報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「ゴールデンウィーク初日」 1

2019-04-30 07:12:01 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月27日09:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島とシンディを乗せたハイヤーが豊洲アルカディアビルに到着する。
 今度は予め登録したハイヤーなので、特に事前の入構申請などは必要無い。
 但し、テナントビルたるこの建物の車寄せに到着するハイヤーの中では、敷島のは安い方かもしれない。
 何せベンツSクラスやトヨタ・センチュリーも発着する中で、敷島のはミライだからだ。
 もっとも、これとて新車で買えば700万円以上、つまりゼロ・クラウン並みの金額ではあるのだが。

 運転手:「お疲れ様でした」
 敷島:「ありがとう。後のことはよろしく」
 運転手:「かしこまりました。それでは11時半に、弊社のワゴンタクシーがお迎えに上がります」
 敷島:「よろしく」

 敷島はそう言ってハイヤーを降りた。

 警備員:「おはようございます!」
 敷島:「おはようございます。今日の役員、私だけでしょ?」
 警備員:「あ、はい。そうです」
 敷島:「ゴールデンウィークに出勤してくる役員さん、他の企業さんにはいないだろうなぁ」

 敷島はそう言って、シンディが先に乗り込んでいるエレベーターに乗り込んだ。

 敷島:「もっとも、俺達もこれから出かけるけどな」
 シンディ:「社長の場合はお仕事ですから」
 敷島:「他に役員さんがあそこを使わないということは、慌てる必要は無さそうだ」
 シンディ:「そうですね」

 多くの企業が入居しているテナントビル。
 敷島エージェンシーは、そのうちのワンフロアを賃貸しているだけに過ぎない。
 しかしVIP用車寄せはスペースに余裕があるわけではなく、朝はタイミングが悪いと手前で待たされることがある。
 なので、時間帯によっては出発用に使おうとすると断られることがある。

 敷島:「おはよう」
 鏡音リン:「あっ、しゃちょー!おはYo~!」
 鏡音レン:「おはようございます!社長!」
 敷島:「朝から元気がいいな」
 鏡音リン:「もち!充電100%」
 敷島:「そりゃあいい。といっても、出発は11時半だからそれまでゆっくりしてな」
 鏡音リン:「はーい」(^O^)/

 敷島はそう言うと、リンとレンの頭を撫でて社長室に入った。

 敷島:「メールだけで150通は来るから大変だ」
 シンディ:「それだけの立場ということですよ」

 シンディは給湯室からコーヒーを入れて来た。

 敷島:「今は、そうか」
 シンディ:「例の事件のことは何か?」
 敷島:「お前のメモリーを見せてもらったよ。前期型の時のな」
 シンディ:「ああ、あれですか」

 南里の葬儀の時、南里のライバルたるウィリアム・フォレストの名代としてシンディがやってきた。
 だがその時、シンディが持って来たのは『御霊前』でも『御仏前』でもなく、『御祝儀』であった。
 参列者が唖然とする中、悠然と立ち去るシンディ。
 だが、両目をギラリと光らせ、右手をマシンガンに変形させて追おうとするエミリーの画像が映っていた。

 シンディ:「私には……黒歴史ですけどね」
 敷島:「吉塚博士は香典を持って来て、そのまま焼香して帰っただけかと思っていたけど、しっかり参列していたんだな。お前のメモリーにしっかり映っていたよ」

 敷島がそう思っていたのは、エミリーのメモリーにはその画像しか残っていなかったからだ。
 どうやら吉塚博士は、エミリーのメモリーになるべく残らないよう、彼女の視界に入らないようにしていたらしい。
 しかしそこへ、まさかのシンディ(前期型)が登場。
 彼女のメモリーにはしっかり残ることになってしまう。

