[1月3日10:00.天候:晴 宮城県石巻市鮎川地区 ミヤコーバス鮎川港停留所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
民宿に一泊した後、その車で最寄りのバス停まで送ってもらった。
民宿からバス停に向かおうとすると、徒歩15分くらいは掛かる。
それを民宿のサービスで送ってもらったわけだ。
愛原:「結局、あの船は何だったんだろうなぁ?」
高橋:「大騒ぎになっていないところを見ると、やっぱりただの遊漁船だったんスかね?」
愛原:「さあなぁ……。とにかく明日、善場主任の所に新年の挨拶も兼ねて持って行こう」
高橋:「うっス」
待合室もベンチも無い空き地のような場所に、バス停がポツンと立っている。
そこでバスを待っていると、何だかパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
高橋:「相変わらずヤな音ですねー」
愛原:「オマエはな」
近くの住宅街のような所にパトカーが入って行き、そこでサイレンが止まった。
何か事件でもあったのだろうか?
震災からの復興も進んでいる、長閑な漁村といった感じの場所なのだが……。
しばらくして、空き地で待機していたバスがエンジンを掛けて、バス停に近づいて来た。
塗装は宮城交通(というか名鉄バスの傘下なので)の紅白のものだ。
車種は都内でも見かけるジェイ・バス製ボディの中型車。
意外なことに、こういうローカル線でもICカードが使えた。
こういう時、ICカードは便利だ。
地方の路線バスだと、運賃がいくら掛かるか分からないので、なかなか予め用意するということが難しい。
ここみたいに起点停留所なら、運転手に降りる停留所までいくら掛かるか聞けるが、途中から乗って途中で降りるとなるとなかなか聞きにくい(走行中は無論のこと、赤信号停車時でもちょっと……)。
正解はバス停に停車中に聞くのが良いらしい。
が、ローカル線だと、なかなか途中で乗り降りが無い為にそのタイミングを掴みにくいというネックがある。
こういう時、ICカードだと何千円かチャージしておけば降りる時に足りないなんてことはない(まさか高速バスじゃあるまいし、いくらローカル線とはいえ、一般道走行の路線バスで何千円も運賃を取る所なんてそうそう無いだろう)。
〔サンファンパーク、渡波駅前経由、イオンスーパーセンター石巻東店行きでございます〕
愛原:「渡波駅前で降りて、そこから石巻線だな」
高橋:「小牛田には行くんですか?」
愛原:「いや、今回はもういいだろう。石巻で降りて、そこから仙石東北ラインだな」
高橋:「そうですか……」
私達がそんなことを話していると、再びパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
それはバス停の前を通り過ぎて行った。
さっきのとは別のパトカーで、別の場所に行くみたいだ。
愛原:「なあ。マジで何かあったみたいだな?」
高橋:「連続空き巣事件でもありましたかね?ほら、よく田舎は玄関に鍵掛けないって言うじゃないですか」
愛原:「あー、そうだな。でも、うちの伯父さんちも、あの民宿も鍵は一応掛かってたぞ?」
もっとも、私達が早朝張り込みに行く際は開いたままではあったが。
ちゃんと帰って来た時に、鍵は掛けておいた。
発車の時間になっても、他の乗客は誰も乗ってこなかった。
正月三が日は、あまり外に出ないのだろうか。
〔発車致します。ご注意ください〕
バスはゆっくりとバス停を出発した。
〔ピンポーン♪ 毎度ミヤコーバスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはサンファンパーク、渡波駅前経由、イオンスーパーセンター石巻東店行きでございます。次は鮎川大町、鮎川大町でございます〕
バスは途中、パトカーが曲がっていった路地を通り過ぎる。
その先には赤色灯を点滅させて停車しているパトカーがいた。
近所の人達も何事かと見に行っている。
愛原:「一体、何があったんだろうな?」
いずれにせよ警察が出動している時点で、私達、民間探偵業者に出番は無い。
だが、後であの調査は実は緊急性が高かったことを知ることになる。
[同日11:18.天候:晴 石巻市渡波町 JR渡波駅→石巻線1632D列車先頭車内]
鮎川からここまで1時間以上掛かった。
県道2号線をひたすら進んで来た形となる。
〔「渡波駅前です」〕
このバス停でバスを降りる。
愛原:「あっ、そろそろ列車が来るぞ」
私は時計を見た。
バスのダイヤは、列車のそれと接続しているのだろうか?
