報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサにも訪れる怪異」

2021-03-31 21:01:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月21日02:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館4Fリサの客室]

 リサ:「……!?」

 リサは夢を見て目が覚めた。
 それは自分がBOWとして、人間を襲う夢。
 どこかのヨーロッパの古城みたいな所で、リサは第1形態に変化し、迷い込んだ人間を追い回していた。
 もちろん、ただの夢で、自分は古城になど行ったことは無い。
 いざ人間に爪を振り下ろそうとした時、目の前の視界が開けて、自分は断崖絶壁から真っ逆さまに落ちた。
 そこで目が覚めた。

 リサ:(オリジナルの人とシンクロしたのかな……)

 アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーも、古い洋館内を徘徊し、母親の遺体を見つけた後は絶望に駆られて、崖から飛び下りたという。
 但し、オリジナル版は普通に歩く時は緩慢なものであり、普通の人間が狙われても、全速力で逃げれば追い付かれることはない。
 しかし洋館の内外を熟知していたオリジナル版リサは、先回りすることができた。
 こっちの日本版リサは、素早い動きで闇雲に追い掛けるだけだ。

 リサ:(トイレ……)

 リサは周りが寝静まっているのを見て、起こさないようにそっと布団から出た。

 愛里:「鬼……怖い……」

 栗原愛里が布団の中でうなされている。
 寝る前に怪談披露会をしたからだろう。
 或いはリサにイジメられた記憶からか。

 リサ:(さすがに悪い事したか……)

 リサは極力愛里からは離れて、部屋の入口に向かった。
 愛里に近づこうものなら、熟睡しているはずの栗原蓮華が刀を抜いて襲って来そうな感じがしたからだ。
 物音を立てないように、部屋の外に出る。
 廊下はさすがに真夜中だからか、照明は少し落とされていた。
 しかし常夜灯が至る所で点灯しているので、暗いわけではない。
 廊下に出てトイレに向かうと、男女トイレとも照明が落とされていた。
 もちろん、ドアを開けてすぐ横にスイッチがあるのは知っているし、リサほどのBOWなら照明など点けなくても用が足せる。
 だが、さすがに後から来た人がびっくりするだろうからと、リサは照明を点けた。
 と、その時、バシューッ!という音と共に、隣の男子トイレから水の流れる音が聞こえて来た。
 先述した通り、男子トイレも照明が消えている。

 リサ:「!……あ、そうか」

 リサは事務所のトイレのことを思い出した。
 最近の男子トイレの小便器は水を流す時、センサー式になっている。
 そのセンサー式の場合、利用が無くても、一定時間ごとに自動で水が流れるシステムが組み込まれていることが多々ある。
 そういう場合、便器によっては『人がいなくても水が流れることがあります。配管のつまりや臭いを防ぐためです』なんて書いてあったりする。
 事務所の男子トイレの小便器もこのタイプで、愛原と高橋が、『知っていても、いきなり勢い良く水が出るもんだからびっくりする』なんて話していたのを思い出した。
 もちろんリサは男子トイレになど入ったことはないが、今のが愛原達が話していたのと同じ便器だとすると合点は行く。
 ましてや夜中なのだから、尚更トイレの利用は少ないだろう。

 リサ:「なるほど。確かにこれはびっくりする」

 リサはそう呟いて、トイレに入った。
 と、今度は女子トイレの中から水の流れる音がした。

 リサ:「!?」

 リサは急いで勝手に水の流れたトイレを見た。
 もちろん、個室には誰もいない。
 しかし、確かに水が流れた痕跡があった。

 リサ:(この旅館の女子トイレも、一定時間の利用が無いと勝手に流れるようになっているんだろうか?)

 斉藤がここで何か変な体験をしたらしいが、斉藤が言ってた変な声は聞こえない。
 今起こったのは、勝手に水が流れたことだけだ。
 しかしこれは、そういうシステムということで説明がつく。

 リサ:「フム……」

 リサは斉藤が変な目に遭ったトイレの個室で用を足すことにした。
 自分自身が怪奇現象を起こす側であるし、今では幽霊とも知り合いになっている。
 びっくりさせられることはあれど、恐怖を感じることはなかった。

 リサ:(……特に何も無さそうだな。やっぱりサイトーが聞いた変な声というのは、気のせいか、或いは蓮華先輩の言う通り、外から聞こえたもの……)

 リサは用を足して個室から出ようとした。

 リサ:「ん?」

 だが、鍵を開けたのにドアが開かない。
 まるで、外から押さえつけられているかのようだ。

 リサ:「何か、ドアが重いな。よっと」

 バキッ!という音がしてドアが開いた。
 見た目には、ドアが壊れた感じはしない。
 見えないつっかえ棒を無理やり折ったような感じ。

 リサ:「フム……」

 個室から出て手を洗う。
 すると、何か鏡に映るモノがあった。
 これが斉藤や愛里などの怖がりな人間であれば、それを見ただけで大絶叫を上げることだろう。
 だが、リサはチラ見をしただけで、特にそのモノが何かを追及するつもりは起きなかった。
 怖くて現実逃避する為ではなく、相手する気にもなれないといった感じだ。
 そして手を洗い、今度はトイレから出る為にドアを開けようとする。
 だが、トイレの外に気配を感じた。
 霊感の強い者なら、それが人間ではない何かだと気付いただろう。
 リサは霊感云々以前に、そもそも人間ではないので。
 リサは第1形態に変化すると、ドアを少しだけ開け、その隙間から外を睨み付けた。
 確かにドアの向こうには、普通の人間なら大絶叫するモノがいた。