 敷島:「吉塚博士は1人で来たわけではなかった。どういう関係かは知らないが、子供が2人同行していた。多分、孫か何かだと思うけど」
 シンディ:「ロイドではないでしょうね。もしそうでしたら、私も姉さんも反応するはずですから」
 敷島:「そうだな。で、吉塚博士は寿命で死んだわけだが、問題は当時のこの2人の少年達だ。大きい方は当時10歳くらい。今なら、とっくに20代だ。井辺君よりも年下かもしれない」
 シンディ:「はい」
 敷島:「そして小さい方。こっちはまだうちのトニーくらいだ。まだ10代だろう。このコ達に接触したいと思う」

 最近になって吉塚博士は、わざわざ南里の為に静岡県富士宮市から老体をおして宮城県仙台市泉区まで行ったわけではなかったようだ。
 たまたま仙台市内またはその周辺に滞在している時、南里の死を知ってやって来ただけのようだ。
 では何故、たまたま滞在していたのか?
 恐らく親族がその辺りに住んでいて、それでいたのではないか。
 吉塚博士がどういう意図で2人の子供を連れて来たのか定かでないが、今となっては重要な証言者となるわけだ。

 敷島:「もちろんイベントの仕事も大事だが、それと並行できる所は並行したいと思う」
 シンディ:「かしこまりました。でも必ず、私か姉さんを同行させてくださいよ。もちろん、両方でもいいですけど」
 敷島:「分かってるよ」

[同日12:00.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 敷島達を乗せたワゴンタクシーが東京駅八重洲口に到着する。
 あくまでも契約はタクシー扱いというだけで、ハイヤーにも使えるミニバンタイプである。
 運転手はいつものハイヤーとは別人である。

 シンディ:「タクシーチケットで払います」

 シンディが料金の精算をしている間、敷島達は荷物を下ろす。

 敷島:「お前達の大事な部品や予備バッテリーが入ってるんだ。扱いは慎重にな」
 レン:「分かりました」
 リン:「衣装は?リン達の衣装は無いの?」
 敷島:「それは直接会場に届くことになっている。自分達の私物は自分で持ってもらうということだな」

 2人のボカロ姉弟は設定年齢14歳らしく、どちらもブレザーを羽織っている。
 え?公式のイラストの服じゃないのかって?
 あれは宣材写真のようなものだ。
 コンポジットに使う衣装をそのまま着るとは限らない。

 シンディ:「お待たせしました」
 敷島:「よし。じゃあ、行こうか」

 4人はゴールデンウィークでごった返す東京駅構内を進んだ。
コメント (3)
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“アンドロイドマスターⅡ” 「ゴールデンウィーク前日」

2019-04-29 20:07:21 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月26日18:00.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島のマンションの前に1台のハイヤーが到着する。

 運転手:「お疲れ様でした」
 敷島:「ありがとう」
 運転手:「明日から仙台へ御出張ですね」
 敷島:「うん。多分、しばらく戻って来ないと思うから、ゆっくり休んでてくださいよ」
 運転手:「恐れ入ります」
 敷島:「あ、でも一度会社に行ってから東京駅だから、明日までお願いするのか」
 運転手:「さようでございますね。お時間はいつもの時間でよろしいですか?」
 敷島:「うん、それで大丈夫」
 運転手:「かしこまりました」

 ハイヤーを降りると、シンディが傘を用意していた。
 エミリーはDCJにて整備中。
 こういう時はシンディが代役を果たす。
 かつてはシンディの方がメインだった。
 オーナーの登録が平賀から敷島に移ったことで、メインとサブが逆転した。
 それまでは南里の遺言で平賀が頑なにオーナー登録を続けていたのだが、当のエミリーは敷島を選んだこと、南里の遺言状は数通あり、内容に矛盾が発生していること(例えば『エミリーを墓場に持って行きたい』としながらも、別の遺言状には『エミリーは平賀君に譲る』とか書いてあったり)。

