[5月14日13時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子1階・ロビーラウンジ]
善場「え?霧生市に何があるか……ですか?」
食後のコーヒーと紅茶を啜る。
さすがは高級ホテルのそれらだけあって、味も香りも本格的だ。
私は善場係長に、霧生市について聞いてみた。
愛原「リサと高橋が気にしていたようなんです」
善場「リサが?」
リサ「いや、ミキからそんなLINEをもらっただけだよ。霧生市には『鬼の王』がいるって」
善場「ああ、そのことですか……」
愛原「えっ?何か御存知なんですか?」
善場「霧生市には、鬼王大社という大きな神社があったんですよ。東北地方から逃れて来た鬼の一族が霧生市に棲みついたそうですが、相変わらずの横暴ぶりを見せていたそうです」
愛原「これは誰かが退治しないといけませんな」
善場「そしたら、関東から1人の鬼の男がやってきて、その鬼の集団を1人で倒してしまったそうです」
愛原「鬼が鬼を倒す!?何ですか、それ!?」
善場「その鬼の男の目的は分かりませんが、見た目には年頃の若い男だったことから、結婚相手を探しに来たのではないかと言われています。人間の女性には興味が無かったそうで、近くに鬼の集団がいると聞いてきて、そこに鬼の女がいれば結婚相手に……とでも思ったのではないでしょうか」
愛原「実際にいましたか?」
善場「残念ですが、男ばかりの集団だったわけです。それで腹いせに倒したのだろうと言われています」
リサ「鬼あるある」
リサは大きく頷いた。
善場「何はともあれ、住民達はその鬼の男に感謝の念を抱き、また、その鬼の男が今度は襲って来ないよう、自ら酒や食べ物を進んで差し出し、鬼の男も村を襲うことはなかったそうです。いつの間にか鬼の男は何処へと立ち去り、住民達は鬼の男が滞在していた洞窟付近に神社を建立したという伝説です」
愛原「じゃあ、その神社には鬼の男はいないんですね?」
善場「……と、されていました」
愛原「されていた?」
善場「実はこれは近年になって手に入った情報なんですが、あの日……所長方がバイオハザードに巻き込まれた日ですね。当然、鬼王神社もゾンビが徘徊する場所と化していたそうですが、御堂から鬼の王が目覚め、徘徊していたゾンビ達を倒していたという目撃情報があるのです」
愛原「ええっ!?」
リサ「……それ、タイラント君じゃない?」
愛原「ええっ!?」
リサ「わたしに付き従ったタイラント君が言ってたんだけど、『“1番”の御嬢様には、別の<strong>神社</strongの者が付きます』って言ってたから」
愛原「何でそれを早く言ってくれなかったんだ?」
リサ「『1番』なんて嫌いだし、特に興味も無かったし、誰にも聞かれなかったから……」
愛原「じゃあ、ずっとその神社にはタイラントが御神体として祀られていたと?」
善場「それはまだ分かりません。ただ、バイオハザードが発生する数年くらい前から、急に神社の例大祭に、日本アンブレラが出資金を出すようになったと聞いています。御堂なんかも古くなってボロボロになっていたところ、日本アンブレラがポンと建て替え費用を寄付したのだとか……」
愛原「それもう、タイラントを御神体として祀るフラグじゃないですか」
リサ「あんな所にタイラント君、隠してたんだぁ……?」
リサは首を傾げた。
父親の上野医師から引き離されて、ずっと霧生市の研究所に閉じ込められていたとはいえ、ずっとその町にいたリサですらその理由が想像できないようだ。
善場「ここにもコネクションの影があるんですよ」
愛原「えっ?と、仰いますと?」
善場「コネクションの創始者は、元アンブレラの研究員だと言われています。そして、アジア方面では、その地に伝わる魔物や妖怪をBOW再現しようとして再現しようとしているわけです」
愛原「日本では、『鬼』を復活させようと……」