 リサ:「キサマ、いい加減にしろよ……!」

 リサの目にも、確かに普通の人間なら大絶叫するだろうなというモノが確認できた。
 だが、大絶叫を上げたのはリサの姿を見た、モノの方だったのである。
 そして、ダッダッダッダッと慌てて廊下を走り去る音がして、そのモノは窓から出て行ったのである。

 リサ:(“花子”先輩が言ってたな……。幽霊の中には“花子”先輩みたいな地縛霊とは対照的に、移動する浮遊霊とかいうヤツがいるって。そいつが居場所を見つけると居つくことがあるって言ってたけど、あれがそうか?まあ、追い出したからいいか)

 幽霊を追い出す鬼。
 リサが部屋に戻ろうとすると、眠い目を擦りながら蓮華が出て来た。

 蓮華:「何か今、強い霊気を感じたんだけど、知らないか?」
 リサ:「旅館荒らしがいたから、追い出した」
 蓮華:「……そうか。人助けをしたのなら許す」
 リサ:「ありがとう」

 リサは再び布団に入って眠りに就いた。
 今度は人食いの夢を見ることはなかった。
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“愛原リサの日常” 「ガールズ・ホラー・トーク」

2021-03-30 19:52:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日22:03.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館4F客室]

 夕食の後で入浴してきた栗原姉妹。
 リサは障子を開けて、夜景を見ていた。
 ちょうど、富士宮駅を発車した2両編成の下り電車が高架線を走って行く所だ。

 栗原蓮華:「明日も早いし、そろそろ寝ようか」
 リサ:「明日の朝ごはん、何時だって?」
 蓮華:「それくらい覚えてなさいよ。8時だって。どうせチェックアウトは10時だから、朝食もゆっくりなんでしょう。明日は7時に起きれば、勤行もできるしね」
 リサ:「ゴンギョー?」
 蓮華:「日蓮正宗信徒が毎朝夕に行っている読経ね。読経・唱題しているだけで、『鬼退治』ができるくらい大きな功徳があるのよ」
 リサ:「……私は退治される側だからいいや」
 蓮華:「早く人間に戻れるといいね」

 と、その時だった。

 斉藤絵恋:「ちょ、ちょっと!」

 トイレから戻って来た斉藤が血相を変えていた。
 この旅館の客室は、洋室以外、備え付けのトイレは無い。
 各階にある共用トイレを使うことになる。

 斉藤:「変な物音がしたのよ!トイレを使ってたの、私以外に誰もいなかったのに!」
 リサ:「変な物音?サイトー、それは気のせい」

 リサはそう言って、布団に潜り込もうとした。

 斉藤:「信じて無さがヒドい!」
 蓮華:「トイレは共用部なんだから、例えば他の階のトイレとパイプが共同なわけじゃん?そういう所を水が流れる音とか、あとは換気口から外の音が聞こえてくるとか、そういうのフツーだよ」
 斉藤:「違うのよ!変な笑い声とか、呻き声もしたんだから!」
 蓮華:「はあ?」
 斉藤:「ちょっと来てみてよ!」

 斉藤があまりに強く言うものだから、リサと栗原姉妹はトイレまで一緒に行くことにした。

 蓮華:「……別に変な音はしないじゃん。換気扇の音はするけどね。その換気扇、外と繋がってるわけだから、外の音とかが逆流してくることとかあるよ?」
 斉藤:「本当なのよ!ここの個室を使ってたの!そしたら、どこからか変な笑い声とか呻き声が聞こえて来て……!」
 蓮華:「私は霊感のある方なんだけどね、特にそういう変なモノの気配はしないよ。どう思う?元“トイレの花子さん”?」

 蓮華はリサを見た。

 リサ:「別に変な気配はしない。やっぱりサイトーの気のせい」
 斉藤:「そんなぁ!」
 リサ:「学校のトイレみたいに個室が並列になっているわけじゃないから、曰く付きの『奥から4番目の個室』が無い。だから、“トイレの花子さん”はここにはいない」
 斉藤:「そんな理論でいいの!?」
 蓮華:「往々にして、そういうお化けはそういう理論に拘ることが多いからね。例えば、妖怪“逆さ女”は人食い妖怪ではあるけれど、人を食う為には獲物にある約束をさせて、それを破らせてからでないと食い殺せないってのがあるからね」
 リサ:「何それ?メンド臭っ!食いたきゃ、襲って食えばいいのに」
 蓮華:「そこが力業の鬼と、他の妖怪の違いなのかもね」
 リサ:「蓮華……先輩、もしかして他に怖い話とか知ってる?」
 蓮華:「霊感が強いと、色々とあるのよ。色々ね」
 リサ:「面白そう!聞かせて!」
 蓮華:「しょうがない。1話だけだよ」
 リサ:「おー!」