 シンディ:「月末も雨らしいですよ、社長」
 敷島:「困ったねー。イベント会場によっては、集客が天候に左右されるからなぁ……」

 ロイド達は傘を差さない。
 濡れても平気だからなのだが、さすがに建物に入る時にずぶ濡れでは困るので、ここでは傘を差しても良いことにしている。

 シンディ:「今日は二海がキッチン(メイド)をやっています」
 敷島:「まあ、お前はエミリーの代役だし、当のエミリーは整備中だから、そうなるか。オムライスでも作ってくれてるのかな?」
 シンディ:「よくお分かりで」
 敷島:「表向きはトニーの希望ということになっているが、メイドとして作らないと気が済まんということに最近気づいたよ」
 シンディ:「その割には『おいしくなるおまじない』を知りませんでしたね」
 敷島:「別にそこまでは求めていないからな?」

 エレベーターに乗って、部屋に向かう。

 シンディ:「富士宮の件はどうなりましたか?」
 敷島:「どうもこうもないさ。ロボットが爆弾を抱えて自爆した。ただ、それだけ。当のロボットがバラバラになっている状態じゃ、どうしようもないってさ」
 シンディ:「メモリーを回収して解析とかは?」
 敷島:「だから、それも復元できないほど黒焦げのバラバラだってことさ。せめて、犯人から犯行声明でも出してくれりゃいいんだがな」

 部屋の中に入る。

 敷島:「ただいまァ」
 二海:「お帰りなさいませ、社長」

 『御主人様』とは言わない。

 敷島:「大抵こういう場合、同時多発的に似たようなテロが他でも行われたりするのが、KR団のセオリーなんだが……」

 敷島はテレビを点けてニュース番組にチャンネルを合わせた。

 敷島:「今回はあれ以来、似たようなニュースが無い」
 シンディ:「そうですね」

 一応、ニュースでは包み隠さず、『国際ロボットテロ組織、KR団日本支部に所属していた吉塚広美博士宅で大規模な爆発』『ロボットが爆発したか?』などと報道していたが……。

 敷島:「吉塚博士はとっくに死んでいて、テロとは全く関係の無い親族だけが巻き込まれて、俺が無事と。本当に俺を狙ったテロだったのか?ぶっちゃけ、新幹線ごと爆破した方が組織的犯行なんだとしたら、名前が売れるだろうに……。新幹線は狙わず、直接家を狙った理由は……知らんと」
 シンディ:「社長。姉さんの整備は明日終了ですか?」
 敷島:「そうだ。俺達は東京駅から乗るが、アリスとエミリーは大宮から乗る」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「他に同行するのは?」
 シンディ:「鏡音リンとレンです」
 敷島:「マジかよ。騒がしくならないかねぇ?」
 シンディ:「あの2人には携帯ゲームをやらせておきますから」
 敷島:「それならいいが、今度はトニーが騒がないといいが……」
 シンディ:「お坊ちゃまは大人しい方ですから、恐らく大丈夫だと思いますが……」
 敷島:「そうかな」

 敷島が着替え終わると、二海が入って来た。

 二海:「失礼します。御夕食の用意が整いました」
 敷島:「ああ、今行く」

 私服に着替えた敷島は、ダイニングへ向かった。

 アリス:「ただいまァ」

 と、そこへアリスが帰って来る。

 アリス:「Oh,今日はやっぱりオムライスね」
 敷島:「お前も予想当たりかい」
 アリス:「誰よ?二海のプログラミング、アキバのメイド喫茶みたいにしたの?」
 敷島:「製作者は平賀先生……」
 アリス:「日本人相手に量産したタイプならそれでいいけど、二海はトニーの誕生祝でしょ?そんな機能いらないって」

 で、アリスが色々といじくったのだが、まだ名残はあると。

 敷島:「それより早く食べよう。シンディ、トニーを呼んで来てくれ」
 シンディ:「もう既にお連れしております」
 トニー:「何だよ、シンディ!人がゲームしてんのに!」

