[7月25日08:15.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 スーパーホテル仙台・広瀬通り1Fフロント→6F客室]
朝食を終えて部屋に戻ろうとすると、フロントにいた支配人に呼び止められた。
支配人:「あっ、愛原様。ちょっとよろしいでしょうか?」
愛原:「はい?」
何だろう?
もしや今朝方のリサの変化がバレてしまったのだろうか?
それとも、バイキング朝食の食べ過ぎで別料金徴収とか?
支配人:「愛原様に宅配便が届いてございます」
愛原:「私に?」
受け取って見ると、それは善場主任からだった。
伝票を見ると、通常の宅配便ではなく、かなり急ぎのサービスで送られて来たのが分かる。
昨日に出して、今日の1番早い時間に届けるサービスがあるだろう?
あれだ。
1番早い時間で8時ぐらいだったから、正にそれで到着したのだろう。
もちろん、その分、料金は割高である。
そこまでして送って寄越したものって、何だろう?
茶封筒で届いたので、書類か何かのようだが……。
高橋:「何ですかね、先生?」
愛原:「さあ……」
取りあえず私はそれを受け取って、一旦部屋に戻ることにした。
愛原:「何が入っているだろう?」
開けてみると、それはANAの航空券だった。
愛原:「!?」
3人分あり、路線は仙台から成田となっている。
私は急いで善場主任に電話した。
愛原:「もしもし、善場主任ですか?」
善場:「愛原所長、おはようございます」
愛原:「おはようございます。今、荷物を受け取りました。これって、どういうことですか?」
善場:「所長方はまだ仙台市内にいますね?」
愛原:「まだホテルの中です」
善場:「ヴェルトロの下請け組織のアジトが摘発されたことは御存知だと思います」
愛原:「ええ。今朝方、ホテルのテレビで観ました」
善場:「その後の捜索で、ヴェルトロがリサを狙っているのが分かりました」
愛原:「リサを!?」
善場:「想定はしていました。リサは世界中で希少な、『持続的制御可能な上級BOW』なのです。分かりますか?テロ組織では高値で取引されるほどなのですよ」
愛原:「ええっ!?」
善場:「今回の下請け組織は、ヴェルトロからリサの強奪を依頼されていたようです。愛原所長達が東北地方へ行くことを突き止め、隣県にアジトを構えたと見ています」
愛原:「でも、その下請け組織……ヤング・ホーク団でしたっけ?そいつらは捕まったんじゃ?」
善場:「ヴェルトロはそれを見越して、いくつかのテロ組織に協力依頼していたようです。たまたま捕まったのは、そのうちの1つに過ぎません」
愛原:「それと、この航空チケットと何の関係があるんですか?」
善場:「押収した資料には、ヴェルトロは所長方の本日の動きを想定していて、特に『陸路を押さえろ』と指令を出しています。確かに通常、仙台から帰京するに当たっては、鉄道や高速道路を利用するのが一般的でしょう」
愛原:「確かに帰りは新幹線にしようと思っていました。コロナ禍でそんなに新幹線も混んでいないですし、仙台始発の新幹線なら自由席でも座れるだろうと思っていましたので……」
善場:「それを読まれたようですよ。あとは高速バスですね」
愛原:「バスはこの前体験したように、ジャックされる恐れがあるので、選択肢には入れてませんでしたが……」
善場:「今回は鉄道も危険ということです。もちろん、彼らがどのような手段でリサを強奪するつもりなのかは分かりません」
愛原:「主任はどのようなテロ組織が動いているのか、分からないのですか?」
善場:「一応、目星は付いています。だからこそ、航空便で帰京して頂きたいのです。そのチケット代はこちらで持ちますから」
摘発されたヤング・ホーク団は、主に航空機を使用したテロを得意としていたらしい。
しかしそんな彼らは昨日、摘発されてしまった。
他のテロ組織は爆弾テロや要人拉致などの前科があるという。
ヴェルトロが『陸路』と明言してしまった為に、却って空路は手薄なのではないかというのが善場主任らの見方だ。
海路についてだが、仙台~東京間の旅客便は存在していない。
貨物便は少なからず存在しているので、それに紛れて私達を帰京させるという案もあったそうだ。
実際、2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件も、元はと言えばバイオテロ組織が新型BOWエブリンを貨物船に便乗させて輸送していたところ、その船が現場近くの浅瀬に座礁したのが発端だという(更に言えば、その貨物船が座礁事故を起こした原因はエブリンが船内で暴走したからである)。
