La Ermita の記録

メキシコ隠遁生活の私的記録と報告
 @ユカタン半島。

売り物件の探し方

2016年03月21日 | ユカタン諸々

地域までは絞れた。プログレソの西側の、チェレムからチュブルナプエルトまで(端から端まで10キロくらい)のどこか。

メキシコでは日本と違って、大手不動産屋の検索システムを見かけない。「何でも掲示板」といったサイトがいくつかあって、その中の「売ります買います」ジャンル(他には「教えます」や「仕事します」や出会い系など)の「不動産」項目に載っている。国選びの段階から、他の情報収集もしながら対象地域の「出物をチェック」ってなことをしていた。写真も載ってるし、現地の雰囲気と相場を知るのに重宝した。ネット様さま。

何でも掲示板の不動産ジャンルでは、業者取扱の物件か一般個人のアナウンスか、見てすぐわかるようになっている。友達から個人同士の「直取引も多い」と聞いていたとおり、個人名でのアナウンスも多い。でもあとでわかったのは、こちらでは法人にしていない不動産業の人が多いし法人にしていても重要なのは担当者本人なので、個人名でのアナウンス=「一般人が自宅売ってる」とは限らない。当然ながら、一般人だとそのまま直取引になり、不動産屋に払うコミッションがないのでその分安い値段で売っていることが多い。

 <何でも掲示板>

何でも掲示板の他にも、不動産開発業社組合みたいな団体が運営しているサイトもあるにはあった。が、当初は相場や地域の雰囲気が分かれば十分で、地域名と予算上限くらいを入力して、検索結果の上から10件くらいを見れば十分だったので、気が付かなかった。プログレソの西側に地域が絞れた段階でちょっと見てみたが、どのみち、我々のニーズに合うような物件より業者間取引用地や集合住宅などが多かったので、結局「なんでも掲示板」を頼りにしていた。

3月に入って、条件に合う検索結果(売地)を実際に見に行こうということになった。とりあえず持ち主に連絡しないで、周りから眺めるだけ。その頃には仲良くなっていたご近所さん(以後、Lさんと呼ぶ)がたまたま土建屋で、家の新築工事を受注したいのか(まあ、絶対そう)、ついて行ってやると言う。

目星をつけていたところは、10x40メートルの土地2つ、30万ペソ。ところが、L氏に聞いても「合計30万ペソなのか、かける2で60万なのか」イマイチわからない。書き言葉が大の苦手でスペルもよく間違ってるメキシコ人らしいアナウンスってわけですね。

「そのへんの相場で判断つくだろ」と言われそうだが、それがつかないんですよ、奥さん。相場はあるにはあるが、カナダ人(例によってエクスパッツの代名詞です)相場とメキシコ人相場はずいぶん違う。平気で倍ぐらい違うのもある。さらに、エヒードと呼ばれる農業共同体所有の土地の相場ってものもある。エヒードの説明を始めると話がメキシコ革命にまでつながるんだが、買い手として必要な知識としては、簡単に言うと「現システムの登記がなされてない土地」です。

これは、めちゃくちゃ安い! メキシコ人相場の土地の広さ3倍で金額3分の一なんて物件がゴロゴロ。が、安い分、トラブルになる可能性も高いらしい。トラブルの例としては、

1. 共同所有で個人の区割がないので、境界線でもめる。
2. 共同所有者の中からよそ者に売るなと言う人が出てもめる。
3. 買う部分を合意できても、通り道だの何だのともめる。
4. 買ったところだけ新しい登記に変えるのに何年もかかる。

別の友達は、4.に15年かかったと話していた。あとは、この国のことなんで、もめ事がエスカレートして銃撃戦になるなんてこともあるかもしr(以下自粛)。

さて、地域選びで走っていて気づいたように、どのサイトにも載ってない物件も結構ある。敷地にビニール看板や手書きの板っきれを掲げていたり、壁にそのまま手書きしてあったり。2つで30万?の人が電話に出ないので、Lさんとそのへんを回ってみることにした。

最初に10x40メートル・30万ペソという看板があって、商売好きのLさんは三面道路ってとこを気に入った。我々は幅10メートルじゃ「家建てたら風が抜けない」のが嫌なので、しょぼいロケーションでも広い土地を希望。

話しながら歩いていったら、キレーな更地を囲んでいる鉄条網に、ビニール看板を発見。ビーチから2ブロック。後方も小道に面している。左隣には2階建の小洒落た家が建っていて、右隣はこれまた空き地。そのまた隣も空き地だが、電話会社のでっかい移動アンテナが立っている。これは良さげだが高いか?

