業務連絡兼ねて…
ここでもしつこく人が増えた増えたと書いてきたが、我慢の限界を超えたので引っ越すことにした。理由ときっかけは以下のとおり。
① 隣地に米人が建てている家が二階建で、絶景朝日を拝めなくなることがわかって嫌気がさした。
② 数年なかった長めの(3日くらい)停電があり、その後も同じく3日くらいネットに繋がらない日が続いた。原因は電力負荷の上昇とアクセスの集中、つまり人口増加にインフラ整備がついていってない。不便を承知で来てるので多少は構わなかったんだが、しばらくなかった現象の原因に移民増加が絡んでるってことで嫌気がさした。
③ 隣地の完成が見えてきて、毎日3組ぐらい来ては甲高い声の英語が聞こえる…のが続いて嫌気がさした。
人が増えても「メキシコの田舎らしい村が活気付いた」のなら気にならないんだが、最近は平日に村の中心部を通るとオサレ(っぽい)カフェにガイジン(西洋人)が溢れかえっている。アメリカのどこかにいるみたい。
以前は素朴なメリダ人が「ビーチ沿いの静かな漁村、遠いところ」と認識していたこの村にも、近代的な都市っぽいものへの憧れの波が押し寄せてきたのもある。波は、新しく建てられてる別荘の建築様式だったり、SNSで増えているメキシコ人リベラルの発言という形で感じられる。メキシコ中部東部から引っ越してきた人の共通観念に影響を受けたメリダ人は、今のユカタン政府の経済発展政策(州財政の立て直しを兼ねた街の開発・観光客誘致など)を喜んでるから。
毎日この馬が草を食み、ときどき村の子供達がベースだけ持ち込んで草野球をしてたとこ。そういえば姪っ子が来たときに行ったカウボーイ技術大会も、ここに古い木材で見物席を建ててやってた(動物愛護の流れで禁止されたのを受けて2年前になくなった、保守派はユカタンの伝統だ!と言ったが負けた)。
人工芝にナイターができるライト。柵で囲って、予約制になったのか普段はアクセス不可。こういう開発に対して、喜ぶタイプはSNSで絶賛するが、自分ちの子供が好きなときに遊べなくなったと思ってる質素な暮らしの村人なんかは井戸端会議で愚痴ることはあっても声を荒立てたりしないんで(保健所や友達んとこなんかで耳に入る)、なんとなく「発展して嬉しいと皆が思ってる」イメージが出来上がっていく。
再度の水圧低下でうちの貯水タンクに溜まっていかず、断水状態。新築時から貯水タンクを増やしたり地面を掘って水道管(ホース)の位置を下げたり…を何度も繰り返してきたが、去年の夏休みと比べてもガンっと別荘が増えたので、またしても。水道局曰く、もうこれ以上の対策は無理。
増えてきたガイジンのように深い井戸を掘れば水道に頼らなくてもよくなるんだが、ちょうどストレスになってきた頃で、この家に金をかけたくない。無自覚だったが少し前から引越の選択肢が頭にあったんだと思う。
さらに水道局の職員から聞き出したところによると、現在増強している(そして市長が仕事したと自慢する)ポンプは、去年まで少しずつ増やしてきたものより低性能らしい。市が資金をプログレソビーチの観光客向け整備など別のことに使っているため。
草っ原や藪だけだったのが、家だらけ。お向かいさんとお隣さんとあと2軒のご近所さんの、ユカタンらしい(伝統的とまではいかないけど質素なブロック造)小さな家がポツポツだったが、このとおり。
矢印の赤い建物は東西10キロくらいの間に一軒だけあった、コーラやジュースや袋菓子だけを売ってる、日本の新幹線ホームの売店みたいな店(弁当もアルコール飲料もないけど)。隣村までの通り沿いにあって、引っ越してきたときはうちの屋根から見えた唯一の建造物だった。それがこのとおり家だらけだし、今はそういう店も他にたくさんできた。夏休みとセマナ・サンタの週末しか店を開けていなかったのが、儲かっていると見え、今では一年中、毎日開けている。実際、その隣村までの道路、以前は村の中心部に行くまで一台もすれ違わないのが普通だったのが、最近は小道から入るのにも数台通過するのを待たなければならない。
