メキシコ人は、まあとにかく家族とその誕生日が大切な人々。友だちもしょっちゅう「いついつは誰それの誕生日の集まりがある」と言ってる。スペイン語のファミリアは辞書では家族だが、どっちかというと親戚も含めての一族で、いとこの夫とかも家族に含まれる。基本カトリック信者なんだが離婚再婚も多くて、おじさんの今の彼女とかも入るんで、日本語の家族とは全然違う。
で、そのそれぞれの方々の誕生日。えーとですね、私はメキシコに来て、音楽と誕生日が嫌いになった。いっつもだしうるさいし面倒なんで。
でも、仲良しに誘われたら行く。彼らは大体メリダに住んでるので、そういうときくらいしか会わないし。今回は、このブログの初期の重要登場人物Lさん(最初に住んだメリダの借家の斜向かいに住んでいた一家の主人、うちを建てたときの現場監督)のお母さんの誕生日会であった。
彼らの一族は、時期はいろいろ(40年前〜10年前くらい)だが、危ないタバスコ州からメリダに引っ越してきた。ユカタン人の多くは、タバスコ人と言えば粗暴で下品で…というイメージを持っている。まぁ、最近は槍玉に上がりがちなステレオタイプと言えばそうなんだけど、彼ら一族に限って言えば、当たっている。そのお母さんは絵に描いたような荒くれ肝っ玉母ちゃんで、私と実に気が合う。
彼女は近所で料理を売っていて(メキシコでよくある商売パターン。店舗など構えず自宅の台所で作ってテキトーに声をかけてほしい人に売る)、腕はピカイチである。なので、自分の誕生日であっても、作るのは彼女。
で、今回出てきたバルバコアのスープにはたまげた。メキシコで食べて美味しかったものベスト3に躍り出た。
左は玉ねぎとシラントロ(パクチー)の薬味(右の写真の奥の皿)を入れたバージョン。最初はまず味見と思って入れなかったらそれが正解であった。ちなみにライムも添えられてたけど、これも入れないで正解。
一口食べてショックが収まってから、これなあに?と聞いたら、コンソメだと言う。いや、それは分かってんだけどwと日本人がウケてたら、コンソメを知らないんだと思ったらしく、ゆっくり「コン・ソ・メ」とかいって挙げ句の果てに紙に書き始める始末。楽しい人たちなんだが、そうじゃなくて。
正体はバルバコアという料理の過程でできたスープの味を整えたものであった。こちらがバルバコアですが、英語で言うとバーベキューなんで、写真じゃ分かりにくいと思う。ユカタンではあまり馴染みがないので詳しく知らないが、味付け肉を熱い石で焼く料理で、ああ、材料は違うけど、ここのコチニータと同じ系統ですね。
で、その肉の方は、タコスにして食べる。おっとスープの美味しさに驚いて写真を撮るのを忘れた。すみません。が、スープに夢中になっている間にトルティーヤに汁がしみて破れて困ってたら、Lさんが「そんなの最初から分かってる、こっちのほうがいい」と見せてくれた食べ方がこちら。
結構どんな料理でも、こういうふうにトルティーヤを使って食べる。セビチェとか。丸ごと焼いた鳥なんかも、トルティーヤで挟みながらちぎってそのまま口に入れる。あー、でも「粗暴な」食べ方なのか、実は知りません。もう最近はメキシコを知ってるとは言えないと自覚してるんで。
ちなみにバルバコアも、店で出てくるグリルかなんかで焼いたやつとは別物だった。めっちゃ美味しい。この母ちゃんはあなどれないんです。
スープの前に出てきたおつまみ(これも写真を忘れた)は、小さいタマルとソーセージのチポトレサルサ和えなど。そのタマルに緑の葉っぱの切れ端がいっぱい入っていて、でもユカタンのチャヤと味が違うと思ったら、チピリンだという。メキシコ南部の料理というと、大体これが入っていて、前から何だろうと思っていた。ユカタンは南部扱いですが、やっぱりちょっと別世界だと思う。
けど、これ、なんか田んぼのわきにはえてるレンゲみたいな匂いで、味もよくわかんないし、調べても別にチャヤみたいに栄養が豊富!というわけでもない。あまり食べると眠くなると、別の友達が教えてくれた。
その誕生日の彼女の妹の孫がケーキ屋(同じく自宅で作って売る商売)をしていて、この一族の集まりにはいつも彼女がケーキを作ってくる。メキシコなんでとても甘いが、丁寧に作ってある。今回は、周りのほのかな紫色は着色料で、普通のトレス・レチェスであった。彼女のは中に挟まってるクリームにカルーアを使っていて、とても美味しい。この紫のにうちの海のぶどうの汁なんか使ったらすごく美味しそうだと思ったけど、メキシコ人はあまり季節感とかに価値を見出さない(旬はあるけど、安くなる程度の話で、歳時記的なこととそのとき食べるものの材料の旬とのつながりが日本より薄い)んで、まあいいや。
えー、食べ物の話ばかりになったけど、そもそもメキシコの誕生日の集まりってのは、集まって美味しいもの食べて歌うたってケーキ食べる…です。基本は日本と同じだけど、その間ずっとうるさいんで(音楽ガンガン、おしゃべりギャーギャー)、疲れる。我々はだいたい「遠くまで帰る年寄り」なんで…と、メキシコ人にはまだ序の口…な時間に失礼する。
きれいだけど、去年のように海藻がいなくてつまらない。