報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「延長日」 2

2020-03-31 19:58:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月7日13:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 研究施設の食堂で昼食を取る私達。
 因みに今度は唐揚げ定食が出た。
 本当に食うには困らぬ場所ではある。
 この場にいないのは絵恋さんだけ。
 絵恋さんは試作ワクチンを投与されると、昏睡状態に入った。
 それから暫くして、所内にピンポーンピンポーンという玄関のチャイムのような音が響いた。
 善場さんの話によると、それはどうやら注意報とのこと。
 警報だと、もっとけたたましいサイレンのようなアラームが響く。
 その違いは何のかまでは分からないが、モニターを見せてもらうと、絵恋さんが暴れていた。
 但し、それは想定内とのこと。
 既に絵恋さんはベッドに拘束されており、彼女はその拘束を破ることはできなかった。

 高野:「過去に、ゾンビ化寸前の感染者がワクチンを投与された際、やはり大暴れしたそうです。ゾンビウィルスとしても、ワクチンにはやられたくないので、宿主の体内で暴れるのですね。それと同じようなことが絵恋さんに起こると、既に想定されていたのでしょう」

 高野君は唐揚げを頬張りながら冷静に話した。

 愛原:「高野君、詳しいな?」
 高野:「あら?これでも色々と勉強しているんですよ。一介の事務職員でも、先生の事務所で働かせて頂いている以上は、バイオハザードのことについて知識を深めておきませんとね」
 愛原:「そういうことなら感心だな。高橋も見習えよ?」
 高橋:「さ、サーセン。俺、勉強は苦手で……」
 愛原:「そうだったな」
 高橋:「その代わり、どんなゾンビがどんな攻撃で簡単に死んでくれるかの研究はします!」
 愛原:「基本的に頭吹っ飛ばせばOKだろうが」
 高野:「ザコゾンビはそれでいいかもしれませんが、ボスクラスはそうとも言えませんからね。核となる心臓を攻撃する必要があります。それがどこにあるのかを勉強させればよろしいかと」
 愛原:「タイラントは基本的に頭でいいだろう?」

 私はタイラントとつるんでいたリサに聞いた。
 アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーとタイラントは同じ敷地内にはいたが、全く接点が無かった。
 しかし日本のリサ・トレヴァー、正確に言えば今ここにいるリサはタイラントとつるんでいる上、しかもそのタイラントに命令できる立場にあった。
 無言で標的を追い回すタイラントが、リサの前では「御嬢様」と喋るのだから。

 リサ:「うーん……分かんない。昔、軍人さん達がタイラント君の頭を銃で撃ってたけど、当のタイラント君は全然平気だった」
 高野:「先生。タイラントはマグナムで怯ませてから、ロケットランチャーで攻撃するのがセオリーですよ」
 愛原:「そ、そうだな」

 単純に考えれば、そこまでしないと死んでくれないタイラントに命令を出せるのだから、リサはもっと強いということになる。
 少なくとも、マグナムを撃ち込む程度では死なないことは知っている。

 愛原:「とにかく、絵恋さんが想定内の暴れ方をしているということは、試作であれ、ワクチンが効いているということだ。こりゃ期待できるかもな」
 リサ:「サイトー、人間に戻れる?」
 愛原:「上手く行けばな。……リサは絵恋さんには人間でいてもらいたいのか?こういう言い方は何だが、BOWになったらなったで、BOWの友達ができるという考え方もできるんだぞ?」
 リサ:「いい。サイトーには人間でいてもらいたい。私みたいなBOWは私1人で十分。あとはタイラント君が何人かいればいいと思う」

 そのタイラントは暴走しやすいから、今日日のバイオテロ組織は導入しないんだと。
 ぶっちゃけ、旧アンブレラからタイラントよりも使えないというレッテルが貼られて廃棄処分にされたリサ・トレヴァーの方が役に立つとは……。
 欧米人はそういう所、凄くドライだからすぐに切り捨てるけど(キリストなだけに?w)、『捨てる神あれば拾う神あり』精神の日本人がリサを改めて研究してみると、今ここにいるリサみたいなのができたというわけだ。
 もっとも、その研究法が非人道的だったのはアメリカと変わらなかったが。

 高野:「リサちゃんは強いねぇ」

 高野君はリサの頭を撫でた。

 リサ:( ̄ー ̄)

 ん?何だろう?今、リサが含み笑いをしたような……?