 リサ達は部屋に戻った。

 蓮華:「怖い話が苦手な人は、さっさと布団被って寝るといいよ」
 斉藤:「じょ、上等よ。私だってリサさんのホラーな所、何度もこの目で見て来たんだし……」
 リサ:「怖がりのそいつは大丈夫?」

 リサは愛里を見た。
 だが、リサに対してはビクついている愛里も、何故か怪談に関しては涼しい顔をしていた。

 愛里:「ええ、大丈夫よ」
 リサ:「ふーん……。アンタも何か知ってるんだ?」
 愛里:「知ってる。ねぇ、お姉ちゃん?この鬼先輩に、私の知ってる怖い話聞かせてもいい?」
 蓮華:「ああ、うん。1話だけね」
 斉藤:「じょ、上等よ!だったら私も1話話してあげるわ!」
 蓮華:「あなたは?あなたは鬼として、怖い話ができるんでしょう?」
 リサ:「鬼というか……BOWとしてなら。他のリサ・トレヴァーやBOWが人間を襲って食う所は何回か見てるから、その話で良ければ」
 斉藤:「り、リサさんの話が一番怖そうね」
 蓮華:「誰から話そうか?」
 斉藤:「それはやっぱり、言い出しっぺの蓮華先輩じゃないかと」
 蓮華:「それもそうか。因みにネタはいくつかあるんだけど、全部話していたら徹夜になるから、1話だけね」

 蓮華はトランプを出した。

 蓮華:「今話せるネタは5話くらいあるんだけど、どの話がいいか。これで決めよう。リサ、あなたがカードを引いて。どのカードを引いたかによって、どの話をするか決めるから」
 リサ:「なるほど」
 斉藤:「因みにカードの種類は何ですか?」
 蓮華:「ハート、スペード、クラブ、ダイヤの各エースと、ジョーカーが1枚。ジョーカーが取っておきの怖い話だよ。因みに全部、うちの高校にまつわる、学校の怪談ね」
 リサ:「えーと……。それじゃあ、これ」

 リサは1番右側のカードを引いた。
 すると、そこに現れたのはハートのエースだった。

 蓮華:「あら?1番マイルドなネタのを引いたね」
 リサ:「ジョーカーが良かった」
 蓮華:「これから同じ高校に通うんだから、機会があった時に話してあげるよ。うちの学校の新聞部、結構そういう特集を組むのが好きだからね。……そう。これはうちの高校の新聞部で起きた話」

 それは1995年頃のこと。
 全国的にオカルトブームになっており、各テレビ局では昼も夜も怪奇特集番組なんかをよくやっていた頃の話だ。
 その頃、今では教育資料館としてリニューアルされている木造の旧校舎を取り壊す計画があり、それに合わせて当時の新聞部は学校の七不思議の特集を組もうということになった。
 結果的に、そのプロジェクトは頓挫した。
 部室に集められた語り部は6人。
 しかし、1人1話ずつ話すごとに消えて行ったのだという。
 そして最後の語り部は、取材をしていた新聞部員を旧校舎に連れて行った。
 旧校舎にまつわる“トイレの花子さん”の話をする際、より臨場感を持たせるというのが理由だった。
 しかし、最後の1人は現れた“トイレの花子さん”によって消されてしまった。
 そう、語り部を消して行ったのは“トイレの花子さん”だったのだ。
 “トイレの花子さん”が新聞部員に語ったところによると、彼女はイジメを苦に自殺した女子生徒の幽霊である。
 消して行った語り部達は、自分をイジメて自殺に追いやった生徒達の息子や娘達だったという。
 自分が自殺して、自分の両親は嘆き悲しんだ。
 そしてその苦しみを加害者達に味わわせる為、本人達に直接復讐するのではなく、その子供達を消すことによって復讐を果たそうとしたのだと。
 因みにその新聞部員は無関係であり、“花子さん”はついでにその部員も連れて行こうかと思ったが、話しているうちに悪い人間ではないと判断し、連れて行くのをやめた。
 そしてその新聞部員は、七不思議の特集をやめ、学校のイジメ問題に取り組んだのだという。
 尚、当時の語り部6人は今でも行方不明のままである。
 もしかしたら、あの旧校舎を取り壊せば、白骨死体くらいは出てくるかもしれない。

