[4月24日11時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・教育資料館]
事務室で鍵を借りた愛原は、それで教育資料館入口のドアを開けた。
元はれっときとした旧校舎であり、怪談の宝庫である。
木造2階建てであり、何度も取り壊しの計画が立ったのだが、その度に祟りのような現象があり、何度も頓挫した。
その理由は現在、ただの怪奇現象ではなく、取り壊しを拒絶した特異菌の菌根が、関係者に胞子を吸わせて起こした幻覚・幻聴によるものだと判明している。
今はその特異菌も除菌され、怪奇現象はウソみたいに無くなっている。
このことから、今では取り壊し計画が再燃されようとしている。
愛原「“トイレの花子さん”がいたのは2階だな?」
リサ「うん、そう」
教育資料館として再生しているのは1階部分だけ。
2階部分は依然として立入禁止のままである。
しかし、今回はその2階に上がった。
1階はリニューアルされているが、2階は殆ど手つかずのままなので、かつての面影を色濃く残している。
さすがに朽ちた床板などは交換されているが。
リサ「“花子さん”がいるのは、奥から2番目の個室……」
愛原「そして、ここで斉藤早苗が首吊り自殺したというわけか」
高橋「それ自体は本当の話なんですね?」
愛原「ああ。最強の事故物件だよ」
特異菌の中には、そんな人間の残留思念を吸収し、具現化させる力を持つ者もいる。
“トイレの花子”さんが幽霊でありながら、実体があるように見えるのは、特異菌の持つ能力によるもの。
リサ「あっ!!」
木製の外側に開くドアを開ける。
この旧校舎は長らくの間、汲み取り式トイレであった。
新校舎(現校舎)が落成したのは1980年代。
その前から新校舎建設計画はあり、完成したら旧校舎は取り壊す予定だったので、最後まで水回りはリニューアルされなかったようである。
愛原「何だ!?」
中を覗くと、和式便器の横に1つの金庫が置いてあった。
その金庫は鍵式であった。
愛原「まさかこの鍵を……」
愛原は城ヶ崎が持っていたという鍵を鍵穴に差した。
そして……。
愛原「開いた……!」
愛原が金庫を開けた時だった。
それは、突然中から飛び出してきた。
愛原「うわっ!」
それは手首だけのモノ。
しかし、その手首は男の物のようにゴツく、黒カビだらけである。
まるで、モールデッドの手首のようだった。
そしてそれは、愛原の首を掴んだ。
愛原「ぐっ……!!」
高橋「て、てめっ!」
高橋は手持ちの銃を取り出したが、愛原に被弾してしまう恐れがあるので、手首だけを狙って撃つことはできない。
リサ「だぁーっ!!」
リサは両手の爪を長く鋭く伸ばすと、それで愛原の首を絞める手首を引き裂いた。
痛みを感じるのか、手首は愛原の首から離れた。
更にリサはその手首を何度も踏みつけた。
ようやく手首は、白く変色し、石灰化してバラバラに砕け散った。
どうやら本当に、モールデッドの手首だったようである。
リサ「先生、大丈夫!?」
愛原「あ、ああ……」
愛原は仰向けに倒れていたが、高橋の手を借りて、咳き込みながら何とか立ち上がった。
高橋「くそっ!何てトラップだ!誰だこんなもん仕掛けたの!?」
リサ「“トイレの花子さん”か、城ヶ崎かなぁ……」
愛原「それより、金庫の中身は!?」
リサ「あっ!」
個室の中は、昼間でも薄暗い。
また、1階は教育資料館として再生している為に通電しているが、2階は停電したままである。
その為、愛原はマグライトを照らした。
愛原「ん、無いじゃん!?」
一見して金庫の中には何も無かった。
リサ「あっ、待って。下の方に引き出しがあるよ?」
愛原「ん?」
リサが引き出しを開けると、その中には書類が入っていた。
リサ「これは……?」
愛原「ん?」
A5版サイズの茶封筒に入った書類。
そこには何故か、とある学習塾のGW特別講習のお知らせが入っていた。
高橋「何だこりゃ???」
愛原「学習塾の特別講習のパンフだな……。『中学受験コース』『高校受験コース』『大学受験コース』とか色々あるぞ」
高橋「何でこんな物が!?バカにしやがって!」
何かもっと他の重要な物を隠す為のカムフラージュではないかと思った愛原は、金庫の中をもっとよく調べてみた。
しかし、どこをどう見てもそれ以外に怪しい物は無かった。
愛原「そもそもこの金庫、前からあったか?」
リサ「無いよ。前に来た時は無かったよ」
愛原「すると、外から運び込まれたものか。どうやって?鍵は掛かってただろ?」
リサ「先生!窓の鍵が開いてる!」
愛原「えっ?」
外から覗かれない為の配慮か、窓は曇りガラスになっている。
明り取りと、換気用の窓として機能しているようだ。
確かに、窓の固定具が外れている。
愛原「たまたま誰かが閉め忘れたんじゃないのか?」
愛原はガラガラと窓を開けた。
窓の外は、現校舎の裏庭と、忘れ去られたかのように植わっている桜の木がある。
この桜の木も、“学校の七不思議”に何度か登場する曰く付きなのだとか。
バッ!