 ……後にリサは日記に、『サイトーがBOWになると獲物が1つ減る。ライバルが増える。もしかしたら、サイトーの方が強いかもしれない。だからサイトーには人間でいてもらいたい』というようなことを書いている。
 既にリサは精神的にもBOWであり、独占欲が強いことを物語っている。

[同日17:00.天候:晴 同センターB3F研究施設]

 意識を戻した絵恋さんは地上に戻る前に身体検査を受けた。
 特に身長や体重は変わっていない。

 医療技師:「じゃあ、これは?」
 絵恋:「右です。よく見えます」
 医療技師:「両目とも2.0。驚異的な視力だ」
 絵恋:「ここに来た時より見えます」
 医療技師:「はい、じゃあ次はこちら。目を大きく開いてー。虹彩を撮ります」

 どうして虹彩を撮影するのかというと……。

 医療技師:「G生物との比較に回して」
 助手:「はい」

 BOWの中には複眼の現れる者もいる。
 その目玉には何やら特徴があるらしく、もちろん絵恋には複眼が現れたわけではないが、比較したいのだろう。
 尚、場合によっては逆に単眼のクリーチャーに変化する場合もある(Tアビス感染によるクリーチャー、トライコーンなど)。

 医療技師:「はい、口を開けて」
 絵恋:「あーん……」

 ペンライトで口の中や目を照らされる。
 特に今、リサのように犬歯が鋭くなっているということはない。
 出た結果は異常無しであった。

 愛原:「これで終了ですか?」
 善場:「そうですね。念の為、明日の午前中までお時間を頂けますか?夜間も大丈夫かどうかを確認したいです」
 愛原:「やはり今日の帰宅はムリだったか」
 善場:「もし大丈夫でしたら、午前中には終了したいと思います」
 愛原:「分かりました」
 善場:「恐らく斉藤さんは、しばらく薬を接種する必要があるでしょう。明日は注射を打つだけでいいでしょうが、それ以降は経口摂取するタイプとか……」
 愛原:「それを大日本製薬に作らせるのか?」
 善場:「愛娘の為なら、斉藤社長も喜んで協力してくれるかと」
 愛原:「その社長、今一体どこにいるのかねぇ?」
 善場:「ドイツですよ。留学中の御長男と接触したようです」
 愛原:「ほお?」
 善場:「何か持って帰って来るかもしれませんね」
 愛原:「それが何だか知らないけど、税関で没収されないといいねぇ……」

 とにかく、皆が望む通り、絵恋さんが人間の状態でいられるようで何よりだ。
 もっとも、薬が切れたりしたら【お察しください】。
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“私立探偵 愛原学” 「延長日」 1

2020-03-31 14:42:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月7日07:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター2F食堂]

 私の名前は愛原学。
 滞在延長の日に突入した。
 せめて、今日帰れればいいのだが。

 愛原:「へえ、朝風呂入ったんだ?」
 絵恋:「寝汗が酷くて……。聞いたら、リサさんも時々そういうことがあるらしくて、朝にシャワーを浴びているそうですので」
 愛原:「ああ、なるほど。まあね」

 朝食を取りながら、そんなことを話した。
 因みに今朝はサバの塩焼き定食や玉子焼きが出た。
 どうやら、洋食と和食が交互に出るらしい。

 愛原:「ああいったウィルスに感染すると、体温が高くなるんだ。寝汗が酷くなるのはそのせいだよ」

 しかし感染者との大きな違いは、体温が高くなる割には倦怠感や寒気などの症状は無いということだ。
 これはウィルスが体に適合することの表れであるという。
 絵恋さんにはGウィルスワクチン投与の形跡は無いが、そもそも投与された形跡のあるCウィルスにあっては、その材料にGウィルスを使用するので、その面影があるのだろう(傷の治りが異様に速いなど)。
 昨夜は特に何事も無かった。

 リサ:「夜中に汗をかくと、何だかムラムラする」
 絵恋:「リサさんも!?」
 愛原:「そういうことは言わなくていい」

 その為、私の寝室のドアには内鍵が3つ付いている。
 人間ならそれでも入る場合、チェーンカッター等でドアをぶち抜くだろうが、リサの場合は力技でこじ開けてくる。
 そんなパワープレイをかましてくれるので、正直敷金が心配だ。

 愛原:「急ピッチでワクチンを製造している所だから、それが上手く行けば今日中には帰れるだろう」

 もちろんそれは絵恋さんのこと。
 リサにあっては最初からBOWを製造する目的で改造されてしまったので、もはや手遅れである。
 遺伝子レベルで改造された為、ワクチンの問題ではないのだ。
 ショッカーに改造された人間が怪人化したら、もはや元に戻す術は無く、仮面ライダーに悉く倒されるのと同じことだ。
 しかし、絵恋さんは別。
 バイオテロの脅威から娘を守るべく、娘には率先してワクチンを受けさせていたら、体内で見事に融合して却ってBOW化したでござる的な展開だからな。