 蓮華:「……というお話でした」
 リサ:「それが、あの“トイレの花子さん”」
 蓮華:「だからリサ、あなたが妹にしたことは大きな罪なんだからね?高校でイジメなんかした時には、あの“花子さん”も怒らせることになるよ。彼女、復讐を果たしても成仏なんかできず、未だにあの旧校舎に括りつけられているんだから」
 リサ:「知ってる。多分私は最初、あの人に挨拶しに行くことになると思う。私のモデルになった人として」
 斉藤:「確かに怖いというよりは、何だか切ない話ね」
 愛里:「お姉ちゃん、塔婆供養してあげないの?」
 蓮華:「そうしてあげたいんだけど、肝心の名前が分からないからねぇ……」
 リサ:「確かに。あの人、自分の名前を忘れたって言ってた。だから、通称の『花子さん』と呼んでいいって」
 蓮華:「通称で塔婆供養していいものか、ちょっと判断ができないからねぇ……。ま、とにかく私の話はこれで終わり。もちろん、この他に全く救いの無い、ただ怖いだけの話も知ってるよ。だけど、そのカードを引かなかったから、また今度ね」
 リサ:「むー……。じゃあ、次はサイトー。話して」
 斉藤:「えっ、私?じゃあ、リサさんの御指名とあらば……。これは私が小学生の頃、両親と旅行で海外に行った時のお話です」

 少女達の怖い話は、深夜にまで及んだという。
 尚、最後にリサがした話たが、それまで他の少女達が話した怪談話が、どことなく創作っぽく聞こえる部分があったのに対し、リサが本当に見聞きした内容であっただけに、やっぱり1番胸糞が悪くなるものであったという。
 そりゃ、BOW(人食い鬼型生物兵器)視点で、人間を襲ってその血肉にむしゃぶりつく話とあれば……襲われる側の人間としては胸糞の1つも悪くなるだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「明日の予定」

2021-03-30 15:06:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日19:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館]

 夕食も終わり、そろそろ部屋に戻ろうとした時、私のスマホに電話が掛かって来た。
 電話の相手は善場主任からだった。

 リサ:「先に部屋に戻ってるねぇ」
 愛原:「ああ。はい、もしもし?」

 リサ達、女の子達は先にエレベーターに乗って行った。
 私はロビーのソファに座り、電話に出る。
 高橋はその向かいに座った。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原:「おお、善場主任、お疲れ様です」
 善場:「ご旅行の最中に申し訳ありません。今、お電話よろしいでしょうか?」
 愛原:「ええ、大丈夫ですよ。何の御用でしょう?」
 善場:「今、愛原所長方は静岡県富士宮市においでということですが、これから観光の御予定等はありますでしょうか?」
 愛原:「いえ。まだ、具体的な場所は決めていません。まだ温泉に入っていないので、明日は温泉に入ろうかとは思っているんですが……」
 善場:「そうですか。では、特にバイオハザードに関係したご旅行ではないのですね?」
 愛原:「ええ、そうですが。バイオハザードがどうかしましたか?」
 善場:「以前、愛原所長がその町を訪れた時、小規模ながらバイオハザードに巻き込まれてしまったことはまだ記憶に新しいかと思います」
 愛原:「そうですね。あの時も一泊しましたが、今回は別の旅館にしましたよ」
 善場:「リサは本当にちゃんと中学校を卒業しましたね?」
 愛原:「はい」
 善場:「実は富士宮市内には、当機関の施設があるんです」
 愛原:「デイライトの施設……ですか?」
 善場:「はい。そしてそれは、私が所属する政府機関の施設でもあります」
 愛原:「でしょうね。何の施設ですか?」
 善場:「もしもリサが人並みの生活ができず、学校にも通えなかった場合の施設ですよ。そしてそれは、これから高校に入るリサに対しての警告でもあります」
 愛原:「まさか殺処分施設なんじゃ?」
 善場:「いきなりそんなことはないですよ。しかし、もしもリサがこれからも人間として高校生活も無事に過ごせそうなら、その施設は閉鎖しようという動きがあるんですよ。閉鎖されたらもう見ることはできないので、もし宜しかったら、今のうちに見学してみませんか?という誘いです」
 愛原:「なるほど。確かにまだデイライトさんの施設は、東京の事務所しか知りませんね」

 神奈川県相模原市の郊外にある国家公務員特別研修センターは、何もデイライト専用の施設というわけではない。

 愛原:「分かりました。では、お願いしてもよろしいですか?因みに所要時間としては如何ほど……」
 善場:「そうですね……。まあ、1~2時間ほど見て頂けたらと思います」
 愛原:「分かりました」
 善場:「それでは10時に旅館までお迎えに行きます。旅館の名前と場所を教えてください」
 愛原:「はい」

 私は主任に旅館の名前と場所を教えた。
 そして、電話を切った。

 愛原:「高橋、明日は善場主任がいい所に連れて行ってくれるらしいぞ」
 高橋:「いい所?どこっスか?」
 愛原:「ヘタすりゃリサを隔離しておくような施設らしい。リサにとっては、ロクでもない場所だろうな」
 高橋:「それはリサが暴走したら閉じ込めておく所ってことっスか?」
 愛原:「暴走とまでは行かなくても、狂犬みたいな感じだったらそうなるってところだ。だって暴走したら、即殺処分だろ?」
 高橋:「あ、そうか……」
 愛原:「よし。取りあえず、あのコ達に明日の予定を伝えに行こう」
 高橋:「うっス」

