前回行ったのは、新居の現場の親方のお父さんが生まれたという集落で、基本的に一族が住んでいた。子供の成長などに合わせて集落を出たり戻ってきたりしながら、身内で仲良く暮らしている。親方に役所の知り合いが結構いるのか、州や連邦の政府に掛け合って徐々にインフラを整えているという状態だった。
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プウク様式の遺跡群の東端にあるチャクムルトゥンという遺跡の近く。(話は外れるが、真ん中を行くのがマリア、右に息子を抱いたヒルベルト。見てください、我々の目の高さがどこにあるか。マヤ人は背が低いので、いつどこへ行ってもこんな見下ろす感じになってますw)
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この遺跡は、建物群から1kmくらい離れた小山の中腹にピラミッドがある。
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雨季が終わった今は小山全体が伸びた植物に覆われてピラミッドは見えない。集落はマヤ語でホウィツ(山の中心)というだけあって、このピラミッドのさらに山奥にある。ちなみにこの写真の辺りにも、チャクムルトゥンという名の、5家族くらいの集落がある。ヒルベルトんちで昼ごはんをご馳走になっていてホウィツが話題になり、行ってみることになった。
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ピラミッドまでの道も地中に埋もれているラハ(岩)がゴツゴツとすごくて大変で、もちろんうちの小型車じゃなくてヒルベルトが働いている会社のクロカンで行った。ホウィツは、それさえも通れない先にある。
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この支援は、おそらく前の記事に書いた「トイレとシャワーの離れ」と似た感じで、政府が「ハリケーン来たでしょー、大変だったでしょー、家、プレゼントするねー!」と有無を言わせず贈ってくるパターンで、本当に必要としているものは意外と支援を得るのが大変らしい。
我々が集落入口にいたお爺さんの許可を得てちょっと中まで入ったら、集落の代表を務める女性が出てきて、いろいろ話を聞けた。数年前に人権弁護士と知り合えたおかげで、ようやく電気を引くことができたと言う。
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電気が来てポンプを使えるようになったので今は井戸があるが、それ以前はこのように雨水を貯めておいて大切に使っていた。(また清潔とか快適の話で悪いんだが、一瞬、ポンプ無しのつるべ式でいいから井戸を掘ろうとか考えないのかと思ったけど、地中の岩が邪魔で無理なのかも)
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屋根の上にタンクが見えるのがそう。基本的にその代表者の女性が教えていて、ときどき州の教育省からも教師が来る。授業はスペイン語だそうで、学校の建物を一歩出たらマヤ語。
集落の人口は現在50人、うち子供が16人だという。数年前にマリアが行ったときから倍増したらしい。なんとも健全な社会。どうして過疎化しないのかというと、男の子が大きくなると近隣の村へ出ていって仕事に就き、彼女を作り、結婚したら嫁を連れて集落に戻ってきて子供を作るから。女の子のほうは相手がどこ出身でも気にせず、ただ愛する人についていく!ということらしい。まぁ、メリダまで出ていって見つけた彼女じゃそうはいかないんだろうが、それでこんな小さな集落が存続どころか発展していけるなら、女性の活躍とかガタガタ言わず(以下ry)
とはいえ、心配ないのは人口だけで、上に書いたように電気を引くのも一苦労だった。人権弁護士には今後はどんどん主張しろと言われているらしい。代表の女性曰く(そしてマリアも強く同意)、一番必要なのは道の舗装だという。ホウィツからうちの隣のテカシュ村まで3kmほど、道さえよければ毎日通える距離である。わざわざ集落から引っ越さなくても、仕事につけるし学校にも通える。
これに反対しているのが INAH(メキシコ国立人類学歴史研究所、遺跡の調査や保存などをしている連邦政府の機関。チチェン・イツァ等の遺跡でバカ高い入場料を取ってるところw)で、遺跡近くの集落に変に近代化されては雰囲気ぶち壊しとでも言わんばかりらしい。道があれば、住民が簡単に出掛けるだけでなく、遺跡を訪れた人が集落に寄れるようになり食べ物を販売したりもできるんだが、そういう支援の話はなかなか進まないという。
マリアが前回訪れたのは、ユカタンの毛無し豚を買うためだったんだが、今は売っていない。この INAH との交渉が有利になるよう、他の揉め事、つまり希少生物保護政策絡みの問題は避けているんだという。
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とても美味しいらしい。残念。まぁ、連邦や州の政府となれば、頭でっかちで外向けにウケのいい支援をやりたがる。「我々の望む(=観光客が喜ぶ)マヤ文化」を壊さない支援はする、それ以外は自分達でどうにかしろ…である。
そういえば、出発前、マリアとヒルベルトに「12月に訪問すると、何か贈り物を持ってきたんだと期待される」と言われた。そのときは、クリスマス時期なので子供にお菓子でも…という至極当然のことだと思ったんだが、ちょっとニュアンスが違った。ビスケットの箱を開け始めたら、代表の女性が子供達を並ばせ、写真を撮るかと尋ねたのだ。役所の広報でよく目にする「支援した!住民喜んだ!」というプロパガンダ写真を撮るか?(ポーズするか?)という意味である。貰う方も慣れている。はいはい、付き合いますよ、という感じ。
今思えば、マリアが代表の女性に「子供の数が分からなかった(足りなかったらすみません)」としきりに言っていたのも同じで、役所の公務員同様、イベントの不手際的なことを心配していたのだ。マヤ文化圏にはびこる「支援する側と受ける側の双方が得する微妙な関係と、その確固たる図式」を見るようで、複雑な気分になった。普段の彼らは、友人の家に行くとき手土産の数なんか気にしないもん。そんなんじゃないですよ、ただ来たかっただけ、みんなで食べてねと言ったら、代表の女性もマリアも不意をつかれたような顔をしていた。これが、本当の格差社会というものだ。日本でギャーギャー言う人の話は単に稼ぎの大小、格差ってのはそういうことじゃない。
なかなか興味深かった。何はともあれ、どんどん子供が生まれる環境というのは、やっぱり住民が幸せなんだと思う。
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ここから急な斜面を登っていく。が、こんな看板が立っていた。
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最近岩が崩れて転んだ子供が亡くなるという事故があって、禁止じゃないけど補償しないよ、ということになったらしい。ピラミッド以外の建物群のエリアが素晴らしくて充分見ごたえのある遺跡だが、登ろうとあの悪路を来てこれはちょっとショックじゃないかと思う。
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村をちょっと出ると周りは山やジャングルなんだが、そこはエヒードや個人所有の土地で、積極的に生産して活用したり、ある程度放ってあるが採れる作物を自分たちで消費(残ったら売る)したりする。これが村人ほぼ全員が持っている「自宅以外の土地」の正体だった。まあまあ計画的に生産してそうな土地も、多かれ少なかれこんな感じで、秩序ってものがまったく感じられないw。文化の違いを再確認するのは楽しい。
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