 愛原:「あとの問題は斉藤社長だな。ヨーロッパのどこに行ったのやら……」
 高野:「テラグリジア跡とか、ザイン島かもしれませんね」
 愛原:「おいおい。そんな廃墟に行ってどうするよ?WHOの本部とかは関係無いかね?」
 高野:「どうでしょうねぇ……」
 絵恋:「もしかしたら……」

 絵恋さんが口を開いた。

 絵恋:「ドイツに兄が留学してるんです。兄に会いに行ったのかもしれません」
 リサ:「お兄さんがいるの!?」
 絵恋:「ええ。10歳も歳が離れてるけど……」
 愛原:「どうして絵恋さんはお兄さんに会いに行ったと思うんだい?」
 絵恋:「兄は今、ドイツの大学院にいるんです。医学博士目指しているみたいですね。なので愛原先生の仰るバイオテロなんかにも詳しいんです」
 愛原:「医学博士目指して留学か……。医学博士なら、日本でもなれるだろうに」
 絵恋:「バイオテロと戦う為とか言ってました」
 愛原:「ああ、なるほど」

 それなら日本よりもヨーロッパで学んだ方がいいかもな。
 父親の斉藤社長は新薬開発でバイオテロと戦い、御長男は医学博士としてバイオテロと戦うつもりか。
 その思想は素晴らしいことだと思う。
 ……ヘタすりゃ、ここにいる長女はエージェントとして戦うことになるのか?

[同日10:00.天候:晴 同センターB3F研究施設]

 善場:「早速、試作ですがワクチンを投与したいと思います」
 愛原:「早っ!」
 善場:「理論上は合っていますので」
 愛原:「理論上だけでいいのか?」
 善場:「時は刻一刻を争うのです。幸いここの施設で、そのワクチンは製造できます」
 愛原:「マジか!……何か、裏でもあるんじゃないのか?」
 善場:「もちろんあります。全てをお話しするわけには参りませんが、話せる部分は愛原所長にお話しします」
 愛原:「是非そうしてもらいたいね」

 絵恋さんは検査着に着替えさせられると、再び研究室エリアに連れて行かれた。
 因みにリサも一緒だが、リサはリサで別の実験である。

 善場:「実は、これはドイツにある大学の研究レポートにあったものですが……」

 会議室に入ると、私と善場主任は向かい合って話をした。
 また、ドイツが出て来たか。
 さすがは医療先進国だ。

 善場:「2013年にネオ・アンブレラによって起こされたバイオテロについて研究している日本人の研究員がいまして……」
 愛原:「ん?」
 善場:「極秘ですが、強化型Cウィルスの再現に成功したとも言われています。極秘なのは、あれを未だに欲しがるテロ組織がありますので」
 愛原:「ネオ・アンブレラの科学者しか製造法を知らないヤツか」
 善場:「はい。その日本人研究員が『再現に成功した』とレポートに書いているだけで、それが本当に強化型Cウィルスなのかどうかは分かりません」

 そりゃオリジナルを作った本人の研究記録は完全に逸失し、そして当の本人もこの世にいないとあらば、それを証明できないからな。

 善場:「ですが研究レポートを見るに、被験者の症状が驚くほど斉藤絵恋さんにそっくりなのです。そのレポートにはワクチンの製造法も書いてありましたから、それを投与すれば理論上は大丈夫ということになります」
 愛原:「その日本人研究員凄ェな。ということは、実際に人間の被験者も使ったのか……」
 善場:「そのことについてレポートには詳しく書かれていませんでしたが、恐らくはそうしたものと思わます」
 愛原:「……その日本人研究員もまた斉藤さんとか言わない?」
 善場:「どうして御存知なんですか?」
 愛原:「それ多分、絵恋さんのお兄さんだと思う」
 善場:「はい!?」
 愛原:「絵恋さんが言ってたよ。斉藤社長の国外逃亡……もとい、海外出張はもしかしたらお兄さんに会いに行ったんじゃないかってね」
 善場:「申し訳ありません。少々お待ち頂けますか?」
 愛原:「別にいいですよ」

 善場主任は会議室から出て行った。
 おいおい、ちゃんと今日中に帰れるんだろうな?
 斉藤社長とも連絡が取れないからなぁ……。
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“私立探偵 愛原学” 「最終日の夜」

2020-03-29 19:45:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日20:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター1F体育館]

 管理人:「そろそろ終了の時間ですので、片付けの方お願いします」

 鍵束を持った年配の管理人がやってきた。

 リサ:「えっ、もう!?」
 管理人:「はい」
 絵恋:「1時間だけ……」
 高橋:「運動時間1時間か。少刑を思い出すぜ」

 少刑とは少年刑務所のこと。
 高橋は少年院を出ても尚、暴行・傷害事件を起こしたことが悪質と判断され、そこに送られた。
 高橋曰く、御礼参りに来たかつての敵対グループメンバーを返り討ちにしてやっただけだとのことだが……。
 高橋のことだから、半沢直樹の言っているようなことを拳でやってしまったのだろう。

