報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの帰宅」

2024-11-08 20:41:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日14時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 タクシーが家の前に到着する。
 パールがガレージを開けていてくれたようだ。
 タクシーには一旦、ガレージに入ってもらうことにした。

 愛原「お世話様でした」

 私が料金を払っている間、リサが先に降りてタクシーの後ろに回り、ハッチを開けて荷物を降ろしたりしている。

 運転手「ありがとうございました」
 愛原「どうもお世話様」

 私が料金と領収証を受け取るのと、エレベーターからパールが降りて来るのは同時だった。

 パール「先生、お帰りなさいませ」
 愛原「ああ、ただいま」
 パール「本日はもう車の出入りは無いのですよね?」
 愛原「そうだよ」
 パール「では、シャッターはお閉めします」
 愛原「ああ、頼む」

 タクシーが出て行くと、パールはシャッターを閉めた。

 リサ「先生、荷物持ってくよー」
 愛原「ああ。まずは3階に持って行こう」

 私達はエレベーターに乗り込んだ。
 そして、3階に向かう。
 エレベーターを降りると、リビングに向かった。

 愛原「ん?」

 

 リビングのソファの上には、リサの下着が重ねて置かれていた。
 どうやら、洗濯はされているらしい。

 リサ「あれ?何でわたしの下着がここに?」

 その下着には見覚えがあった。

 パール「小笠原から御帰還された先生の荷物の中に入っておられたのです」
 愛原「そうだそうだ、リサ。勝手に俺の荷物の中に入れるんじゃねーよ」
 リサ「先生が寂しがるといけないと思ってぇ……」
 愛原「ま、おかげで船旅は退屈しなかったがな……」
 リサ「え!?」

 リサは目を丸くした。

 リサ「今、何て言ったの!?ねぇ!今、何て言ったっちゃ!?」

 リサは興奮して、第一形態の鬼姿に戻ってしまった。

 愛原「な、何でもない。ほら、パールにも土産がある」
 リサ「ねぇ!退屈しなかったってことは、わたしの下着、使ってくれたってこと!?」
 愛原「静かにしろ。パール、足柄で買って来た酒だ。飲み過ぎは良くないが、高橋の事は、これでも飲んで気を紛らわせるんだ」
 パール「お気遣い、ありがとうございます。マサにも差し入れできたら良かったのですが……」
 愛原「さすがに酒は禁止だからな。それは無理だろう」
 パール「ですよね」
 リサ「着替えてくるね」
 愛原「ああ」
 パール「洗濯物があったら、籠の中に入れといてください」
 リサ「分かったー」

 リサはエレベーターに乗って、自分の部屋のある4階に向かった。

 愛原「リサの制服とかは洗っといた方がいいのかな?」
 パール「ブラウスとかは洗濯機で洗えますけど、スカートはクリーニングに出す形になりますね」
 愛原「やっぱりそうか。俺が留守の間、何か変わったことは無かったか?」
 パール「特に無かったですが、家の前をよくパトカーが通りましたね。特にサイレンとかは鳴らしてなくて、ただ単にゆっくり通過しただけですけど」
 愛原「“コネクション”に対する警備強化かな……」

 しかし、それはいつまで続くのだろう?
 そもそも、私の頭に埋め込まれていたという記憶媒体のチップの解析結果は出たのだろうか?
 ……まあ、出たところで、私には教えてくれないか。
 何しろ、国家機密モノらしいからな。

 愛原「おっと!善場係長に到着の報告をしなくては……」
 パール「コーヒー、お淹れしますね」
 愛原「ああ、すまない」

 私は自分のスマホを取り出すと、善場係長に家に到着した旨の報告メールを送信した。
 何故だか今回は、すぐに返信が来なかった。
 まあ、こちらはちゃんと報告したのだから問題無い。
 メールで思い出した。

 愛原「パール。ちょっと俺は、下の事務所にいる」
 パール「何かございましたか?」
 愛原「昨日、留守の間に、顧客からメールとか来てるかもしれないだろ?ちょっとチェックしてくる」
 パール「では、コーヒーは下のコーヒーメーカーでお淹れします」
 愛原「悪いな」