Lさんが電話してみるとおばさんが出て、800平米(20x40メートル)で45万ペソだという。看板以外に「売っている」という意思表示はどこにもしていないという。

一旦帰ってLさんと検討して、とにかく買う気があると伝えることにした。すぐにまたおばさんに電話して、翌日にはおばさんと会って登記書類を見せてもらい、「じゃあ弁護士に連絡を…」というところまで話が進んだ。

Lさんと我々はさっそく、おばさんが他の人と話をしないように現場に戻ってビニール看板を引っ剥がしてきた。


シサル

2016年03月09日 | ユカタン諸々

ユカタン半島北部の海岸線を東西50キロほど見学し、消去法ながら土地探しを始める地域が絞れたんだが、半島のほぼ北西端に位置するシサルという町(こちら参照)が残っていた。別に残す必要はないんだけど、複数のメキシコ人に勧められたので、一応見に行くことにする。

彼らには「メキシコさを失っていない、海の近くののどかなところ」という我々の好みを伝えてあったが、シサルは「静かで小さい村、海がきれい」と言う。厳密にはのどかと静かは微妙に違うんだが、スペイン語が怪しいせいで絶対きちんと伝わってない。でもまあ、個人の好みというのは日本人同士でも正確には伝わらないことがあるから、しょうがない。なんで伝わってないとわかったかというと、シサルと一緒に勧められたのが、隣のキンタナロー州の2大観光地からたいして離れてない町とか、それこそエクスパッツだらけのハリスコ州プエルト・バジャルタとかだったから。

リゾートっぽい「落ち着ける」と、本当にのどかってのは、ぜんぜん違う。こっちは「隣ん家になってるマンゴーとうちのパパイヤを物々交換する」とか「海に散歩に行ったらちょうど漁から帰ってきた人たちがいて、メキシコ人が食べないんで売り物にならない魚をもらう」とか、のどかで貧乏くさい生活が望みなのである。なのに彼らは、トキオから来たんだからそれなりに……と余計な気を回して、小洒落た町を勧めてくる。

ありがとう、ストリートビュー。そんなところへいちいち見学しに行って、「これ違う」と無駄な旅費を使わずに済んだ。けどまあ、シサルはメリダから40キロくらいなんで、「メリダ周辺を知っておく」ためにも行っておこうと思ったのである。ほら、将来、金がなくなったらガイドかなんかするかもしれないから。

シサルへは、プログレソからは行けない。うちからだと一旦メリダ中心部に向かって少し南下して、環状線をぐるっと回って、そこから国道(州道?)を北西に向かって走る。えーと、東京で言うと、「足立区から環七に出て、板橋あたりから朝霞に向かう」って感じでしょうか。

シサルまで行く途中にウヌクマという村がある。ユカタン州スポーツ週間みたいなときに、柔道部門の大会がそんな辺鄙なところで行われてたのでなぜかと思ったら、日本人の柔道の先生が住んでるらしい。ちなみにメリダでは、たまーにいる観光客以外、日本人を一向に見かけない。ちゃんと日本人がやってそうなレストランもあるので、いるにはいると思う。

というか、アジア人がそもそも少ない。メリダ人は「中国人がいっぱいいる」と言うけど、銀座を知ってる我々にしたら「いない」に等しい。ちなみに日本大使館から来るメールには「犯罪被害に遭わないためには目立たないこと」と書いてあるが、ここでニホンジンが目立たないのはとうてい無理。

さて、そのシサル。あまり気に入らなかった。海はきれいで(同じメキシコ湾でも少〜し色が違う)、ビーチもきれいで、町ものどかなんだが、別にここまでメリダから離れなくても……という感じ。シサルまでの道はメキシコクオリティの舗装の片側一車線で、途中いくつかの村を抜けることもあって、何しろ時間がかかるんです。

売ります買いますサイトなんかを見てても「絶対にカナダ人(外人)に売りつけようとしてるだろ!」みたいな売地ばっかり出ているので最初からどうかなぁ〜と消極的だったんだが、やっぱり気に入らなかった。

カナダ人向けというのは、プログレソ東側で売ってるような、何もないでっかい土地を細かく区切って売りに出してるロットのことです。「幅10メートル・奥行90メートルで、一番奥はビーチフロント、だから高くて当然!」みたいな土地。そんなのが横にズラ〜っと並んでる。東側同様、「誰も買わないか家なんか建てに来ないで、自分たちだけポツーンと暮らしてるってのが永遠に続く」んなら、本当の隠遁生活っぽくていいけど。

ちなみに、ユカタン州はメキシコで一番安全で、最近他の州からメリダに引っ越してくる人が多いらしい。その上エクスパッツも来るんで、どんどん人口が増えていて、海に近い北部はいい投資と言われてるそうです。カンクンあたりは暴騰したんで、こっちならまだ!ってことですね。シサルはいかにも「来れ、投資家!」みたいでちょっと嫌。

まあ、自分たちも他から来た人間には変わりないんだが、まじめにユカタンが気に入ったんで、彼らとは一線を画したいという気持ちがあるわけですよ。エクスパッツのように「物価安い、海きれい、メキシコ人をアゴで使えばいろいろ解決」みたいな気に入り方じゃないんです。マヤ文化が色濃く残ってることとか、米国のケツばっかり追っかけてないこととか、米国に対する憧れとコンプレックスの複雑な感情が他の州より薄いとか、歴代大統領のうちで個人的に気に入ってる人が所属する党が強い地域とか、サッカーより野球が盛んなこととか。。。

まあ、そんなことですけど、そういう「好みに合う」ってことが、暮らしていくにあたって大きくものを言うと思いますよ。日本を出る前、「海外移住? 物価とか医療環境とか治安とか、よーく調べたほうがいいですよ。最初に3ヶ月ほど長期トライアルステイしてみるべきですよ」などと言われたが、しゃらくさい。我々には国や居住地の個性のほうが重要。

とにかく、かくしてシサルは却下された。

 <桟橋。きれいなところではある>