 愛原:「いいから、早いとこ片付けだ」

 私は殆ど見ていただけだからいいが、激しい運動をしたからか、他のメンバーは汗ばんでいる。
 こりゃ早いとこ風呂に入らないと風邪を引いてしまうな。

 愛原:「ん?」

 私が違和感に思ったのはJC2人の方だった。
 高橋と高野は普通に汗ばんでいるだけなのだが、JC2人は汗ばむどころか、汗だくである。
 今が真夏なら、あれでもおかしくない。
 しかし今は初春だ。
 まだまだ朝晩は寒い。
 ましてやここは、神奈川県と山梨県の県境だ。
 東京西部だって寒い所なのに、そこより更に西の山間部にある。
 もちろんあのJC達は、高橋達よりも激しく動き回っていたということもあるだろう。
 それにしても、何だか汗をかき過ぎのような……?

 愛原:「2人とも、片付けはいいから先に風呂に入って来るんだ。このままじゃ、風邪を引いてしまう」
 リサ:「うん、分かったっ」
 高橋:「即答かよ!少しは申し訳無さそうにしろ!」
 愛原:「まあまあ」
 高橋:「てかこいつら、もう人間じゃないんだから風邪なんか引かないんじゃないスか?」
 愛原:「リサはともかく、絵恋さんに失礼だぞ、それは」
 リサ:「サイトーはまだ人間だよ」

 一番いいのはアメリカの政府エージェント、シェリー・バーキン氏のような感じだろう。
 人間でありながらGウィルスの良い所だけを体内に残し、驚異的な回復力と身体能力を手に入れている。

 愛原:「ついでに高野君も彼女達と一緒に風呂に入りなよ」
 高野:「すいません」
 高橋:「アネゴもかよ」
 高野:「女湯に一緒に入れるの、私だけじゃん。それにあの子達の服も洗いたいし」
 愛原:「服?」
 高野:「今日帰る予定でしたから、替えの服がもう無いんですよ。コインランドリーがあるそうなので、それを借りて夜のうちに洗濯しようかと」
 愛原:「なるほどな」

 ついでに乾燥機もあるらしい。

 愛原:「俺はスーツだし、ファブリーズさえあれば何とかなるレベルだからな」

 服に掛けるブラシも部屋備え付けである。

 高橋:「男の旅は、替えのパンツありゃ何とかなるもんです」
 愛原:「“青春18きっぷ”ユーザーよりも軽装だな」

 そこで私はふと気が付く。

 愛原:「ジャージ洗っちゃったら、寝巻はどうするんだ?」
 高野:「今夜のところは浴衣を着てもらいますよ。Sサイズもあるようですので」
 愛原:「ほお……」

 一応あったのか。

[同日21:00.天候:晴 同センター3F洗面室]

 そうは言っても、私のワイシャツや下着も残り1着しか無い。
 念の為、ここで洗うことにした。
 行って見ると既に乾燥機が回っていることから、高野君達が洗濯しているのだろう。
 乾燥機の丸い窓を見ると、リサ達のジャージも見える。

 高橋:「先生、1回200円ですって」
 愛原:「比較的安い方なのか、これは?」

 ここ最近、コインランドリーなんて使わないからなぁ……。

 高橋:「俺のパンツと一緒に洗ってあげますよ、先生」
 愛原:「大したこと言ってるわけじゃないのに、何故かキモく聞こえる発言」
 高橋:「え、何スか?」
 愛原:「いや、何でも無い」

 私は洗濯物を洗濯槽の中に入れた。
 洗剤もまたここで売っている。

 愛原:「そういえば少年院とかじゃ、洗濯も作業の1つなんだって?」
 高橋:「そうッス!俺もやらされましたよ!」

 だから高橋、アイロン掛けなんかも上手なのか。

 愛原:「そこは女子少年院とかと同じなんだろうなぁ」
 高橋:「だと思いますよ」

 取りあえず洗濯機を先に回し、私達は風呂に入りに行くことにする。
 風呂から上がって、あとは洗濯物を乾燥機に掛ければいいな。

 愛原:「少年刑務所だと、殺人犯とかもいただろ?」
 高橋:「いましたねぇ」
 愛原:「そういう奴は警戒されるか。何しろ人殺しだからな」
 高橋:「でもやっぱり嫌われてたのは、性犯罪者と放火魔でしたよ。あとはヤーさんのシマ荒らししてた奴とか」
 愛原:「全部ヒくわー」
 高橋:「性犯罪者は彼女持ちや既婚者が多くてですね。ぶっちゃけ、女に困っていたわけじゃないのにやらかしてるんスよ。そういうのも軽蔑の理由ですよね。あと、放火魔はほぼ精神病なんで要注意人物ですよね。ヤクザのシマ荒らしなんかは、荒らされた側も一緒に収監されてる場合があるんで、思いっ切り空気が冷えます」
 愛原:「なるほどな」