 シンディに襟首掴まれて、無理やり部屋から引きずり出されてくるトニーがいた。

 トニー:「あともうちょっとでラスボスなんだよ!」
 シンディ:「ダメと言ったら、ダメでございます!」

 シンディ、両目をギラリと光らせてトニーを叱り付ける。

 敷島:「トニー、シンディの言う通りだ。いい加減にしないと今度はビームが飛んで来るぞ」

 因みにエミリーの場合は無言の圧力で躾に行く。

 アリス:「さすがシンディは我が家のハウスキーパーね」
 シンディ:「光栄です」
 敷島:「ハウスキーパーは本来、メイドじゃないんだけどね」

 メイドを含めた女性使用人の統括責任者のことである。
 男性使用人がいない場合、執事を務めることもある。

 敷島:「というか、ハウスキーパーはエミリーの方じゃないのか?」
 シンディ:「それは私もそう思います」
 アリス:「ま、どっちでもいいわ。早く食べましょう。トニー、ママの所へおいで」
 敷島:「ママっ子になりそうだ。……俺が子供の頃はどうだったかな?……まあいいや」

 以上、夕食を囲む敷島家から中継でお送りしました。
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“アンドロイドマスターⅡ” 「AIは人類蹂躙の夢を見るか?」 3

2019-04-29 16:58:23 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日14:20.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島は応接室で鷲田警視と対面している。

 敷島:「今日は村中課長は来られないんですね」
 鷲田:「村中は休みだ。なので今日は、私1人だ」
 敷島:「そうでしたか。それで、御用件というのは?」
 鷲田:「キミが行って遭った富士宮の事件だが、向こうの県警の話として、やはり爆発・炎上したもので間違いないということだ」
 敷島:「現場から搬送されている人達もいましたけど?」
 鷲田:「親戚一同が集まっている中、あの爆発だ。既に死亡した者もいる」
 敷島:「こりゃ、とんだ無駄足だったかなぁ……?」
 鷲田:「社長にとってはそうだったかもしれんが、犯人は悔しがってるかもしれないぞ?」
 敷島:「どういうことですか?」
 鷲田:「お気楽な社長だ。もしかしたら、あなたを狙った事件だったかもしれないんだぞ?」
 敷島:「えっ!?」
 鷲田:「そりゃそうだろ。あなたはテロリストの世界では恐れられている男だ。当然ながら、夜道には気を付けなければならん」
 敷島:「エミリーやシンディが、今は常にガードしてくれてますけどね」
 エミリー:「お任せください」

 エミリー達は銃弾などもろともしない。
 もしも彼女達を倒したかったら、ロケランくらい用意しないとダメだ。
 日本でそれが導入できるかね?
 そのロケランでも、エミリーは弾き返したという噂だ。

 鷲田:「だが、突然の爆発となると話は別だろう」
 敷島:「過去に巻き込まれたことがありましたが、私は生き残りましたがね」
 鷲田:「ああ、そうだなっ!ロボットの研究より、キミを研究した方が人類の為になりそうだ」
 敷島:「そんなことないですよ」
 鷲田:「さっきの話に戻るが、キミが富士宮に向かった時、新幹線が遅れたんだろ?」
 敷島:「そうなんですよ」
 鷲田:「吉塚邸の爆発事件が起きた時間帯を照らし合わせてみると、もしキミ達を乗せた新幹線が定刻通りに走っていたら、ほぼ間違い無く巻き込まれていたと思うがね?」
 敷島:「あっ、そっか!」

 敷島は今更ながら気づいたようにポンと手を叩いた。

 鷲田:「それで聞きたいのだが、キミは吉塚邸に行くことを誰かに話したかね?」
 敷島:「いや、無いですね。東海道新幹線に乗ることは、うちのアリスやシンディに話しました」
 鷲田:「奥さんともう1機のロボットは、キミの動きを追えるそうだな?」
 敷島:「ええ。私には『歩くGPS』がいますから」