JR石巻線は基本、Suicaには対応していない。
その為、紙のキップを購入することになる。
駅構内には自動券売機が1台だけある。
元々は有人駅で、窓口もあったようだが、今では無人駅となり、窓口があった場所は封鎖されている。
仙台駅までのキップを3枚買うと、それでホームに入った。
〔まもなく、上り列車が参ります。黄色い線まで、お下がりください〕
簡素な自動放送が流れると、構内踏切の警報機が鳴った。
この駅は石巻線の中で、最も東にある列車交換可能駅となっている。
その為、2番線が存在する。
その2番線へは1番線から構内踏切を渡って行く形になる。
もっとも、私達が乗る列車は1番線から出るが。
やってきた列車は2両編成の気動車だった。
2両で1編成のタイプである。
無人駅なので、先頭車の後ろの車両から乗る。
既にキップは購入済みなので、整理券を取る必要は無い。
そこそこ乗客は乗っていて、ボックスシートではなく、ロングシートに腰かけた。
列車交換可能駅とはいうものの、必ずしも全列車が交換を行うわけではないらしい。
なので、この列車はすぐに発車した。
愛原:「仙台駅に両親が来て、最後に一緒に昼食を取ろうということだ」
高橋:「いい御両親で羨ましいっス」
愛原:「俺は新型コロナもあるから、あまりそういうのは止めた方がいいって言ったんだけどな……」
高橋:「何気に、公一センセーも来てたりして?」
愛原:「無きにしも非ずってところだな」
昼食を取って、お土産を買って、あとは新幹線に乗るって感じか。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
民宿に一泊した後、その車で最寄りのバス停まで送ってもらった。
民宿からバス停に向かおうとすると、徒歩15分くらいは掛かる。
それを民宿のサービスで送ってもらったわけだ。
愛原:「結局、あの船は何だったんだろうなぁ?」
高橋:「大騒ぎになっていないところを見ると、やっぱりただの遊漁船だったんスかね?」
愛原:「さあなぁ……。とにかく明日、善場主任の所に新年の挨拶も兼ねて持って行こう」
高橋:「うっス」
待合室もベンチも無い空き地のような場所に、バス停がポツンと立っている。
そこでバスを待っていると、何だかパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
高橋:「相変わらずヤな音ですねー」
愛原:「オマエはな」
近くの住宅街のような所にパトカーが入って行き、そこでサイレンが止まった。
何か事件でもあったのだろうか?