 こいつの少年院や少年刑務所時代の話、たまに参考になることがあるからなぁ……。

[同日22:00.天候:晴 同場所]

 風呂から上がった私達は再び洗面室に行くと、洗濯機の所に行った。
 すると、何故かそこに浴衣姿のJC2人がいて、洗面所の前で歯磨きをしていた。
 洗面台自体なら部屋にもあるのだが。
 それ以外にもここにあるのは、恐らく大勢で泊まった時に部屋備え付けのだけだと足りないからだろう。

 リサ:「あ、先生」
 愛原:「おう、2人とも。今夜はここで歯磨きか?」
 リサ:「うん。部屋の洗面台、高野さんが使ってるから」
 愛原:「そっか」

 高橋は洗濯機から私達の洗濯物を出すと、それを乾燥機に移そうとした。
 洗濯機の数と比べて乾燥機は少ない。
 これは部屋か外に干すことも視野に入れてのことだろうか。

 高橋:「おい、乾燥終わったんなら、早いとこ持って行けよ」
 リサ:「はーい」

 リサは乾燥機の蓋を開けると、そこから乾燥していた服を取り出して洗濯籠に入れた。
 それから何を思ったか、その中からショーツを取り出すと、私達の前で浴衣を捲くってはいた。
 ノーパンだったのか!
 あ、いや、待てよ。
 替えの服が無いということは、下着も無いということか!
 驚いたのはそれをリサだけでなく、絵恋さんも特に気にせずにやったことだ。

 愛原:(……これは俺から善場主任に言っといた方がいいのか?)

 実は思い当たることがある。
 BOWは例え人間そのものの姿をしていたとしても、中身がやはり通常と異なることが多い。
 2017年アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードでは、特異菌に感染した農家の住人達が食人を平気でしていたこととか(それまでのゾンビなどと違い、食い殺していたのではなく、殺してからちゃんと料理して食べていた)、衛生観念の欠如、そして何より残忍な猟奇性が突出していたという。
 リサにおいては食人は自らの意思(というか彼女が主人として認めた私の言い付けを守って)で止めたが、思春期の少女ならではの恥じらいなどが明らかに欠落している。
 それが絵恋さんにも現れたということは、例え絵恋さんが人間の姿を保ち続けられたとしても、精神面ではどうしても何らかの欠如は避けられないのだろう。
 そこはリサがBOWの先輩として教えてあげられるといいのだが、何せまだ年若いし、私達が教えているくらいだ。

 高橋:「服を取ったらさっさと部屋に戻れ、痴女共が!」
 リサ:「チヂョってなーに?」
 高橋:「変態女のことだ!散れっ!」
 リサ:「……だって。戻ろ?サイトー」
 絵恋:「ええ。……あっ」

 その時、絵恋さんの浴衣の懐に入れていたスマホが震えた。

 絵恋:「うちのメイドからだわ」

 画面にはメイドさんらしき人の名前が出ている。

 絵恋:「はい、もしもし?……ああ、なに?……うん」

 絵恋さんは電話で話しながら洗濯室を出て行った。
 あれだけ見ると、とてもBOW化したとは思えない。

 高橋:「……あれが、あいつのメイドの名前ですか?」
 愛原:「そうみたいだな。それがどうかしたか?」
 高橋:「俺……あいつと昔、会ったことがあるかもしれません」
 愛原:「ほお、そうなのか。じゃあ、積もる話もあるんじゃないのか?」
 高橋:「いや、俺には無いですよ」
 愛原:「ん?」
 高橋:「もしあのメイドが、俺の知ってる女のことだったら、ちょっと面倒なことになるかもしれません」
 愛原:「はあ?何だそりゃ」

 しかし高橋はそれ以上話さなかった。
 強いて言えば、

 高橋:「先生が俺みたいなクソ野郎を拾って下さったのと同様、あんなクソ女を拾う奴もいるんだということです」

 であった。
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“私立探偵 愛原学” 「最終日の終わり」

2020-03-29 16:02:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日18:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター2F食堂]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 本来なら取るべきではないはずの夕食を私達は取っている。
 今日はハンバーグ定食が出た。

 愛原:「2人とも、今日の実験ご苦労さん。実験ばかりで疲れただろう。善場主任が、この本館の隣にある体育館を開放してくれた。食後はそこで自由に運動していいそうだ」
 リサ:「おー、気晴らしになりそう。サイトー、バレーやろ!それともバスケ!?卓球!?」
 絵恋:「私は……何でも」