善場「ところが、既にここにいるリサがその片鱗を見せてしまい、『鬼の棲家』とされる東北地方に行けば、その末裔がいたりする。コネクションのアジア方面支部……なるものが存在していたとしたら、さぞ驚いたでしょうね。ヨーロッパですら、ヴァンパイアの末裔などいないのに」
愛原「ルーマニアのバイオハザードでは、ほとんど再現されたらしいですね?」
レイチェル「今では、『それこそが、実はコネクションの実験場だったのでは?』という意見もあります」
善場「そう思われても仕方が無い節がありますね。そのうち、ミア・ウィンターズを締め上げて吐かせるのでは?」
レイチェル「ヨーロッパ本部の事はワカリマセン……」
愛原「太平山美樹曰く、日本アンブレラの職員が彼女らの里までやってきて、『血を採らせてくれ』と頼んで来たことがあったそうです。もちろん、断ったらしいですが」
善場「賢明な判断でしたね。もしも了承したら、人食い鬼が復活、増産されるところでした」
愛原「霧生市の調査、もう1度しますか?」
善場「その必要があれば、そうしましょう。ただ、例の鬼王神社は、大山寺と違って被害が大きく、鳥居は崩壊、本殿も社務所も全壊または全焼している状態です。今さら調査しても、何も見つからないかもしれません。が、高橋容疑者が何か言っているのであれば、再調査を検討しても良いかもしれませんね」
愛原「その時は、私も同行させてください。私もまた、あそこで運命が大きく変わった人間です」
リサ「だったら護衛がいるでしょ?」
リサも手を挙げた。
善場「そうですね……。必要があると判断されたら、お願いするかもしれません。が、検討開始も含めて、まだかなり先の話になるでしょう。まずは所長の頭のチップの除去と、高橋容疑者への対応です」
愛原「はい」
善場「明日は8時頃にお迎えに参ります。それまでにホテルをチェックアウトしておいてください。……リサ達の方が先にチェックアウトですかね?」
愛原「そうです。6時48分発の特急に乗りますから」
善場「朝ラッシュの回避ですね。さすがです」
愛原「私がいない間、リサの『監視』はどうするんですか?」
リサ「また、新橋のホテル?」
善場「そこは私共にお任せください」
善場「え?霧生市に何があるか……ですか?」
食後のコーヒーと紅茶を啜る。
さすがは高級ホテルのそれらだけあって、味も香りも本格的だ。
私は善場係長に、霧生市について聞いてみた。
愛原「リサと高橋が気にしていたようなんです」
善場「リサが?」
リサ「いや、ミキからそんなLINEをもらっただけだよ。霧生市には『鬼の王』がいるって」
善場「ああ、そのことですか……」
愛原「えっ?何か御存知なんですか?」
善場「霧生市には、鬼王大社という大きな神社があったんですよ。東北地方から逃れて来た鬼の一族が霧生市に棲みついたそうですが、相変わらずの横暴ぶりを見せていたそうです」
愛原「これは誰かが退治しないといけませんな」
善場「そしたら、関東から1人の鬼の男がやってきて、その鬼の集団を1人で倒してしまったそうです」
愛原「鬼が鬼を倒す!?何ですか、それ!?」
善場「その鬼の男の目的は分かりませんが、見た目には年頃の若い男だったことから、結婚相手を探しに来たのではないかと言われています。人間の女性には興味が無かったそうで、近くに鬼の集団がいると聞いてきて、そこに鬼の女がいれば結婚相手に……とでも思ったのではないでしょうか」
愛原「実際にいましたか?」
善場「残念ですが、男ばかりの集団だったわけです。それで腹いせに倒したのだろうと言われています」
リサ「鬼あるある」
リサは大きく頷いた。
善場「何はともあれ、住民達はその鬼の男に感謝の念を抱き、また、その鬼の男が今度は襲って来ないよう、自ら酒や食べ物を進んで差し出し、鬼の男も村を襲うことはなかったそうです。いつの間にか鬼の男は何処へと立ち去り、住民達は鬼の男が滞在していた洞窟付近に神社を建立したという伝説です」
愛原「じゃあ、その神社には鬼の男はいないんですね?」
善場「……と、されていました」
愛原「されていた?」
