報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 誰が駒鳥を殺したの?

2021-07-31 20:22:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日18:00.天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 外は雨が降ってきた。
 雷の混じったゲリラ豪雨だ。
 夏のホラー展開と言えば、雷であろう。
 真冬なら吹雪か。
 もちろん、地域によっては雷付きのゲリラ豪雪が降る所もある。

 栗原蓮華:「まもなくこの部室にやって来る本当の7人目の名前は神田拓郎。3週間前に死んだ3年生の男子です」
 古堂真:「冗談じゃねぇぞ、おい!何であいつがここに来るんだよっ!?」
 蓮華:「古堂先輩は神田先輩のことを御存知なんですか?」
 古堂:「そりゃ、知ってなくもねぇよ。……同じクラスだったからな。だから3週間前に自殺したってことも知ってる」
 笠間:「名前だけならボクも知ってる。見た目はボクよりもフツメンのくせに、あれが『母性本能をくすぐるタイプ』っていうの?それで結構、女子にモテてたって聞いたね」

 さすがは自称イケメンの遊び人、笠間は同じモテ男子のことはクラス違いでも知っているようだ。

 笠間:「でも、イジメの噂は聞かなかったな。まあ、モテる男子に僻んで嫌がらせするヤツとかはいたみたいだけど、石上さんが話した妹さんのイジメとは全然違ったな」
 蓮華:「その神田先輩のことなんですけどね……。笠間先輩の仰る通り、モテる方だったそうで、彼女さんもいらっしゃったそうです。ところが、その彼女さんというのが、とても嫉妬深い人で、束縛するタイプだったそうです。毎晩、直接電話して家にいるかどうか確かめたりとかもしていたとのことです。そんなのLINEで済む話なんでしょうけど、SNSだと誤魔化しやすいということで、毎日電話だそうです」
 笠間:「でも、そのくらいならまだ許容範囲じゃない?ライバルが多いと、どうしてもそうなっちゃうよ。あいつはあいつで、それなりにモテてたからね」
 蓮華:「そうですね。でも、他の女子が近づいただけでしつこく問い詰めたり、ヒステリーを起こしたりと異常だったそうです」
 リサ:「因みに栗原……先輩は、どうしてその話を知ってるんですか?」
 蓮華:「神田さんは男子剣道部員だったから。私は女子剣道部だからね、色々と噂を聞いてたからだよ」
 リサ:「なるほど」
 古堂:「そういやあいつ、剣道部だったな。三段とか四段とか、そんな猛者だったんじゃなかったか?見た目は優男なのによ」
 蓮華:「四段ですよ」
 リサ:「先輩は?」
 蓮華:「私は三段。……話を戻すね。神田さんは、そんな彼女さんに恐怖を感じるようになって、別れたいと思ったそうです。そんな時、神田さんのことが好きだという女子が現れたんです。それでその女子は、神田さんに近づくようになったそうです。もちろん、それを知った彼女さんは物凄くキレたそうです。それでも神田さんは、彼女さんの目を盗んで、新しい彼女と付き合うことにしたそうですよ。ところが、今度はその女子に片思いをする男子が現れましてね、当然彼は神田さんをとても憎らしく思ったそうです。さっき笠間先輩が仰った、『嫌がらせされた』というのは多分そのことじゃないかと」
 笠間:「そうかもしれないね」
 蓮華:「それから何日かして、神田さんは死にました。線路を枕代わりにして、睡眠薬を飲んでそのまま眠ったそうです。そこに電車がやってきて、車輪に頭を轢かれて死んだそうです。頭はもうグシャグシャに潰されて、いわゆる『潰れたトマト』のような状態だったそうです。自殺ということで片付いたそうですけど、真実は不明です。……一応、ここまでが私の知っている話です」
 古堂:「おいおい、もう終わりか!?中途半端だろう!?」
 蓮華:「剣道部で知り得た情報は、ここまでだったので。で、どうして神田さんがここに来るか分かりますか?」
 リサ:「その前に、栗原先輩は、どうして神田さんがここに来るって知ったの?」
 蓮華:「これを見てくれる?」

 蓮華はスマホを見せた。
 蓮華のスマホも、漏れなく『圏外』になっていた。
 その中にある『アルバム』から、画像を出す。

 蓮華:「これは男子剣道部の部室にあった申し送りノートだよ」

 そこには赤い字で、『新聞部に犯人がいるぞ!』『復讐してやる!』『俺の頭をかえせ!』と、書き殴られていた。

 蓮華:「これは昨日、部室で発見されたものです。調べてみたら今日、このような集まりがあるということで、もしかしたらここの参加者に、神田さんを殺した犯人がいるかと思って来てみたんです」
 リサ:「でも、自殺だったんでしょ?」
 蓮華:「警察は、そう判断した。だけど、イジメもそうだけど、自殺する人間には、そこまで追い込まれた背景がある。もしかしたら、誰かに睡眠薬を飲まされて線路の上に寝かされたのかもしれないしね」
 古堂:「だったら俺、1番怪しいヤツを知ってるぞ」