 恐らくはまあ、彼女らの運動能力を見る為の実験も兼ねているだろうな。
 因みに今日の実験の最中、絵恋さんが人外化したり暴れ出すというようなことはなく、むしろずっと眠ったままだった。
 そして、今は普通に人間の姿に戻っている。
 しょうがないことだが、寝過ぎてダルいといった感じだ。

 高野:「寝過ぎたせいで、夜眠れないかもね。いっぱい運動した方がいいかもね」
 リサ:「うん」

 その辺はリサの方が楽しみらしく、今日は絵恋さんが異常無しということで、リサの方が食欲があった。

[同日19:00.天候:晴 同センター1F体育館]

 体育館へは本館1階から行けた。
 医務室の前を通ると非常口があるが、非常時以外はカードキーで解施錠することになる。
 それまで私達のビジターカードではその権限が無かったが、善場主任の計らいということもあり、私達にもそこへのアクセス権限が与えられた。
 体育館は学校のそれより一回り小さいくらい。
 バスケットゴールもあったし、バレーボールのネットもあった。
 元々学校のジャージを着ていたリサと絵恋さんだったから、ボールさえあればすぐに運動できた。
 で、高橋と高野君も……。

 高橋:「今度こそ決着付けてやんぜ!」
 高野:「やれるもんならやってみな!」

 卓球台を出してきて、卓球に興じていた。
 超高速ラリーが続くのは見え見えだ。
 少女達は途中で暑くなったのか、ジャージの上下を脱いでTシャツにショートパンツ姿になった。
 Tシャツはさすがに寒いのではないかと思うが、意にも介さない彼女達を見るに、それはただ単に若いからなのか、或いはBOWだからなのか……。
 さすがに今時分、下はブルマーではなくショートパンツなんだな。

 善場:「愛原所長、ちょっとよろしいでしょうか?」

 私が彼らの様子を見ていると、後ろから善場主任が話し掛けて来た。

 愛原:「あ、はい。何でしょうか?」
 善場:「斉藤絵恋さんに現れているBOWの特徴ですが、どうやらCウィルスとTアビスのワクチンが体内で合成されてできた結果のようです」
 愛原:「ワクチンを接種してBOWになるとは、皮肉というか何と言うか……」
 善場:「現実は映画と違うということでしょう。そういったメディアの世界では、ワクチンさえ投与すれば、あとはもう安心的な流れになっておりますが……」
 愛原:「それで?」
 善場:「Tアビスの感染者は、生きている人間の血を求めるウーズというクリーチャーに変化するわけですが、斉藤さんの場合、それをCウィルスが阻止して人間の姿を維持させているようです。ところが、Cウィルスの方がちょっとよく分からなくて……」
 愛原:「分からない?」
 善場:「ええ。斉藤さんに現れた特徴の1つに、体内から高圧電流を放出するというものがあります。これはTウィルスとGウィルスを合成させた物を投与すると現れる特徴なんですが、斉藤さんにはGウィルスが投与された形跡はありませんでした」
 愛原:「そうなの!?」
 善場:「Gウィルスは基本的に『感染』するものではなく、遺伝子操作の為に投与する『薬剤』に近いのです。かのアメリカ政府エージェント、シェリー・バーキン氏はそれを父親で開発者のウィリアム・バーキン博士に投与され、BOW化しそうになった為にワクチンを投与したとされています。ですが、本来の疫病の感染とは違いますので、そのワクチンはそれ以上製造されなかったようです。なので、さしもの斉藤社長でも手に入らず、令嬢の絵恋さんに投与させることはできなかったものと考えられます」
 愛原:「それじゃ、高圧電流の原因は?」
 善場:「もう1つあります。それが強化型Cウィルスです」
 愛原:「強化型Cウィルス?」
 善場:「従来のCウィルスにその抗体を持つ人間の遺伝子情報を混合させ、更に強化したCウィルスです。ネオ・アンブレラの黒幕で、とある秘密結社のボスでもあったアメリカ大統領補佐官が、それをネオ・アンブレラの科学者カーラ・ラダメス博士に投与され、香港で非業の死を遂げたことは有名です」
 愛原:「あれは完全にネオ・アンブレラの内ゲバだろう?アメリカや香港を巻き込んで、とんでもない奴らだったな」

 そういうわけで、BSAAやアメリカ政府エージェントなどの活躍により、ネオ・アンブレラもまた潰された。
 潰されたというよりは、ほぼ内部崩壊しかかっていた所に止めを刺してやったといったところか。
 尚、このネオ・アンブレラは現在の“青いアンブレラ”とは無関係とされている。

