報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」 3

2022-10-31 20:48:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日18:00.天候:雨 宮城県仙台市若林区 愛原の実家]

 夕食はしゃぶしゃぶ鍋が出た。
 当然の如く、リサはガツガツ食べていたが、おかげで完全に機嫌が直ったようだ。

 愛原:「明日は俺が温泉に連れて行くよ」
 父親:「それは楽しみだ。だけど、宿泊じゃないだろ?」
 愛原:「明日の夕方、帰るからなぁ……」
 父親:「まあ、いいや。宜しくな」
 高橋:「先生。まさか、今日行ったのは、明日の予行演習でしたか?」
 愛原:「違う。ちゃんと、温泉街のあるホテルに行くよ。そこの日帰りプランを利用するんだ」
 高橋:「あ、そうでしたか」
 愛原:「リサ、水着は持って来たな?」
 リサ:「持って来た」
 愛原:「明日はホテルのプール、入れるから」
 リサ:「! おー!」

 やっぱり、水着着たかったんだな。

[同日23:00.天候:晴 愛原の実家2F 愛原の自室]

 今夜は客間ではなく、2階の自分の部屋で寝る。
 昼寝をガッツリしてしまったので、あんまり眠くない。
 それをいいことに、持って来たノートPCで、報告書を記載している。
 やっぱり、お盆明けの朝一に届くようにして欲しいということだった。

 愛原:「あれ、この写真……」

 報告書に載せる写真をデータの中から選ぶ。
 さすがに全部は載せられないからだ。
 何枚か選んでいると、少女達が入ったカプセルを写したものがあった。
 机の上に何枚もの書類が散乱している。
 だが、その中に、どう見ても撮影した記憶の無い物が写っていた。
 無意識のうちに撮影した物も確かにある。
 だが、これはさすがに撮ってないだろうというものだった。
 それは書類そのものを撮影した写真。
 しかもその書類というのが、やっぱり見たことの無いものなのだ。
 拡大すればハッキリと読めるほど、しっかり撮っている。

 愛原:「??? こんなの撮ったっけ???」

 カメラは常に自分が持っていた。
 だから、高橋やリサが勝手に撮ったということは無い。
 ただ、たまに彼らが手持ちのスマホで撮影した画像が役に立つことがあり、それを報告書に使わせてもらうことも稀にある。
 しかし、この画像は私のデジカメに入っていたもの。
 なので、彼らが撮影したものではないというのは分かる。
 それにしてもだ。

 愛原:「何が書いてあるんだろう?」

 拡大してみると、目を丸くした。
 それは、私のことだったからだ。
 作成者は白井伝三郎だということは、冒頭の名前で分かった。
 どうやら白井の奴、私の脳の病気を親切心から治したわけではなかった。
 やはり、自分の開発した新薬の実験台にしようと思ったようである。
 確かに、この新薬のおかげで、私は元気にここにいる。
 その薬を脳の病気の特効薬として売り出せば良かったのに、何故そうしなかったのだろうか?
 その理由が、この書類に書かれていた。
 以下、抜粋する。

 『……被験者の脳に強い衝撃が起こると、変異することが予想される。その衝撃がどの程度の物からなのかは不明であるし、どのように変異するのかもまだ実験していないので不明である。しかしながら、この問題をクリアすることは非常に難しい。知り合いの脳科学者も、この新薬には否定的な考えである。よって、商品化するのは困難と思われる』

 愛原:「……脳に衝撃……?」

 私の脳裏に、フラッシュバックが起きる。
 直近で私が頭を強く打ったのは、豪華客船・顕正号での事件の時だ。
 ゾンビの大群から逃げる最中、転んで頭を強く打った。
 思えば、あの頃から、高橋と再会するまでの間の記憶が無い。
 高橋の話では、私はずっと入院中だったそうだが、ある時、その病院から抜け出してしまい、行方不明になっていたと。
 行方不明になっていたのは、半年間。
 私の記憶が再開するのは、東京の豊洲にある寿司屋で飲んだくれになっていた時だった。
 そこに高橋が現れ、私の記憶を呼び戻そうと色々と話してくれたんだっけ。
 記憶が無かった頃の私は、何をしていたんだろう?
 リサだって人間だった頃の記憶は殆ど無いに等しいが、私だって、顕正号から高橋との再会の時までの記憶が全く無いのだ。
 この書類によると、特に『記憶障害が発生する』とは書かれていない。
 もっとも、どんな影響があるかは不明ということなので、記憶障害も想定内なのかもしれない。