 そう言って古堂は石上を見た。

 古堂:「石上。お前、神田と付き合ってだろう?俺、何度も神田がオマエと仲良くしている所を見てたからな。否定はさせねーぞ。オマエが急いでここまで戻って来たのも、そういうことだろう?」
 石上:「さあ、どうかしら。古堂君も、あまり他人の噂とかを簡単に信じない方がいいよ?私と神田は、たまたま家が近いから一緒に帰ってただけ。そもそも、あいつに特定の彼女がいたなんて話、たった今知ったくらいよ。私が戻って来たのも、強い霊気を感じただけ。さすがに私1人だけ生き残るのも何だと思ったからね。もっとも、さすがにカッターでも勝てない相手だったことに気づいたのはショックだったけど。それより、田口さんだっけ?あなた、神田のことが好きだったらしいね?最近、神田が新しい彼女を作ったって聞いたけど、確か名前が田口真由美……」
 田口:「ちょっと待って!あんた、先輩だからっていっていいことと悪いことがあるよ!私のせいで、神田さんが自殺したっていうの?確かに、私が神田さんのこと好きだったのは認めるよ!でも、他に原因は絶対あったはず!私が、その原因だとでもいうの?!彼が死んで一番悲しかったのは私なのに!そんなこといって……、私は知ってるもの!自分の罪を人になすりつけようなんて、とんでもないやつ!神田さんは自殺なんかじゃない。お前が、彼を殺したんだ!」
 リサ:「タグチ……!?」

 リサは呆気に取られた。
 リサに『捕食』された田口が、物凄い形相で石上のことを睨み付けている。
 だが、それを受け止める石上も負けていない。

 石上:「……証拠は?あんた、私が殺したっていうんだったら、証拠を見せてみなさいな。ヘタなこと言うと、あんたのこと、殺してもいいのよ?」

 そう言って石上は、スカートのポケットの中から大型のカッターナイフを取り出した。
 刃が多少赤く染まっているのは、先ほどリサを斬り付けた時のものだろうか。
 そこへ間に入ったのは、巨漢の2年生、太田友治だった。

 太田:「まあまあ、2人ともそんなに怒らないでくださいよ。皆、変な想像をするのはやめましょう。誰が殺したとしても、ここでは関係のないことじゃないですか。そんなこと言い合って何になるっていうんです?皆で仲よくしましょうよ。ね?」

 だが、ここで新井がゴホンと咳払いして発言した。

 新井:「僕はその話よく知らないんですけど、何だか複雑そうですね。ところで太田君って、もしかして田口さんのこと好きなんじゃないですか?これは、あくまでも想像ですけどね。あなたここに来てから、ずっとチラチラと田口さんのこと見てたでしょ?何かあるんじゃないですか?」

 新井は探るような目で太田を見た。

 太田:「いやっはっはっは!ばれちゃったかな?実は僕、1年生にタイプのコが来たなぁなんて、ずっと田口さんのこと見てたんだよね。もっとも、片思いだけど……。まさか、今日こうして一緒に話ができるなんて思ってもみなかったよ。いや、恥ずかしいなあ!」

 太田は照れ笑いを浮かべて頭をかいた。
 ところが、笠間が席を立つ。

 笠間:「……馬鹿らしい。多かれ少なかれ神田に関係のある奴ばかりじゃないの。こりゃ、新聞部の部長が仕組んだ罠だろ?あいつ、神田と仲が良かったからね。もうこれ以上、茶番につき合ってられないから。ボクは帰るからね。あとは君たちで探偵ごっこでもしてなよ」
 蓮華:「待って!神田さんがこっちに向かっているって言ったでしょ!?それまでは帰っちゃダメ!」
 笠間:「はあ?だったら、尚更遭遇する前に帰った方がいいじゃないの?」
 蓮華:「ダメ!今、ドアを開けたら殺されますよ!もう、神田さんは来てるんだから!そして、その扉の向こうに立ってるんだから!」
 笠間:「何だって!?」
 リサ:(BOWの臭いはしない。だけど、確かにドアの向こうに何かいる。“花子さん”がいる時点で幽霊がいることは認めるけど、何でこんなことに……。さすがに幽霊相手じゃ、私は勝てないかもしれない)

 果たして、リサ達の運命や如何に!?
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 7話目が誰が話す?

2021-07-31 14:58:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日18:00.天候:雷 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 太田:「……それ以来、竹中さんは行方不明さ。でも、僕はあのお茶の産地であるインドに行ってるんだと思うね。今思えば、僕もあのお茶を飲んでおけば良かったと思ってるよ」

