報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

本日の動静 20200229

2020-02-29 22:30:12 | 日記
 JR蕨駅→(京浜東北線各駅停車)→JRさいたま新都心駅→(国際興業バス新都01系統)→与野切敷川バス停→(国際興業バス新都01系統)→白鍬電建住宅バス停→(国際興業バス新都01系統)→北浦和駅西口バス停→(JR京浜東北線快速)→JR蕨駅→(京浜東北線各駅停車)→JR日暮里駅→(常磐線中距離電車)→北千住駅→(都営バス王45系統)→王子駅前バス停→(京浜東北線各駅停車)→JR蕨駅

 北千住駅西口に顕正会員がいやがった。
 恐らく性別と年齢的に女子部員だろう。
 何の変わり映えもしない富士山の写真がでっかく載った例のチラシを片手に立っていた。
 向こうは折伏しているつもりなのだろうが、こちらも大局的に見れば信心活動の1つに繋がる行動をしていたところだ。
 構っているヒマは無く、野暮用が済んだら、さっさと都営バスに乗ってしまった。
 王45系統は1時間に1本しか無く、野暮用が済んだ後で小走りにバス停に向かわなければ乗り遅れるところだったからだ。
 都営バスの中ではローカル線になる系統であっても、Wi-Fiは搭載されていた。
 さすが金のある公営バスは違う。
 日本一の乗客数を誇る神奈川中央交通では、一般路線バスにまでWi-Fiを搭載しているのだろうか。
 あいにくとバス会社では大手に当たる国際興業ですら、一般路線バスにまでWi-Fiは搭載されていない。
 それは富士急バスも同じ。

 取りあえず、“大魔道師の弟子”はあれで一旦終了と致します。
 稲生とマリアは無事にバスタ新宿から夜行バスに乗り、今は雪景色の見られる長野県北部の山奥まで帰れたもよう。
 今度はまた“私立探偵 愛原学”を再開したいと思っておりますが、リアルで冗談抜きのバイオハザードが起こってるんで、時節柄としてそれを取り上げるべきなのか、それとも全くスルーして別の話にするべきか考え中。
 リアルに蔓延しているウィルスは感染者に肺炎を引き起こすだけの病気であり、“バイオハザードシリーズ”のように、感染者を化け物に変えたりするものではないのだが……。
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“大魔道師の弟子” 「東京最後の夜」 2

2020-02-29 10:03:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[2月11日21:00.天候:曇 東京都千代田区神田淡路町 らくスパ1010]

 入浴した後はレストランで夕食を取る稲生とマリア。
 もちろん2人とも肉体的に成人年齢なので、酒も入る。
 マリアの場合、見た目や服装で誤解されないよう、ローブは羽織っておく。

 マリア:「えっ、横田理事が!?」
 稲生:「そう。何でも、魔王城に新しくスーパー銭湯を造るんだとか……」
 マリア:「いや、明らかに女王専用浴場だろうが。それにしても、噂は本当だったんだなぁ」
 稲生:「噂?」
 マリア:「温泉を引くって話。元々魔王城はスーパーグレート火山の地脈の上に建てられてるって話だから、温泉を引くくらいワケ無いとは思ってた」
 稲生:「女王陛下は親日家らしいので、日本人として光栄ですね」
 マリア:「安倍(春明)首相に何吹き込まれたんだか……」
 稲生:「横田理事が教えてくれた話によると、ラーメン二郎とか」
 マリア:「んん?」
 稲生:「秋葉原電気街巡りとか」
 マリア:「Huh?」
 稲生:「お台場の大江戸温泉物語やスパリゾートハワイアンズにも行かれたらしい」
 マリア:「日本を超エンジョイしてたのか、あの女王!」
 稲生:「女王陛下って国籍はアメリカでしょう?」
 マリア:「ニューヨーク生まれのニューヨーク育ちらしいな。“魔の者”がそこのマフィアのボスに憑依したのも、女王の影を追って行った故と噂している魔道士もいる」
 稲生:「なるほど。そこで繋がるわけか」
 マリア:「あくまでも、噂だけどね」
 稲生:「アメリカ人がわざわざ日本のハワイ行くかって思ったけど……」
 マリア:「行くんじゃない?だいたい、アメリカ人の何割がハワイ行ったことあるかってアンケート取ってみたら多分、勇太驚くよ」
 稲生:「そんなに少ないのか」
 マリア:「私の所のイギリスもそうだけど、大英帝国時代と違って今は島国だから、そこは日本と同じ。大陸に住んでる人間の感覚はちょっと違うよ」
 稲生:「なるほど……」
 マリア:「私だって、北アイルランドとかは行ったこと無いよ」
 稲生:「僕も四国や九州とかは無いなぁ……」
 マリア:「国内でさえ私達はそんな感じなんだからさ……。ぶっちゃけ、『アメリカ人の70%はニューヨークがどこにあるかを知らない』なんて言うぞ?」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「そのアメリカより広いロシア出身の師匠に、『ユジノサハリンスクはどこにありますか?』って聞いてみろ?多分答えられないから。師匠はずっと西のセントピーターズバーグ(※)出身なんだから」