 私達は席を立つと、エレベーターに乗り込んだ。

〔ピーン♪ 4階です〕

 私達の泊まっている客室フロアに着くと、私はリサ達の部屋に向かった。

 高橋:「先生、俺、先に部屋に戻ってますんで」
 愛原:「ああ。分かった」

 そういえば、彼女らが部屋で過ごしているところも写真に撮って、報告書に添付した方がいいな。
 私はリサ達の部屋のドアをノックした。

 リサ:「はーい」

 リサがドアを開けてくれた。

 愛原:「明日の予定が決まったから、教えに来たぞー」
 リサ:「おー。今度はどこに連れていてくれるの?」

 部屋の奥を見ると、既に布団が敷かれているのが分かった。

 愛原:「その前に、リサと斉藤さんが部屋で寛いでいる所も撮りたいんだが、いいかな?」
 リサ:「いいよ」

 私は部屋に上がらせてもらった。
 布団は2組ずつ、頭合わせになるように敷かれていた。
 栗原姉妹が並んで寝るのは想定内だが、もっと想定内なのは、蓮華さんの向こうがリサで、愛里さんの向こうが斉藤さんだということだ。
 いざとなったら、リサを取り押さえるくらいの勢いらしいな、蓮華さんは。

 リサ:「サイトー、先生が写真撮るって」
 斉藤:「んもぅ、しょうがないですわねぇ。どんな感じでいけばよろしいのかしら?」
 愛原:「2人仲良く部屋で過ごしていますって感じで報告したいから、まあ、そんな感じ」
 リサ:「改めて言われると何か難しい」
 愛原:「そんな難しく考える必要は無いさ」
 栗原蓮華:「枕投げとか?」
 斉藤:「リサさんにガチ枕投げさせたら、ケガ人が出ますわよ」
 栗原愛里:「トランプやってるところ!」
 斉藤:「ベタ過ぎ且つ地味よ」
 リサ:「じゃあ、よくサイトーとお泊まり会やってる感じでいいかな?」

 リサは斉藤さんの布団の中に潜り込んだ。

 リサ:「こんな感じ?」

 布団を被って、頭だけ斉藤さんと一緒に出す。

 斉藤:「り、リサさんが御自ら私の布団にぃーっ!?あらまぁ、どうしましょ!?大人の階段一気に駆け登ってシンデレラかしらー!?」
 蓮華:「先生、こんな百合っプル報告して大丈夫なんですか?」
 愛原:「……っ!斉藤社長からは、仲良くやっている所をと言われてるから大丈夫だろ!」

 私は無表情でピースサインをしているリサと、萌え狂っている斉藤さんを撮影した。

 愛里:「お姉ちゃん、この人達、女子校に行った方がいいんじゃない?」
 蓮華:「女子校でもガチ過ぎてヒかれるタイプだと思う」
 リサ:「それで先生、明日の予定は?」
 愛原:「おっと、そうだった。実はさっき、善場主任から電話があって……」

 私は善場主任から、デイライトの施設見学に誘われたことを話した。

 斉藤:「そんな国家機密情報満載の施設に、私達が行っていいんですか?」
 愛原:「いいんだろうなぁ。何しろ、善場主任からの誘いだから。それに、閉鎖する予定の場所だそうだから、俺達に公開した後で閉鎖するつもりなんだろう。気が付いたら、きれいさっぱり取り壊されて更地になっているっていうオチになるってことだな。それなら、俺達の中から誰かが機密情報漏らしたところで、それを買ったヤツがいざ実際行ってみたら、更地になっているってことだと思う」

 外国なんかでも、かつては国家機密満載の施設だった場所が、時代が下ってから公開されるということはよくある。
 もちろんそれは、そこはもはやそういう施設では無くなったものの、歴史的価値があるので、公表しても国家機密的に問題無いとされるからだろう。

 愛原:「どうだい?一緒に行くかい?」
 蓮華:「私はいいですよ。普段、国家機密の施設に入る機会なんてそうそう無いですから」
 愛里:「私はお姉ちゃんと行く」
 斉藤:「リサさんはどうする?」
 リサ:「先生が行くなら、私も行く」
 斉藤:「リサさんが行くなら、私も行きます」
 愛原:「じゃあ、決まりだな」