 太田が話してくれたのは、『絶対にトイレに行かない男の話』だった。
 既に卒業した竹中という男子生徒は、登校中、一度もトイレに行かない男ということで有名であったという。
 当時まだ1年生だった太田は、3年生だったその竹中の秘密を探ろうとストーカー紛いのことをしていたが、ある日それがとうとうバレてしまった。
 しかし竹中は怒るどころか、その秘密を教えてあげるという。
 リサもこの話に興味を持った。
 もしかしたらその竹中もまたBOWではないかと思ったのだ。
 但し、リサのネーミングにもなったリサ・トレヴァーとは全く別のBOW。
 例えば特異菌を操るエブリンは、その体の構造上、トイレに行くことはなかったという。
 もしかしたら竹中もと思っていたのだが、そうではなかったようだ。
 父親がインドに出張に行った際、土産に買って来た特殊なお茶を飲むと、トイレに行かなくて済むようになったという。
 具体的にはそのお茶は、とある植物の豆を挽いたもので、飲むとその人体の中で豆が発芽し、体内に寄生する。
 そしてその植物が体内の老廃物を吸い出してくれるので、トイレに行かずに済むのだということだった。
 しかも、別にその植物に体や意識を乗っ取られるわけではないとのこと。
 『こんな素晴らしいお茶、キミにも紹介してあげよう』ということで、竹中は太田を誘ったが、見た目にも不味そうな色合いであり、臭いも凄かったので、とても飲む気にはなれなかったという。
 竹中もそれ以上は無理強いせず、太田もまた日常生活に戻った。
 そして竹中は、ついに一度もトイレに行かないまま卒業。
 家族共々、海外に引っ越して行ったという。

 リサ:(インドか……。確かあそこでも、バイオテロの類って無かったっけ?)
 太田:「何か質問はありますか?」
 リサ:「はい。その……竹中さんのお父さんって、どこの会社で働いていたんですか?」
 太田:「それは聞いてなかったな。何かの外資系の会社で、それで海外出張が多かったって話だ。家族共々海外に引っ越したというのも、その海外に転勤になったからだと聞いてるよ。僕はもしかしたら、インドじゃないかって思ってるんだけどね」
 リサ:(アンブレラも外資系だ……。日本法人はあったけど)
 田口:「ありがとうございました」

 こうして、リサを含む6人の話が終わった。
 しかし、7人目がやってくる気配は一向に無い。
 時間も18時になってしまった。
 夏の18時はまだ明るい時間帯であるのだが、何故か外は夕闇が既に迫っているかのような暗さであった。
 それもそのはず。
 窓の外からは雷鳴が聞こえ始めたからだ。
 どうやらついに、ゲリラ豪雨が降って来るらしい。
 豪雨くらいで東京の電車が止まることはないが、しかしなるべくなら遭わずに済むのが望ましい。
 皆がそう思っていたのだろう。
 田口が立ち上がり、最後の締めの挨拶をした。

 田口:「皆さん、本日はお忙しい中、お集まり頂き、ありがとうございました。おかげさまで、良い記事が書けそうです。夏休み前の特集として、大きく取り上げさせて頂きますので、どうかご期待ください。それではお気をつけて……」

 と、その時だった。

 石上:「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 突然、部室のドアがいきなり開けられた。
 そこから入って来たのは、汗だくで憔悴した石上暮美であった。

 田口:「い、石上さん!?」
 古堂:「オメェ、帰ったんじゃねぇのかよ!?」
 新井:「嫌ですね。まだ愛原さんのことを狙っているのですか?」
 太田:「ぼ、ぼぼ、暴力はダメだよォ……」
 石上:「良かった……!まだ神田は来てないか……!」
 古堂:「神田!?」
 田口:「それって、7人目の方のことですか?」
 石上:「7人目……!そうとも言えるし、言えないかもしれない……」

 石上は最初に座っていて、今は空いている椅子に座った。
 まるでフルマラソンに参加した後のようだ。

 石上:「神田がここに向かっている!それを知らせに来たのよ!」
 笠間:「はあ!?」

 すると、部室のドアがノックされた。

 リサ:「誰か来た!?」
 石上:「うそでしょ!?いくら何でも早過ぎる!」
 リサ:「そんなに恐ろしい人なんですか?」
 石上:「恐ろしいも何も、そいつは……」

 するとまたドアがノックされて、ドアが開けられた。

 石上:「しまった!鍵を掛けるのを忘れてた!」

 だが、入って来たのは神田という者ではなかった。

 栗原蓮華:「失礼します。七不思議特集の取材会場はここでよろしいでしょうか?」
 リサ:「栗原!……先輩!」

 蓮華は左足が義足になっている。
 これは霧生市のバイオハザードに巻き込まれた時、左足をリサ・トレヴァー『1番』に食い千切られたからである。
 しかし義足ながら、所属は女子剣道部である。
 しかも手に、麻袋に入った日本刀を持っていた。

 蓮華:「私は栗原蓮華。2年3組に所属している者です。急きょ、『7人目の代理』として参りました」
 古堂:「7人目の代わり?どういうことだ?」
 蓮華:「本当の7人目は、まもなくここに来ます。ですが、来たら必ず災いが起こります。そうなる前に、その7人目がどういった人物なのかを説明させて頂くべく、ここに参りました」
 石上:「そうだったの。あの神田からは、逃げてもムダだからね。誰か対応できる者がいないかと思ってここに来たけど、あんたがそうだったのね」
 田口:「よく分かりませんが、このままでは7話目が分からず、困っていたところです。7話目をお話しして下さるのでしたら、是非お願いします」
 蓮華:「分かった」

