「第一印象*話し方」 第2回目の今日は「滑舌」のお話をいたします。
「滑舌」という言葉を耳にするようになったのは、ここ数年のことでしょうか。
聞くところによりますと、もともとは舞台用語だったものがアナウンサーの訓練で使われ、
やがてテレビ番組で芸能人が言い始めたことで、一般の人にも広まったようです。
手元の辞書にも載っていませんし、「かつぜつ」を変換しても「滑舌」とならないのは、
まだまだ普及の途中段階なのかも知れませんね。
滑らかに話せると「滑舌がよい」と言われ、逆に口がうまく回らず言葉が不明瞭になると、
「滑舌が悪い」とか「セリフを噛む」と言われますが、「噛む」も最近の造語でしょうか。
昔は、「セリフをとちる」と言ったものですが・・・。
滑舌を良くする訓練と言いますと「早口言葉」が挙げられますが、
速さを身につけるより、まずは一語一語を丁寧に正確に発音することをお勧めします。
同じく滑舌を良くする方法として知られているのが、
「あえいうえおあお かけきくけこかこ させしすせそさそ・・・」です。
たしかにCAのアナウンス訓練でも、秘書検定の面接対策講座でも行なわれていますが、
口の開閉パターンが決まっている上にストーリー性がないため、私などすぐに飽きてしまいます。
そこで、前回の「30文字の文」と同様に、お手軽な練習方法をお伝えしましょう。
たしか、どこかの劇団で取り入れられていた方法と記憶していますが、
すべての言葉を、母音の「あいうえお」だけで言う方法です。
たとえば「秘書検定」⇒「いおえんえい」
「ご報告いたします」⇒「おおおおう いあいあう」
「いたします」が「いやいやう」とならないためには、口の開け閉めをしっかり行なうこと。
滑舌が良いというのは、ひとつひとつの文字が正確に発音されていることです。
外国語の「リエゾン」のように、日本語にも「連声(れんじょう)」と言って、
銀杏=ぎん+あん=ぎんなん
反応=はん+おう=はんのう
など、前後の文字がくっついて変化する「連音」はありますが、
基本的には、それぞれの音が変わることなく、「あ」は「あ」と発音したいものです。
さすがに人前ではしませんが、ひとりでいる時に、目に入る文字を母音にして読んだりします。
オーバーなくらいに口をしっかり開け閉めして言った後で、子音を加えて言い直しますと、
たしかに発音が明瞭になっていますので、よろしければお試しください。
「あえいうえおあお・・・」にはストーリー性がないと申しましたが、
同じ「あいうえお」でも、色が見え、音が聞こえるような、北原白秋の詩をご紹介します。
情景を思い浮かべ、ひとつひとつの言葉を味わいながら、お読みになってはいかがでしょう。
水馬(あめんぼ)赤いな あいうえお 浮藻(うきも)に子蝦(こえび)も 泳いでる
柿の木 栗の木 かきくけこ 啄木鳥(きつつき) こつこつ 枯れけやき
大角豆(ささげ)に 酢をかけ さしすせそ その魚(うお) 浅瀬で 刺しました
立ちましょ 喇叭(らっぱ)で たちつてと トテトテタッタと 飛び立った
蛞蝓(なめくじ) のろのろ なにぬねの 納戸(なんど)に ぬめって なにねばる
鳩ぽっぽ ほろほろ はひふへほ 日向(ひなた)の お部屋にゃ 笛を吹く
蝸牛(まいまい)螺旋巻(ねじまき)まみむめも 梅の実 落ちても 見もしまい
焼栗 ゆで栗 やいゆえよ 山田に 灯のつく 宵(よい)の家
雷鳥 寒かろ らりるれろ 蓮花(れんげ)が 咲いたら 瑠璃の鳥
わいわい わっしょい わゐうゑを 植木屋 井戸換へ(いどがえ) お祭りだ
日本語って美しいですね。
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