 愛原:「高橋に聞いた方がいいのか?」

 そういえば高橋は、私が記憶を失っていた頃の話は全くしてくれなかった。
 私が聞かなかったからというのもあるが、それにしてもこれだけ親しい間柄なのだから、話してくれてもいいだろうに……。
 夜も遅いから、また後で話を聞くとするか。
 報告書を作成している間は眠くなかったのに、作成が終わったら、急に眠くなってきた。

 愛原:「印刷は明日にしよう」

 私はUSBメモリーに報告書を保存した。
 そして、就寝することにした。

[8月15日07:00.天候:晴 愛原の実家2F・愛原の自室]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 今頃、1階で寝ている2人のスマホも鳴動していることだろう。
 私は手を伸ばして、スマホのアラームを止めた。

 愛原:「ううーん……」

 アラフォーのオッサンの寝起きシーンなんて見たくもないだろうが、一応私が主人公なので、1つ宜しく。

 愛原:「ん?」

 起き上がってまずはトイレに行き、再び部屋に戻る。
 ドアを開けると前方に机があるので、そこに置いたノートPCが目に付くのだ。
 それはいいのだが……ん?私、PCをシャットダウンしたかな?
 いや……したよな。
 首を傾げるのは、私は就寝前、PCをシャットダウンした後、モニタを閉じたはずなのだ。
 はず、というのは、無意識にやった行為なので、はっきりと覚えているわけではないということだ。
 私が首を傾げたのは、モニタが開かれている状態だったのだ。
 で、マウスに触ってみると、何やら画面が出た。

 愛原:「うわっ!?」

 びっくりしたのは、黒いモニタに、リサの白い仮面を着けたセーラー服の少女が現れたからだ。
 日本版リサ・トレヴァーが着ていた物である(『6番』の吉田美亜と『10番』の日野貞夫は除く)。
 その姿が消えると、画面に血文字で、『思い出すな』『忘れろ』という文字が浮かんだのだった。

 愛原:「な、何だこりゃあ!?」

 その時、部屋のドアがノックされた。

 高橋:「先生!先生!どうかなさいましたか!?」

 外から高橋の声が聞こえた。
 私は立ち上がって、ドアを開けた。

 愛原:「高橋!」
 高橋:「せ、先生!?何かありましたか!?今、先生の大きな声が聞こえたもんで……」
 愛原:「ぴ、PC……俺のPCが何か変なんだ!」
 高橋:「えっ!?」

 高橋が部屋に入り、私もPCに向き直ると、また変なことが起きていた。
 高橋は私の部屋に入ると、机のノートPCのモニタを開いた。
 そう。
 いつの間にか、閉じていたのだ。
 そして、高橋は電源を入れた。
 そう。
 PCはスリープモードではなく、ちゃんとシャットダウンされていた。
 その証拠に、シャットダウンからの立ち上げの時にモニタに映し出されるPCのシリーズ名が浮かんだのだ。
 それから、やっとホーム画面が映る。
 いや、これでいいのだ。
 これでいいのだが……。

 高橋:「……? どこも、おかしい所は無いみたいですが?何か操作した時に、おかしくなるってことですか?」
 愛原:「ち、違うんだ。違うんだよ」

 私は先ほどの出来事を高橋に話した。
 高橋も目を見開いたが……。

 高橋:「で、でも、何も無い……みたいですけど?」
 愛原:「今は、な。これは一体、どういうことなんだろう?」
 高橋:「変な夢でも見られた……とか?」
 愛原:「いや、夢じゃないだろ、これは!」

 私は試しに自分の頬をつねってみた。
 ベタ過ぎるやり方だが、ちゃんと痛みを感じた上に、もちろんこれで目が覚めるということもなかった。

 愛原:「い、いや、しかし……」
 高橋:「先生、取りあえず、下に下りましょう。顔を洗って、朝飯食べて落ち着けば、いいんじゃないでしょうか?」
 愛原:「…………」

 こうして待ってみても、PCには何も起こらない。
 ついにスリープモードに入って画面が真っ暗になったが、何かが浮かび上がるということもなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」 2

2022-10-31 16:36:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日17:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区蒲町東 仙台湯処サンピアの湯]

 私達は日帰り温泉で、家の大掃除の疲れを癒やしていた。
 私はそうなのだが、リサに関してはストレス解消というのもあるだろう。
 この施設、マンガコーナーがあって、入浴の後、リサは主にそこで過ごしていた。
 私はというと、リクライニングチェアで昼寝
 ……おっと、これではレポートできないではないか。
 だから……。

