土地や家の話に関係ないけど、愉快な経験だったのでここに記録しておく。
ちなみにメキシコ人は、「メキシコの免許はインターナショナル。どの国行っても使えるし、どこの国のも使えるはず」と威張る。ジュネーブ条約に加入してないからテキトーなのでは?と思うんだが、とにかく威張る。ここでは米国やカナダの免許は書き換えずにそのまま使えるし、所持する免許がアルファベットで書かれていれば国際免許なしで運転(旅行者がレンタカー借りたり)できるので、逆もそうならまんざら間違いではない。だが、日本語で書かれた日本の免許はダメで、もちろん国際免許から他国の免許への書き換えはない。
ともあれ・・・2015年12月
ネットで調べて、公安省に行けばいいことがわかった。住所を頼りに行ってみたら(スペイン語が怪しいので電話で問い合わせるオプションはなし)、そこはなぜか市役所の支所だったが、そうとは知らずに出てきてくれた人にこちらの状況を話したら「10年以上の有効期限を持つ外国免許でないと、書き換えは不可で、新規取得になる」と説明された。「ここじゃない」と言われず、なぜ市役所の人がいろいろ教えてくれたのかは不明。
行くべきはその支所から空き地を突っ切った先にある免許センターだと教わったので、そこへ行って市役所の人の話のウラをとった。だいたい合っていた(その後で間違いだったと判明した点はなかった)。強いて言えば、10年以上という数字が正しいかはわからない。
新規取得に必要な書類は、身分証明書(選挙人カードやパスポートなど)と住所を証明できる書類(公共料金などの請求書)。うちは全部大家の名義になっていて、住所の証明ができない。賃貸契約書と何かのセットで代用できるらしいが、グアダラハラの友達の紹介だったので、賃貸契約書がない。契約書くらい交わせと言われそうだが、そうなると保証人を二人…とか言われて面倒なのでどっちもどっちですね。わたしは固定電話を契約したのでOKだが、相棒名義のものがない。
ここで、大家が登場して「免許センターの署長に話をつけて、免許とったる!」となった。まあ二人で2千ペソくらいなら渡してもいいか…と思ってたら、公安省が毎年恒例の「本当はしなきゃいけなかった手続とか罰金支払とか、今年中にやったら割引!」というわけわかんないことを発表し、混雑するから1月になってから行こうと大家に言われる。
2016年1月
大家が署長と話をするも、新しい署長はクリーンな(汚職に関わらない)女性で、取得までは認めず。書類の例外だけ認めてくれた。住所証明の代わりに、わたしの電話料金請求書とイミグレでもらった「彼はわたしと実質夫婦」という手紙でOK。実家に住んでる子供と同じような解釈なんで、例外というほどの例外じゃないと思う。クリーンな署長、やるな。
でも大家はハッピーで、「よし、じゃあ試験を頑張りたまえ」とテキスト売り場に連れてってくれた。このテキストなるものが、単なる道交法(「法律の」文章)。日本のようにフルカラーでイラスト入りの親切なものじゃなく、フォントも1種類の非常に読みづらいものだった。が、しょうがないので読み始める。
<道交法の冊子>
道交法なんてどこでも一緒だろと舐めてかかってたら、結構日本の常識が通じないことを発見。たとえばですね、「歩行者は、道を渡るときは車の邪魔にならないようにしなければならない」んですよ! で、真面目に読み始めたんだがやたらと時間がかかるので、巻末の罰則・罰金のとこだけさらうことにした。
試験当日は、
書類提出とチェック → 視力と血液型の検査 → 学科 → 実技
という流れで、最後に写真撮って免許もらって帰る。学科だけ受かってから別の日に実技ってのはダメらしく、実技試験用の車を持ち込む。学科と実技は2週間以内に合格しないと、最初の書類提出からやり直しになる。
車は大家に借りようと思ってたら、でかいピックアップなのでやめとけと言う。要は貸したくないんだが、仕事で毎日使ってるのはこちらも知っているので、無理にとは言いづらい。ここまでの段階で「妻の免許は試験官を買収してとった」などとおちゃらけていたLさんも、裁判沙汰(民事訴訟なのに負けたらムショにぶち込まれるというMexicoチックな裁判)に巻き込まれていて、今は助けられないと言う。
しょうがない(友達も他にない)ので、大家のアドバイスに従って、先に車を買ってその車で試験を受けに行くという、先進国なら誰もが首をかしげる方法で実技を受けることにした。車を買うにも、免許がない外人だからいろいろ面倒はあったんだが、ここではその話は割愛する。
学科はパソコン端末での受験で、スペイン語か英語で受けられる。10問中8問正解で合格。しかしですね、受けてみてわかったんだけど、10分で10問答えるんじゃなくてタイムショック方式なんですよ。開始!と言われて「問題はどこだ?」なんておたおたしていると、問題でなくその上にあるデカいストップウォッチの「59、58、57…」という数字ばかりが目に入る。答えは3択で、正解をクリック。で、クリックした途端、ピンポーンなりブーッなりと鳴って、次の「59、58、57…」。結構なプレッシャーです。答えがわかってもクリックせずに、残り時間で深呼吸でもすることをお勧めします。3問間違った時点で終了、失格。
でもって、その英語が、前に会ったプログレソの米国人おばさんが言っていたとおり、すごく変な英語なんです。英会話教室に何年も通ってるような日本のお姉ちゃんなんかには、おそらくチンプンカンプンでしょう。実際、相棒は2回落ちた。
実技は縦列駐車。それだけ。持ち込んだ車を止めると、その隣で試験官が前後左右のスペースを測ってパイロンを4つ置く。車と反対側のパイロンの間には、縁石代わりの車止めがある。これがまた運転席から見てるとすごく狭く見えて、結構なプレッシャー。実際、決して広くはない。どのくらい狭いかというと、昔の重ステじゃ絶対無理(ハンドル切るときは一旦止まって最大に切ってから動かないと無理)なくらい。
この4つのパイロンの中に、縦列駐車する。パイロンに当たってパイロンが傾いたらダメ。車止めに乗り上げたらダメ。切り返しは6回まで。やり直しは4回まで。こちらも「ニガテなの〜」なんて言ってる日本のおばさんなんか、一生受からないでしょう。ついでに言うと、当然、左ハンドルで右側への縦列駐車。実際、筆者も1回落ちた。
メキシコの交通事情というと、日本人は必ずと言っていいほど「運転が荒い、マナーが悪い」と言う。ウィンカーは出さないし、車線は無視するし、その上結構なスピードを出すので、そう思うのもわからなくはない。
が、そのわりに事故は少ない。つまり運転うまいんですよ、みんな。常に四方をちゃんと見てるし、車幅感覚はいいし、反応も早いし、その反応も正しい。そういう人たちが互いに避けながら、すいすいグイグイ行く。すいすいグイグイってのは実は「譲るか譲らないか瞬時に判断し合う」ってことでもある。日本みたいに、「下手なくせに後ろさえ見てない、そのくせ信号無視は平気でする」ってな人はほとんどいない。下手な人にはわからないだろうけど。。。
だから、学科のストップウォッチといい、狭い縦列駐車といい、実にここの道路事情に合った試験と言える。「受験用の車に乗って試験場まで行く」ってのも、「だって免許とるんなら乗れるんだろ?」って理屈なのだ。
わかりやすい。理屈がとってもストレート(笑)
そうだ、料金は受かるまで発生しない。つまり、受験料はタダ。で、面白いことに、免許には2年有効・3年・5年とチョイスがあって、1年あたり一番安いのは2年間有効のもの。おそらく犯罪抑止が目的なんだと思う。