 ※英名。ロシア語だとサンクトペテルブルク。アメリカにも同じ名前の町があるが、正しくロシアからの移民が作った町だからである。

 稲生:「水晶玉を使いそうな感じですもんね。でもサンクトペテルブルクって、結構な都会なんでしょう?アナスタシア先生もモスクワ出身だって言いますし、結構有名な巨大都市生まれの方が多いですね」
 マリア:「でも本当に人間として生まれた当初は、ド田舎だったって可能性も……」
 稲生:「ええっ?」
 マリア:「勇太の場合、師匠の見立てでは、前世は仏教の高僧だったという」
 稲生:「あれでしょ?天海僧正でしょ?そんな自覚無いけどなぁ……」
 マリア:「その高僧が生きていた時、この東京は当時からこんな感じだったのか?」
 稲生:「まさか……。天海僧正は江戸時代初期の人で、徳川家康が生きていた頃の人物なので、江戸幕府開府の時はやっぱり田舎だったらしいですよ。まだ鎌倉の方が栄えていたようで……」
 マリア:「勇太は自覚が無いだけで、もし魂の年齢がそうだとしたら、勇太もその頃から生きているということになる」
 稲生:「ええっ!?」
 マリア:「師匠はそれにも興味を持って、勇太をスカウトしたんじゃないかな」
 稲生:「はあ……」
 マリア:「私も他人の肉体を乗っ取って生き永らえる方法は好きじゃないんだ。だけど今、勇太が『合法的な転生』で生き永らえているのなら、そっちの方がいい。師匠はそういうのを研究しているから、師匠もそう思ってると思う」
 稲生:「僕は何の自覚も無いですけどねぇ……」

[同日22:13.天候:曇 千代田区神田駿河台 JR御茶ノ水駅→中央緩行線2181B電車1号車内]

〔まもなく2番線に、各駅停車、武蔵小金井行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、水道橋に止まります〕

 入浴施設をあとにした稲生とマリアは、最寄りの御茶ノ水駅に移動した。
 そこのコインロッカーから、秋葉原で買った品々を回収する。
 空のバッグに詰めている所は、外国人観光客と同じか。

 稲生:「おっ、元山手線」

 塗装こそラインカラーに準じた黄色(カナリア色)であるものの、外観が特徴的なことで山手線からの転属車であることが分かる。
 また、座席のモケットは変更されていないので、山手線時代の緑色のままである(通常は青色)。

〔御茶ノ水、御茶ノ水。ご乗車、ありがとうございます。次は、水道橋に止まります〕

 最後尾の車両に乗り込む。
 こうすれば新宿駅に到着後、1番バスタ新宿に近い南口近くで降りることができる。
 開かないドアの前に立っていると、発車メロディがホームから聞こえてくる。

 稲生:「あ、そうか。もうこんな時間だから、快速もボチボチ各駅停車になるんだな」

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 電車のドアが閉まる。
 御茶ノ水駅にはホームドアが無い為、ドアが閉まるとすぐに発車する。

〔この電車は中央・総武線各駅停車、武蔵小金井行きです。次は水道橋、水道橋。お出口は、左側です。都営地下鉄三田線は、お乗り換えです〕

 快速はまだ走っている時間帯ではあるのだが、時間調整の為、各駅停車にあえて乗った。
 快速よりは空いているというのもある。

 稲生:「先生が退院されたら、また迎えに行きますか」
 マリア:「そういうことになるかな。もっとも、師匠のことだから普通に魔法で帰って来そうだけどね」
 稲生:「交通費が掛からなくていいだろうに、それでも公共交通機関に乗られる理由って……」
 マリア:「ルゥ・ラは意外と魔力を消耗するし、綱領の1つに『乱用禁止』があるからだろう」
 稲生:「そういうものですか」