 私とパールはエレベーターを呼び戻し、2階へと下りた。
 これならリサも、私達が2階にいることが分かるだろう。

 愛原「ああ、やっぱりだ。色々来ている」

 中には不必要なダイレクトメールとかもあったが、多くが小口契約の顧客からだった。
 何だか知らないが、不動産関係者から、事故物件の調査依頼がよく来るようになったのだ。
 多くがその原因として、建物の構造に欠陥があるだとか、隣人・ご近所トラブルが元だとか、現実的なものばかりであり、怪奇現象が原因という物はほぼ無いのだが。
 高橋やパールの知り合いにバイトを紹介してもらっていたのだが、高橋が逮捕されてしまった以上、もうそのツテは使えないだろう。
 しばらくは私が個人で引き受けるしか無いのだが、そうなると人手が足りないので、細々と受ける形になるだろう。

 愛原「返信だけで1時間くらい、時間を潰せそうだ」
 パール「では、やはりコーヒーはここでお淹れした方が良さそうですね」
 愛原「ああ、そうだな」

 何十通か来ている。
 こんな零細探偵事務所に、これだけメールが来るなんて凄いと思う。
 もちろん、無関係なダイレクトメールは除外するがな。
 そんな時、気になるメールがあった。
 それは、公一伯父さんからのメールだった。

 『よお、学。リサの鬼のとしての力を強化したいのならば、ここの酒蔵へ行け。“鬼剛し”という酒があるぞ。もちろん、人間が飲んでも美味い酒じゃがな。他には“鬼封じ”という酒が……』

 最初は興味を持ったが、よくよく読んでみると、リサをダシにして自分が酒を飲みたいだけではないかと思ってしまうような内容だった。
 何にせよ、今すぐ必要な物ではないな。

 パール「コーヒーです」
 愛原「ありがとう」

 私は公一伯父さんのメールは無視し、他の顧客からのメールに対する返信を行った。
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“私立探偵 愛原学” 「帰宅へ」

2024-11-08 15:36:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日12時15分 天候:曇 東京都中央区八重洲 八重洲地下街・旭川ラーメン番外地]

 高速バスを降りて東京駅に入った私とリサは、先に昼食を取ることにした。
 八重洲地下街に移動して、辿り着いた場所は……。

 愛原「ラーメン屋だ。最近、ラーメン食べてなかったんだ」
 リサ「なるほど。ここって、前にも来たことあるよね?」
 愛原「おっ、覚えてるか。肉とか一杯入ってて美味かっただろ?」
 リサ「確かにね」
 愛原「リサは何にする?」
 リサ「醤油チャーシュー麺。大盛りで」
 愛原「了解」

 券売機で食券を買うタイプである。
 私は醤油ラーメンにし、リサは醤油チューシュー麵の大盛りにした。
 カウンター席に横に並んで座ることとなった。

 愛原「そこの通りを南の方に進んで行くと、スリーコインズがある。そこで小銭入れを探そう」
 リサ「分かった」

 リサの、BOWとして良い所は人肉以外の物も食べれることと、知性や理性は正常であるこということだ。
 やろうと思えば、こうして人の姿に化けることもできる。
 本当は、ここまで戻せれば良いのだが。
 今のところは、鬼の姿が正体である。

 リサ「ねぇ、今思ったんだけどさ……」
 愛原「ん?」
 リサ「私の正体、鬼の姿じゃない?」
 愛原「そ、そうだな。それがどうした?」
 リサ「オリジナルの大先輩なんか全然違うなのに、わたしだけ鬼の姿っておかしくない?」
 愛原「日本アンブレラが、独自の研究・改良でそうしたんだろ」
 リサ「Gウィルスに、『鬼の血』を混ぜたとか?」
 愛原「どうしてそう思う?」
 リサ「さっきLINEで、リンとやり取りしてたの」

 リンとは上野凛のことで、『魔王軍四天王』の1人だ。
 2年生なので、正直あまりリサと絡みは少ない。
 女子陸上部員なので、リサの『東京中央学園ブルマ復活計画』においては、陸上部のユニフォームをスパッツではなく、レーシングブルマに変えることで、学販ブルマの着用をかわしたという。
 元々東京中央学園の女子陸上部には、ユニフォームとしてスパッツとブルマの両方があるらしいのだが。
 栃木にある『ホテル天長園』の副支配人を務める上野利恵の長女で、同じく鬼型BOWの母親と普通の人間の父親との間にできた娘なので、『半鬼』と呼ばれている。

