくして尖閣接続水域の侵入が可能であったとは思えません。
第二の説は、同時期に尖閣接続水域を航行したロシア海軍艦艇3隻を追尾・監視するための行動であった、とする偶発説です。しかしながら、この説は、中国側が、尖閣諸島を中国の領土とする領海法を初めて尖閣諸島周辺水域に施行したことを意味しますので、全く”火消し”にはなりません。過去にも、ロシア艦隊が同水域を航行した事例があるそうですが、この時には、中国側が、軍艦を派遣することはありませんでした(軍部に領海法施行の命令が下されたのか?)。在日中国大使は、尖閣諸島の領有権を以って同行動を正当化したそうですが、いよいよ中国が尖閣諸島の領有権を奪うべく、具体的な行動を採り始めたこととなり、事態はむしろ抜き差しならない段階に至っています。
以上のように考えますと、中国艦隊による尖閣接続水域入域事件は偶発的事件としては片づけられず、習政権による侵略的領土拡張主義が表面化したと見る方が妥当なように思えます。第二の説で指摘した中国艦隊とロシア艦隊との行動は連携しており、一種の”茶番”との見方もあります。そして、中国が尖閣諸島を”中国領”と見なしている限り、人民解放軍による尖閣諸島上陸も時間の問題となりかねません。日本国政府は、日米同盟、並びに、防衛力強化のみならず、経済制裁をも含むあらゆる手段を用いて、中国の暴挙を阻止すべきと思うのです。
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クリントン・トランプ両氏、弱点共通 「嫌い」5割超す
民主的制度として普通選挙の最大の利点とは、国民によって、政治的能力に長けた優秀な人物を政治家に選出できるところにあります。世襲や権力闘争では、必ずしも国民の意向や利益に適った人物が政治家になるわけではありませんので、民主的選挙制度は大半の諸国で導入され、政権の正当性を支えています。ところが、最近、民主的制度における欠陥が目立つようになりました。今般のアメリカの大統領選挙を観察しておりますと、民主的選挙制度の問題点として指摘されきた諸点が、あらゆる側面で顕在化しているように思えます。
第1に、有権者の選択の基準は、必ずしも候補者の”政治的優秀さ”ではなく、現状の不満解消への期待が投票基準となる。不満解消という集票の原動力を維持するために、しばしば過激な政策や非現実的な政策も公約として主張される。
第2に、政党内部において、党内力学が働き、国民が望むような適切な候補者を擁立できない。
第3に、多額の選挙資金を要するため、元からの富裕者か資金集めの能力に秀でた人物しか候補者になれない。選挙資金集めは、しばしば、隠れた外国からの支援を意味してしまう。
第4に、知名度が重視され、マスメディアにおける登場回数の頻度が候補者選定の決定要因となる。何時の間にか、マスコミが、”キング・メーカー”となりかねない。
第5に、特に二大政党制では、両政党とも適切な候補者を擁立できない場合、どちらを選んでも、最悪の事態を招きかねない。いわば、国民は、チェック・メートされた状態となり、”悪いうちでより悪くない方”を選ぶしかなくなる。
先に行われたロンドン市長選挙では、史上初めて、労働党の候補者であったイスラム教徒の市長が誕生しましたが、相手の保守党の候補者は、ユダヤ系富裕層に属するゴールドスミス氏であり、この選挙でも、全てではないにせよ、上記の諸問題が表面化しています。こうした問題は、アメリカ大統領選挙のみならず、全ての民主主義国家に共通する問題となりつつあります。もちろん、日本国も例外ではありません。民主的選挙制度の利点を生かし、より良き政治を実現すべく、今後、各国とも、民主的選挙制度に内在する問題の是正に向けた取り組みを開始する必要があるのではないかと思うのです。
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中国、フィリピンに仲裁裁判停止要求 南シナ海領有巡り
フィリピンが仲裁裁判所に提訴した南シナ海問題は、同裁判所による裁定の日が近づくにつれ、中国の行動もエスカレートしてきているようです。本日も、フィリピンに対して、遂に表立って仲裁裁判の停止を要求したとも報じられています。
国際法に対しては、中国は、しばしば”国際法とは、西欧が自らに都合の良いルールを他の地域に押し付けてきたものに過ぎず、普遍性はない(従う必要はない…)”とする立場を示してきました。この中国の言い分は、国際法の本質を言い当てているのでしょうか。近代国際法とは、ヨーロッパを発祥の地として全世界に広がったことは確かであり、西欧起源説については、間違っているわけではありません。
