La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

死者の日の祭壇コンテスト

2024年11月02日 | ユカタン諸々

死者の日でござる。去年は引っ越すほんの少し前だったので、今年はディープ・マヤの死者の日を堪能するぞ!と期待ガンガンであったが、思ってたのといろいろ違ってそれはそれで面白かった。

 隣のカンペチェ州のパレード。

マヤ文化圏の本当の死者の日には、ガイコツは登場しない。あれはメヒコのものである。ユカタン文化グループでは、毎年ガイコツを取り入れることはいいだのダメだのと議論している。ユカタンの伝統的な死者の日では、祭壇は家の中に作って厳かに死者の魂を迎える。

だから村の様子も普段とあまり変わらない。ただ、近所の人たちに聞くと、近くの村に住む親戚んちに行ったり、いろいろ準備で忙しいという。マヤ文化グループで「祭壇は見世物じゃない」という議論があったが、まさにそういう感じがする。ただ、夜には親戚で集まってワイワイやっているのか、どこからともなく爆竹の音が聞こえる。

爆竹もうるさいが、それより衝撃的だったのが、祭壇コンテスト。海辺の村では、移り住んだ当初はマヤ式のが数個といった感じだったが、年々メヒコ色が強くなってガイコツだのオレンジ色の花などを使うことが増えて、かつ見世物度も上がっていった。が、うちの村の役場でコンテストがあるというので、よーし、今年は久しぶりに厳かなマヤの祭壇を見るぞ!と勇んで出かけていった。

  なんと、この人出。

マヤ式の祭壇がいくつか並んでいて、そのどれもが正当マヤ式…ってな静かな展示を想像していったんだが、見事に裏切ってくれたw。大勢の村人、子供の数が半端ない。どう審査するのか知らないが、マイクを持った役場の人?が順番に回って、各製作者グループの代表が祭壇つくりのコンセプトなんかをスピーチする。その間も、どんどん見物客が増え、子供達が走り回る。

 紹介がすべて終わると、

  なんと、お供えを配り出す!

配るというか、見物客が祭壇の上からどんどん好きなものを取っていく。なくなると製作者が奥から出してきてまたどんどん並べる。

食べ物を漁りにいくようでちょっと嫌だったが、肝心の祭壇を見たかったのでちょっと回ってみた。

  こんな感じ。

後で聞いたんだが地元の小学校などが出場していて、祭壇そのものの様式はそれほど重要でなく、作るという伝統を守るための学校行事に役場が一役買っているという感じらしい。田舎の村にはこれといった娯楽がないが、自分たちでいちいちイベントにしてしょっちゅう楽しんでいる。ディープ・マヤ感ゼロだが、これはこれでここらしいなと思った。ってか、これは30日のイベントで、31日には学校でまたちゃんとした死者の日のイベントをし、1日は各家庭で故人を偲ぶらしい。

 見てたら捕まった。

奥まで入って見てけ!食べてけ!と囲まれて、死者の日の甘いお菓子なんかを次々と勧められて、最後には

  お土産。

グレープフルーツとみかんとオレンジをこんなにどっさり。

死者の日の甘いお菓子というのは、有名なメヒコの死者の日だとこんな感じ。だいたいがマジパンでドクロや食べ物に成形したもの。ユカタンだとこんな感じ。果実を甘く煮たものなどもある。シリコテ(ギターの材料になるジリコテの実)のが美味しかった。ここのマジパン菓子の特徴としては、かぼちゃの種を挽いた粉を使っていること。

ところでちょっと日にちが前後するが、死者の日の週が来ても、FBで関連グッズ(ひょうたんの殻で作ったお椀やろうそくなど)の販売が盛んになっる以外、あまり村の様子は変わらなかった。メキシコの死者の日をググると出てくるようなこれ見よがしな飾りとは無縁。

隣のマリアは関連グッズをどこかで仕入れてテカシュ村まで売りに行くと言っていた。日を追うごとに、お菓子を売る人も増えてきた。そういう関連ものでゲットしたのがこちら。

 チョコレート飲料の素。

えー、チョコレートの発祥はここ中南米で、甘い板チョコじゃなくて苦い飲み物だったというのは、今どのくらい知られているんでしょうか。我々はメキシコに来てすぐウシュマル遺跡に行ったとき、近くのチョコ博物館で知って、ついでに試飲もできた。苦かった。

さすがディープ・マヤだけあって、村の人たちはタブリヤという板状のもの(チョコレート飲料の素)を手作りして売っている。作るところも見たいがまだ家のあれこれ(留守中まったくされてなかった掃除とか、ようやく食器棚が来るとか)で忙しいので、とりあえずブツだけ。年中ときどき売りに出ているが、死者の日にお供えする/振舞われる食事の一部なんだろうか、この時期はめちゃくちゃ多い。カカオとその他材料の複雑な香り。これを湯で溶いて飲むと言われたので、まずはその通りに。

 なんとも複雑なお味。

そして苦い。役場が売っていた死者の日のお菓子と、ものすごく合う! 友達には甘いパンを食べながら飲むと美味しいよと言われたが、パン程度の甘さではイマイチというか、これは日本のお薄とまったく同じように、ちょっとの量の甘いものの後にめちゃ苦いものをゴクッと一口いくのがいい。まだ残ってるので、次回は茶会みたいにセッティングしてちゃんと飲もうと思う。

青い皿のはサポティートという。祭壇コンテストで人に揉まれて潰れてしまったが、本当は博多のひよこみたいな形をしている。

 こんなの。

他のマジパンもかぼちゃの種が入っていればそう呼ぶらしいが、うちの村では正確にはこの形のものを呼ぶらしい。なぜこの形なのかはこれから聞く。

チョコレート飲料の上に写っているせんべいみたいなものは、かぼちゃの種そのものを砂糖などで固めたもの。アーモンドみたいに後を引く味。これまた苦いチョコ飲料に合う。

 味変で牛乳を入れてみた。

こちらは「うっ、苦い!よく知ってるチョコ飲料じゃない!」と感じる前に脳がミロだと認識して、非常によろしくなかった。二度とやらない。

 パン・グランデ(巨大パン)

ユカタンの片田舎には、死者の日のパンは登場しない。その代わり、なぜか大きいサイズのパンが出回る。お供えした後みんなで食べるんだろうか。

 コンテスト会場にいたガイコツ。

希望者が一緒に写真を撮れるように歩き回っていた。役場が雇ったのであろう。それにしても、本場メヒコのガイコツにも、こんな丑の刻参りみたいなのがいるんだろうか。

最後に、祭壇という言葉は墓そのものを指すようで今ひとつピンとこなくてずっと盆棚と呼んでたんだが、キリスト教では何かするときの台のことを祭壇と言うんですね。でも、マヤの祭壇は日本の盆棚とコンセプトがまったく同じなので、個人的にはあれは盆棚だ。



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