 愛原「それで?」
 リサ「リエは特異菌と鬼の血を混ぜた物を投与して、今の状態になったんだって」
 愛原「それは聞いたことあるな。利恵がただの特異菌の化け物にならなかった理由はそれか」
 リサ「私はGウィルスだけど、そのGウィルスに鬼の血を混ぜたからこうなったというのは?」
 愛原「有り得なくは無いが、その『鬼の血』はどこから?」
 リサ「まだ分かんない。だけどミキが、『昔、アンブレラの人間が、鬼の血を採取しに来た』という話を聞いて、もしかしたらと思って」

 但し、太平山家はもちろん、そこの里の鬼達はアンブレラからの血の採取を断っている。
 すると……。

 リサ「でも、ミキ達は断ったらしい。だけど、もしかしたら、引き受けた連中がいたとしたら、その地が使われたってことだよね」
 愛原「それ、多分、デイライトさん達も確認してるだろうなぁ……。後で聞く機会があったら聞いてみよう」

 そんなことを話していると、ラーメンがやってきた。

 愛原「じゃ、さっさと食べて買い物に行こうか」
 リサ「ういっス!」

[同日13時00分 天候:曇 同地区 八重洲地下街・スリーコインズ]

 リサ「あった!」

 ラーメンを食べ終えた後は、その足でリサの小銭入れ探しに。
 小銭入れというよりは、Sサイズのポーチといった感じだった。

 愛原「あったか」

 私はポーチを買ってあげた。
 そして、預かっていた小銭をジャラジャラ入れてやる。
 主に百円玉や十円玉が多かった。

 リサ「いいの?」
 愛原「ああ。これは緊急用でもある」

 私は公衆電話を指さした。

 愛原「俺も小笠原から船で帰る時、公衆電話しか使えなくて不便だったことがある。もしかしたらお前も、連絡手段は公衆電話だけみたいな事になるかもしれないぞ?」
 リサ「なるほど。それで百円玉なんだね?」
 愛原「一応、公衆電話は十円玉も使えるから入れといたが……。もしも掛ける相手がスマホだったら、百円玉を入れておいた方がいいな」
 リサ「分かった」
 愛原「あと、電話番号はどこかにメモしておいた方がいいぞ?オマエも経験しただろうが、そういう時って、スマホが手元に無い、あっても使えない状態だったりするからな」
 リサ「静岡にいた時なんかそうだったね。後でメモしておく」
 愛原「よろしく。あとはもう用向きは無いな。荷物も多くなったし、タクシー乗り場に行こう」

 エスカレーターで地上へ。

[同日13時30分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・八重洲口タクシー乗り場→東京無線タクシー車内]

 タクシー乗り場に並んでいる間、私はパールにLINEを送った。
 内容は、これからタクシーで帰る旨である。
 パールからはすぐに返信があり、了解とのことだった。
 トヨタ・ジャパンタクシーが来たので、ハッチを開けてもらい、そこにキャリーバッグを載せる。
 それからリアシートに乗り込んだ。

 愛原「墨田区菊川2丁目○-×までお願いします」
 運転手「かしこまりました」

 車が走り出す。
 雨が降りそうなほどに空は曇っているが、ちょうど助手席後ろに設置されているモニタによれば、今日の東京は曇で、降水確率は30%とのこと。
 おかげで、外は少し蒸し暑い。
 タクシーの車内は冷房が入っているが。

 愛原「レイチェルのヘリコプターは、本当に俺達を東京駅まで護衛したのか?何か、随分曇ってるけど……」
 リサ「したみたいだよ。レイチェルは今日は訓練日だから、あとはそのまま引き上げたみたいだけど」
 愛原「そうか……。友達が遊びに来るのはいつ?」
 リサ「明日だね。バームクーヘンの賞味期限も明日までだから、それまで冷蔵庫に入れとかないと」
 愛原「そうだな」

 善場係長からも、明日は日曜日でゆっくりしていろと言われたし、私もそうさせてもらうとするか……。
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“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」