 愛原:「絵恋さんはその強化型Cウィルスを投与されているということなのか?」
 善場:「恐らくは……。あくまでもCウィルスの強化型というか改良版ですので、検査では見分けが付かないのです。ただ、強化型Cウィルスを投与したBSAAの副隊長がBOW化しつつも、強い意志を持ってその支配を死の間際まで避けられたという報告があります。で、その副隊長は正に今の絵恋さんみたいに高圧電流を放つことで、敵を倒していたとのことです」
 愛原:「ふーん……。その副隊長さんは?」
 善場:「殉職しました。さすがにBOW化が自分では止められないと悟り、自爆するネオ・アンブレラの施設に留まったそうです」
 愛原:「しかし絵恋さんはあの通り、人間の姿のままだ」
 善場:「そうですね。CウィルスとTアビスがちょうどバランス良く、お互いを牽制し合っているようです」
 愛原:「そのバランスが崩れたら?」
 善場:「あのリサ・トレヴァーよりも恐ろしいBOWとなり、新型コロナウィルスのパンデミックより恐ろしいことが起きるでしょう」
 愛原:「最悪、霧生市の再来が起きるわけか……。今は綱渡りの状態だな」
 善場:「そういうことです」
 愛原:「リサだって最初はそういう状態だったはずだ。しかし今は綱ではなく橋が架かり、その橋も更に強化されて手すりも付いて安全な状態になっている。絵恋さんもそういう状態にできないかな?日本政府としても、ホワイトなBOWが1人より2人いた方がいいんじゃないの?」
 善場:「それは同意見です」

 日本は非核三原則のせいで核兵器を持つことができない。
 しかし周辺国からの脅威は重大だ。
 核兵器並みの力があって、更にスパイ活動もできるBOWは正に打ってつけなのである。

 善場:「もしかしたら、斉藤さんのBOW化を極力抑えられる薬を開発できるかもしれません。明日もう一日、お時間を頂ければと思います」
 愛原:「分かりました。……ん?分からないというのは?」
 善場:「もし仮に斉藤さんに強化型Cウィルスが投与されたのだとしたら、それをしたのは誰なのだろう?ということになります」
 愛原:「父親の斉藤社長じゃないの?」
 善場:「それが、強化型Cウィルスは試作の段階で開発者のカーラ博士が死亡し、ネオ・アンブレラも崩壊した為に世には出ていないのです。その製造法もBSAAでは押収できておらず、実質的にカーラ博士しか製造法を知らないわけです。しかし、そのカーラ博士も死亡しました。つまり、もうこの世には強化型Cウィルスの製造法を知る者がいないということになります。にも関わらず、何故斉藤さんにそれが投与されたのかです。それが分からないんです」
 愛原:「何だか、別な意味でホラーな話になりそうだな。薄気味悪い話だ」
 善場:「ですので、調査期間ももう少し長く設ける必要がありそうです。もちろん、それまでずっとここに滞在して頂く必要は無いと思いますので、そこは御安心ください」
 愛原:「分かりました」

 おいおいおい、またキナ臭い話になってきたなぁ。
 というか、斉藤社長が国外逃亡……もとい、海外出張した理由って……。
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“私立探偵 愛原学” 「リサも実験で昏睡中」

2020-03-26 19:38:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日13:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 Tアビスワクチンを投与されている絵恋さんは、未だに研究室のベッドで眠っている。
 善場主任曰く、狙いが当たったようである。

 愛原:「まあ、とにかく昼飯でも食おう」
 高橋:「はい」

 12時から13時の間は施設職員が使用するので、私達来訪者はその後の13時に昼食を取ることとなる。
 閑散としている職員食堂で出された給食は、豚肉のカツ煮定食だった。

 愛原:「皆、元気出せよ。今、絵恋さんは人間に戻るかBOWになるかの瀬戸際なんだから」
 高橋:「俺は元気ですよ!」
 高野:「そういうのを空元気って言うの」

〔「今日午前、成田空港を出発した大日本製薬代表取締役社長の斉藤秀樹氏は……」〕

 その時、食堂のテレビから斉藤社長の名前が出て来た。

 愛原:「ん!?」
 高野:「斉藤社長!?」
 高橋:「あ?国外逃亡か?」

〔「……もしかしたらヨーロッパの現地法人に、新型コロナウィルスのワクチンが作れる物があるかもしれないんですよ。それを直接確かめに行こうと思いましてねぇ……」〕

 と、マスコミのインタビューに答える斉藤社長が映し出されていた。
 どうやらもう機上の人らしい。

 愛原:「え?なに?どゆこと?」
 高橋:「いや、だから国外逃亡っスよね?」
 高野:「国外逃亡……かなぁ?体のいい」

〔「その物とは何なんでしょうか!?」「過去にバイオテロで使われたウィルスを応用するということですか!?」「すいません。そろそろ保安検査の時間ですので……」「社長!出張はいつまでですか!?」「社長自身、感染のリスクは!?」〕

