La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

許可とか申請もろもろ

2016年06月25日 | 新築

竣工のタイムリミット(引越)を、Lさんがどれだけ真面目に受け止めてくれているかは分からない。このくらいの建坪の家だと完成まで何週間…という話も、ときによって数字が変わる。そもそも彼らには「時間を守る」という観念が欠如しているとは、在墨日本人の共通イメージらしい。が、Lさん自身が「大家に家賃を払うの大嫌い」な人で、メキシコならではの「なんとかしてしまう」能力を駆使して「なんとかして」くれそうな気はする。

実は工期以外で、すでになんとかしてくれたことが結構ある。まずは建設許可申請。

メキシコでも同様の申請が必要で、当初はLさんやその仲間の言う「別にしなくても問題はない」という言葉を、冗談として受け流していた。が、Lさんが調べたら、申請が下りるのに30日かかるらしい。工期ギリギリっぽいが、Lさんは「申請さえ済ませれば、許可が下りる前に着工しても問題ないだろう」と言う。

ところで、買った土地は原野というか木をぼーぼーと生やしたまま10年以上放って置かれていて、面する道路も隣接地も似たような状態。どこからどこまでがうちの土地か、まったく分からない。で、市役所に「現地まで来て、杭打ってくれない?」と頼んだら、正確な測量図がないから新たに測量しなきゃいけないと言う。裏の家とのあいだには「まあ、このへんだから」みたいな、古い材木と有刺鉄線で作った境界があるが、それはあてにならないらしい。なんと、21号線まで戻って、「この土地はここまで、その先が何メートルなんでここまで、その先も何メートルで…」と順繰りに明らかにするという。

 <赤い屋根が裏の家>

 <裏の家の人が木材と有刺鉄線で作った柵>

じゃあそいつをよろしくと頼んだら、測量に来られるのが60日先だった。かつ、2筆のままだと測量代も倍になる。で、同時に判明したのが、建設許可申請を出しておくには、建てる予定の図面各種の他に、おじさんにもらった登記の手書き図でなくてこの測量図のコピーが必要だということ。許可が下りるまで、合計90日。

ここでLさんは、市役所の担当部署で働く人に裏で会って、「建設許可が下りてないことに目を瞑っていてもらい、かつ第三者(他の現場の人間や市役所の他の人間)が文句を言っても大丈夫なように、いろいろ(1筆とか)ごまかした許可が下りるまでうちの味方をする」という話をつけてきた。で、彼にいくらか日当を払う…と。

味方になってる期間は、その市役所の人にとって「不正を見逃している」状態になる。なので、90日と言わずなるべく早く測量させて許可を下ろすよう頑張るはずだから、そんなに大金にはならないらしい。市役所の1日の賃金にちょっと載せたくらいの金額x日数で計算する…と。

立派な汚職である。連邦政府の汚職には目くじら立てるくせに、自分のメリットになることならまったく抵抗がない。まして「市役所の職員の給料は安いから、これはお互い人助けだ」とまで言う。このわかりやすさがメキシコの魅力です。

次に判明したのは、組合問題。ユカタン中だかメキシコ中だか知らないが、至るところに建設労働者組合がある。うちの土地があるチェレムも例に漏れず、プログレソあたりのいくつかの労組が入り混じっているという。Lさんはメリダの人間で、かつ「資材をネコババされないように地元のワーカーは使わず、チェレムまで距離のあるメリダから連れていく」方式で工事をするので、彼らの縄張りを犯すことになる。

そこで、Lさんはプログレソのいくつかの労組と会って、「うちの組合が請け負っている」というフリをしてもらうという話をつけてきた。当然、その組合にいくらか払う…と。こちらは、偽の請負契約書にお互いサインし、彼らにみかじめ料を1回払って終わり。Lさんとその愉快な仲間たちが工事をしている間、他の組合が文句を言っても大丈夫なように味方になってくれる。うるさい組合だと、他人の現場にいろいろいちゃもんつけてくる可能性があるんだそうです。

電気も、引くためには契約を交わす必要があるんだが、それには時間がかかるので、とりあえず引いてもらう話をつけてきた。とりあえず引くといっても、うちの土地の準備が整うまでは、道路にある一番近い電柱に新しい変圧器をつけてもらうところまで。

水道は、裏の家の住人がこっちを伺っていたので、すぐさま友達になって、「井戸を使わせてもらう代わりに、その家の電気代を全部払う」という話をつけた。その家は週末しか来ないので電気代なんて安いもんだし、こちらは井戸の水を汲み上げるのに使うポンプその他のために電気がすぐ使えるようになるというわけです。水道局の契約は、電気と同じで時間がかかるのでテキトーに進めるそうです。

Lさんとは家族共々少しずつ親しくなってきて、今では親戚含め一家揃って大の仲良しだが、我が家にとってもはなんとも都合のいい結果になった。土建屋だと聞いて、最初から工事は発注しようと思っていたが、こんなにいろいろ「どうにかしてしまう」とは。たまたまご近所さんだった人が、とてつもなく高いサバイバル能力(@メキシコ)の持ち主だったわけです。

 <のどかで逞しいメキシコ>


間取り

2016年06月14日 | 新築

おばさんと話している間にも考えていたが、今度こそ土地購入がなんとかなりそうなので、家の間取りに真面目に取り掛かった。

基本的には、ブロック造のメキシコの真四角な家でいい。若い頃「世界の建築家」みたいな本でルイス・バラガンの建築を見ていいなと思っていたんだが、ここに来たらみんなあんな家だった。陸屋根で庇もない。10月末まで住む予定の借家も、似たようなデザインである。