しかしながら、何故、国際法が発展したか、というその理由を探りますと、そこには、共通のルールの下で自らの行動を律することで、力のみが支配する野蛮な世界からの脱出を目指す人類の努力が見出されます。共通ルールが無ければ、数限りない紛争が発生し、戦場では非人道的な残虐な行為もまかり通ります。そこで、できる限り争い事を低減させ、人道に反する行為をなくすために、慣習国際法を含め、国際ルール造りが始まるのです。例えば、ロシア帝国の提案により1866年に署名された「サンクト・ペテルブルク宣言」は、非人道的な兵器の制限を目的としていますが、その前文には、「文明の進歩は、戦争の惨禍をできる限り軽減する効果をもたらさなければならないこと。…」と記されています。近現代とは、二度の世界大戦をはじめ、全世界の多くの人々が、絶え間ない戦争に苦しめられた時代であったからこそ、誰もが国際法の必要性を痛切に感じた時代でもあったのです。
中国は、国際法が誕生した理由、並びに、何故、法の前の平等の原則の下で全ての諸国がルールを順守すべきなのか、考えてみるべきです。国際法は、決して西欧諸国が自らが有利となるために制定したものではなく、互いに相争った西欧諸国の間で誕生した事実にこそ注目すべきなのです。国際法が人類の文明の証であるとしますと、その否定は、野蛮を意味するのですから。
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【舛添氏公私混同疑惑】不適切な支出440万円 「違法性ない」と続投表明
昨日、舛添知事から任命された2人の弁護士が、記者会見の形で知事の公私混同疑惑に関する調査結果を発表しました。しかしながら、報告書が明記した”違法性はない”とする結果にも拘わらず、知事に対する世論の批判は高まる一方です。
それもそのはず、第三者委員会を名乗りながら、その実、元検察官とはいえ、知事が委員を任命しているのですから、当委員会が中立・公平な立場のはずもありません。検察としたれっきとした国家機関がありながら、知事が設置した私的機関が疑惑に関する違法性の判断をしているのです。権力分立の原則からしますと、舛添知事の第三者委員会は行政部内部での身内での調査となり、チェック・アンド・バランスが有効に働いていません。因みに、猪瀬知事の選挙資金疑惑では、都議会に100条委員会が設けられておりますので、一先ずは、立法部が外部チェックを行っています。
そして、舛添知事が考案した第三者委員会設置の手法は、目下、習主席が旗振り役で汚職追放に取り組んでいる中国の仕組みに類似しています。報道によりますと、汚職の摘発を担っている組織は、共産党中央規律委員会であり、検察といった国家組織ではないらしいのです。中央規律委員会は共産党の指揮下にありますので、当然に、中立・公平性を期待することができません。このため、『パナマ文書』で名を連ねた習主席の親族は、何らのお咎めなしなのです。つまり、舛添知事は、共産党一党独裁の中国と同様に、日本国の統治機構に私的な別機関を設けることで、チェック機能の効かない集権的仕組みを勝手に造り出しているのです。一旦、このような前例が許されますと、今後とも、腐敗政治家達は、同様の方法で、立法部のみならず、司法部の追求からも逃れることでしょう。
昨日の調査報告では、知事の支出リストの中に、中国書道家の作品やシルク製の中国服といった中国関連のアイテムが多数登場しておりますが、舛添知事は、自身に対する疑惑をかわす方法をも中国に学んだのかもしれません。そして、こうした舛添氏の行為には、日本国にとりましては、単なる一政治家による汚職・腐敗事件を越えた、統治機構の破壊行為にもなりかねないリスクが潜んでいると思うのです。
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習主席「敏感な問題管理を」=米中戦略・経済対話が開幕―北京
南シナ海問題を巡っては、先にシンガポールで開かれていたアジア安保会議でも、中国は、改めて仲裁裁判の裁定に従わない意向を強調しました。”無法国家宣言”に等しいのですが、この問題の根底には、中国の国際社会に対する認識が、二次元、あるいは、平面思考である点を挙げることができます。
本日から北京で開幕した米中戦略・経済対話でも、習主席は、南シナ海を含むあらゆる問題の解決の舞台を米中二国間関係に限定するよう、アメリカに働きかけています。中国の戦略の特徴は、問題のレベルを二国間関係に持ち込むことにあります。しかしながら、この作戦は不発気味であり、中国は、自国の話し合い解決の提案に、何故、同調する国が少ないのか疑問に感じているかもしれません。そして、その理由が、自国の認識と他の諸国のそれとの間の著しい認識の違いにあることに、中国は、本当に、気が付いていないか、あるいは、気付いていない”ふり”をしてるかもしれないのです。