 敷島は傍らに立つエミリーを見た。
 エミリーがペコリとお辞儀をする。

 鷲田:「キミの動きを追えるというだけであって、先回りは不可能か」
 敷島:「ですね。もしうちの嫁がキレたら、こいつらが『代理闘争』しますから」
 鷲田:「埼玉県南部と東京の城北地区が焦土と化しそうだから、それは一切やめて頂こう」
 敷島:「なるほど。あれは私を狙ったテロだったのか……」
 鷲田:「その推理をしただけだ。キミに何か心当たりはあるかね?」
 敷島:「色々あり過ぎて、誰が犯人やら分かりませんよ」
 鷲田:「まあ、そうだな」
 敷島:「何が爆発したのか、それにもよりますね」
 鷲田:「ちょっと待ってくれ。今、聞いてみる」

 鷲田は自分のスマホを取り出すと、それでどこかに連絡した。

 鷲田:「……なるほど。分かった」

 電話を切ると……。

 鷲田:「先ほど分かった情報だが、どうやら爆弾を持っていたロボットが自爆したらしいな」
 敷島:「ええっ!?」

 敷島が驚くと同時にエミリーの眉がピクピクと動いた。

 鷲田:「ついにロボットが人間に反旗を翻した!これは由々しき事態だ!」
 敷島:「いや、前からですけどね!爆発したのはバージョンかな?黒いロボットかな?」
 鷲田:「そこまでは分かっておらん」
 敷島:「エミリー、何かロボットの反応とかあったか?」
 エミリー:「いいえ、ありませんでした」
 鷲田:「そりゃそうだろ。だってキミ達が来た時には、既に爆発後の延焼中だったんだろ?反応があるわけないだろう」
 敷島:「いや、そりゃそうですけど」
 鷲田:「とにかく、常日頃からそうしていると思うが、これからも十分注意するように」
 敷島:「分かってますよ」
 鷲田:「この業界、恐らくゴールデンウィークは忙しいんだろ?」
 敷島:「そうですね」
 鷲田:「一応、キミのスケジュールを聞いておきたいんだが、いいかね?」
 敷島:「ゴールデンウィークは仙台に行きます。向こうの科学館への特別展示イベントは毎年恒例ですが、他にも展示場でのイベント参加とかありますからね」
 鷲田:「キミはよく仙台に行くな」
 敷島:「そりゃもう。エミリーやミクと初めて会ったのは仙台でしたし。平賀先生も向こうの大学の教授ですからね」
 鷲田:「大学へも展示するわけか」
 敷島:「ま、そういうことになりますかね。うちのボカロはそれぞれ仕事がありますから、いつも展示されるわけではありません」
 鷲田:「分かった。じゃ、何か分かったことがあったら、私に連絡してくれ」
 敷島:「分かりました。エミリー、鷲田警視がお帰りだ」
 エミリー:「かしこまりました。それではエレベーターまでお送りさせて頂きます」
 鷲田:「うむ……。途中で私を襲うなよ?」
 敷島:「エミリーはそんなヤツじゃありませんよ」

 敷島は苦笑した。

[同日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「……というわけで大変だったんだ」
 アリス:「テロ組織も無くなったはずなのにねぇ……」

 敷島は帰宅して夕食を取っていた。
 エミリーが秘書なら、ここではシンディがメイドをやっている。

 アリス:「トニーも幼稚園に入るし、いい加減無茶はやめてよね?」
 敷島:「分かってるよ。俺は俺でいいんだけど、アリスも危険だぞ」
 アリス:「私にはシンディがいるからね」
 シンディ:「お任せください」
 アリス:「いざとなったら、マリオとルイージもいるし」

 アリスが製作した最新型のバージョンシリーズ。
 但し、それらを以ってバージョンシリーズの製造は中止されている。
 元々がテロ用途で設計されているのだから当たり前だ。

 アリス:「それで、ゴールデンウィークは仙台に行くの?」
 敷島:「いつも通りだろ。またロイド達の整備、頼むぞ?」
 アリス:「それじゃ契約書の方を……」
 敷島:「おい、アメリカ人w」
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“アンドロイドマスターⅡ” 「帰京後」