 高橋:「先生。そろそろ引き上げた方がよろしいかと……」
 愛原:「ん……?おー、もうこんな時間か」

 昼寝をしていたら、高橋に起こされたでござるというテイで宜しく。

 愛原:「冬なら、もう真っ暗という時間だな」
 高橋:「そうです」

 私はリクライニングを起こした。

 愛原:「夕飯までに帰れって言われたし、そろそろ帰るとするか」
 高橋:「俺はリサを呼んできます」

 高橋はそう言うと、マンガコーナーに向かった。
 今は館内着を着ているので、脱衣所に行って着替えて来なくてはならない。
 少しして、高橋とリサが戻ってきた。

 愛原:「よう。少しは機嫌が戻ったか?」
 リサ:「先生がわたしとシてくれたら、機嫌爆戻り」
 愛原:「少しずつ戻るようになれば良し!」
 高橋:「俺にとっては、物凄く安い条件なんスけど……」
 愛原:「じゃあ、オマエが代わりにシてあげればいい」
 リサ:「ヤダ!!」
 高橋:「カンベンしてくださいよ!こんな化け物と……」
 リサ:「化け物って言うな!」
 高橋:「いや、だって、本当だろうが。いつの間に、手から炎出せるようになった?」
 リサ:「いつの間にか」
 高橋:「こいつに銃は要らなさそうですね」
 愛原:「それならそれで良し」

 私達は脱衣所に移動すると、私服に着替えた。

 愛原:「忘れ物は無いな?それじゃ、行くぞ」
 高橋:「はい」

 私達は受付に行って、料金を精算した。

 愛原:「今から地下鉄に乗れば、すぐに帰れるだろう」
 高橋:「そうですね」

 退館すると、夏の暑さが私達を襲う。
 せっかく汗を流しても、これでは帰るまでに、また汗をかくことになりそうだ。

[同日17:32.天候:曇 仙台市若林区六丁の目東町 仙台市地下鉄六丁の目駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 

 愛原:「何か曇ってきたな……」

 駅に着くと、空がどんよりと曇って来た。

 高橋:「先生。どうやら、ゲリラ豪雨が降るみたいですよ」

 高橋がスマホを片手に言った。

 愛原:「マジか!?」
 高橋:「アプリの情報です」
 愛原:「それじゃ、急いで帰らないとな」

 私達は乗り場に急いだ。
 高橋とリサは1日乗車券を持っているので、そのまま改札口を通れる。
 私は手持ちのSuicaで改札口を通過した。
 これでこの2人は、元を取ったことになる。

〔2番線に、八木山動物公園行きが、到着します〕

 ホームに降りると、ちょうど電車が来るタイミングだった。
 もう何度も乗った4両編成の電車がやってくる。
 日曜日ということもあり、車内はガラガラだった。
 恐らく、市街地から郊外に向かう方が賑わっているのだろう。
 そこは東京も同じだ。
 ドアが開いて電車に乗り込むと、3人並んで座った。

〔2番線から、八木山動物公園行きが、発車します〕

 短い発車サイン音は全駅共通。
 南北線もかつては発車ベルであったが、東西線と同様のサイン音に変わっているという。
 駆け込み乗車は無く、ドアが閉まるとすぐに発車した。

〔次は卸町、卸町。仙台卸商センター前です〕

 平日なら、この辺りや次の卸町駅界隈で働いている人達の帰宅ラッシュが始まり、西行きでも混雑するのだろうが、日曜日の今日は空いていた。

 高橋:「先生、お疲れでしたね。随分よく寝ておいででしたよ」
 愛原:「そ、そうか?」
 高橋:「夜、寝られなくなるんじゃないですか?」
 愛原:「そう、かもな」
 リサ:「わたしと熱い夜を!」(;゚∀゚)=3
 高橋:「バカ野郎。俺との熱い夜が優先だ!」
 愛原:「部屋で報告書書くから、先に寝てていいよ」
 リサ&高橋:「はーい……」