2024-11-07 20:28:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日10時00分 天候:晴 静岡県御殿場市深沢 東名高速道路・足柄サービスエリア上り線→富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号・車内]

 トイレを済ませた後、私は自販機で缶コーヒーを購入して飲んでいたのだが、リサはキッチンカーの所に行き……。

 リサ「肉串買っちゃったw」

 と、牛ステーキ肉をぶつ切りにし、串に刺して焼いた物を食べていた。

 リサ「わたしはレアがいいって言ったんだけど、『ミディアムからだ』って断られた」
 愛原「ま、そりゃそうだろうな」

 衛生上の問題か。
 ステーキハウスなどと違い、キッチンカーでは、焼き方にも制限があるだろう。
 私達はバスに戻った。
 因みに、サービスエリアで買った物は缶コーヒーや肉串だけではない。
 一応、パールや自分用のお土産として酒類、温泉の素の他に、リサは友達と食べる用と称してバームクーヘンなんかを購入した。

 リサ「『魔王軍』の皆が遊びに来てくれることになってるからね」
 愛原「そうなのか」

 買った物は網棚の上に置くか、それが入ったビニール袋を座席のフックに引っ掛けておく。
 運転手がカウンターを持って、乗客が揃っているかを確認する。
 それから運転席に戻って、ドアを閉めた。

〔「お待たせ致しました。それでは皆様お揃いになりましたので、出発致します。バスの定時発車への御協力ありがとうございました。引き続き、シートベルトの着用をお願い致します」〕

 バスはゆっくりと発車した。

 運転手「こちら○○○便です。現在、お客様35名、定時です」

 インカムを付けた運転手が、運行管理と中間報告しているのが聞こえて来る。

 愛原「ん、そういえば……」
 リサ「なに?」
 愛原「バスが休憩中、ヘリコプターはどうしてたんだ?」
 リサ「ずっと飛んでたと思うよ?」
 愛原「えっ?」
 リサ「さっきからずっと、このサービスエリアの上をヘリが飛んでたから」
 愛原「何だか大変だな……」
 リサ「わたしのせいだから、申し訳ないね。後でレイチェルに謝っておこう」
 愛原「そうだな。このバームクーヘンでも食いながら……」
 リサ「先生はお酒でしょ?」
 愛原「パールが落ち込んでるからな。酒でも飲ませて、気を紛らわさせてやるさ」

 さすがに拘置所は禁酒だ。
 タバコは……どうなんだっけ?
 警察の留置場はもちろん、警察署そのものが禁煙になってしまった為、運動の時間でも吸えなかったのだとか。
 それが高橋にはキツかっただろう。

 リサ「そうかぁ……」
 愛原「このバスは昼前には東京駅に着くが、色々と買い物したりしていると昼になるから、昼を食べてから帰ろう。夕食はパールが用意してくれる。今日はステーキ焼いてくれるそうだ」
 リサ「おー!」
 愛原「だから、昼は肉以外な?」
 リサ「えー……」
 愛原「肉もあるような店に行けばいいんだ。八重洲地下街でも歩けば、そういう店があるだろう」
 リサ「そ、そうかな……」
 愛原「せっかくWi-Fiが繋がるんだ。探しておこう。……と、その前に俺も中間報告だ」

 私は善場係長に、足柄サービスエリアを出発した旨をメールした。

[同日11時50分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・日本橋口]

 バスは東名高速を西進する。
 片側3車線の道を進むが、古い高速道路ということもあり、途中でカーブやアップダウンのキツい所とかもあったりする。
 そういう所では往々にして平均速度が下がりやすく、車の全体数が多い為に事故や渋滞も発生しやすい。
 右車線を走り屋らしい車がかっ飛ばして行ったり、バイクの集団が車と車の間をすり抜けて行ったりと、かなりスリリング。
 東北自動車道でも見られる光景ではあるが、そこまで車が多くないこともあり、あまりスリリングな場面は見られにくいかも。
 ノロノロ運転になったのは、海老名付近。
 ここは最悪だ。
 国土交通省も認める高速道路の渋滞ランキングで、常に上位に食い込む場所だ。
 大石寺登山帰りの作者のイライラポイントであり、作者は、「もう嫌だ!次回は新幹線使っちゃる!!」とキレていたという。
 挙げ句の果てには、「南条時光さんが、東京に領地を持っていたらなぁ……」と、ボヤいていたとか。