 蓮華は7人目が座るはずの椅子に座った。
 と、同時に麻袋から日本刀を取り出す。
 これはもちろん、許可を得て所持しているものだ。

 石上:「ふ……。私のカッターでは対処できないと思っていたら、日本刀を持って来たの。でも、それでも倒せるかしらね?」
 蓮華:「それはやってみないと分かりません。さっきから既に名前が出ていますが、本当の7人目の名前は神田。神田拓郎と言います。生前、この学校の3年生であった人です」
 リサ:「生前?」

 本来の7人目が既に故人?
 そして、リサに恐れず大型カッターを振り下ろした石上でさえ恐れる神田という人物とは一体?
 そろそろ終盤に差し掛かる。
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 後半へ続く

2021-07-30 17:06:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日17:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 古堂:「おい、遅ェぞ!」

 新聞部の部室に戻ってきたリサと田口を、古堂がなじるように言った。

 田口:「ご、ごめんなさい。遅くなりました」
 笠間:「まあまあ、古堂。女子のトイレは、だいたいゆっくりなものだよ~。そこをジッと待ってあげないと、ボクみたいに彼女の1人もできないよ?」
 古堂:「あァ!?」
 新井:「まあまあ、ケンカはやめてくださいよ。今度は僕が話しますから」

 最初にリサに話し掛けた、陰気臭そうな男子生徒が手を挙げた。
 普段は俯き加減の陰気臭そうな感じだが、言うべきことは言うといった感じだ。

 田口:「あ、はい。お願いします」
 新井:「僕の名前は新井譲二。2年1組に所属しています。よろしくお願いします。さて、皆さんは映画はお好きですか?実はこの学校には、かつて映画研究会という同好会があったんですよ。今は御存知の通り、無くなってしまっていますけどね。僕がお話しするのは、かつてこの学校に存在した映画研究会の栄枯盛衰についてです」

 新井によると、この学校にはとても映画が大好きな男子生徒がいたという。
 休み時間では必ず、同好の士を集めて映画の話に花を咲かせていたとのこと。
 そんな彼は休み時間に映画の話を語ったり、休日に映画を観に行くだけでは飽き足らず、ついにそのクラブ活動を旗揚げすることにした。
 最初はいきなり部にはなれないので、同好会という形からでスタートとした。
 そんな同好会だったが、映画についての品評や観賞だけでなく、創作活動も行うようになったという。
 いわゆる、自主制作映画というものである。

 新井:「その時、彼はドキュメンタリー映画を作ろうと考えたのです。というのは当時、彼はドキュメンタリー映画にハマっていたそうですから。それで制作に当たり、テーマを決めることにしました。田口さん、僕がこの話をしようと決めたのは、石上さんや愛原さんのおかげなんですよ」
 リサ:「私の?」
 新井:「石上さんや愛原さんは、イジメ問題に則した話をしてくれたではありませんか。それならば、僕もさせて頂こうと思ったのです。……そうです。映研部長の彼がテーマにしたのは、当時も問題になっていたイジメ問題でした。そして彼は、1人の男子生徒にフォーカスを当てたのです」

 ところが、ここから話はおかしな方向へと向かう。
 撮影する側である以上、確かに手出しはできまい。
 加害者側に回ることも、被害者側にも回ることもだ。
 そして、被害者の生徒は、ついに学校の屋上から飛び降り自殺を図った。

 新井:「その時も部長は、カメラを回し続けていたそうです。つまり、助けようとはしなかったということですね。彼、凄いですよ。飛び降りる瞬間から、落ちた所まで撮影していたそうですからね。被害者の哀しそうな目まで、ハッキリと映っていたそうですよ。……さて、これで撮影は終了しました。問題は、これをどのように編集するかということです。はっきり言って、イジメ問題はとても重いテーマです。しかも、被害者が自殺する所まで映っているのですからね。部長はなるべく視聴しやすいようにする為、雰囲気を軽くしようとしました。面白いBGMや効果音をふんだんに使い、視聴者が面白おかしく観賞できるよう編集したのです」

 そして件の映画は、文化祭で発表されることになった。
 映研のそのドキュメンタリー映画はとてもバカウケした。
 重いテーマのイジメ問題を取り上げた作品のはずが、観衆は、まるでコメディ映画でも観に来たかのような感じになったという。
 そして上映が終わり、部長は登壇した。
 部長はこの時、ここでこの映画の趣旨について暴露しようとした。

 部長:「皆さんはゲラゲラ笑いながら観賞されましたが、これは現実にあった話なんです!」

 と。
 しかし、この楽しい雰囲気をブチ壊しにしていいものかどうか迷ってしまい、部長はその雰囲気に負けてしまった。
 大きく手を振り、観客達の声援に応えてしまったのである。

 新井:「調子に乗った彼は、同じ映画の第2弾を撮影しようとしました」
 リサ:(旧校舎に行ったりしたら、“花子さん”ブチギレ案件……)
 新井:「素材には困りませんでしたからね。イジメの被害者なんて、そこかしこにいましたから。あの映画が発表されたことで、加害者達はますます調子を良くしたようですから。そして第2弾の撮影もまた、被害者の自殺という形で終了しました。今度は電車に飛び込んたのです。踏切から猛スピードで通過する電車にね。肉片やら血しぶきやらが飛び散る所まで映っていたそうですよ」
 リサ:(肉片……血しぶき……)