南シナ海問題の本質は、中国による国際法違反の行為にあります。法の支配の構造とは、全ての構成員が上位に位置する公平・中立なルールに従う形態ですので、基本的には、三次元の立体構造です。ところが、中国は、この三次元の構造を理解せず、もしくは、理解できず、ひたすらに自らの思考パターンである二次元レベルに問題を引き下ろすことで対応しようとしているのです。三次元と二次元の間には越えられない壁があり、三次元問題は、二次元問題の解法で解けるはずもありません。
三次元思考を拒絶する中国の二次元思考は、伝統的な中華思想にも起源がありますが、中国共産党政権の思考回路に最も影響を与えているのは、やはり、プロレタリアート独裁を絶対視する共産主義であるのかもしれません。何故ならば、共産主義思想は、権力を独占するプロレタリアートが、法であれ、何であれ、如何なる拘束をも受けない支配体制を目指しているからです。
中国に対する国際社会からの圧力は強まる一方であり、この圧力は、中国に対して二次元から三次元への思考の大転換を促しています。そしてこの大転換は、共産主義の放棄をも意味するかもしれません。遂に、今日、次元を超えられない共産主義は、最終的な終焉の時を迎えつつあるのでしょうか。
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近年、政府は、経済特区造りに熱心に取り組んでおり、その中には、外国人に対する起業優遇措置があります。日本国の経済成長を外国人の起業に期待してのことらしいのですが、メリット面ばかりではなさそうなのです。
本日の日経新聞の記事によりますと、2012年のGEMによる調査では、日本国の起業総数に占める移民起業家の割合は凡そ9.1%です。華僑系の多い東南アジアと比較すると低い率ですが、日本国の人口に占める移民系の割合が2%弱程ですので、起業家の約1割が移民系という数字は、驚くほど高い数値です。
多民族国家であるアメリカと比較しても、この率の高さは歴然としています。人口総数の13%程度が移民であるアメリカでは、移民系起業家の率は11.9%であり、両者の率は、粗比例しています。日本国の場合、何故か、移民系起業家の率が突出しているのです。この状態で、政府が特区を設けますと、さらに移民系起業家の比率が上昇することでしょう。政府は、特区において在留資格を緩和するらしく、来日する移民の人々には、経済的理由の他に、一般の日本人にはない、強い動機が働くことになるからです。また、東南アジアと同様に、華僑系の移民による起業が多数を占めるようになりますと、日本国内の経済構造や雇用にも影響を与えかねません。東南アジアでは、華僑系による経済支配が現地住民の反感を買っているとの指摘もあり、日本国もまた、中華経済圏に飲み込まれる怖れもあります。また、目下の不況から就職難にある中国では、山東省済南市が、年間600人を日本へ送り出す計画を公表しており、政策として日本国に就職先を求める地方自治体も出現しております。この動きに呼応するように、日本国内の中国系企業が、率先して低賃金の中国人労働者を大量に雇用する事態も想定されます。
こうしたリスクを考慮しますと、日本国政府は、既に高レベルにある外国人の起業よりも、自国民の起業率が極めて低い現状こそ問題視すべきです。最近の日本国政府の経済政策は、あまりにも外国人を偏重しており、自国民に起業を促す政策こそ実施すべきと思うのです。
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今日、ディープラーニングの実現によって、AIは飛躍的な発展を遂げています。将来、”AI失業”の深刻化も杞憂とは言えなくなり、実用化の動きも加速しています。
ところで、AIの強みとは、人間の暗記能力を超えるデータ記憶能力とその素早い処理能力にありそうです。このため、知識集積型の職業が最も影響を受けかねないのですが、”その判断が常に人間よりも賢いのか?”と申しますと、この点については疑問符が付きそうです。何故ならば、AIの判断は、入力データや情報に大きく依存しているからです。先日、米マイクロソフト社のAI「Tay」が、”ヒトラーは正しい”と発言したことから、物議が醸し出されましたが、その理由は、一般の実験参加者によって”ヒトラーは正しい”とする情報が「Tay」に入力されたからなそうです。先日も、日立製作所が、経営判断を援けるAIを開発中とする報道がありました。新聞上の情報が入力されたこの「経営コンサルタントAI」に、試に、再生エネルギーの導入の是非を問うたところ、導入を支持する判断を示したそうです。しかしながら、このAIの判断は、「AIが、再生エネルギーの導入の有無を判断した結果」というよりは、「再生エネルギーに関する新聞社の編纂方針をAIが読み取った結果」、といった方が適切かもしれません。