 それから、東名江田や東名向ヶ丘のバス停に停車する。
 ここでは、それぞれ数人ずつ降りて行った。
 JRの急行バスだと乗車もあるが、富士急バスでは降車しか扱わない。
 それから首都高に入って、用賀料金所のすぐ近くにある用賀パーキングエリアにも停車する。
 これは休憩ではなく、降車扱いの為。
 実際にバス停も設置されている。
 しかしながら時刻表には表記されておらず、臨時停車扱いになっているのだろう。
 実際、用賀パーキングエリアに入る為には、料金所の1番左側のブースから出入りするしか無く、そのブースが閉鎖されている場合は、パーキングエリアに立ち寄れない為、通過となる。
 用賀パーキングエリアからだと、東急田園都市線の用賀駅に程近く、渋谷などに用がある利用客は重宝しているらしい。
 そこを出ると、再び首都高速3号線へ。
 首都高速もまた車は多かったものの、制限速度を下回るほどの渋滞は発生しておらず、そこでは遅れは発生しなかったもよう。
 そして、バスは霞ケ関出入口で高速を降りた。
 週末の官庁街は、車も人も平日よりは少ない。
 ここでも降車ボタンが押され、10人以上の乗客が降りた。
 尚、バスの停車場所には都営バスの停留所もあり、高速バスだと『霞ケ関』だが、都営バスだと『経済産業省前』という名前のバス停になる。
 バス停のすぐ近くに地下鉄の霞ケ関駅がある為、地下鉄に乗り換えたい場合はここで降りた方が良い。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。長い間の御乗車、大変お疲れ様でした。まもなく東京駅、東京駅、日本橋口に到着致します。……〕

 皇居の前を通って大手町界隈に入り、そこから国道1号線(永代通り)に入ってJRのカードを潜れば、もうすぐ東京駅である。
 東京駅日本橋口のロータリーは、はっきり言って手狭だ。
 増大するバスの本数に対してキャパがギリギリなのにも関わらず、タクシーや一般車の降車場が整備されていないこともあり、そういうのがロータリー内に止まっていたりしているとすぐに詰まってしまう。
 『東京駅周辺で、最もクラクションの響く所』とも言えるだろう。
 私達の乗ったバスも、そんな乗用車達は既に乗降扱いしている別のバスをかき分けて、ようやくサピアタワー前の乗降場に到着した。
 やはり定時運行は無理のようで、20分ほど遅れての到着となった。

 愛原「やっと着いたな」
 リサ「帰って来たって感じが……するようなしないような……」
 愛原「えっ、何で?」
 リサ「東京駅って、旅行の時くらいしか来ないからかもね」
 愛原「そ、そうかぁ……。忘れ物無いようにな」
 リサ「うん」

 私達は席を立って、ドアの方に向かった。

 愛原「お世話様でしたー」

 私はスマホの画面を運転手に見せてバスを降りた。

 リサ「先生!荷物!」
 愛原「おっと!」

 リサに言われて、踵を返す。
 そうだった!
 荷物室の中に、キャリーバッグを預けていたんだった。
 ターミナルの係員達がバスの荷物室を開けて、乗客の荷物を降ろしている。

 愛原「これだ、これ。危ねぇ~!」
 リサ「良かったね?わたしがいて」
 愛原「そ、そうだな。助かったよ」

 こりゃ、御礼に肉が出て来る料理店に連れて行かないとダメだな。
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“私立探偵 愛原学” 「やきそばエクスプレス4号」

2024-11-07 15:26:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日08時30分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号・車内]

 私とリサを乗せたバスは、定刻通りに発車した。
 まだ車内は、数えるほどしか乗客が乗っていない。
 乗客名簿をチラッと見た感じ、殆どの座席が予約でいっぱいのようである。
 町の中心部である富士宮駅前や、東名高速の入口である東名富士バス停から多くの乗客を乗せるものと思われる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は、富士急行の高速バスにご乗車頂き、真にありがとうございます。このバスは東名高速、首都高速を経由しまして、東京駅日本橋口まで参ります。……〕