 リサは思わず、口中に唾を溜めた。
 もしもコロナ対策のマスクを着けていなかったら、顔がニヤけたことがバレていただろう。

 新井:「何でも噂では、『今だ!飛び込め!』という部長の声が入っていたとのことです。彼にとってはイジメの被害者など、所詮映画の出演者の1人に過ぎなかったのでしょうね。そして、編集です。第2弾も、面白おかしくコメディタッチで作ることにしました。そして、映画は完成したのですが、その映画は公開されることはありませんでした。何故だか分かりますか?」
 田口:「さすがに学校側からストップが掛かりましたか?」
 新井:「いえ、そんなことは無いです。学校側も、まさかあの映画が本当のイジメの現場を撮影して編集したものだとは知りませんでしたから。……もっとも、本当に知らなかったかどうかは分かりませんがね」
 リサ:「『イジメの事実は確認できなかった』『イジメは確かにあったが、それが自殺の直接の原因だったかどうかは分からない今日この頃です』だね」
 新井:「でしょうね。……愛原さんも楽しそうですね。愛原さんも、きっとあの映画を観たら、ゲラゲラ笑えると思いますよ。ですが、後悔しないでくださいね。ゲラゲラ笑った者は、何らかの事件や事故に巻き込まれてケガをしていますから」
 リサ:「えっ?」
 新井:「たかだか観賞しただけでケガさせられるのです。ということは、制作した側がどうなったかは……分かりますね。部長は死体で発見されました。視聴覚室でです。当時まだ映画研究会は正式な部活動ではなかったので部室が与えられず、放課後や休日の視聴覚室が仮の部室に指定されていましたから。映像には、死んだはずの被害者2人に首を絞められ、殺される所が映っていたそうですよ。そして、当時の映画研究会に参加していたメンバーの全員も、事件や事故で重傷を負うハメになりました。観賞者達は軽傷で済みましたがね。……え?その映像ですか?第2弾は警察に押収されたそうですが、第1弾については不明です。恐らく、このまだこの世に存在しているかと。僕も探しているんですが、まだ見つかっていません。多分、部長の家にあるのではないかと見ているんですけどね。……あ、そうそう。1つだけ被害者が浮かばれる話をしましょうか。第2弾は警察に押収されましたが、そこに映っていた加害者達は暴行や傷害、恐喝や強要の罪で警察の手が及んだようですよ。そこまでハッキリと映っていましたから、いい証拠になったようです。これで僕の話は終わりです。御清聴を感謝します」
 田口:「ありがとうございました。それでは、最後はあなたにお願いします」
 太田:「はい。僕の名前は太田友治。新井君と同じ2年生です。でも、クラスは7組です。さすがに僕の話はイジメ問題じゃないんですけど、トイレに纏わる話をしましょう」

 巨漢の男が実質的なトリを飾ることになった。
 果たしてこの後、本当のトリを飾ることになる7人目は現れるのだろうか。
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 リサの捕食

2021-07-29 21:48:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日16:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F女子トイレ]

 リサは同じ1年生で新聞部員の田口真由美と一緒にトイレに入った。
 ところが、同じ個室にリサも入る。

 田口:「愛原さん!?」
 リサ:「シーッ。静かに」

 リサは左手の人差し指で田口の口を押さえ、右手で田口の目を塞いだ。
 一瞬、視界を塞がれた田口だったが、次に視界が開けた時、とんでもないモノを見て絶叫を上げそうになった。

 田口:「ひぃうっ!?」

 目の前にいたのは、鬼のように赤銅色の肌になり、頭には角が一本生え、両耳は長くて尖り、両手の爪が長く鋭く伸びたリサであった。
 しかし、口を塞がれているので叫ぶことができない。

 田口:「んんーっ!!」
 リサ:「静かにしろ。殺すぞ」
 田口:「!!!」

 リサが田口の耳元でそう囁く。

 リサ:「私の言う事に素直に従えば、殺しはしない。分かったか?」
 田口:「んっ!んんっ!」
 リサ:「よし。じゃあ、まずパンツを脱いで」

 田口はスカートの中に手を入れると、その下に穿いているものを脱いだ。
 パンチラ防止の為の黒いスパッツと、水色のショーツを穿いていたようだ。

 田口:「あ、あの……!」

 そして、リサは両手の掌から触手を出した。

 リサ:「今からお尻の穴とオシッコの穴に触手を入れる。痛い目に遭いたくなかったら、力を抜いて」
 田口:「ひいっ!?」

 リサの触手が田口の肛門と尿道に入って行く。

 田口:「あ……!あ……あ……!」

 ガクガクと足を震わせて、田口は壁に倒れ掛かった。

 リサ:「イタダキマース」

 触手が田口の体の中にある老廃物を吸い出した。
 触手が入る際に出血した部分もついでに吸った。

 田口:「き……気持ち……いい……!なに……これ……!」

 田口は涎を垂らして、恍惚の表情を浮かべた。

 リサ:「見ての通り、私は人間じゃない。今はね。昔は人間だったし、将来は人間に戻るつもり。だけど、今は……化け物と言われてもしょうがない。でも、言われたらムカつくけど。本当は生きている人間の血肉を食らいたい。だけど、そんなことしたら、私は2度と人間に戻れなくなる。折衷案として、体の中の老廃物を頂くことにしているの。これなら死なないでしょ?」
 田口:「で……でも……き、汚い……!」
 リサ:「体の中にある物だけだよ。外に出たものは、さすがの私も汚らしくてしょうがないと思う。……よし、こんなところでいいか。それじゃ、触手を抜くよ」