震災からの復興も進んでいる、長閑な漁村といった感じの場所なのだが……。
しばらくして、空き地で待機していたバスがエンジンを掛けて、バス停に近づいて来た。
塗装は宮城交通(というか名鉄バスの傘下なので)の紅白のものだ。
車種は都内でも見かけるジェイ・バス製ボディの中型車。
意外なことに、こういうローカル線でもICカードが使えた。
こういう時、ICカードは便利だ。
地方の路線バスだと、運賃がいくら掛かるか分からないので、なかなか予め用意するということが難しい。
ここみたいに起点停留所なら、運転手に降りる停留所までいくら掛かるか聞けるが、途中から乗って途中で降りるとなるとなかなか聞きにくい(走行中は無論のこと、赤信号停車時でもちょっと……)。
正解はバス停に停車中に聞くのが良いらしい。
が、ローカル線だと、なかなか途中で乗り降りが無い為にそのタイミングを掴みにくいというネックがある。
こういう時、ICカードだと何千円かチャージしておけば降りる時に足りないなんてことはない(まさか高速バスじゃあるまいし、いくらローカル線とはいえ、一般道走行の路線バスで何千円も運賃を取る所なんてそうそう無いだろう)。
〔サンファンパーク、渡波駅前経由、イオンスーパーセンター石巻東店行きでございます〕
愛原:「渡波駅前で降りて、そこから石巻線だな」
高橋:「小牛田には行くんですか?」
愛原:「いや、今回はもういいだろう。石巻で降りて、そこから仙石東北ラインだな」
高橋:「そうですか……」
私達がそんなことを話していると、再びパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
それはバス停の前を通り過ぎて行った。
さっきのとは別のパトカーで、別の場所に行くみたいだ。
愛原:「なあ。マジで何かあったみたいだな?」
高橋:「連続空き巣事件でもありましたかね?ほら、よく田舎は玄関に鍵掛けないって言うじゃないですか」
愛原:「あー、そうだな。でも、うちの伯父さんちも、あの民宿も鍵は一応掛かってたぞ?」
もっとも、私達が早朝張り込みに行く際は開いたままではあったが。
ちゃんと帰って来た時に、鍵は掛けておいた。
発車の時間になっても、他の乗客は誰も乗ってこなかった。
正月三が日は、あまり外に出ないのだろうか。
〔発車致します。ご注意ください〕
バスはゆっくりとバス停を出発した。
〔ピンポーン♪ 毎度ミヤコーバスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはサンファンパーク、渡波駅前経由、イオンスーパーセンター石巻東店行きでございます。次は鮎川大町、鮎川大町でございます〕
バスは途中、パトカーが曲がっていった路地を通り過ぎる。
その先には赤色灯を点滅させて停車しているパトカーがいた。
近所の人達も何事かと見に行っている。
愛原:「一体、何があったんだろうな?」
いずれにせよ警察が出動している時点で、私達、民間探偵業者に出番は無い。
だが、後であの調査は実は緊急性が高かったことを知ることになる。
[同日11:18.天候:晴 石巻市渡波町 JR渡波駅→石巻線1632D列車先頭車内]
鮎川からここまで1時間以上掛かった。
県道2号線をひたすら進んで来た形となる。
〔「渡波駅前です」〕
このバス停でバスを降りる。
愛原:「あっ、そろそろ列車が来るぞ」
私は時計を見た。
バスのダイヤは、列車のそれと接続しているのだろうか?
JR石巻線は基本、Suicaには対応していない。
その為、紙のキップを購入することになる。
駅構内には自動券売機が1台だけある。
元々は有人駅で、窓口もあったようだが、今では無人駅となり、窓口があった場所は封鎖されている。
仙台駅までのキップを3枚買うと、それでホームに入った。
〔まもなく、上り列車が参ります。黄色い線まで、お下がりください〕
簡素な自動放送が流れると、構内踏切の警報機が鳴った。
この駅は石巻線の中で、最も東にある列車交換可能駅となっている。
その為、2番線が存在する。
その2番線へは1番線から構内踏切を渡って行く形になる。
もっとも、私達が乗る列車は1番線から出るが。
やってきた列車は2両編成の気動車だった。
2両で1編成のタイプである。
無人駅なので、先頭車の後ろの車両から乗る。
既にキップは購入済みなので、整理券を取る必要は無い。
そこそこ乗客は乗っていて、ボックスシートではなく、ロングシートに腰かけた。
列車交換可能駅とはいうものの、必ずしも全列車が交換を行うわけではないらしい。
なので、この列車はすぐに発車した。
愛原:「仙台駅に両親が来て、最後に一緒に昼食を取ろうということだ」
高橋:「いい御両親で羨ましいっス」
愛原:「俺は新型コロナもあるから、あまりそういうのは止めた方がいいって言ったんだけどな……」
高橋:「何気に、公一センセーも来てたりして?」
愛原:「無きにしも非ずってところだな」
昼食を取って、お土産を買って、あとは新幹線に乗るって感じか。