 バスは営業所を出ると、国道には出ず、道を右折した。
 営業所と車庫の間の道路は2車線あるが、大型車同士ではすれ違いが難しいくらい狭い道な上に、普通車の交通量はそこそこあるので、右折するのには苦労する。
 よくこんな所バスが通るものだと思うが、地元民の生活道路なのか、地元ナンバーの車は、慣れた様子で軽やかにバスを避けて行くのである。
 リサはスマホを取り出し、車内のWi-Fiに繋いでネット。
 ……かと思いきや、ある程度LINEを送ったら、あとはもうポケットにしまってしまう。
 私がもういいのかと聞くと……。

 リサ「今日は午前中、学校がある日だから。今頃皆、朝のホームルームだよ」

 とのこと。
 確かに、この時間はそうだ。
 ホテルからバスの営業所に移動している間、国道の歩道を通学生が歩いていたり、自転車を走らせているのを見たことがある。

 愛原「なるほど、そうか」

 学校から聞いた話、リサの停学は1ヶ月。
 解除されるのは今月中旬で、来週いっぱいまでとのこと。

 リサ「あ、レイチェルだけは今日は休みだけど」
 愛原「何で?……あ、今日土曜日か!」

 バスが満席近くなのも、今日は土曜日で、東京方面に遊びに行ったりする人達が多いからだろう。
 レイチェルは毎週土曜日は、BSAAの本部で戦闘訓練を受けている。
 そこが、ただの留学生ではないことの表れだ。

 リサ「今日の戦闘訓練は、実際にヘリコプターに乗って、乗り物に乗っているBOWの追跡を行うというものなんだって」
 愛原「訓練内容、話しちゃってもいいの?」
 リサ「いいんじゃない?どうせバレてるから」
 愛原「ん?ん?どういうことだ?」
 リサ「このバス、東京駅に着くまで、BSAAが監視するんでしょ?」
 愛原「ああ。BSAAの地区本部隊が、近くの自衛隊基地からヘリコプターを飛ばして……って、ええっ!?」 
 リサ「そのヘリコプターに、レイチェルが乗るんだってさ」
 愛原「まだ17歳なのに、操縦すんの?」
 リサ「どうだろうね?BSAAだし」

 ま、まあ、パイロットは別にいるか。
 もちろんレイチェルとて、BSAAの正規隊員を目指す養成員。
 いずれはヘリの操縦免許を取ることになるのだろうが。

 リサ「なもんでわたし、暴走できない。蜂の巣になるから」
 愛原「う、うん。そうだね。暴走しないでね」
 リサ「美味しい蜂蜜が取れるかもしれないよ?」

 リサはスカートの上から、自分の股間を指さした。

 愛原「何でそこを指さす?」

 冗談が言えているうちは大丈夫か……。

[同日09時45分 天候:晴 静岡県御殿場市深沢 東名高速道路・足柄サービスエリア上り]

 バスは富士宮駅前、鷹岡車庫、東名富士と停車した。
 そこから何人もの乗客を乗せて、確かにほぼ満席状態となる。
 善場係長が狙ったのは、これだ。
 基本的に、こういう長距離高速バスは事前予約制である。
 他の乗客達も、事前にそうしたのだろう。
 ところが、闇バイトの連中は計画が行き当たりばったりな為に、私達がこのバスに乗ることを突き止めても、今から席を取ることはできない。
 新幹線などは自由席があるので、飛び込みで乗車はできるが、高速バスは席が空いていなければどうしようもない。
 だから、週末に混雑する東名高速のバスは、逆に狙い目なのであろう。
 また、富士急バスグループの中には、派手なラッピングをする会社もあるが、私達が乗っているバスは、それほど飾っていない。
 元々が白いバスなので、あまり目立たない。
 にもかかわらず、多くの高速バスや観光バスが行き交う東名高速を走行し、しかも途中休憩場所が、東名高速随一のみならず、全国ランキングでも上位に食い込む大規模な足柄サービスエリアに止まるとなれば、たかだか闇バイター達は見失いやすいだろうとのこと。
 BSAAが車ではなく、上空からヘリで追跡するのはこの為。
 バス会社によっては、バスの屋根に会社名や管理番号を塗装していることがあり、このバスもそうなのであれば、むしろ上空からの方が追跡しやすいということだ。