より総合的な判断をAIに求めるならば、新聞報道上のデータの他に、エネルギー効率、資源別エネルギー価格、商品価格への影響…といった、関連する全てのデータや情報をインプットする必要があります。しかも、あくまでも、経営者判断としてのAIですので、消費者負担の増加や経済全体への効果は無視されるかもしれません…。何れにしましても、AIの判断が入力データや情報で左右されるのならば、入力する側の人間が、データや情報の取捨選択を予め行ってしまえば、AIは、それを忠実に従って判断するだけの存在になります。仮に、重大なマイナス情報を入力しなければ、AIもまた、この情報を抜いた楽観的な判断、つまり、誤った判断しか示さないかもしれないのです。
”AIは、中立公平な判断ができるのか?”、という問いは、今後のAIの普及の行方をも左右する重要な問題です。ディープラーニングの手法では、AIは、作成したプログラマーでも理解できない自律的な判断を行うそうですが、囲碁等の平面上に点化された空間把握に関しては意図的に空白が作れませんので、AIは全てを”手”として把握できますが、人間社会の出来事では、人間が、意図的に情報の”空白”を作ることができます。このため、市場での普及化の段階において、入力情報に偏りのあるAIの判断には誤りが頻発してしまうことが予測されるため、AI商品を消費者に売り込むためのAI開発企業側の最大の宣伝文句は、”全ての情報を漏れなく搭載!”となるのでしょうか。
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アルメニア人「虐殺」決議=トルコ反発、大使召還―独議会
ドイツ連邦議会は、昨日、1915年頃に発生したとされるオスマントルコ帝国によるアルメニア人虐殺事件について、この事件を”ジェノサイド”と認定する決議を採択したそうです。トルコとの関係悪化も指摘されておりますが、この決議、問題含みなのではないかと思うのです。
アルメニア人虐殺事件について、トルコ側は、この虐殺を歴史的事実としては認めておらず、ヨーロッパ諸国との間に”歴史認識”の違いがあります。この点は、日本国と中国との間の”南京虐殺事件”、並びに、韓国との間の”慰安婦事件”の構図と類似しています。こうした”歴史認識”については、双方の主張の隔たりは埋めがたく、議論が平行線となりがちですが、唯一、”歴史認識”紛争を解決する方法があるとしますと、それは、裁判と同様に証拠主義に徹することです。つまり、事件の存在が証拠により証明され、客観的に事実として認められない限り、”史実”と断定することは控えるべきなのです。冤罪もあり得るのですから。司法における証拠主義、つまり、歴史問題における歴史実証主義の視点からしますと、アルメニア人虐殺事件については、ドイツが、現地調査を含めて徹底した検証を実施し、証拠等を収集したようにも見えません。また、当事国でもないドイツに調査権限があるとも思えず、一方的な主観による決議では、弁明の機会も与えられず、虐殺者と認定されたトルコ側が納得しないのも当然です。
検証なき断定による歴史問題の解決は、結局は、国際社会の火種として燻るものであり、否、それは、国家間の対立として表面化するリスクさえあります。この時期に、何故、ドイツ議会が敢えてアルメニア人虐殺決議を敢行したのか、その背景の分析も急がれますが、今般のドイツ連邦議会の決議は、”歴史認識”という魔物を呼び出したかのようです。虐殺は、非人道的な蛮行として批判されるべきではあっても、実証なき段階では、近代司法が否定した”政治裁判”になりかねないと思うのです。
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消費増税再延期 社会保障や企業経営など影響は幅広く
昨日公表された消費増税再延期の決定については、専門家の間でも賛否両論が入り乱れているようです。賛成派は、消費の冷え込みによる景気減速を回避できたことを評価し、反対派は、さらなる財政再建が遠のいたとして懸念を示しています。