愛原「!!!」
と、突然、窓の上からぶら下がるかのように愛原の前に逆さに現れる女。
それは逆さ女でもサスペンデッドでもなく……白い仮面を着けて、おかっぱ頭の少女……。
それだけならリサと似ている……。
愛原「わぁーっ!?」
びっくりした愛原は後ろに仰け反った。
その弾みで、すぐ後ろにいた高橋にぶつかってしまう。
高橋「せ、先生!?」
その結果、逆将棋倒し的な状態になってしまった。
2人が仰向けに倒れたと同時に、仮面の少女はくるっと1回転して窓の桟に立ったかと思うと、すぐにジャンプして出て行った。
愛原「り、リサ!あいつを追えーっ!」
リサ「!!!」
リサは反射的に、自分も2階から飛び降りた。
鬼型BOW故、自分も2階から飛び降りたくらいでは何ともない。
リサと同じくらいの身体能力を、仮面の少女は持っているようだ。
そして、服装。
ここの旧制服かと思うようなセーラー服を着ている。
リサ「待てーっ!」
リサが仮面の少女を追うと、少女は校庭のど真ん中で立ち止まった。
そして振り向きざま……。
リサ「ぎゃあああああ!?」
リサは同じ、電撃技を使ってきた。
まともに食らったリサは、まさか自分が食らうとは思わず、体中を痺れさせた。
リサが感電している隙に、仮面の少女は学校の敷地外に出て行ってしまった。
事務室で鍵を借りた愛原は、それで教育資料館入口のドアを開けた。
元はれっときとした旧校舎であり、怪談の宝庫である。
木造2階建てであり、何度も取り壊しの計画が立ったのだが、その度に祟りのような現象があり、何度も頓挫した。
その理由は現在、ただの怪奇現象ではなく、取り壊しを拒絶した特異菌の菌根が、関係者に胞子を吸わせて起こした幻覚・幻聴によるものだと判明している。
今はその特異菌も除菌され、怪奇現象はウソみたいに無くなっている。
このことから、今では取り壊し計画が再燃されようとしている。
愛原「“トイレの花子さん”がいたのは2階だな?」
リサ「うん、そう」
教育資料館として再生しているのは1階部分だけ。
2階部分は依然として立入禁止のままである。
しかし、今回はその2階に上がった。
1階はリニューアルされているが、2階は殆ど手つかずのままなので、かつての面影を色濃く残している。
さすがに朽ちた床板などは交換されているが。
リサ「“花子さん”がいるのは、奥から2番目の個室……」
愛原「そして、ここで斉藤早苗が首吊り自殺したというわけか」
高橋「それ自体は本当の話なんですね?」
愛原「ああ。最強の事故物件だよ」
特異菌の中には、そんな人間の残留思念を吸収し、具現化させる力を持つ者もいる。
“トイレの花子”さんが幽霊でありながら、実体があるように見えるのは、特異菌の持つ能力によるもの。
リサ「あっ!!」
木製の外側に開くドアを開ける。
この旧校舎は長らくの間、汲み取り式トイレであった。
新校舎(現校舎)が落成したのは1980年代。
その前から新校舎建設計画はあり、完成したら旧校舎は取り壊す予定だったので、最後まで水回りはリニューアルされなかったようである。
愛原「何だ!?」
中を覗くと、和式便器の横に1つの金庫が置いてあった。
その金庫は鍵式であった。
愛原「まさかこの鍵を……」
愛原は城ヶ崎が持っていたという鍵を鍵穴に差した。
そして……。
愛原「開いた……!」
愛原が金庫を開けた時だった。
それは、突然中から飛び出してきた。
愛原「うわっ!」
それは手首だけのモノ。
しかし、その手首は男の物のようにゴツく、黒カビだらけである。
まるで、モールデッドの手首のようだった。
そしてそれは、愛原の首を掴んだ。
愛原「ぐっ……!!」
高橋「て、てめっ!」
高橋は手持ちの銃を取り出したが、愛原に被弾してしまう恐れがあるので、手首だけを狙って撃つことはできない。