〔「足柄サービスエリアです。こちらで15分ほど休憩とさせて頂きます。発車は10時ちょうどです。お時間までには必ずバスに戻られますよう、固く固くお願い申し上げます」〕

 週末ということもあり、また、テレビでも紹介されることのある有名なサービスエリアということもあり、駐車場は多くの車で賑わっている。
 だがその分、バス用の駐車場に行けば、多くの高速バス、観光バスが駐車されていた。
 中には、同じ富士急系の観光バスもいたりする。
 そこに潜り込めば、行き当たりばったりの犯行である闇バイター達を混乱させることはできるだろう。
 もちろん、指示役がしっかりしていれば、それほどバカでもないだろうが。
 駐車場には警備服に蛍光チョッキ、ヘルメットを被った誘導員が出動していて、やってきた私達のバスを、バス専用駐車場に誘導した。

 愛原「なるほど。ここか……」

 バスが止まった場所は、本屋(ほんおく)からやや上り方向にズレた場所。
 ただ、トイレはすぐ近くにある。

 愛原「トイレに行って、少し中を覗けるかな」
 リサ「降りるの?」
 愛原「一応な」
 リサ「じゃあ、わたしも……」

 バスの扉が開くと、私達は他の乗客に続いてバスを降りた。
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“私立探偵 愛原学” 「やきそばエクスプレスの旅」

2024-11-05 20:31:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月10日08時05分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 富士急静岡バス富士宮営業所]

 
(画像はグーブルマップより)

 タクシーがバス営業所内の駐車場に到着する。
 この営業所は、事務所と車庫が道を隔てて対向するという変わった構造になっている。
 車庫側には何台ものバスが止まっていて、その中には高速バスの車両が何台か止まっていたから、あの中の1台が、これから私達が乗るバスになるのだろう。
 タクシーはその車庫の方ではなく、営業所の方に止まる。

 坪井「ここで降ります」
 運転手「は、はい。ありがとうございます。料金の方が……」

 坪井氏はタクシーチケットで料金を払った。
 リサが先に降りて、タクシーのトランクから私の荷物を降ろしていた。

 愛原「あれ?坪井主任、タクシーを帰しちゃって良かったんですか?」
 坪井「はい。仲間が迎えに来ます。その間、私はここにいますから、お2人は安全の為、建物の中に入っててください」
 愛原「分かりました」

 私達は平屋建ての営業所の中に入った。
 中に入ると、小さな待合室と窓口があった。
 待合室にはベンチが置かれ、窓口周辺には観光案内やバスの案内のパンフレットが置かれている。
 外には缶やペットボトルの自販機があったが、中には紙コップのコーヒーの自販機があった。

 リサ「お菓子とか買えなかったなぁ……」
 愛原「しょうがないから、ここの自販機で買ったら?」
 リサ「うーん……」

 ソイジョイとかカロリーメイトとかはあるのだが、どうもリサの口に合いそうな物は無いらしい。
 因みに昨日買ったお菓子は、全てホテルで消費したそうだ。
 仕方が無いので、飲み物だけを買うことにする。

 リサ「バスはいつ来るの?」
 愛原「ここ始発だから……。だいたい、出発の5分前ってところじゃないか?8時25分とか……」
 リサ「そうかぁ……」

 リサは頷くと、席を立った。

 リサ「そっちにトイレがあるの?」
 愛原「そのようだ。トイレか?」
 リサ「うん。ちょっと行ってくる」

 リサはそう言うと、トイレに向かった。
 トイレの入口は男女共通だが、中で別れているらしい。
 入口にはスリッパが置かれ、トイレ内は土足禁止のようだ。
 リサはトイレに中に入って行った。

[同日08時20分 天候:晴 同営業所→富士急静岡バス“やきそばエクスプレス”4号車内]

 外からバスのエンジン音が聞こえて来る。
 どうやら、思ったよりも早めにバスが入ったようだ。
 様子を見に外に行くと、坪井氏の他にも、デイライト静岡事務所の職員達がそこにいた。