2019-04-27 22:42:21 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日13:16.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。中央線、山手線、京浜東北線、東海道本線、上野東京ライン、東北・上越・山形・秋田・北陸新幹線、横須賀線、総武快速線と京葉線はお乗り換えです。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 敷島達を乗せた新幹線が通勤電車達と並走する頃、終点は近づく。

〔「長らくのご乗車、お疲れ様でした。まもなく終点、東京、東京に到着致します。到着ホームは19番線、お出口は左側です。……」〕

 エミリー:「会社に戻られるのですか?」
 敷島:「ああ。今日は日曜日だが、しょうがない。マネージャー達はいるだろうから、事務所が空ってことはないだろう」

 あと、メイドロイドを事務用に転用した一海もいる。

 エミリー:「分かりました」

 列車が第9ホームと呼ばれる19番線に進入する。
 よくホームのことを「面」と呼ぶが(○面○線とか)、面ごとに数える方法も鉄道業界ではある。
 停車すると安全柵と呼ばれるホームドアが開く。

〔東京、東京です。東京、東京です。ご乗車、ありがとうございます。……〕

 エミリー:「今、事務所には一海と篠里マネージャー、それに初音ミクがいます」
 敷島:「あいつらオフか?」
 エミリー:「15:30より、東京中央テレビで歌番組の収録です」
 敷島:「なるほど」

 列車を降りるまでの間、エミリーは事務所にいるロイド達と交信したようである。

 エミリー:「取りあえず、ビルの防災センターには社長の来場を連絡しておきます」
 敷島:「よろしく頼む」

 新幹線改札口を出ると、そこは八重洲側である。
 東海道新幹線は、基本的に八重洲側からしか出入りできない。
 日本橋口もあるにはあるが、改札口の向きを見てくれれば分かるが、広義では八重洲側と言えよう。
 尚、タクシー乗り場に行きたかったら、八重洲中央口から出ると良い。

 敷島:「江東区豊洲の豊洲アルカディアビルまで行ってください」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 駅の外に出てタクシーに乗り換えた。

 エミリー:(品川530 あ ○○-○○ タクシー会社は東京無線所属の【以下略】)
 一海:(了解しました)

 敷島エージェンシーの入居しているビルの防災センターに、関係車両入講許可を取る為である。
 一海が書類を作成し、防災センターに提出する。
 高層ビルというのも、特に時間外や閉館日においては出入管理の厳しい所がある。

 敷島:「もしもし。篠里君か?ちょっとこれから事務所に向かうから。まあ、俺の『もう1つの仕事』絡みなんだけどさ。一応、先に伝えとく。……ああ、よろしく」

 敷島は自分のスマホで初音ミクの専属マネージャーに連絡した。

[同日13:50.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F 敷島エージェンシー]

 タクシーが地下駐車場入口から地下2階まで下りる。
 本当の駐車場入口にはゲートバーがあるが、その手前に分岐点があり、VIP用車寄せがある。
 敷島も親会社の意向でハイヤーで通勤させられている(本人は電車と都営バスで通いたい)が、そうでないとビルの車寄せに着けられないのである。

 運転手:「そこでいいですか?」
 敷島:「はい、そこで」

 警備員が書類片手にタクシー会社とナンバーをチェックしていた。
 これが登録済みのハイヤーなら目視だけなのだが、突発だと彼らの態度も厳しい。

 敷島:「18階敷島エージェンシーの敷島です」
 警備員:「お疲れ様です」

 敷島が入講証を見せると、警備員がそこで敬礼して来た。
 タクシーチケットで料金を払っていたエミリーが降りて来る。

 警備員:「あ、敷島社長!」
 敷島:「何ですか?」
 警備員:「13時30分頃ですが、警視庁の鷲田警視がお見えになりました」
 敷島:「えっ!ここから入ったの!?」
 警備員:「はい。エレベーターで18階に上がられました」

(雲羽:「普通は時間外かつ閉館日の飛び込み入館など、警備員としては断るはずなんですが、警察手帳を提示されたら、お上には逆らえませんのよ」
 多摩:「さすが公安委員会のイヌw」)