 2人はガッカリした様子になった。

 愛原:「中途半端に寝ると、変な夢を見るものでな」
 高橋:「何の夢ですか?」
 愛原:「何のことはない。デカい船で、バイオハザードに巻き込まれる夢だよ。多分、顕正号の時の記憶じゃないか?」
 高橋:「記憶が戻られたんですか!?」
 愛原:「いや、まだだ。オマエや高野君と、顕正号に乗り込んだところまでは覚えてる。あとは……あれか。朝起きたら、いつの間にか船内中がゾンビだらけになっていたんだっけ」
 高橋:「そ、そうです!何せ、いきなりのことなんで、船内を逃げ回るのがせいぜいで……」
 愛原:「で、逃げてる最中、俺は転んで頭を打って、それから意識と記憶が飛んだわけか」
 高橋:「そ、そういうことです。幸い、早いタイミングでBSAAが救助に来てくれたんで、それで助かりました」
 愛原:「……なるほどな」
 高橋:「あ、あの……」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「姉ちゃんの話では、あんまり急に思い出そうとすると、脳に影響があるらしいんで、あんまり触れない方がいいと思うんスけど……」
 愛原:「分かってる。自然に思い出すに任せるよ」
 高橋:「お、オナシャス。先生は脳の御病気だったということで、それが影響しているらしいっス」
 愛原:「そう、らしいな。……と、あれ?善場主任からのLINEだ。……ああ、やっぱり報告書の件か」

 リサは顕正号事件の時にはいなかったせいか、俯いて黙っていた。
 だが、その表情は硬いものであった。
 そして、高橋はそんなリサを肘で突いて、小声でこう言ったのである。

 高橋:「オメ、ぜってー言うんじゃねぇぞ?先生と一緒にいられなくなるぞ?」
 リサ:「……分かってる」

 リサは眉を潜めたまま、小さく頷いた。

 愛原:「何が?」
 高橋:「い、いえっ!何でもないっス!リサが欲しいマンガがあるって話で……」
 愛原:「そうなのか?」
 リサ:「う、うん。面白いマンガを見つけた。今のところ、4巻まで出てる」
 愛原:「そうなのか。クオカードや図書カードは?」
 リサ:「図書カードはまだ残額あるけど、足りるかどうか……」
 愛原:「よし、分かった。その図書カード、使い切っていい。足りなかったら、俺が出してやる」

 望みが叶うと、リサは大抵、『おー!』と声を上げる癖がある。
 しかし、今回は……。

 リサ:「う、うん。ありがとう」

 という反応であった。
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“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」

2022-10-31 11:11:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日09:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区 愛原の実家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日まで滞在していた親戚達が帰宅して行き、高橋とリサが掃除の手伝いに来た。

 愛原の父親:「それじゃあ、高橋君とリサちゃんは客間の掃除を頼む。今夜はそこを使っていいからね」
 リサ:「おー!」
 高橋:「お任せください!」
 父親:「学は風呂とトイレ掃除。あと、自分の部屋も掃除しろ」
 愛原学:「俺だけキツくね!?」
 父親:「何を言っとる?本当は御客に客間を掃除させるのも、おかしいことなんだぞ?それを高橋君達が自らの申し出でやってくれるんだ。やらせる側がキツい所を率先しなくてどうする?」
 学:「ぐぬぬ……」
 高橋:「せ、先生。客間が終わったら俺達、手伝いに行きますから」
 学:「スマンな。うちの毒親のせいで……」
 父親:「おい、聞こえてるぞ!」
 学:

 私は脱兎の如く、浴室に向かった。
 それから……。

 愛原:「お母さん!誰かが脱衣所にパンティ忘れてるぞ!?」
 母親:「あらま?……これはセイコちゃんのね。こんな高い下着、忘れて行くなんて……」
 愛原:「10代に頃にギャル化した姉ちゃんだったが……」
 母親:「あら?何か紙が入ってるわ」
 愛原:「何だ?」

 私はメモ書きを取り出した。

 愛原:「俺へのプレゼントらしいぞ?」

 すると背後に突き刺さる、鋭い視線。
 リサが赤い瞳を鈍く光らせて、覗き込んでいた。

 リサ:「……誰?」

 しかし、リサの化け物じみた視線でさえも、うちの母親は軽く受け流す。

 母親:「学の1つ年上の従姉よ」
 学:「10代の頃には、もうギャル化していたな。高校の時に妊娠して退学し、その後更に子供3人くらい作った、正にDQN」
 母親:「こっちには結婚すらしていない親不孝者がいるけどね」
 学:「真に申し訳ございません!」
 リサ:「安心してください!ここに第一候補がいますよ!?……と、それはそれとして……。そのパンツ、貸して」
 学:「な、何をする気だ!?」
 リサ:「早く!」

 リサは私から黒いシルクのパンティを奪い取ると、手から何の呪文を唱えることも無く、炎を出してパンティを焼却処分した。

 学:「うわなにをするやめr」
 母親:「家の中で燃やしちゃダメでしょ!?」
 高橋:「なに『血鬼術 爆血』のパクリみてーなことしてんだ、オメェ!さっさとこっち手伝え!」

 高橋がリサの首根っこを掴んで、ズルズルと引っ張って行く。
 何気に私、リサの初めての異能見たんじゃないか?