善場「実はこれは近年になって手に入った情報なんですが、あの日……所長方がバイオハザードに巻き込まれた日ですね。当然、鬼王神社もゾンビが徘徊する場所と化していたそうですが、御堂から鬼の王が目覚め、徘徊していたゾンビ達を倒していたという目撃情報があるのです」
愛原「ええっ!?」
リサ「……それ、タイラント君じゃない?」
愛原「ええっ!?」
リサ「わたしに付き従ったタイラント君が言ってたんだけど、『“1番”の御嬢様には、別の<strong>神社</strongの者が付きます』って言ってたから」
愛原「何でそれを早く言ってくれなかったんだ?」
リサ「『1番』なんて嫌いだし、特に興味も無かったし、誰にも聞かれなかったから……」
愛原「じゃあ、ずっとその神社にはタイラントが御神体として祀られていたと?」
善場「それはまだ分かりません。ただ、バイオハザードが発生する数年くらい前から、急に神社の例大祭に、日本アンブレラが出資金を出すようになったと聞いています。御堂なんかも古くなってボロボロになっていたところ、日本アンブレラがポンと建て替え費用を寄付したのだとか……」
愛原「それもう、タイラントを御神体として祀るフラグじゃないですか」
リサ「あんな所にタイラント君、隠してたんだぁ……?」
リサは首を傾げた。
父親の上野医師から引き離されて、ずっと霧生市の研究所に閉じ込められていたとはいえ、ずっとその町にいたリサですらその理由が想像できないようだ。
善場「ここにもコネクションの影があるんですよ」
愛原「えっ?と、仰いますと?」
善場「コネクションの創始者は、元アンブレラの研究員だと言われています。そして、アジア方面では、その地に伝わる魔物や妖怪をBOW再現しようとして再現しようとしているわけです」
愛原「日本では、『鬼』を復活させようと……」
善場「ところが、既にここにいるリサがその片鱗を見せてしまい、『鬼の棲家』とされる東北地方に行けば、その末裔がいたりする。コネクションのアジア方面支部……なるものが存在していたとしたら、さぞ驚いたでしょうね。ヨーロッパですら、ヴァンパイアの末裔などいないのに」
愛原「ルーマニアのバイオハザードでは、ほとんど再現されたらしいですね?」
レイチェル「今では、『それこそが、実はコネクションの実験場だったのでは?』という意見もあります」
善場「そう思われても仕方が無い節がありますね。そのうち、ミア・ウィンターズを締め上げて吐かせるのでは?」
レイチェル「ヨーロッパ本部の事はワカリマセン……」
愛原「太平山美樹曰く、日本アンブレラの職員が彼女らの里までやってきて、『血を採らせてくれ』と頼んで来たことがあったそうです。もちろん、断ったらしいですが」
善場「賢明な判断でしたね。もしも了承したら、人食い鬼が復活、増産されるところでした」
愛原「霧生市の調査、もう1度しますか?」
善場「その必要があれば、そうしましょう。ただ、例の鬼王神社は、大山寺と違って被害が大きく、鳥居は崩壊、本殿も社務所も全壊または全焼している状態です。今さら調査しても、何も見つからないかもしれません。が、高橋容疑者が何か言っているのであれば、再調査を検討しても良いかもしれませんね」
愛原「その時は、私も同行させてください。私もまた、あそこで運命が大きく変わった人間です」
リサ「だったら護衛がいるでしょ?」
リサも手を挙げた。
善場「そうですね……。必要があると判断されたら、お願いするかもしれません。が、検討開始も含めて、まだかなり先の話になるでしょう。まずは所長の頭のチップの除去と、高橋容疑者への対応です」
愛原「はい」
善場「明日は8時頃にお迎えに参ります。それまでにホテルをチェックアウトしておいてください。……リサ達の方が先にチェックアウトですかね?」
愛原「そうです。6時48分発の特急に乗りますから」
善場「朝ラッシュの回避ですね。さすがです」
愛原「私がいない間、リサの『監視』はどうするんですか?」
リサ「また、新橋のホテル?」
善場「そこは私共にお任せください」