ところで、消費税の問題について考える際して、しばしば見落とされているのが関税と消費税とが、その性質において共通していることです。自由貿易主義の理論は、国境に設けられている関税は、貿易を阻害する最大の要因であり、その撤廃こそが、経済繁栄の道であると説いています。ところがこの論理は、どうしたことか、国内経済では無視されがちです。関税が貿易を阻害するならば、物の取引際して課税される消費税やVATなども、同様に経済活動にとりましては阻害要因のはずなのです。
実際に、再延期賛成派の人々は、消費増税を景気に対するマイナス要因として捉えていますが、関税と消費税の間のダブルスタンダードに、多くの人々が気が付いているわけではありません。また、EUでは、関税同盟(内部的な自由貿易圏と対外的な共通関税の導入)の結成に対応する形で、各国ともインボイス式のVATが導入されており、VATには、関税の内国税化としての側面があります。おそらく、関税収入の減少をVATで補うために導入されたのでしょうが、それでも域内の貿易自由化効果によって経済が活性化されれば税収の増加も期待できます。一方、GDPにおいて内需の占める割合が高い日本国の場合には、貿易自由化と連動しての経済のプラス効果は期待できませんので、消費増税は、マイナス効果の方が高いのではないかと推測されるのです。
以上に述べた消費増税のマイナス効果に加えて、政府もメディアも、『パナマ文書』が示唆する企業や富裕層等の租税回避行動について沈黙している点も、国民が増税論に対する不信を強める要因です。仮に、100兆円越えとも囁かれるタックス・ヘイヴンへの租税回避が是正され、国税庁の徴税作業を厳格化されれば、消費増税分に相当する税収は賄えるはずです。政府は、消費税だけを切り取らずに、法人税や所得税などを含めた税制全般の見直しに努めるべきではないかと思うのです。
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南沙諸島の領有権争う中国とフィリピン、歩み寄りか―仲裁裁定控え
フィリピンが提訴した南シナ海問題に関する仲裁裁判の裁定は、5月中には示されるとする見通しがありました。しかしながら、既に6月となり、その行方が注目されてきましたが、ここに来まして、中国は、フィリピンを懐柔すべく歩み寄りを試みている報じられております。
報道によりますと、仲裁の裁定において自国が主張する九段線が認められる可能性が低いため、中国が、フィリピンに提訴の取り下げを持ちかけているとする観測が流れているそうです。先のG7で法の支配3原則が示されたように、国際社会は、中国に対して仲裁の結果を順守するよう強く求めています。仮に従わなかった場合には、制裁の対象ともなるため、中国としては、何としての仲裁裁判を潰したいようなのです。そこで、大統領が親中派とされるドゥトルテ氏に交代したのをチャンスに、フィリピンに対して話し合い解決を求めたのでしょう。一方のドゥトルテ大統領は、「交渉の船が静かな海にあり、圧力的な風が吹かないなら、私は中国と2国間で協議することを決めるだろう」と述べたとも伝わり、中国の要求に応えたようにも見えます。しかしながら、仮に、フィリピンが提訴を取り下げ、その後、国連海洋法条約の規定に反する中国有利の合意に達したとしますと、国際法秩序の破壊の責任は、中国からフィリピンに移ることになります。海洋に国際法秩序が確立するチャンスをみすみす逃し、中国の軍事力と不当な領有権主張に屈したことになるのですから。この結末には、おそらく、フィリピン国民も納得しないことでしょう。一方、中国にとりましては、仲裁の決定への不服従に対する批判を回避できるのみならず、フィリピンに責任を押し付けることができます。
これではフィリピンが汚名を着ることになるのですが、他の東南アジア諸国のみならず、フィリピンの突然の豹変ぶりに国際社会も痛く失望することでしょう。時代が、無法時代に向けて逆戻りするのですから。それとも、習主席は、仲裁の裁定内容を予め入手し、先手を打つ形でフィリピンに仲裁内容と同様の措置を約束した上で、提訴取りやめに応じるように説得したのでしょうか。これまでの中国の行動パターンを見ますと、最初に好条件を提示して提訴の道を放棄させた後になって、徐々に圧力をかけながら自らに有利な方向に引き込む公算が高いものと推測されます。自国の名誉のみならず、国際社会の法秩序を維持するためにも、フィリピンは、仲裁裁定の取り下げには応じるべきではないと思うのです。
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