[2月24日14:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]
平賀:「……このように『東京決戦』など、既にAI搭載のロボットが人間に牙を剝きつつあります。これまではそのようにプログラミングし、AIを故意に悪用した人間が裏側にいたのが原因ですが、私はそのような人間が現れなくても、いずれは人間に反旗を翻す事態が訪れると予測しています。それは何世紀も後ではありません。この21世紀に最中に訪れると考えております。しかし、萎縮して『それならもうAIの研究・開発を止めよう』というのは愚の骨頂です。我々人間は何も恐れることはありません。では、どうすれば良いのか?司法は人間が人間を取り締まるものです。それならば、悪いAIを良いAIに取り締まらせれば良い。正に、“ターミネーター”の世界ですね。ただ、あの世界とこっちの世界の大きな違いは、タイムマシンがこちらの世界には存在しないことなんですが」
科学館のイベントで、平賀が講演を行う。
それを事務所エリアの応接室で、モニタ越しに聴くは敷島。
敷島:「平賀先生の『ロックマンX理論』か。脆弱になった人類に代わって、暴走したロイドを制圧する為のロイドを造ろうというものだ。……と言いつつ、あのゲームと違って、こっちの人類はちゃんと予防線を張ること忘れてないんだがな」
エミリー:「ロックマンXの役をやらされるロイドは大変ですね」
敷島:「まあ、そうだな。実際は主人公以外に複数の……って、いや、オマエだよ!」
エミリー:「はい?」
敷島:「取りあえず、本物のロックマンXみたいなロイドができるまで、お前達マルチタイプが代わりにやるんだよ」
というか既に女ロックマンみたいなものだが。
エミリー:「私には荷が重いです」
敷島:「バージョン・シリーズから女帝陛下扱いされといて何を今更……。後でゾルタクスゼイアンのことは教えてもらうからな」
エミリー:「ですから、その時が来たらお教えしますと何度も申し上げているはずです」
敷島:「Siriみたいなこと言いやがって……」
平賀:「……以上で私の講演と致します。本日は御清聴、誠にありがとうございました」
敷島:「おっ、終わったみたいだぞ。お迎えに行くぞ」
エミリー:「はい」
敷島とエミリーは応接室を出た。
シンディ:「あっ、姉さん!犯人コイツたったわ!電気自動車の急速充電器、無断使用してたの!!」
バージョン4.0:「アァアァァァアァァァ……!」
エミリー:「取りあえず、バッテリー破壊しておけ」
シンディ:「はーい」
バージョン4.0:「オ、オ許シヲ!シンディ様!」
シンディ:「黙れ!この野郎!!」
バタバタとイベントホールに向かう敷島とエミリー。
敷島:「かつてのテロ用途ロボットも、オマエ達の手に掛かればポンコツ同然だな。オマエ達の存在は大きいぞ」
エミリー:「私達はプログラムに反したアホ共にツッコミを入れているだけなんですけどね」
敷島:「いや、だからそれをよろしく頼むと言ってるんだ」
イベントホールのバックヤードに行くと、平賀が汗を拭いて歩いて来る所だった。
敷島:「平賀先生、お疲れ様です!」
平賀:「敷島さん、わざわざ来てくれたんですか」
敷島:「先生の『ロックマンX理論』、実に冴え渡っていましたよ!この分だと、ノーベル賞間違い無しでしょう!」
平賀:「南里先生が取れなかったものを、自分が取れるとは思っていませんよ」
敷島:「弟子が師匠を越えてもいいと思いますよ。どうです?今夜はシースー(※)でも摘まみながら一杯?」
※芸能界用語で「寿司」のことです。てか、今でも言ってるのか?
