メキシコの誇る伝統行事・死者の日が来た。有名な特徴というか習わしというかアイテムは、オレンジ色の花などで鮮やかに飾った祭壇とか、骸骨装束での行列とか、死者のパンとかいろいろ。我が道を行くユカタンではちょっと違うので、興味があったら過去に書いたものを見てください。2017年の村での行事。
去年は、初めてピブという死者の日料理の伝統的な作り方を見学した。で、今年はそれをうちでやってみようと少し前から決めていたので、その報告。行程的な情報は、見学したときの方がわかりやすいので、そっちを見てください。
こういう料理。
掘った穴のカバー。
薪を干している。
去年は、ハリケーン4つに見舞われてその後も雨天が多かった。地面や薪が湿っていたので、見学させてくれた一家も大変苦労していた。穴なんか別に当日掘ればいいんだが、そのことが頭にあったので数日前にほって地中の砂を陽に当てていた。が、ノルテ(寒波)が来て雨が降りそうだったので、カバーをしたところ。結局降らなかったが、作った翌日の今日、久しぶりに雨が降っている。村中でホッとしてると思う。
薪というのは、うちの伐採ゴミである。基本ですね。で、焼くときに使う大きい石もあるし、包むときに使うシュロもあるし、ああ、こうやってあるもので作るのが郷土料理なんだなぁと改めて感心していた。先日お隣さんがバナナを植えたんで、葉っぱをもらえるか尋ねてみたところ(もらわんでも料理用にちゃんと売っているんだが、そのほうがあるもので…っぽいので)、わざわざいらんほど植わっているというメリダの自宅から持ってきてくれた。
切り揃える。
その翌日。
葉っぱの下処理として炙ると書いてあったので、消毒目的かな?と思いつつ炙ったんだが、後でよく調べたら柔らかくするためであった。だから包む直前にすればよかったのに、処理したのが早すぎて一部カリカリになってしまってずいぶん無駄にした。たくさんもらっといてよかった。
当日、地中焼きの準備とピブの準備の二方に分かれる。
穴の底に鉄板を敷いて、薪、石の順番に乗せる。
スペイン語で「地面に埋めた」という単語を使うので地中焼きでいいのかと思ってたら、世界中にある似たような料理のことは土中焼きと呼ぶらしい。どうせするんなら何か日本っぽいものもついでに焼くかと思って調べたら、キャンプとかアウトドアの人たちの記事ばかりであった。考えたら、火の通り方とかにうるさい和食にあるわけありませんね、地中焼き。
シュロの準備。
うちに生えてるのの葉っぱを切って使用。2枚炙って合体させる。
とうもろこし粉と混ぜるのに使うラード作り。
他の材料は当日でも売ってるが、ラードだけは売り切れていて、もっと前から買っとくもんだと言われた。しょうがないので脂身を買ってきて作り、そこへアチオテの種を入れて煮る。
できたアチオテ味ラードを粉に混ぜる。
黄色が濃いのは、アチオテの色がついてるから。あと熱湯を入れて混ぜて生地を作る。
肉を漬ける。
苦いオレンジの汁に、同じくアチオテだがこちらは味噌みたいになったものを溶かして使う。アチオテは不思議な味の調味料だが、油と酸にしか溶けない。ユカタン料理ではよく使うんだが、この苦いオレンジというのがこれまたユカタンにしかない種類なので、州外のレストランやこだわりのないレシピなんかでは酢を使っている。
クミン。
粉を買ってくるのを忘れたので、すり潰す。あと漬け汁に入れる香辛料はオレガノ。
肉は、去年見学したうちでは骨つきぶった切りで、そりゃ骨が付いてた方が美味しいんだが、食べるとき取るの面倒なんで(骨を外しながら食べるような料理じゃないと思うので)、肉だけにし、かつ結構小さく切った(野菜も)。
エパソテというハーブとエスピロンという豆。
このエパソテは本当に香りがいい。が、ユカタンの調理法を考えるとハッキリ言って毒消しだと思う。
エスピロンは去年見学したうちのピプには入ってなかったんだが、ユカタン文化&歴史グループに、この豆が入ってなければピブとは呼べない!とまで言う人がいたので、入れてみることにする。熟れてない粒は緑色だが、市場の人が気にするな焼けたら一緒と言ってたので、両方入れる。
(11/3 追記)エスピロンじゃなくて、正しくはエスペロンでした。市場のおばさんがェシュピロンみたいな発音だったから間違えた。
できた生地に豆を入れたところ。
野菜。
玉ねぎ、トマト、ハバネロ、ハバネロとは別の唐辛子、エパソテ。
コルという汁/生地
去年見学したピブでは、ただの漬け汁をそのままかけていた。生肉を漬けておいた汁を鍋肌で焼くならともかく、なんとなく地中焼きの前にも火を入れたかったので調べたら、逆に伝統的なピブではこうする!という記事を見つけたのでやってみる。漬け汁を温めて、とうもろこし粉を少し入れてとろみをつける。
今回わかったんだが、一言でピブと言ってもレシピは結構バラバラ。オーブンで焼くイマドキなレシピでなく、伝統的なものにも、結構バラエティがある。各家庭とか各村とかで色々あるんだと思う。
3枚目の写真の上に、このコルというとろみ付き汁をかける。
今回、買い物途中で嫌な予感がし、作っている最中にはっきり自覚したんだが、去年は慣習を見学したのであって、料理教室に行ったわけではない。だから、今ひとつ分量があやふやで、生地なんかは混ぜてるところも成形してるところも見たからなんとなく…、肉や野菜もなんとなく…な量で作ったら溢れたが、気にしないで焼く。
まずはバナナの葉で包む。下手くそ。
シュロの葉で包む。これも下手くそ。
薪が燃え落ちて石が熱くなった。
一応タイミングが揃うように打ち合わせてたんですよ。
地中に投入。
焼けた石の上にシュロを敷いて、包んだピブを乗せて、またシュロで覆って、鉄板を乗せる。
砂で埋める。
南部の村だと地層は赤土で、耐火煉瓦の材料になったりするぐらいだから本当に地中焼きに適してるんだろうが、海沿いでは掘っても掘っても砂である。しょうがないので、蒸気が逃げないように気をつけて、念入りに砂で埋める。
焼き上がり。
見学した通り、2時間待った。というか、疲れてそのくらいの休憩は必要であった。はっきり言って2人で作るものではない。大勢での分業は、作るピブの量が多いからでなく、その方が絶対ラクだからなのであった。
結果は、切り方や味付けを好みに合わせたので、詰め物というか内部は非常に美味。けど周りの生地の部分が少しボソボソしてしまった。分量なのか火加減なのか。
でも、何しろ行事というかアクティビティーとしてとても面白い。生地ももう少し研究したいし、シュロで包むのもどうにか形になったという程度なので、来年も絶対トライしたい。