昔、メリダ人がゴミを捨てていかないように遺跡風に石を並べたところ。夜は真っ暗、それも鼻をつままれても…レベルの暗さだったが、新しく建ててる家はもれなく防犯目的で大光量のライト、それもセンサーじゃなくて常時照らしてるやつをつけるんで、もう別の道である。
えーと、田舎趣味、近代化反対、西洋人嫌い…と言われればそれまでだが、我々は質素で素朴なメキシコらしい田舎を選んだつもりだったのである。さらに、他国から移住してきて、日本の日本人みたいに自分が住む地域のことを愚痴ったり批判したりするわけにはいかない。移民は移民らしく、内政に干渉したり現地の文句を言ったりせず、ありがたく住まわせてもらうものである。その上、金もないのにぐうたら暮らすために移住してきた身としては、ストレスを感じながら生活するのはまっぴらごめんだ。
。。。というわけで、5月に相棒と相談して引っ越し先を検討した。今はメキシコ全土が移住先として人気で、隣のカンペチェ州(ユカタン以上の田舎)なら海沿いもまだ…と期待したが、移民 の増加と土地価格の上昇はそちらへも押し寄せていた。さらにユカタン州は安全だっていうんで引っ越してくるメキシコ人も多く、人口増加がどの街どの村へどう広がるか、しっかり検討しなければならない。我々には、東京のど真ん中なのに朝の通勤電車に4人しか乗ってないような静かなところへ引っ越したら数年後には開発の嵐に襲われた…という失敗歴がある(月島のあたりです、豊洲なんか野原だったのに)。
しっかり検討しなければ、前回の二の舞になる、ただ好きなところへ引っ越すわけにはいかない。ポイントは、① 人気の海の近くじゃなくて内地(ついでに土地信託が必要なくなる)、② 有名な遺跡などがなく、無名な状態が続きそうなところ、③ マヤ鉄道の駅から遠く。海の近くに居たかったがどのみちビーチはもう人だらけで独り占めは無理、平日からガイジン年寄りが散歩してたりメリダ人がジェットスキーで遊んでる状態。で、南部の村の一つに絞った。同じ州内の引越なんで車のナンバープレートや運転免許の変更がなく、内陸なんで土地を買うのに余計な手続きもない。
何度か行って新たに買う土地の目星がついたので、今住んでる家を売りに出してから3ヶ月。ようやく売れました、万歳。時間がかかった理由の一つは為替変動。円と同じく米ドルとカナダドルも、対メキシコペソで爆下げしている。4、5年前?の3分に2近くまで落ちた。不動産屋曰く買い控えたり様子見したりしているらしい。
それから、最近になって移住してくる大勢ってのは、以前我々が享受していたメキシコの田舎でなく本国と変わらない便利さで自分たちは苦労のないところの、憧れの家に住むのを望む。我々が来た頃は、皆しっかり調べて不便でインフラも整ってないのを承知で来ていたが、今はそうじゃない。我々みたいに「こんな発展途上国の僻地なんだから不便さは我慢。自然の中のでっかい土地さえあれば!」とは考えない。高性能井戸+家の水回りの水圧を上げるためのポンプ+ソーラーパネルと蓄電池…で断水と停電対策をがっつりしてあって、プールがあって、塀で囲んであって侵入予防の監視カメラなどもついてて、ここの自然な環境でなくヤシを植えた小洒落た庭があって、比較的土地が狭くてもきれいな家が人気。金持ちはウォーターフロント限定。貧乏人(なんと借金してまで移住してくる年寄りがいるらしい!)は、お洒落だけどチンケなアパート(マンション)。
うちは当初はもう一生引っ越すつもりなんかなかったから、無駄に大きいだけで間取りは日本人の家。風呂とは別のトイレや段差のある玄関があるくせに、各寝室にトイレやシャワーやウォークインクローゼットがない。まぁ、広いだけで日本のマンションみたいな家です。リフォームするにしろ買い手はちょっと悩むって感じ。
人が増えてきている間にここら辺の不動産価格と建設費が上がったおかげで、幸いそういう状況にあっても最後には高くで売れた。時間はかかったけど。
外国人は信託を組まないと不動産を購入できないので、その手続きに数ヶ月かかり、最終契約は少し先になる。その後は、ディープなマヤ文化にとっぷり浸かります。あ、その前にまた新築工事の記事を書くことになるか。。。