 高野:「もし切り札があるのなら、娘さんをここに送ったりはしないですよねぇ?」
 高橋:「ガチの国外逃亡っスよ!ゴーンといい、金持ちは都合が悪くなると外国に逃げやがりますね!」

 しかし私には、社長ほどの者が国外逃亡しても無駄なような気がした。
 そしてそれはバイオテロに対し、新薬開発という形で協力している社長自身が知っているはずだ。
 今やバイオテロの首謀者達は、BSAAや“青いアンブレラ”によって次々と摘発されている。
 もしも新型コロナウィルスまで生物兵器だったとしたら、BSAAが突入するはずだ。
 それだけの機動力を持つBSAAから逃れられると思うほど、斉藤社長もバカではない。
 今までBSAAに追い詰められた者達はそう思ったバカか、自分の策略で何とかできると思い込んで策に溺れて自滅した頭の良過ぎた者達だ。

 愛原:「本当に切り札があるのかもしれないなぁ……」

 私は首を傾げた。

 善場:「お食事中、申し訳ありません!」

 そこへ善場主任が駆け込んできた。

 愛原:「善場主任、どうしました?」
 善場:「今テレビでやっているので御存知かとは思いますが、斉藤社長が国外へ脱出しました!」
 愛原:「そのようですね。拘束でもするつもりだったんですか?」
 善場:「状況によってはそれも有り得ました。仕方が無いので捜査令状を取り、社長の自宅や会社を捜索しようかと思います」
 愛原:「何の容疑で!?対バイオテロ特措法か何かですか?」
 善場:「それは……」
 部下:「主任!ちょっと……」

 善場主任の部下の男性職員がやってきて、何やら耳打ちした。

 善場:「お騒がせしました。失礼します」

 バタバタと出て行く善場主任と部下の職員。

 高橋:「何なんだ、あのねーちゃん」
 高野:「女の慌てん坊はウザいだけですね」
 愛原:「まあまあ。タッチの差で斉藤社長の国外逃亡……もとい、海外出張を許してしまったんだから焦ったんだよ。あの様子じゃ、第二のカルロス・ゴーンが現れても、また国外逃亡を許しちゃいそうだねぇ」
 高橋:「日本の政治と法律は腐ってます!」
 高野:「組織のトップを貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴と、対立する政党を貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴がいるくらいだからね」
 高橋:「先生、午後はどうします?リサも寝てるんじゃ、何もすることないっスよ?」
 愛原:「そうだなぁ……。もしかしたら、また動きがあるかもしれない。善場主任に聞いてみよう」

 私はそう言って、食事を続けた。
 それから1時間経ち、昼食を片付けると、また善場主任がやってきた。

 善場:「すいません。お話があるので、また会議室に来て頂けますか?」
 愛原:「いいですよ」

 食堂から会議室へ移動する。

 高橋:「食った後の会議は眠くなりますよ」
 愛原:「ただの会議じゃないと思うぞ」

 会議室に入って適当に席に着くと、善場主任が言った。

 善場:「実は先ほど、斉藤社長からファックスがこちらに届きました」
 愛原:「ファックスが!」
 高野:「で、何ですって?」
 善場:「斉藤絵恋さんには、確かに予防接種としてウィルスを投与したとのことです。だからあのコには、様々な抗体があったんですね」
 愛原:「しかし実際、BOW化しかかってることは?」
 善場:「これは迂闊なことだったということです。生まれつき抗体を持っているならまだしも、後天的にウィルスを投与して抗体を作っても、他のウィルスとケンカして変異する恐れがあると最近知ったとのことです」
 愛原:「そんなことがあるんですか?私だって毎年インフルエンザのワクチンを打ってますけど、そんな話聞きませんよ?」
 善場:「それは1年空けてるからですよ。しかし、不思議ですね。BSAAの関係者などは、過去の兵器ウィルスの予防接種を受けているのです。もちろん、それまで世界を騒がせたウィルス全てです。にも関わらず、BSAAの関係者にはそのような変異の現れた者の報告は出ていないのです」
 愛原:「よほどのレアケースかな?」
 高野:「電気を発生させるものといったら、TとGの混合とか、強化型Cウィルスとかですよね?」
 善場:「そうですね。……ん?Cウィルス?」
 高野:「Cウィルスにもワクチンはあるでしょ?」
 善場:「ありますけど……」

 善場主任は考え込んだ。
 何かか繋がりそうな感じがするのだが、上手く繋がらないといった感じだった。

 善場:「ちょっと、CウィルスとTアビスの検査を絵恋さんにするよう伝えてくれない?」
 部下:「了解しました」

 部下は大きく頷くと、会議室を出て行った。

 愛原:「何か思い当たる節が?」
 善場:「ええ。気のせいだといいんですけど……」

 生物兵器としてのウィルスは、ワクチンも危険物であったか。
 
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