 高橋:「あ、そうだ、先生。布団の下にガキが穿いてるようなパンツが何枚か見つかって、『学おじさんへ』っていうメモがありましたけど、どうします?」
 リサ:「……それは使用済み?」
 高橋:「ん?ああ、そうな感じだったな」
 リサ:
 学:「待ちなさい、リサ!」
 リサ:「血気術、爆血ーっ!」
 高橋:「だからパクリはやめろって!」
 学:「リサ、誤解すんな!」
 母親:「家の中で燃やしちゃダメーっ!」
 父親:「おい、学!オマエの部屋に、ミキちゃん(学の従妹)のパンティがベッドの上にあったぞ!どういうことだ!?」
 リサ:「先生の部屋も爆血ーっ!」
 学:「うわなにをするやめr」

 ……これ、昼までに掃除終わらないパターン?

[同日12:00.天候:晴 愛原の実家]

 寿司屋:「毎度どうも!」

 ……そうでもなかった。
 お昼は両親が寿司を出前してくれたのだが、それまでに何とかギリギリ終わらせることができた。

 母親:「はいはい、ご苦労さま」

 リサ:「先生に用意されたパンツは、全部で5人分。何がどうしてそうなったのか、5分以内に答えないと、この町にゾンビウィルスばら撒く!」
 高橋:「霧生市の再来になりますよ、先生!?どうしてくれるんですか!?」
 父親:「学。変態行為もいい加減にしろよ?」
 学:「ち、違うんだって……」
 母親:「さぁさぁ、お寿司が届いたから、これでも食べて元気出してー」
 学:「そ、そういうことだぞ。まずは食べよう」

 寿司を食べて空腹を満たしたことで、リサの機嫌も少しは直った。

 リサ:「……それなら、わたしは10枚の使用済みパンツを用意すればいいんだ」
 父親:「……普段、どういう生活を向こうではしているのかね?」
 学:「普通だよ!普通の同居生活!なあ!?」
 高橋:「え、ええ……」

 高橋は空気を読んでくれた。

 愛原:「掃除で体も疲れたし、食べ終わったら、ちょっと出かけて来ようか?」
 高橋:「あ、はい。そうっスね」
 リサ:「…………」
 愛原:「リサもいいな?」

 リサは不機嫌ながらも、無言で頷いた。

[同日13:00.天候:晴 同区内 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車(列番不明)先頭車]

 昼食を食べ終わると、早速外出した。
 このまま家に居させたら、リサが暴走してしまうという懸念であった。
 それに、久しぶりの重労働で体が痛い。
 この痛み、少し癒やして来なければ……。

〔1番線、2番線に、電車が到着します〕

 いつもなら市街地方面の電車に乗るが、今回は逆方向、更に郊外へ向かう電車に乗り込んだ。
 更に郊外に向かう方向は空いている。
 先頭車に乗り込むと、ブルーの座席に腰かけた。

〔1番線、2番線の電車が、発車します〕

 短い発車サインの後で、電車のドアとホームドアが閉まる。
 荒井行きの電車の方は、特に駆け込み乗車は無く、スムーズに発車した。

〔次は卸町、卸町。仙台卸商センター前です〕

 高橋:「先生、どこまで行くんですか?」
 愛原:「六丁の目だよ、六丁の目」

 その駅の近くにはフィットネスクラブがあるのだが、日帰り温泉施設も併設されている。
 そこに入って、疲れた体を癒やそうというのが目的だ。

 高橋:「明日も温泉に行くのに、ですか?」
 愛原:「今日は臨時だ、臨時。まさか、あそこまで疲れるとは思わなかったよ」
 高橋:「おい、リサ!半分はオマエのせいだぞ!」
 リサ:

 リサはプイッとそっぽを向いた。
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“愛原リサの日常” 「8月14日」

2022-10-30 21:19:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日07:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区榴岡 ホテル東横イン仙台駅東口2号館・リサの部屋→1Fロビー]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。

 リサ:「……変な夢」

 悪い夢を見たわけではないが、かといって面白い夢を見たわけでもなかった。
 夢の中で、アメリカのオリジナルのリサ・トレヴァーと対談する夢。
 向こうはアメリカ人のはずだが、何故か日本語を喋って来た。
 で、色々喋った記憶があるのだが、何を喋ったかまでは覚えていないという変な夢だったのである。