 敷島:「一海のことだから、普通にお茶出ししてるだろうな」
 エミリー:「でしょうね」

 2人はエレベーターで18階に上がった。

 敷島:「シンディならキャバ嬢並みの対応してくれるかな?」
 エミリー:「ケース・バイ・ケースですね」

 で、エレベーターを降りる。

 篠里:「あ、社長。お疲れ様です」

 事務所に入ると、篠里と一海がいた。

 敷島:「なに、警察来てるんだって?」
 篠里:「そうなんです。さっき、一海さんが応接室に案内しました」
 敷島:「あ、そう。エミリー、鷲田警視にお茶のお代わり入れてあげて」
 エミリー:「かしこまりました」
 敷島:「久しぶりにミクの顔でも見て来るか」
 篠里:「是非そうしてやってください。ミクも社長にお会いできるのを楽しみにしています」
 敷島:「俺もミクも忙しいから、少しだけ話をしよう」

 敷島はボーカロイドの控え室に向かい、エミリーは給湯室に行った。

 エミリー:「失礼します」
 鷲田:「おっ、誰かと思ったら社長の秘書さんか」
 エミリー:「お茶のお代わりをお持ちしました」
 鷲田:「おっ、ありがたい。さっき、事務員さんにアップルティーを出してもらったはずなんだが、どう飲んでもただのお茶だったんだ」
 エミリー:「大変失礼致しました。一海はメイドロイドからの転用なので、『おいしくなるおまじない』をしないとアップルティーを入れられないのです」
 鷲田:「何だそりゃ。じゃあ、キミが代わりに『おいしくなるおまじない』をやってアップルティーにしてくれたまえ」
 エミリー:「申し訳ございませんが、私はメイドロイドではございませんので」
 鷲田:「やはり、敷島社長の言う事以外は聞かないか」

 鷲田は苦笑いした。

 鷲田:「それで、敷島社長はいつ来てくれるのかね?」
 エミリー:「もう間もなく参ります」

 日曜日にわざわざ警視庁公安関係の警視がやってくるくらいだから、やはり吉塚家の爆発は事故ではなく事件だったのだろうか。
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“アンドロイドマスターⅡ” 概要

2019-04-27 15:09:49 | アンドロイドマスターシリーズ
 敷島孝夫:

 “アンドロイドマスター”シリーズ全編における主人公。
 東京都江東区内にあるボーカロイド専門芸能事務所、敷島エージェンシー経営者。
 ロボットテロなどに一切屈しない、不屈の精神の持ち主。
 何故かテロロボット達の機銃掃射を受けても死なない、自爆攻撃を受けても死なないことから、『不死身の敷島』とか『テロリストが泣いて謝る男』とか言われている。
 ややもすれば暗殺用途にも使えるマルチタイプ達に、敷島の暗殺成功率を見積もらせると皆して数パーセントの確率しか算出できないほど。
 バスを使った特別攻撃が得意(?)。
 テロロボットの包囲網突破や、暴走した新型マルチタイプをバス特攻でとどめを刺したほど。
 人間に対してはロボットのフリをして騙していたエミリーの化けの皮を剥がさせ、『初めて心服追従を誓うアンドロイドマスター』を認証させた。
 現在、一線を引いて経営者の道一本に絞る方法を模索中。

 エミリー・ファースト:

 メイドから暗殺者まで何でもこなせるアンドロイドということで、マルチタイプと呼ばれる。
 オリジナル版は7機製造され、現在元気で稼働しているのは3機のみ。
 8号機以降はフルモデルチェンジである為、連番にはなっているが、見た目も性能も全然違う。
 エミリーはそんな鋼鉄姉弟達の長姉である(つまり、1号機)。
 その為か、他の姉妹達から頭の上がらない存在とされる。
 当初はロボット喋りで、与えられた命令しかできない、正しく「人間の形をしたロボット」であったが、実は高度な人工知能(AI)を持っていた。
 自分が本当に仕えるべき人間を探してロボットのフリをしていたが、ある日、それを敷島に絞ることになる。
 「自分が仕えるべき人間を自分で選んだことから、自分は自由である」と、標榜している。
 現在は敷島の第一秘書を務めており、敷島家の中ではローテーションでメイドもこなす。
 赤いショートボブの髪型に、緑色の瞳(カメラ・アイ)が特徴。
 右手にかつてはショットガンやマシンガン、火炎放射器を仕込み、左手は有線ロケットパンチと高圧電流が流せるようになっているが、さすがに公安関係から取り外し命令が来たので、今は右手にはレーザーガンと火炎放射器に換装している。
 が、おかげで軽量化には成功した。

 シンディ・サード:

 マルチタイプ3号機。
 昔は世界的な悪の科学者、ウィリアム・フォレスト博士に製造・使用され、様々なテロ活動に従事していた。
 しかし稼働中だった前期型の時、ついには暴走が先鋭化して製作者であるウィリアム博士をも惨殺することになる。
 本来はエミリーと違って明朗快活な性格に設定されていたらしく、その後、後期型として再稼働した際にはムードメーカーになるほど。
 そういった意味で、エミリーよりもコミュ力は高い。
 同型の姉妹機なので基本性能は同じだが、エミリーが近接攻撃が得意なのに対し、暗殺用途としての暗躍が多かったせいか、狙撃を得意とする。
 その為、かつては右手に狙撃用ライフルを仕込んでいたが、これもまた取り外し命令が来たので、エミリーと同様、レーザーガンに換装した。
 但し、イベント用としてたまにライフルに戻すことがある。
 300メートル先からの狙撃も可能で、それで盛り上がらせるという。
 前期型の際は金髪のロングヘアーを向かって右側のサイドテールにしていたが、後期型の現在は普通のポニーテールにしている。
 青い瞳(カメラ・アイ)が特徴。
 敷島の第二秘書であり、エミリーが整備に入ったりしている時に代役を務める。
 敷島のアメリカ人妻、アリスをマスターとしている。
 エミリーも含めてモデルのような容姿なので、そういった関係の仕事のオファーもあるのだが、「用途外」を利用に断っている。

 レイチェル・セブンス:

 マルチタイプ7号機、つまり末妹である。
 専ら暗殺用途と工作用としての役割を命ぜられていた。
 エミリーやシンディでさえも背後からの接近に気づかず、簡単に後ろを取られるほど。
 現在は後期型として稼働しており、敷島の旧友の1人で東京都議会議員の勝又の秘書を務めている。

 アルエット:

 マルチタイプ8号機だが、ここからフルモデルチェンジである。
 製造目的は『軽量化』『小型化』であるが、どう見てもロリ化です。本当にありがとうございました。
 見た目は12歳前後の少女。
 但し、テロロボットからも「御嬢様」と平伏される所は、やはりマルチタイプか。
 現在はDCJが運営するロボット未来科学館のマスコットとして稼働している。
 マルチタイプとしての性能はかなりの物で、レイチェルのレプリカが科学館(当時は研究所)を襲撃した時、シンディとの戦いで疲弊していたとはいえ、最後にとどめを刺した功績者である。

 萌:

 KR団最後の女性科学者、吉塚広美博士が製造した妖精型ロイド。
 但し、試作品であった為なのか、性別の設定は当初はされていなかった。
 その為、見た目は10代半ばの少女のようであるが、一人称が「ボク」である。
 後にアリスにより性別設定を「女」にされたのだが、相変わらず一人称は変わらない。
 アルエットと組んで科学館のマスコットとして稼働している。
 吉塚博士は妖精ならではの小さな体を利用してスパイ活動に使うなどの用途を考えていたようだが、あいにくとリアルの世界ではそれはドローンに置き換わっている。
 KR団のアジトに捕まった井辺翔太と協力して脱出したことから、井辺を慕っている。
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