平賀:「お付き合いしましょう。明日は都心大学で講義があるので、一泊することになりますしね」
今や平賀もDCJ(デイライト・コーポレーション・ジャパン)の外部取締役だ。
その多忙さは敷島以上である。
敷島:「先生の最新の理論、是非お聞きしたいですな」
平賀:「大したことないですよ。せいぜい、予防線はどうするかが凡そ決まったくらいです」
敷島:「うちのボーカロイド達のことですか」
平賀:「今までAIが人類に反旗を翻したことを想定した映画やゲームは存在しましたが、そのどれもが予防線を張っておらず、AIの暴走を許してしまったというものでした。それを踏まえ、自分はボーカロイド達に予防線の役割を果たして欲しいと考えているのです」
敷島:「ボーカロイドも随分種類が増えましたし、その布石はどんどん打たれてますよ」
平賀:「頼もしい限りです。ですが、量産機では心許ない。南里先生が直接開発した初期型に、秘密が隠されていることが判明しました」
敷島:「うちのミクのことでしょう?元は兵器として設計されていただけに、そういう秘密が……」
平賀:「いや、初音ミクだけではありません。MEIKOやKAITO、鏡音リン・レン、そして巡音ルカもです」
敷島:「うちの屋台骨達ですね。いつでも協力しますよ?整備を引き受けて下さっている以上は」
平賀:「ありがとうございます。その時は、よろしくお願い致します」
エミリーはこの2人、両雄とも言われる敷島と平賀の会話を聴きながら思った。
エミリー:(この両雄の目が黒いうちは、恐らくAI達も大人しくしているだろう)
と。
そして、
エミリー:(いかに両雄でも、まだ本当の恐ろしさに気づいていないようだ)
と。
エミリー:(いずれ気付く機会があるのか、それとも無いのか。或いは気付いた時には既に手遅れなのか。その計算は、私にもできない。ゾルタクスゼイアン……)
その『本当の恐ろしさ』とやらを教えることをしないエミリーは……。
エミリー:(私には荷が重いと言った意味を理解しないこの両雄……いや、やめておこう)
平賀:「館長に挨拶してきます」
敷島:「あっ、私も行きます。エミリー、車回してもらって」
エミリー:「かしこまりました。シンディはどうなさいますか?」
敷島:「あいつは今、アリスに付いてるだろ。アリスに任せるさ」
エミリー:「かしこまりました」
エミリーはバックヤードから、駐車場に止まっているハイヤーの所へ向かった。
平賀:「……このように『東京決戦』など、既にAI搭載のロボットが人間に牙を剝きつつあります。これまではそのようにプログラミングし、AIを故意に悪用した人間が裏側にいたのが原因ですが、私はそのような人間が現れなくても、いずれは人間に反旗を翻す事態が訪れると予測しています。それは何世紀も後ではありません。この21世紀に最中に訪れると考えております。しかし、萎縮して『それならもうAIの研究・開発を止めよう』というのは愚の骨頂です。我々人間は何も恐れることはありません。では、どうすれば良いのか?司法は人間が人間を取り締まるものです。それならば、悪いAIを良いAIに取り締まらせれば良い。正に、“ターミネーター”の世界ですね。ただ、あの世界とこっちの世界の大きな違いは、タイムマシンがこちらの世界には存在しないことなんですが」
科学館のイベントで、平賀が講演を行う。
それを事務所エリアの応接室で、モニタ越しに聴くは敷島。
敷島:「平賀先生の『ロックマンX理論』か。脆弱になった人類に代わって、暴走したロイドを制圧する為のロイドを造ろうというものだ。……と言いつつ、あのゲームと違って、こっちの人類はちゃんと予防線を張ること忘れてないんだがな」
エミリー:「ロックマンXの役をやらされるロイドは大変ですね」
敷島:「まあ、そうだな。実際は主人公以外に複数の……って、いや、オマエだよ!」
エミリー:「はい?」
敷島:「取りあえず、本物のロックマンXみたいなロイドができるまで、お前達マルチタイプが代わりにやるんだよ」
というか既に女ロックマンみたいなものだが。
エミリー:「私には荷が重いです」
敷島:「バージョン・シリーズから女帝陛下扱いされといて何を今更……。後でゾルタクスゼイアンのことは教えてもらうからな」