 リサ:「まあ、いいや」

 リサはベッドから出ると、バスルームに向かった。
 そこで顔を洗ったり歯を磨いたりして、私服に着替える。
 それから高橋と合流して、1Fの朝食会場に向かった。

 高橋:「昨日はサイゼでステーキ、バクバク食ってた癖に、またもやバクバク食う気か?」
 リサ:「このホテルの朝食は無料だから、ガッツリ食べていいって言ったじゃん」
 高橋:「まあ、そうだけどな」

 席を確保してから、食事を取りに行く。
 予想通り、リサはウィンナーなどの肉系統をしっかり確保していた。

 高橋:「やっぱりな」
 リサ:「むふー!」

 ドリンクバーでの飲み物だが、リサはオレンジジュースを取ることが多い。
 因みに高橋は牛乳。

 リサ:「お兄ちゃんの名字、タカナシだったら良かったのに!w」
 高橋:「うるせーよ」

 ロビーのテレビでは、相変わらず奥新川でのニュースをやっていた。

 リサ:「あれ、どうなるんだろ?」
 高橋:「五十嵐元社長とかに責任取らせるんだろ。また、裁判が長引くってわけだ」
 リサ:「死刑になるかな?」
 高橋:「さあな」

 高橋が昨日送った資料がデイライトの所に届き、それが確固たる証拠として採用されれば、五十嵐皓貴被告らはまたもや逮捕されることになるだろう。
 これが積み重なれば、結果的にオウム真理教の麻原彰晃や特定危険指定暴力団・工藤會の野村総裁みたいに、本人は直接殺人はしていなくても、死刑に持ち込むことができるかもしれないのだ。

 リサ:「先生の家に行く?」
 高橋:「ああ。食い終わったら行くぞ。先生の家の掃除の手伝いだ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「客間を掃除してきれいにできたら、今夜、俺達はその部屋を使わせてもらえる」
 リサ:「なるほど。分かった」

[同日09:01.天候:晴 仙台市青葉区中央 仙台市地下鉄仙台駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 朝食を食べ終わった後でホテルをチェックアウトしたリサと高橋は、地下鉄の駅に向かった。

 高橋:「先生の御指示で1日乗車券を買ったが、これで元が取れるのか」
 リサ:「今日は休日料金。平日より休日の方が安いんだね」
 高橋:「東京のJRの2階建てグリーン車か!……つー事は、今日は何回か地下鉄に乗るってことだな」
 リサ:「そういうことになるね」
 高橋:「まあ、掃除だけじゃ、時間潰し切れねーからな」
 リサ:「確かに」

 尚、1日乗車券では、仙台市の文化施設の入場料・入園料・入館料の割引特典サービスがある。
 券売機で買うと、紙の乗車券が出て来る。
 サイズは定期券と同じ。
 特に派手なイラストとかが入っているわけでもなく、券面のデザインは地味なものである。
 もちろん、自動改札機を通れる。
 自動改札機を通過すると、今日の日付が印字されて、使用開始となる所は他の地下鉄と同じか。

 高橋:「先生に『これから行きます』ってLINEするか」

 電車を待っていると、高橋がスマホを取り出してLINEを送信した。

〔3番線に、荒井行き電車が、到着します〕

 リサは駅構内のWi-Fiに接続すると、それでネットサーフィン。
 主に、奥新川でのニュースを見ていた。
 で、ヤフコメを確認したり、Twitterを確認したり……。

〔せんだい、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 4両編成の電車がやってくる。
 休日でも車内はそれなりに乗客が乗っていたが、この駅でぞろぞろ降りて行き、車内は閑散となった。
 先頭車に乗り込んで、ブルーのシートに腰かける。
 座席は乗車時間が短いせいか、硬めである。

〔「ご乗車ありがとうございます。この電車は東西線、薬師堂、卸町、六丁の目方面、荒井行きです。まもなく発車致します」〕

 車掌はいないので、運転士が肉声放送を行う。

 高橋:「先生は、『いつでもOK』とのことだ」
 リサ:「ほんと!」

〔3番線から、荒井行き電車が、発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音がホームに鳴り響いて、それからホームドアと電車のドアが閉まる。
 電車のドアは甲高い音色の『ピンポン』チャイムが4回鳴りながら閉まるシステムだが、駆け込み乗車などで再開閉すると、8回くらい鳴ったりするので、案外やかましい。
 尚、都営大江戸線では電車内にもWi-Fiルーターがあるのか、走行中でもWi-Fiに接続できるが、仙台市地下鉄では駅構内にしか無い為か、駅に停車中でないと使えない。
 電車が走り出し、トンネルの中に入るとWi-Fiが切れた為、リサは仕方なくスマホをポケットにしまった。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕

 仙台駅から東の区間はカーブが多い為、速度が出せず、時速50キロくらいがせいぜいである。
 これでもJR在来線と同様の狭軌である南北線と違い、新幹線と同様の標準軌を採用している東西線は速度が出せる方なのだろう。

 リサ:「今から先生の家に行っても、9時半前には着いちゃうでしょう?」
 高橋:「まあな」
 リサ:「家中を掃除しても、終わるのは午前中だよね?」
 高橋:「多分な」
 リサ:「時間余るんじゃない?」
 高橋:「その後、どこかへ出かけるんだろ?それで先生、1日乗車券を買えって行ったんだと思うな」
 リサ:「なるほど。どこへ連れてってくれるんだろうね?スイーツバイキング?」
 高橋:「それは無ェな。駅前のパチンコ屋じゃねーのか?」
 リサ:「それだと、わたしが楽しめない」
 高橋:「そんなの知らねーし!」
 リサ:「むー!」

 今となっては随分と打ち解けた、兄妹分なのであった。
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“愛原リサの日常” 「愛原のお使い」

2022-10-27 20:14:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月13日15:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区木ノ下 ファミリーマート]

 高橋は愛原家近所のコンビニで、紙の資料をコピーした。
 案外枚数があったのだが、幸いにも先客も待ち客もいなかった。
 そして、原本は送ることになるのだが、あいにくとレターパックはここでは売っていなかった。
 また、土曜日なので、近所の郵便局も閉まっている。

 リサ:「どうするの?」
 愛原:「しょうがねぇから、宅急便で送るしかねーだろ。先生にもLINEしておく」
 リサ:「そうかぁ……」

 レターパックは売っていないものの、ヤマト運輸の宅急便の取り扱いはしている。
 また、小さな梱包材(宅急便コンパクト)も販売していた。

 高橋:「『というわけで、料金高いですけど、宅急便でもいいですか?』っと」

 すぐに、愛原から既読が付いて返信が来る。

 高橋:「『いいよ。領収証はもらっておいてくれ』か。さすが先生」

 高橋はまず店内で、宅急便コンパクトの梱包材を購入した。
 薄型の段ボール型の他、まるでレターパックのような梱包材もある。
 で、後者の物で良かった。
 それに資料を詰めて、最後にSDメモリーカードを入れる。

 リサ:「このプチプチ、潰したいねぇ……」
 高橋:「気持ちは分かるが、今はやるなよ」

 緩衝材のあれ。
 伝票に記入する高橋。

 高橋:「ん?送り主の住所、事務所の住所でいいよな?」
 リサ:「いいんじゃない?デイライトの事務所は?」
 高橋:「姉ちゃんの名刺に書いてある」

 高橋は善場の名刺を取り出した。

 リサ:「ファミチキとファミコロください」

 高橋が伝票に記入している間、リサがホットスナックを購入する。

 高橋:「なにオメェ、さりげなく食い物買ってんだ?」
 リサ:「3時のおやつだよ~。……あ、支払いはPasmoでお願いします」

 リサ、イートインコーナーに行って、揚げ物をバリボリ食べる。

 高橋:「これでよしっと。サーセン」

 伝票を書き終わった高橋、レジに荷物を出した。

 高橋:「……あ、はい。なるべく早く届くようにオナシャス」

 高橋は料金を払うと、控えの伝票とレシートを受け取った。
 この伝票は領収証代わりになる。

 高橋:「レシートとセットで取っておきゃいいだろ。……おい、行くぞ」
 リサ:「ふぁい……」

 リサ、残ったファミチキとファミコロを一気食いした。

 高橋:「一気食いしたら太るぞ?」
 リサ:「この体を見て、そんなこと言える?」
 高橋:「……悪い。ちんちくりんのままだったな」
 リサ:「そこまで言っていいとは言ってない!」
 高橋:「ンだよ、メンドくせぇ」

 2人は兄妹のようなやり取りをしながら、コンビニを出た。
 再び夏の暑い太陽が照り付ける。

 高橋:「暑ぃ、暑ぃ。さっさとホテルに戻るぞ」
 リサ:「夕飯はどうする?」
 高橋:「あぁ?ネカフェのあるビルに、色々と食う所があっただろ?サイゼもペッパーランチもあったぞ」
 リサ:「おー!」