 私はそう言って出発時刻を伝えると、部屋を後にした。
 なるほど、そういうことか。
 確かに前回この町に来た時、私達は小規模なバイオハザードに巻き込まれた。
 どうしてそこでそんなことが発生したのか、未だに謎であったが、デイライトの施設を狙ったものであったとするなら納得が行く。
 やはり善場主任は知っていたのだ。
 この町でバイオハザードが発生した理由を。
 そして今、私達に真相を話してくれようというのだろう。
 あの時と違って今は、旧・日本アンブレラの責任者だった五十嵐元社長が息子の元副社長共々逮捕されているし、日本版リサ・トレヴァーも、危険性の無い『0番』『2番』以外、基本的には全員倒したことになっている。
 表向きには贖罪と正義の活動を標榜するものの、どことなく胡散臭い“青いアンブレラ”も日本からは追い出した。
 白井伝三郎の行方はまだ分からないし、彼を取り巻く宗教テロ組織ヴェルトロのこともよく分かっていないが、話す時は今ということだと私は解釈した。
 善場主任がどれだけ話してくれるか、明日は楽しみだ。
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“私立探偵 愛原学” 「富士宮での一夜」

2021-03-28 20:07:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日17:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今夜は市街地の旅館で一泊する予定だ。
 この町の郊外にある大石寺というお寺に、彼岸参りに行っていた栗原姉妹が遅れて到着したので、私は1階ロビーまで迎えに行った。

 愛原:「やあ、お疲れさん」
 栗原蓮華:「今、着きました」

 私はフロントに行って、この2人が後で到着する予定の者達だと伝えた。

 愛原:「よし、部屋まで行こう」

 そして私は、栗原姉妹をエレベーターに乗せた。

〔ドアが閉まります〕

 愛原:「部屋はリサ達と一緒だ。大丈夫だね?」
 蓮華:「ええ。あのコが何もしなければ大丈夫です」
 愛原:「大丈夫だよ。改めてリサには言っておいたから」
 蓮華:「分かりました」
 愛原:「夕食は18時からだそうだ。食事は食堂があるから、そこらしい」
 蓮華:「分かりました」

〔ピーン♪ 4階です〕

 ところで、このオーチス・エレベーターのアナウンスの声優、富沢美智恵氏だって知ってた?
 アニメだと“クレヨンしんちゃん”のまつざか先生とか、“サクラ大戦”の神崎すみれとか、あとロアナプラという架空の町が登場する某アニメの武装メイドさんの役とか(素直に“ブラック・ラグーン”と言わんかい!)……。
 エレベーターのアナウンスの声を聞いている限りでは、全く気が付かない。

 愛原:「こっちだよ」

 エレベーターを降りて部屋に向かおうとするが、何故かドアに鍵が掛かっていた。

 愛原:「あれ?鍵が掛かってる?おい、開けてくれ」

 私は部屋をノックした。
 しかし、全く開く様子が無い。

 蓮華:「これは、嫌がらせでしょうか?」
 愛原:「い、いや、そんなはずはない」

 すると、隣の私の部屋から高橋が出て来た。

 高橋:「あ、先生。あの2人、風呂に行ったんで、鍵預かってます」

 と、高橋は鍵を出した。

 愛原:「なにぃ?自由行動だな」
 蓮華:「そういうことならいいです」
 愛原:「風呂に行くなら、鍵を忘れるなよ」
 蓮華:「いえ。お風呂は後で入ります。ちょうど勤行をするのに都合がいいです」
 愛原:「そうか?それならまあ、いいけど……」

 私は蓮華に鍵を渡して、部屋に戻った。

 高橋:「お疲れ様っス」
 愛原:「ああ」
 高橋:「俺達も風呂行きますか?」
 愛原:「ああ、そうだな」

 私達は浴衣に着替えた。

 愛原:「こういうのはな、着替えてナンボだろ」
 高橋:「寛ぎスタイルっスね」

 そして私達はタオルを持って、大浴場に向かった。
 そこに行って、私はあることに気づいた。
 佇まいは、温泉地にある旅館という名のホテルそのものである。
 しかし、脱衣場にはよく掲げられている温泉の成分表などが掲げられていない。
 つまり、温泉ではないのだ!

 愛原:「佇まいは温泉なのになぁ……」
 高橋:「先生、気を確かに……」

 最上階にある大浴場は、確かに眺望に優れており、相変わらず頂上部分が雲に隠れているものの、富士山がよく見えるのは分かった。

 高橋:「先生、お背中、お流し致します!」
 愛原:「ああ。頼むよ」
 高橋:「はいっ!」

 私は洗い場のシャワーの前に座り、高橋に背中を流してもらった。

 愛原:「こりゃ明日は、仕切り直しをしなきゃいけないかもしれんな……」
 高橋:「と、仰いますと?」
 愛原:「明日は本物の温泉に入らないと気が済まん」
 高橋:「はい!」
 愛原:「明日までに、いい温泉地を探しておこう」
 高橋:「分かりました」

 でもまあ浴槽は広く、街の景色もいいので、夜に入ったら夜景が楽しめるかもしれないと思った。

[同日18:00.天候:晴 同旅館・食堂]