リサ「だぁーっ!!」
リサは両手の爪を長く鋭く伸ばすと、それで愛原の首を絞める手首を引き裂いた。
痛みを感じるのか、手首は愛原の首から離れた。
更にリサはその手首を何度も踏みつけた。
ようやく手首は、白く変色し、石灰化してバラバラに砕け散った。
どうやら本当に、モールデッドの手首だったようである。
リサ「先生、大丈夫!?」
愛原「あ、ああ……」
愛原は仰向けに倒れていたが、高橋の手を借りて、咳き込みながら何とか立ち上がった。
高橋「くそっ!何てトラップだ!誰だこんなもん仕掛けたの!?」
リサ「“トイレの花子さん”か、城ヶ崎かなぁ……」
愛原「それより、金庫の中身は!?」
リサ「あっ!」
個室の中は、昼間でも薄暗い。
また、1階は教育資料館として再生している為に通電しているが、2階は停電したままである。
その為、愛原はマグライトを照らした。
愛原「ん、無いじゃん!?」
一見して金庫の中には何も無かった。
リサ「あっ、待って。下の方に引き出しがあるよ?」
愛原「ん?」
リサが引き出しを開けると、その中には書類が入っていた。
リサ「これは……?」
愛原「ん?」
A5版サイズの茶封筒に入った書類。
そこには何故か、とある学習塾のGW特別講習のお知らせが入っていた。
高橋「何だこりゃ???」
愛原「学習塾の特別講習のパンフだな……。『中学受験コース』『高校受験コース』『大学受験コース』とか色々あるぞ」
高橋「何でこんな物が!?バカにしやがって!」
何かもっと他の重要な物を隠す為のカムフラージュではないかと思った愛原は、金庫の中をもっとよく調べてみた。
しかし、どこをどう見てもそれ以外に怪しい物は無かった。
愛原「そもそもこの金庫、前からあったか?」
リサ「無いよ。前に来た時は無かったよ」
愛原「すると、外から運び込まれたものか。どうやって?鍵は掛かってただろ?」
リサ「先生!窓の鍵が開いてる!」
愛原「えっ?」
外から覗かれない為の配慮か、窓は曇りガラスになっている。
明り取りと、換気用の窓として機能しているようだ。
確かに、窓の固定具が外れている。
愛原「たまたま誰かが閉め忘れたんじゃないのか?」
愛原はガラガラと窓を開けた。
窓の外は、現校舎の裏庭と、忘れ去られたかのように植わっている桜の木がある。
この桜の木も、“学校の七不思議”に何度か登場する曰く付きなのだとか。
バッ!
愛原「!!!」
と、突然、窓の上からぶら下がるかのように愛原の前に逆さに現れる女。
それは逆さ女でもサスペンデッドでもなく……白い仮面を着けて、おかっぱ頭の少女……。
それだけならリサと似ている……。
愛原「わぁーっ!?」
びっくりした愛原は後ろに仰け反った。
その弾みで、すぐ後ろにいた高橋にぶつかってしまう。
高橋「せ、先生!?」
その結果、逆将棋倒し的な状態になってしまった。
2人が仰向けに倒れたと同時に、仮面の少女はくるっと1回転して窓の桟に立ったかと思うと、すぐにジャンプして出て行った。
愛原「り、リサ!あいつを追えーっ!」
リサ「!!!」
リサは反射的に、自分も2階から飛び降りた。
鬼型BOW故、自分も2階から飛び降りたくらいでは何ともない。
リサと同じくらいの身体能力を、仮面の少女は持っているようだ。
そして、服装。
ここの旧制服かと思うようなセーラー服を着ている。
リサ「待てーっ!」
リサが仮面の少女を追うと、少女は校庭のど真ん中で立ち止まった。
そして振り向きざま……。
リサ「ぎゃあああああ!?」
リサは同じ、電撃技を使ってきた。
まともに食らったリサは、まさか自分が食らうとは思わず、体中を痺れさせた。
リサが感電している隙に、仮面の少女は学校の敷地外に出て行ってしまった。