エミリー:「ですから、その時が来たらお教えしますと何度も申し上げているはずです」
敷島:「Siriみたいなこと言いやがって……」
平賀:「……以上で私の講演と致します。本日は御清聴、誠にありがとうございました」
敷島:「おっ、終わったみたいだぞ。お迎えに行くぞ」
エミリー:「はい」
敷島とエミリーは応接室を出た。
シンディ:「あっ、姉さん!犯人コイツたったわ!電気自動車の急速充電器、無断使用してたの!!」
バージョン4.0:「アァアァァァアァァァ……!」
エミリー:「取りあえず、バッテリー破壊しておけ」
シンディ:「はーい」
バージョン4.0:「オ、オ許シヲ!シンディ様!」
シンディ:「黙れ!この野郎!!」
バタバタとイベントホールに向かう敷島とエミリー。
敷島:「かつてのテロ用途ロボットも、オマエ達の手に掛かればポンコツ同然だな。オマエ達の存在は大きいぞ」
エミリー:「私達はプログラムに反したアホ共にツッコミを入れているだけなんですけどね」
敷島:「いや、だからそれをよろしく頼むと言ってるんだ」
イベントホールのバックヤードに行くと、平賀が汗を拭いて歩いて来る所だった。
敷島:「平賀先生、お疲れ様です!」
平賀:「敷島さん、わざわざ来てくれたんですか」
敷島:「先生の『ロックマンX理論』、実に冴え渡っていましたよ!この分だと、ノーベル賞間違い無しでしょう!」
平賀:「南里先生が取れなかったものを、自分が取れるとは思っていませんよ」
敷島:「弟子が師匠を越えてもいいと思いますよ。どうです?今夜はシースー(※)でも摘まみながら一杯?」
※芸能界用語で「寿司」のことです。てか、今でも言ってるのか?
平賀:「お付き合いしましょう。明日は都心大学で講義があるので、一泊することになりますしね」
今や平賀もDCJ(デイライト・コーポレーション・ジャパン)の外部取締役だ。
その多忙さは敷島以上である。
敷島:「先生の最新の理論、是非お聞きしたいですな」
平賀:「大したことないですよ。せいぜい、予防線はどうするかが凡そ決まったくらいです」
敷島:「うちのボーカロイド達のことですか」
平賀:「今までAIが人類に反旗を翻したことを想定した映画やゲームは存在しましたが、そのどれもが予防線を張っておらず、AIの暴走を許してしまったというものでした。それを踏まえ、自分はボーカロイド達に予防線の役割を果たして欲しいと考えているのです」
敷島:「ボーカロイドも随分種類が増えましたし、その布石はどんどん打たれてますよ」
平賀:「頼もしい限りです。ですが、量産機では心許ない。南里先生が直接開発した初期型に、秘密が隠されていることが判明しました」
敷島:「うちのミクのことでしょう?元は兵器として設計されていただけに、そういう秘密が……」
平賀:「いや、初音ミクだけではありません。MEIKOやKAITO、鏡音リン・レン、そして巡音ルカもです」
敷島:「うちの屋台骨達ですね。いつでも協力しますよ?整備を引き受けて下さっている以上は」
平賀:「ありがとうございます。その時は、よろしくお願い致します」
エミリーはこの2人、両雄とも言われる敷島と平賀の会話を聴きながら思った。
エミリー:(この両雄の目が黒いうちは、恐らくAI達も大人しくしているだろう)
と。
そして、
エミリー:(いかに両雄でも、まだ本当の恐ろしさに気づいていないようだ)
と。
エミリー:(いずれ気付く機会があるのか、それとも無いのか。或いは気付いた時には既に手遅れなのか。その計算は、私にもできない。ゾルタクスゼイアン……)
その『本当の恐ろしさ』とやらを教えることをしないエミリーは……。
エミリー:(私には荷が重いと言った意味を理解しないこの両雄……いや、やめておこう)
平賀:「館長に挨拶してきます」
敷島:「あっ、私も行きます。エミリー、車回してもらって」
エミリー:「かしこまりました。シンディはどうなさいますか?」
敷島:「あいつは今、アリスに付いてるだろ。アリスに任せるさ」
エミリー:「かしこまりました」
エミリーはバックヤードから、駐車場に止まっているハイヤーの所へ向かった。