 リサは一気に田口の2つの穴から触手を引き抜いた。

 田口:「ひゃうぅぅっ!!」

 田口は股間から潮を吹いて、オルガズムに達した。

 リサ:「どう?痛くなかった?」
 田口:「ありません……。気持ち……良かったです……」
 リサ:「それは良かった。じゃあ、パンツ穿いて。早いとこ戻ろう」
 田口:「ま、待って……」
 リサ:「なに?」
 田口:「こ、腰が……た、立てない……」

 どうやら田口、オルガズムに達したことで腰が抜けてしまったらしい。

 リサ:「ああ、そうか。じゃあ、私が肩貸してあげる」

 いつの間にか第0形態に戻ったリサは、田口に肩を貸した。

 リサ:「ああ、そうそう。あなたの体の中にね、私のウィルスを送り込んでおいたから」
 田口:「ええっ!?」
 リサ:「だけど、心配無い。あなたが私の秘密をバラそうとしたり、私の機嫌を損ねるようなことさえしなければ、そのウィルスは何もしないで眠っているだけ。ふふふ……。もしも、私が最後に当てられて、7人目が来なかったら、少しだけこの話をしてあげようかと思った。もっとも、バッドエンド直行になるけどね。私を途中で当てたあなたは、運が良かったね」
 田口:「あなたは……何者なの?」
 リサ:「元人間。そして、また元の人間に戻ろうとしている……BOWだよ。生物兵器だね。そして、中には『鬼』と呼ぶ人もいる」
 田口:「そ、そうよ!あなたは『鬼』だわ!」
 リサ:「シーッ!声がデカい!!」
 田口:「ううっ!?」

 突然、田口に激しい腹痛が襲った。
 まるで、内側から腹が食い破られそうになるほどの……。

 リサ:「分かった?私の言っていることは本当だって。このまま、腹を内側から破ってやろうか?」
 田口:「ご、ごめんなさい……!も、もう……言わないから、許して……!」
 リサ:「よし」

 リサが頷くと、たちまちに田口から腹痛が無くなって行く。

 リサ:「だけど、2度目は無いからね?」
 田口:「…………」
 リサ:「返事はどうしたの?」
 田口:「わ、分かりました……」
 リサ:「よし。じゃあ、戻ろう」

 2人は女子トイレを出た。

 田口:「あ、あの……1つだけ聞いてもいいですか?」
 リサ:「なに?」
 田口:「この学校で……他に私みたいにウィルスを植え付けた人はいるんですか?」
 リサ:「いるよ」
 田口:「何人くらいですか……い゛っ!?」

 再び田口に激しい腹痛が襲った。
 今度は吐き気を伴った。

 リサ:「質問は1つだけのはずだけど?」
 田口:「ご、ごめんなさい……」

 そしてまた田口の腹痛と吐き気が止まる。

 リサ:「何人とは言えないけど、少なくとも男子や先生達にはしてないよ。女子が何人か。そして、あなたも私の『グループ』の仲間入り。おめでとう」
 田口:(お、鬼だ。この人……本当に、鬼だ……)

 石上の話の中で、リサはイジメ加害者グループのリーダーを痛めつけたと言っていた。
 田口はその話を半信半疑に聞いていたが、自分が遭った恐怖体験を以って、それが本当だったのだと信じざるを得なくなった。

 田口:「あ、あの……別の質問ならいいですか?」
 リサ:「1つだけね」
 田口:「石上さんの話で、愛原さんはイジメ加害者グループのリーダーを痛めつけたと言いましたよね?どんな痛い目に遭わせたんですか?」
 リサ:「なるほど。まあ、その質問ならいいか。あなた達のとは、別のやり方だよ。あんなヤツ、とても美味そうに見えなかったからね」

 リサは自分の髪の毛を一本抜いた。
 そして、それを舐め回す。
 するとその髪の毛が、命が宿ったかのように動き始めた。

 田口:「こ、これは!?」
 リサ:「これが私の技の1つ。そうだねぇ……まあ、人工的に造った寄生虫と思ってもらえればいいかな」
 田口:「そ、それで?」
 リサ:「これをあいつに寄生させてやった。あなたは、寄生虫に寄生されるとどうなるか分かる?」
 田口:「ごめんなさい。あまり、よく分からない……分かりません」
 リサ:「別にいいよ。結局、私の意思で自由に動かせるんだけどさ。下痢させてやって、トイレに駆け込ませるんだけど、個室に入る前に漏らさせてやったよ」
 田口:「そ、そんなことができるんですか?!」
 リサ:「そう。できる。そして、私が言ったあのセリフだよ。たまたま誰もいないトイレで漏らしたから、まあ、いくらでも誤魔化せたけどね。それが大勢の人がいる前でお漏らししたら……どうなるかな?」
 田口:「わ、私、あなたには逆らいません!だから、どうか……!」
 リサ:「その言葉、忘れるなよ?」
 田口:「は、はい!」