ただ、ニホンジンとして譲れないことがいくつかある。まず、玄関に三和土(というか室内との段差)を作りたい。そこで客がみんな靴を脱いでくれるとは思えないが、とりあえず我々だけでもうち外の区別はつけたい。あと、トイレとシャワーは絶対別にする。こっちは(というか西洋の家は)、トイレと洗面台とシャワー(バスタブでさえ)が洗面所に全部入っている。これは許せない。

他にはたいしたこだわりはないんだが、間取りを考えるのは楽しい。楽しいどころか、子供の頃からの夢だったといっていい。土地の形や高低差や狭さなど、設計に工夫が必要な要素が予算以外まったくないので、学生の設計製図の課題みたいな気楽さ。

が、ここではひとつとても重要なことがある。暑さ対策。これを無視するわけにはいかない。プログレソの米国人おばさんが言っていた「風は北か東から」や、メキシコシティーの友達(土建屋)にもらった「自分で家を建てよう」みたいなPDFなどを頼りに、なるべく室内が暑くならないように頭をひねる。

それこそ現地の人に聞けばいいじゃないかと思うでしょうが、彼らは暑さに強いんです。我々もエアコン嫌いだし光熱費は抑えたいので、「自然に涼しい」家を目指す。

だいたい形になった時点で、Lさんに手書きの間取り図を渡した。するとその晩のうちに、CADで途中まで描いた平面図がパソコンモニタのキャプチャ画像で送られてきた。張り切っている。

 <Lさんから送られてきた画像>

その後は、仕事の後4回くらいパソコンを持ってうちに来てくれた。平面図の続きと立面図を描いていくあいだ、「ここの地盤」とか「土地から出た石で作る布基礎」とか、こちらがよく分からないことについて教わる。全部コンクリートとブロックで作る家なんて、分からないことだらけだ。

図面とはいえ、本当のことを言うと細かい部分はテキトーである。自分が現場で棟梁に指示を出すもんだから、「まあ、だいたいどんな感じかわかる」程度。ただの2階建だし、言ってみれば「メキシコ在来工法」の家なんで、それでもいいのだ。我々も、引き渡し前どころか建設中もずっと現場に行って見学すると言ってあるし、細かいところは後で確認すればいいのである。

 <我が家でCADをいじるLさん>

唯一困ったのはLさんの「メキシコ時間」で、「明日は何時に来る」とか「いついつまでに図面は終わる」とか「いつから何を始める」とかが、まっっったくあてにならない。2時間くらい来るか来るかと待たされるのなんか、しょっちゅう。借家を10月末には出るというタイムリミットがあるが、もし遅れても、彼はきっとまったく悪びれず、あの人懐こい笑顔で「しょうがない(ニ・モド。メキシコ名物)」と言うに決まってる。なのでこっちは、とにかく「彼が約束通りに来たのに我々がいない」という事態だけは避けようと、毎回待たされることになる。

が、もう慣れた。


ようやく土地売買契約

2016年06月01日 | ユカタン諸々

おじさんとの売買契約の話も、すいすい進んだとは言い難い。

実はおばさんのと同じ広さと思った土地は、登記上2つのロットに分かれていて、それぞれ、おじさんとその奥さんの名義になっていた。夫婦の財産について日本と法律が違うようで、何かの対策でそうしたとのことだが、あまりうちに関係ないのでちゃんと聞いてない。


 <おじさんの土地。Googleストリートビューが行ってないとこ>

ところが、そのためにフィデイコミソの手数料が上がることが判明した。つまり、政府へのお伺いが2筆分、信託管理手数料も2筆分になるとのこと。土地代がおばさんのより安いので、最悪お伺い手数料が上がってもしょうがないと考えることもできるが、今後毎年払い続ける管理手数料が上がるのは痛い。

土地を見せてくれたときにおじさんが「1筆にしたかったら、なんの問題もないよ」と言ってたのを思い出して、そうしてくれと頼んだら、「2筆を1筆にする手数料が…」と言い出した。問題ないって言ったじゃんと思ったが、まあ、「問題ない=そっちの負担でやってくれる」ではないのは事実なので、おじさん紹介の弁護士に詳しく聞いてみた。

そしたら今度は合筆に6ヶ月もかかることが判明した。なんで売買での名変が6週間でこっちは半年もかかるのか理解に苦しむ。で、早く売っ払って現金を手にしたいおじさんが難色を示し始めた。

結論を言うと、一旦Lさんに名義上の土地所有者になってもらって(金を出して本当に買うのは我々)、6週間経ってLさん名義になったら6ヶ月かかろうが何でもいいので合筆してもらい、その後我々名義に変える(表面上はLさんから我々が買う)ことにした。書き忘れていたがLさんはたまたま土建屋で、家の工事を彼に発注するつもりでいたので、仕事が欲しいLさんは快く引き受けてくれた。…といっても名義人になったのはなぜかLさんの奥さんだが、奥さん名義になった土地に我々の家を建て始めよう!というわけ。

おじさんも、これなら話が早く進むし、フィデイコミソ(信託)申し込みのための書類(売り手の身分証明など)を用意する必要もなくなるということで、ハッピー。おじさん紹介の弁護士も、すべてを承知の上で契約その他を進めてくれる。おばさんのときは最初から公証人が出てきたのでその公証人が全部する予定だったが、今回の弁護士は公証人ではない。が、普段使ってる公証人がいるので、契約に係るすべて(契約書に双方サインして金払って公証人のサインもらう)はそこで済ませられるという。

契約のちょっと前、おじさんが「ビール飲みながらサッカー観戦しよう」と自宅に誘ってくれた。Lさんはやる気満々で、家の間取りを考えておけと言う。みんなハッピー。

おばさんの元亭主が死んだのはご愁傷様だが、我々にとってはかえってよかったとしか言いようがない。

 <いろんな木が植わってて楽しい>