 テンションの上がるリサだった。

 高橋:「オメーも『サイゼで喜ぶ彼女』かよ」
 リサ:「肉があればOK!」
 高橋:「あー、そーかよ」

 2人の兄妹……もとい、愛原の事務所のバイト2人は地下鉄の駅に向かった。

[同日15:52.天候:晴 同区内 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車(列番不明)最後尾車内]

 地下ホームで電車を待っていると……。

 高橋:「おっと、いけねぇ!」
 リサ:「なに?」
 高橋:「先生に宅急便送ったっつーこと、報告してなかった。ヤベェヤベェ」
 リサ:「もー……」

 高橋がスマホを取り出し、LINEを送っていると……。

〔1番線、2番線に、電車が到着します〕

 電車の接近放送が響いた。

 リサ:「お兄ちゃん、電車来るよ?」
 高橋:「分かってるって」

 そして、4両編成の電車がやってくる。
 ワンマン運転なので、後部乗務員室を見ても、そこから顔を出す車掌の姿は無い。
 ホームドアと電車のドアが開き、2人は電車に乗り込んだ。
 青いシートに腰かける。

〔1番線、2番線の電車が発車します〕

 短い発車サイン音が鳴り響くと、電車のドアとホームドアが閉まる。
 それから電車は発車した。

〔次は連坊、連坊。仙台一高前です〕

 高橋:「あー、そうか」
 リサ:「ん?」
 高橋:「いや、姉ちゃんが急いでるだろうから、『なるべく早く』って言ったんだけど、姉ちゃんとこの事務所もお盆休みだから、そんなに急がなくてもいいんだったな」
 リサ:「あー……」

[同日16:15.天候:晴 仙台市宮城野区榴岡 東横イン仙台駅東口2号館]

 地下鉄で仙台駅まで行った2人は、そこから歩いて宿泊先のホテルに向かった。
 ロビーで夕刊が無料で配られていたので、リサはそれを手に取った。
 地元の新聞社の夕刊だった。

 高橋:「何だ?オマエも新聞読むのか?」
 リサ:「もちろん普段は読まないけど、これが気になって……」

 リサは一面記事で掲載されている、日本アンブレラの秘密施設についての記事を指さした。

 高橋:「なるほどな。そういえば今朝の朝刊でも、トップだったな」
 リサ:「あー、それ見てなかった」
 高橋:「ネットニュースとかではあっただろ?」
 リサ:「うん。それは見た」

 昼間までいたネットカフェ。
 リサはマンガを読み漁ったが、ネットサーフィンもした。

 リサ:「一応、これもらっておく。続報が書いてるはずだから」
 高橋:「まあ、勝手にしな」
 リサ:「で、ついでにジュースも買っておく」
 高橋:「全く……」
 リサ:「ホテルの自販機の割には安いからね」
 高橋:「……なるほどな」

 リサはロビーの自販機で飲み物を購入してから、エレベーターに乗り込んだ。
 そして、宿泊しているフロアで降りる。

 高橋:「いいか?18時になったら、夕飯食いに行くからな?それまで出歩くんじゃねーぞ?」
 リサ:「分かってるよ」

 リサは頷いて、自分の部屋に入った。
 室内は清掃されていて、ベッドメイクがきれいにされている。
 また、バスルームに入ると、タオルやアメニティが交換されていた。

 リサ:「むふー!」

 リサは飲み物を冷蔵庫の中に入れると、バスルームに入って、そこのトイレで用を足した。
 それから、ベッドに寝転がると、スマホでWi-Fiに接続した。
 リサのスマホのプランだとギガ数が少なく、あまりパケット通信ができない。
 そこで、こういうWi-Fiに接続できる所は有り難かった。
 そして、ロビーでもらった夕刊を広げた。
 カプセルの中に入っていた少女達がどこの誰だったのか、気になったからである。
 まだ身元は判明していないが、何十年も昔に行方不明となった少女とかもその中にいる可能性が高いと記事に書かれていた。

 リサ:「わたしは……どうなんだろう?」

 今のところ、リサの存在に関しては公式には秘密である。
 リサに与えられている戸籍は、仮の戸籍に過ぎない。

 リサ:「……ん?サイ……違う。エレンからのLINE」

 リサは深く考えるのはやめて、このタイミングでLINEしてきた我那覇絵恋とのやり取りをすることにした。

 ※冒頭の日付に誤りがありましたので、修正しました。失礼しました。
コメント (3)
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