ただ、善場主任達が目星を付けているテロ組織の中にはシージャックを得意とするのも含まれており、もしかしたら彼らはヴェルトロの指示とは別に、独自に海路を押さえる恐れがあったので却下されたそうだ。
貨物船に紛れて移動するという案は、テロ組織でも考えるようなことだ。
その為か、最近はよほど船会社関係者に縁でも無い限り、貨物船への便乗者を断る傾向にあるそうだ。
愛原:「分かりました。飛行機は午後のようですね」
善場:「1日2往復しか飛んでいないのです。午前中の便は恐らく間に合わないと思い、午後便にさせて頂きました」
愛原:「きっとそうですね。分かりました。主任の指示に従います」
善場:「御理解が早く、助かります」
愛原:「しかし、出発までどうしたらいいでしょうね?まあ、航空機ですから早めに空港に行く方がいいとは思いますが……」
善場:「そうですね。なるべくなら、ホテルに留まって頂くのが1番なんですが……」
愛原:「10時までにはチェックアウトしないといけませんしね」
善場:「ですよね」
愛原:「分かりました。一応、少し早めに空港に行くようにしましょう。ただその場合も、結局は電車かバスで行くことになるとは思いますが……」
善場:「テロ組織は東京方面に向かう新幹線やバスは警戒するでしょうが、仙台空港に行く列車やバスについてはマークしないと思います」
愛原:「ですよね」
急な帰京方法の変更だった。
まさか、仙台~成田に航空路線があったとは。
国際線への乗り継ぎ用としての需要だろうか。
しかし今はコロナ禍で国際線が軒並み運休している中、よく飛んでいるものだ。
高橋:「リサは飛行機に乗せても大丈夫なんスよね?」
愛原:「大丈夫だろう。だってだいぶ前、八丈島から帰る時に乗ったからな」
高橋:「それもそうっスね」
なので、何の問題も無い。
……はずだ。
善場主任との通話が終わってから、私はどのように仙台空港へ行くか検討してみた。
バスにしろ電車にしろ、地方空港へ行くローカル線やバスなので、そんなに輸送量は大きくない。
つまり目立たないということだ。
一応、基幹となっているのは鉄道だろうな。
もしかしたら、ついでに押さえられているかもしれない。
だったら、まだバスの方が目立たないかもしれない。
バスについては最近になって新規参入してきたバス会社が運行しているものがあるし、仙台空港のある名取市や岩沼市の中心駅、名取駅や岩沼駅から路線バスもある。
さーて、どうしたものか……。
朝食を終えて部屋に戻ろうとすると、フロントにいた支配人に呼び止められた。
支配人:「あっ、愛原様。ちょっとよろしいでしょうか?」
愛原:「はい?」
何だろう?
もしや今朝方のリサの変化がバレてしまったのだろうか?
それとも、バイキング朝食の食べ過ぎで別料金徴収とか?
支配人:「愛原様に宅配便が届いてございます」
愛原:「私に?」
受け取って見ると、それは善場主任からだった。
伝票を見ると、通常の宅配便ではなく、かなり急ぎのサービスで送られて来たのが分かる。
昨日に出して、今日の1番早い時間に届けるサービスがあるだろう?
あれだ。
1番早い時間で8時ぐらいだったから、正にそれで到着したのだろう。
もちろん、その分、料金は割高である。
そこまでして送って寄越したものって、何だろう?
茶封筒で届いたので、書類か何かのようだが……。
高橋:「何ですかね、先生?」
愛原:「さあ……」
取りあえず私はそれを受け取って、一旦部屋に戻ることにした。
愛原:「何が入っているだろう?」
開けてみると、それはANAの航空券だった。
愛原:「!?」
3人分あり、路線は仙台から成田となっている。
私は急いで善場主任に電話した。
愛原:「もしもし、善場主任ですか?」
善場:「愛原所長、おはようございます」
愛原:「おはようございます。今、荷物を受け取りました。これって、どういうことですか?」
善場:「所長方はまだ仙台市内にいますね?」
愛原:「まだホテルの中です」
善場:「ヴェルトロの下請け組織のアジトが摘発されたことは御存知だと思います」
愛原:「ええ。今朝方、ホテルのテレビで観ました」
善場:「その後の捜索で、ヴェルトロがリサを狙っているのが分かりました」
愛原:「リサを!?」
善場:「想定はしていました。リサは世界中で希少な、『持続的制御可能な上級BOW』なのです。分かりますか?テロ組織では高値で取引されるほどなのですよ」
愛原:「ええっ!?」
善場:「今回の下請け組織は、ヴェルトロからリサの強奪を依頼されていたようです。愛原所長達が東北地方へ行くことを突き止め、隣県にアジトを構えたと見ています」
愛原:「でも、その下請け組織……ヤング・ホーク団でしたっけ?そいつらは捕まったんじゃ?」