 2人は急ぎ足で新聞部の部室へと向かって行った。

 リサ:(結局私が1番強いから、怪談でさえ私には茶番にしか見えない。さっさとこんな集会、終わらせて帰ろう)
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“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 中盤

2021-07-28 20:58:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 リサ:(何だか、作り話みたいでつまんないなぁ……)

 リサは自分も語り部達の話をメモすることにした。
 もちろん、石上が話したイジメの話もである。
 石上が部室から立ち去ったので、部室内は6人となっていた。
 そして、7人目は未だに来ない。
 2話目を話した3年生男子の古堂真は、かつてこの学校を仕切っていた不良グループに纏わる怖い話をしてくれた。
 体育会系に見えた古堂は、見た目に硬派系の不良という感じにも見受けられたが、どうやら後者であったらしい。
 実は運動部にまつわる怖い話も知っているということだが、今回はその話をしたという。

 古堂:「……以上で俺の話は終わりだ。この学校でヤンキーになるというのは、別の意味で命懸けってことだからな。何事も、ほどほどにってことさ。他にも運動部にまつわるネタもあるんだが、それはまあ、またの機会に話させてもらうぞ」
 田口:「ありがとうございました。それでは次は……」
 笠間:「じゃあ、今度はボクが話させてもらおうかな」

 男子4人の中ではイケメン……というより、優男と言った方が良い顔立ちの男子生徒が手を挙げた。

 笠間:「ボクの名前は笠間亘。3年3組だ。悪いけど、ちょっと怖い話としては趣旨がズレてるね、石上も古堂も」
 古堂:「あァ?」
 笠間:「だってそうじゃない。あくまでも趣旨は、この学校で起きた怖い話だよ。それなのに石上と来たら、結局死人は家で出ているし、愛原さんを勝手に妹の仇と決めつけて襲っただけ。古堂も、結局は学校の外で起きた怖い話じゃないか」
 古堂:「誰も校舎ん中限定の話だなんて言ってねーだろうが!」
 笠間:「その点、ボクはちゃんと学校の中限定の怖い話をしてあげるよ。皆、理事長の石像は知ってるよな?……そう。正門から入ってすぐの所にある、あの理事長の石像だ。実はね、あれは真夜中2時になると独りでに動き出すんだ。終わり」
 田口:「……はい?」
 リサ:「えっ?」
 古堂:「あ?」
 笠間:「うん。だから、終わりだよ。怖かっただろ?あの理事長の石像が勝手に動くなんて。しかも、ボクは宣言した通り、ちゃんと学校の敷地内で起こる怖い話をしてあげたよ。何か不満かい?」
 古堂:「短すぎるだろ、オメーよ!」
 田口:「す、すいません。古堂先輩の仰る通り、ちょっとこれでは短過ぎて記事にならないので、もっと詳しく話して頂けませんか?例えばそれで、誰か痛い目に遭ってしまった方とかいらっしゃらないんですか?」
 笠間:「痛い目か……。あの石像には、とんでもない秘密がある。今のところ誰もその秘密には触れていないみたいだから、痛い目に遭ったという話は聞いていないんだ。だけど、ボクはあの石像の秘密を知っている。どうやら、その秘密を人に話して初めて痛い目に遭わされるらしい」
 リサ:「そ、そんなに!?」
 田口:「どうか、そこをお話ししてくださいませんでしょうか?」
 笠間:「うーむ……」