 食堂に行くと、『愛原様』と書かれた札のテーブルがあった。

 高橋:「先生、どうぞ。上座へ」
 愛原:「上座ってここなのか?」

 因みにこの時には、既に栗原姉妹も浴衣に着替えていた。

 リサ:「お~、いっぱいあるー!」

 リサはテーブルに置かれた数々の料理を見て、目を輝かせた。
 昼あれだけ一杯食べたのに、もうこれを完食する気満々らしい。

 高橋:「先生、どうぞ」

 高橋がビールを注いできた。

 愛原:「ああ、悪いね」

 私と高橋はビールだが、他のJK・JC達はジュースやウーロン茶である。

 愛原:「それじゃ、乾杯しよう。リサと斉藤さんは、改めて卒業おめでとう。栗原さん達は進級おめでとう」
 蓮華:「ありがとうございます」
 愛里:「ありがとうございます」
 愛原:「それじゃ、乾杯!」

 乾杯してから夕食に箸をつけた。

 愛原:「蓮華さん達は来月から何年生になるんだっけ?」
 蓮華:「2年生です」
 愛里:「2年生です」

 蓮華さんは高2、愛里さんは中2というわけか。

 愛原:「蓮華さん、後輩となるリサ達をよろしく頼むよ?」
 蓮華:「はい。特に、リサさんにあっては、校内で人食いをしないよう監視の対象とさせて頂きます」
 愛原:「はっはっは。聞いたか、リサ?鬼斬り様の監視対象だぞ」
 リサ:「私は人の血肉は……じゅるっ……食わない」
 高橋:「おい、一瞬涎出ただろ?」
 リサ:「き、気のせい気のせい。この料理が美味しいだけ」

 バリボリ!

 愛原:「リサ、蟹を殻ごと食べるんじゃない!」
 リサ:「えー?美味しいよ?」
 蓮華:「鬼の中には、人間の骨までも食い尽くす輩がいると聞きましたが……。このコがそうですか」
 リサ:「食べたこと無いから分かんない。……けど、食べるとしたら、そうなるかも」
 蓮華:「どうやら、本当に食べたことが無いみたいだね」
 愛原:「当たり前だろう。どうしてそう思うんだ?」
 蓮華:「もし本当は食べていたのなら、『私は他の鬼と違って食い散らかさない』とか、『骨までは食べない』とか言うはずですから」
 愛原:「なるほど」

 誘導尋問にリサは引っ掛からなかったというわけだ。
 これもリサが本当に人食いをしていなかったことの表れだろう。
 しかし、本当にリサは魚も骨まで食べるんだよなぁ……。
 鋭い牙でかみ砕くんだ。
 フライドチキンもそんな食べ方をするものだから、リサにはKFCには行かないように言っている。
 もしも行くのなら、骨付きチキン以外のものを注文するようにと……。
 動物でさえ骨は残すし、人食い鬼が出て来るマンガやアニメで、人食いをするシーンが出て来ても、骨は残す描写だろうに、リサは骨まで食べそうだ。

 リサ:「ん!この天ぷらもイケる!」
 斉藤:「このお刺身も美味しいわよ」
 愛原:「ほら、高橋。オマエも飲め」
 高橋:「あざーっス!」
 愛原:「おっと!写真撮らなきゃな」

 私はデジカメを取り出して、リサや斉藤さんの食事風景を撮った。
 娘が楽しく卒業旅行しているのを見て、クライアントの斉藤社長から報酬を頂かねば。
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“愛原リサの日常” 「湯けむり旅情殺人事件 ~その時、JKは見ていた!~ ……すいません、書いてみたかっただけですw」

2021-03-28 15:20:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日16:06.天候:晴 静岡県富士宮市 富士急静岡バス大石寺入口停留所]

 大石寺での行事を終えた栗原姉妹は、大石寺三門前を通る国道を徒歩で西進した。
 15分くらい歩いたところで、県道との十字路交差点に到着する。
 国道と県道との十字路といっても、信号機は付いているだけの小さな交差点だ。
 交差点の角にコンビニがあるだけである。
 姉妹はそこの近くにあるバス停で、バスを待った。
 県道184号線上にあるのだが、この県道、1車線または1.5車線の幅しかない。
 乗用車同士ならまだ辛うじてすれ違えるが、準中型車以上の車となると、それは難しいだろう。
 休日は1日2往復しか運転しないとはいえ、そんな道をバスが走るのである。
 大石寺前を走る国道469号線は拡幅や新道建設が進んでいるが、県道にまではその手は及んでいないようである。
 その為、大石寺参詣者も、国道469号線や国道139号線に繋がる市道(参道)は使用しても、こちらの県道を使用する者は殆どいない。
 それどころか、ここを路線バスが走っていることすら知らない者も多々いるのだ。

 栗原蓮華:「……よし。愛原先生には、これからバスに乗るって伝えておいた」

 蓮華はバス停の前に立ちながら、スマホを手にしていた。
 もうすぐバスが来る時間なのだが、他にバスを待つ者はいない。

 栗原愛里:「愛原先生達、もう旅館に着いてる?」
 蓮華:「まだ返信無いから分かんないよ。でも、私達が富士宮駅に着く頃には、もう着いてるかもね」
 愛里:「むー……」