 坪井「こちら、東京事務所と委託契約されている愛原さん」
 職員A「これはどうも。お噂はかねがね……」
 職員B「長旅お疲れ様です」
 愛原「はあ……どうも」

 デイライト静岡事務所の職員達、昨日とは打って変わって、にこやかな対応である。
 まもなくリサを厄介払いできるので、喜んでいるのだろうか?
 ……いや、違うな。
 傍から見たら、私達は見送りをされているように見えるだろう。
 デイライトの職員達が実質的に私達を護衛しているようなものだ。
 華奢なように見えて、ここの職員達、何気に強い。
 闇バイト程度の若者がここで飛び込んで来ても実力で制圧され、現行犯逮捕されるだけだろう。
 黒いスーツの下には、拳銃を隠し持っているかもしれないし。

 
(画像はグーグルマップより)

 運転手「お待たせしました。8時30分発、東京行きです」

 扉が開いて、乗客名簿を持った運転手が降りて来た。
 そして、荷物室のハッチを開ける。
 私の荷物は機内持ち込み可能のサイズではあったものの、バスの車内には持ち込めないので、荷物室に預けてもらうことにした。

 愛原「先に飲み物買って来よう」

 私は建物の外側にある自販機で、お茶を買った。
 リサも食べ物が買えないのなら、せめてジュースという感じのようだ。

 リサ「お金が無い……」
 愛原「あ、そうか!小銭が無いのか!」

 自販機は現金しか使えないタイプだ。
 私はあえて千円札を突っ込み、それで私とリサの飲み物2つを買った。
 私は麦茶、リサはミニッツメイド。
 お釣りがジャラジャラと出て来る。

 愛原「これ、お小遣いにあげるよ」

 私はお釣りをリサに渡そうとした。

 リサ「ありがとう。でも、小銭入れが無いの」
 愛原「マジか!?……あれ?」
 リサ「変化した時、小銭入れは持っていたから、その時、落としたのかもね」

 しかし、落とし物でリサのスマホは拾得されていても、小銭入れは拾得されていなかった。
 変化して暴れている最中に、壊したのだろうか?

 愛原「分かった。それじゃ、これは預かってておく。後で新しい小銭入れ、買いに行こう」
 リサ「ありがとう」
 愛原「東京駅に行けば、小銭入れとか売ってる店があるだろう。そこへ行こう」
 リサ「そうだね。……学校とかで使う物だし、高い物じゃなくていいよ」
 愛原「そうか?」
 リサ「それこそ、百均で売ってるような奴でいい」
 愛原「おいおい。それこそ、少しケチり過ぎじゃないか?せめて、もう少しオシャレなヤツを……あ」
 リサ「ん?」
 愛原「そういえば、八重洲地下街には百均もあるし、スリーコインズとかもあったな……」
 リサ「そこにしよう!」
 愛原「そこでいいの?まあ、見るだけ見てみよう」

 私はスマホの画面を運転手に見せた。

 愛原「お願いします」
 運転手「はい、愛原学様と愛原リサ様ですね。3のAと3のBです」
 愛原「はい」

 そして、私達はバスに乗り込んだ。
 前から3番目、進行方向左側が私達の席である。
 リサには、窓側に座ってもらった。
 リサのバッグは車内に持ち込めるもので、座席の上の網棚に乗せられるサイズだ。

 愛原「このバスはWi-Fiが飛んでて、座席の脇に充電コンセントもあるそうだ」
 リサ「Wi-Fiがあるのは助かる。わたしのスマホ、パケット小さくて」
 愛原「悪かったな。そういう料金プランで」

 高校生のうちはネットを使い過ぎないようにということで、あえてリサのスマホはギガ数の少ないプランに入っている。
 もちろん、Wi-Fiに繋げば制限は無くなるのだが。
 うちでも事務所や居住区では、専用のWi-Fiを飛ばしている。

 愛原「大学生になったら、俺達と同じ料金プランに変更してやるから」
 リサ「ホント!?」
 愛原「ほんとほんと」

 私はドリンクホルダーにペットボトルを置いた。
 6月上旬であり、梅雨寒の季節ではあるが、今日は台風が通過したばかりで、台風一過で暑くなるという。
 なので、飲み物携行は必須だ。
 発車の時間は迫って来るが、ここから乗車する客は私達を含めて、数えるほどしかいないようだ。
 次の富士宮駅前や、途中の東名富士から乗って来るのだろう。
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