 笠間はしばらく考え込んだ。

 リサ:(理事長先生の石像が動くなんて、他の学校の怪談でもありそうだ。私が昔いた研究所でも、アメリカのアンブレラの創業者スペンサーの銅像に仕掛けがあって、それを操作すると隠し扉が開くなんてのもあったっけ)
 笠間:「キミはどうなんだい?愛原さんと言ったね?」
 リサ:「あ、はい。是非聞きたいです」
 笠間:「分かったよ。よく見たら、2人とも可愛いもんな。可愛い後輩の女子達に頼まれたら、嫌とは言えないのが男子たるものだ」
 古堂:「なにカッコつけてんだよ。石上の前じゃ、そんなこと言えねーくせによ」
 田口:「古堂先輩、石上先輩のことを御存知なんですか?」
 古堂:「同じ3年だからな。廊下とかで見たことがある程度だ。多分、向こうもそうだろうよ。あいつ、軽い男は嫌いだってんで、とあるイケメンクソ野郎をカッターで逆襲しようとしていたぜ」
 笠間:「ああ、あいつか。自業自得だね。ありがとう。石上にはボクも注意しておくよ」
 古堂:「分かったら、さっさと続きを言え」
 笠間:「分かった。実はあの理事長の石像なんだが、痛い所があってね。その秘密を知ることにより、自分も痛い目に遭わされるんだろう。どんな痛い目に遭わされるか分かるか?」
 リサ:「さっきの古堂先輩の話みたいに、不良の幽霊に追い回されてボコボコにされる」
 笠間:「そんな野蛮なものじゃない。それは笑い死にだ。分かるか?」
 リサ:「笑い死に?」
 笠間:「そう。それが石像の秘密を知ったばかりに遭わされる痛い目なんだ。あの理事長の石像は見たことがあるだろう?あの石像は、理事長がまだ50歳くらいだった頃の姿をモデルにして作ったものらしいんだな。まだ50歳だ。下から見る限り、髪の毛もフサフサしている。だが、あの石像を校舎のとある窓から見ると……ハゲてるんだよ。顔立ちがキリリとした映画俳優みたいなのに、ハゲとのギャップが凄い!……あぁあ、いま思い出したら笑いが……!あーっはははははははははは!!」
 リサ:「……これ、ネタになる?」
 田口:「すいません。やっぱりカットにしようと思います」
 古堂:「笠間!テメェ、後で体育館裏に来いや、コラ!」

 確かに、痛い目に遭う話ではあったようだ。

 田口:「えーと……。それでは、次の話に移りたいと思います。次は、愛原さん、お願いできますか?」
 リサ:「私?いいよ。えーと……自己紹介からだっけ。私は1年5組の愛原リサです。よろしくお願いします。私がこれからするのは、旧校舎に括りつけられている“トイレの花子さん”の話。今から何十年も昔に起きた、怖くて悲しい話です」

 リサは旧校舎に巣くう“トイレの花子さん”の話をした。
 リサの語り口調は、けしてプロの語り部とは違い、素人そのものであったが、聞く者を引き込む何かがあった。

 リサ:「……そういうわけですから、けして“花子さん”は悪霊じゃないんです。少なくとも、あの石上さんから見れば、絶対に悪霊認定はされないと思います」
 田口:「今でも“花子さん”がいらっしゃるんですか」
 リサ:「そう。あと1人……生涯独身を貫いた為に子供がおらず、そのせいで『加害者の子供に代わりに復讐する』という目的が果たせず、未だに“花子さん”を旧校舎に閉じ込めているヤツが1人いる。それはこの学校に昔、科学教師として赴任していた白井伝三郎。あの世界的に悪名高いアンブレラの日本支部で働いていた白井。そいつと同級生。“花子さん”は白井に直接復讐すると言っている。だけど、白井が見つからない。だから私は、白井を捜しているの。皆さんも有力な情報があったら、よろしくお願いします」
 田口:「いきなり壮大になりましたね。……ちょっと休憩を挟みましょう。それまでに7人目の人が来てくれるといいのですが……」

 リサは白井のことを直接話そうか迷ったが、やはり“花子さん”の悲劇は語り継いで行く必要があると思い、この話をすることにした。
 奇しくも石上とは、同じ『イジメ問題』という共通点が発生していた。

 リサ:(もっとも、ややもすると、私もイジメっ子。“花子さん”に怒られないようにしないと……)

 石上の妹を自殺に追いやったイジメ加害者グループのリーダーも、リサにはこっ酷い目に遭ったこともあり、リサには怯えている。
 その怯え方から、まるでリサの方がイジメたと誤解されそうだ。
 恐らく石上はその話を聞いて、リサが黒幕だと誤解したのだろう。
 リサがその加害者リーダーに放った最後のセリフ、『明日は体育の授業中に脱糞させてやろうか?それとも、朝礼中にオシッコお漏らしの方がいい?好きな方を選べ』。
 ……うん、まるでリサの方が加害者だ。
 イジメの加害者を痛い目に遭わせてやったということで、“花子さん”には『よくやった!追撃の手を緩めるな!』と、逆に煽られたが。

 田口:「あ、あの……」
 リサ:「ん?」
 田口:「トイレ、行きますよね?」
 リサ:「行くけど?」
 田口:「い、一緒に行ってくれませんか?怖い話を聞いたせいで、その……怖くなっちゃって」
 リサ:「ふーん……。まあ、いいよ」
 田口:「ありがとうございます!あの、愛原さんは怖くないんですか?」
 リサ:「別に」
 田口:「そ、そうですか。愛原さんは強いんですね」
 リサ:「まあね。ある意味、あなたも勇気がある」
 田口:「えー、そんな……。私、怖い話は苦手で……。本当はこの企画の担当、断ろうと思ってたんですよ」
 リサ:「そんなことないでしょ。(私自身が怖い話のネタになる側だというのに、それにも気づかず一緒にトイレに行こうなんてヤツ、勇気あるに決まってるじゃない)」

 リサは田口より先に立つと、一瞬だけだが瞳を赤く鈍く光らせ、両手の爪を尖らせた。

 リサ:(こいつの老廃物と少しの血を啜ってやろうか……!)
コメント (1)
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