善場:「ヴェルトロはそれを見越して、いくつかのテロ組織に協力依頼していたようです。たまたま捕まったのは、そのうちの1つに過ぎません」
愛原:「それと、この航空チケットと何の関係があるんですか?」
善場:「押収した資料には、ヴェルトロは所長方の本日の動きを想定していて、特に『陸路を押さえろ』と指令を出しています。確かに通常、仙台から帰京するに当たっては、鉄道や高速道路を利用するのが一般的でしょう」
愛原:「確かに帰りは新幹線にしようと思っていました。コロナ禍でそんなに新幹線も混んでいないですし、仙台始発の新幹線なら自由席でも座れるだろうと思っていましたので……」
善場:「それを読まれたようですよ。あとは高速バスですね」
愛原:「バスはこの前体験したように、ジャックされる恐れがあるので、選択肢には入れてませんでしたが……」
善場:「今回は鉄道も危険ということです。もちろん、彼らがどのような手段でリサを強奪するつもりなのかは分かりません」
愛原:「主任はどのようなテロ組織が動いているのか、分からないのですか?」
善場:「一応、目星は付いています。だからこそ、航空便で帰京して頂きたいのです。そのチケット代はこちらで持ちますから」
摘発されたヤング・ホーク団は、主に航空機を使用したテロを得意としていたらしい。
しかしそんな彼らは昨日、摘発されてしまった。
他のテロ組織は爆弾テロや要人拉致などの前科があるという。
ヴェルトロが『陸路』と明言してしまった為に、却って空路は手薄なのではないかというのが善場主任らの見方だ。
海路についてだが、仙台~東京間の旅客便は存在していない。
貨物便は少なからず存在しているので、それに紛れて私達を帰京させるという案もあったそうだ。
実際、2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件も、元はと言えばバイオテロ組織が新型BOWエブリンを貨物船に便乗させて輸送していたところ、その船が現場近くの浅瀬に座礁したのが発端だという(更に言えば、その貨物船が座礁事故を起こした原因はエブリンが船内で暴走したからである)。
ただ、善場主任達が目星を付けているテロ組織の中にはシージャックを得意とするのも含まれており、もしかしたら彼らはヴェルトロの指示とは別に、独自に海路を押さえる恐れがあったので却下されたそうだ。
貨物船に紛れて移動するという案は、テロ組織でも考えるようなことだ。
その為か、最近はよほど船会社関係者に縁でも無い限り、貨物船への便乗者を断る傾向にあるそうだ。
愛原:「分かりました。飛行機は午後のようですね」
善場:「1日2往復しか飛んでいないのです。午前中の便は恐らく間に合わないと思い、午後便にさせて頂きました」
愛原:「きっとそうですね。分かりました。主任の指示に従います」
善場:「御理解が早く、助かります」
愛原:「しかし、出発までどうしたらいいでしょうね?まあ、航空機ですから早めに空港に行く方がいいとは思いますが……」
善場:「そうですね。なるべくなら、ホテルに留まって頂くのが1番なんですが……」
愛原:「10時までにはチェックアウトしないといけませんしね」
善場:「ですよね」
愛原:「分かりました。一応、少し早めに空港に行くようにしましょう。ただその場合も、結局は電車かバスで行くことになるとは思いますが……」
善場:「テロ組織は東京方面に向かう新幹線やバスは警戒するでしょうが、仙台空港に行く列車やバスについてはマークしないと思います」
愛原:「ですよね」
急な帰京方法の変更だった。
まさか、仙台~成田に航空路線があったとは。
国際線への乗り継ぎ用としての需要だろうか。
しかし今はコロナ禍で国際線が軒並み運休している中、よく飛んでいるものだ。
高橋:「リサは飛行機に乗せても大丈夫なんスよね?」
愛原:「大丈夫だろう。だってだいぶ前、八丈島から帰る時に乗ったからな」
高橋:「それもそうっスね」
なので、何の問題も無い。
……はずだ。
善場主任との通話が終わってから、私はどのように仙台空港へ行くか検討してみた。
バスにしろ電車にしろ、地方空港へ行くローカル線やバスなので、そんなに輸送量は大きくない。
つまり目立たないということだ。
一応、基幹となっているのは鉄道だろうな。
もしかしたら、ついでに押さえられているかもしれない。
だったら、まだバスの方が目立たないかもしれない。
バスについては最近になって新規参入してきたバス会社が運行しているものがあるし、仙台空港のある名取市や岩沼市の中心駅、名取駅や岩沼駅から路線バスもある。
さーて、どうしたものか……。