 そんなことを話していると、上条方面からバスがやってきた。
 やはりセンターラインも引かれていない程の狭い道をバスが来ると圧巻だ。
 それは対向車も同じらしく、コンビニの敷地内に乗り出すようにしてバスを避ける。
 来たバスは中型のノンステップバス。
 新富士駅から富士駅まで乗ったのと同じ車種であった。
 しかし、乗客は誰も乗っていなかった。
 姉妹は中扉から乗ると、Pasmoを読み取り機に当てて、1番後ろの座席に座った。
 そこは新富士駅から乗った時、愛原と高橋が座っていた位置である。
 2人の乗客を乗せると、バスはすぐに走り出した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は下条、下条でございます〕

 この辺り、上条とか下条とか言うが、条とはこの辺り一帯を治めていた南条時光氏の条である。
 そして今では富士宮市の一地区になっているが、かつては上野村という村であった。
 かつての村役場も、この近くにある(現在は市役所の出張所)。

 蓮華:「愛原先生から返信来た。16時半には着くみたいだね」
 愛里:「そうなの」
 蓮華:「今頃、国道を走ってるんじゃないかな。139号線ね」

[同日16:30.天候:晴 同市内 かめや旅館]

 車での市内観光を終えた愛原達は、車をレンタカーショップに返却すると、その足で宿泊先の旅館に向かった。
 名前を旅館としながらその佇まいは、ホテルに近い。

 愛原:「残りの2人は、後で合流します」
 従業員:「かしこまりました」
 高橋:「“ベタな日本旅館の法則”、BGMが和楽器」
 リサ:「お~」
 斉藤:「当たり前じゃない。こういう所でユーロビート流されても、リアクションに困るわよ」

 愛原は部屋の鍵を2つ受け取った。

 愛原:「はい。これがリサ達の部屋の鍵だよ」
 リサ:「おー。BOWがドアの鍵を開けて入る珍しいパターン」
 愛原:「ん?どういうことだ?」
 リサ:「BOWは鍵の開いてるドアを開けるか、すり抜けるか、壁をブチ破るかのどれかだから……」
 愛原:「ここでは、ちゃんと鍵を開けて入るように」
 リサ:「はーい」
 斉藤:「壁を破って敵を追うリサさんの姿、想像するだけで萌えぇ……」

〔上に参ります〕

 高橋:「先生、部屋は何階ですか?」
 愛原:「4階だって」
 高橋:「了解です」
 リサ:「早く行くーん」

〔ドアが閉まります〕

 斉藤:「ま、待ってください!」

 萌える斉藤は、危うく置いていかれるところだった。
 ドアを再開閉して、斉藤は慌ててエレベーターに乗り込んだ。

 愛原:「さすがにエレベータに乗って追いかけてくるBOWはいないだろう」
 リサ:「私がやろうか?」
 斉藤:「リサさんと鬼ごっこ……!萌えぇ……」
 リサ:「いや、フツーBOWに捕まったら食い殺されるから」
 斉藤:「リサさんに食い殺されるなら本望ですぅ……!」
 リサ:「先生、サイトーなら食い殺してもBSAAは文句言ってこないんじゃない?」
 高橋:「俺もそんな気がします」
 愛原:「それでも許可されないと思うので、承認しかねます」

〔ピーン♪ 4階です〕

 エレベーターを降りると、そこは客室フロアだった。
 部屋は隣同士である。

 愛原:「後で栗原さん達が来るから」
 斉藤:「同じ部屋なんですか?」
 愛原:「そうだよ。修学旅行で4人部屋なんで普通だろ?」
 斉藤:「私はリサさんと2人きりで過ごしたかったです」
 リサ:「栗原姉妹的に、私が同室でもいいの?」
 愛原:「リサが何もしなければいいって、蓮華さんは言ってたがな」
 リサ:「フム。先生がそうしろっていうなら従う」
 愛原:「頼んだぞ」

 リサは渡された鍵で、部屋のドアを開けた。

 リサ:「お~、いい匂い」
 斉藤:「畳の匂いね。これぞ和室って感じだわ」

 リサが窓の障子を開けた。

 リサ:「お~、電車が見える」
 斉藤:「電車?ということは、富士山とは反対側の部屋なのね。フザけてるわ」
 リサ:「そうかな?街の方を向いているということは、夜景がきれいなんじゃないの?私はその景色も好き」
 斉藤:「り、リサさんがそう言うなら、吝かじゃないけどォ……」

 リサは押入れの中から浴衣を見つけた。

 リサ:「見て、サイトー!浴衣!」
 斉藤:「お風呂とかお手洗いとかは共同みたいだけど、浴衣はちゃんとあるのね」
 リサ:「早速着替えよう」
 斉藤:「ええ~っ!?」
 リサ:「こういう所に来たら、着替えてナンボでしょう?」
 斉藤:「そ、そうね。寛ぎましょう」

 尚、リサの浴衣姿に斉藤がまたもや悶絶したことは言うまでもない。
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