 まだその瞬間移動魔法が使えない見習いと、一人前に成り立ての魔道士は夜の通勤電車でバスターミナルに向かう。
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“大魔道師の弟子” 「東京最後の夜」

2020-02-28 20:20:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月11日19:00.天候:曇 東京都千代田区神田淡路町 らくスパ1010]

 秋葉原で買い物を終えた稲生達は、バスタ新宿に行く前に入浴と夕食を取ることにした。

 稲生:「えーと……確かこの辺だ……。あった」
 マリア:「勇太はよくこういうの見つけるね」
 稲生:「僕も、こういうの好きなんですよ」
 マリア:「私も勇太のそういう所に付き合ったおかげで、『魔女の呪縛』は消え去った。だから付き合うよ」
 稲生:「ありがとう」

 早速館内に入る。
 因みに買い物の荷物については、御茶ノ水駅のコインロッカーに預けて来た。

 稲生:「先にお風呂入ってから、夕食にしよう」
 マリア:「その方がゆっくりできるな」

 因みにこういう公衆浴場には必ずある注意書きの内容。
 『入れ墨・タトゥーのある方の入場お断り』というもの。
 欧米人なんか、日本人よりも軽い気持ちでタトゥーを入れているイメージがあるが、マリアの場合は……。

 マリア:「勇太。今さら、こんなこと聞くのもアレなんだけど……」
 稲生:「何だい?」
 マリア:「悪魔と契約すると、ほとんどの場合タトゥーが入るんだけど、私のもアウトかな?」

 フロントに並んでいる時、マリアが稲生に聞いてきた。

 稲生:「えっ?マリアにタトゥーなんてあったっけ?」

 実はもう稲生はマリアと体を重ねている。
 マリアの裸体は隅々まで見た記憶がある稲生だが、タトゥーには全く気が付かなかった。

 マリア:「魔法を使った時、尻に現れる」
 稲生:「お尻なの!?」

 普段はショーツの中に隠れ、更に冬季の今は更にその上からストッキングで隠れ、更にその上からスカートやパンツに隠れるのだから分かるわけがない。
 ましてや、魔法を使うまでは入っていることに誰も気づかないのだから。

 稲生:「……いや、それなら大丈夫だと思うよ」
 マリア:「そうか。それで安心した」
 稲生:「すると、うちの先生も入ってるんだねぇ……。あ、いや、何かあったような気がする」
 マリア:「師匠の場合、左の太ももね。魔法を使う時、どうしても風でスカートが捲れるから、その時に太ももだと見えるかな」
 稲生:「魔道士によって違うんですねぇ……」
 マリア:「正確にはタトゥーとは言わず、スティグマと言うかな」
 稲生:「スティグマねぇ……」

 稲生達の順番が回って来たので、そこで料金体系を確認してコースを選ぶ。
 レンタルタオルも借りて、それからマリアと別れる。

 稲生:「さーて……少しゆっくりしよう」

 体を洗った後、人工炭酸泉に入る。

 稲生:「さすがにこういうのは屋敷には無いな……。入浴剤を使っても……」
 横田:「先般の魔王城大浴場新装工事における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「ブバッ!?」

 突然のことで浴槽の床に足を滑らせ、一瞬溺れかける稲生。

 横田:「魔界共和党理事、元ケンショーグリーンの横田です」
 稲生:「横田理事!?何でいっつも僕達が大浴場に行くといるんだ!?」
 横田:「魔界共和党諜報部長をナメてはいけません」
 稲生:「え、なに?横田理事、諜報部長もしてるの!?」
 横田:「クフフフフフ……」
 稲生:「さすがはケンショーレンジャーのストーカー担当。けして変態なだけじゃないんだ」
 横田:「私はセクシャル・ハラスメントは致しません」
 稲生:「ええっ!?」
 横田:「私のはセクシャル・コミュニケーションというのです」
 稲生:「また詭弁を……」
 横田:「それをたまたま、世の女性達が『痴漢』と呼んでいるだけのことなのです」
 稲生:「ダメじゃん!」
 横田:「それより稲生君。キミはこういう大きなお風呂が大好きとのことですが、本当ですかな?」
 稲生:「う、うん。日本人なら、やっぱり温泉とか好きだもんね」
 横田:「実は魔界にも温泉は湧いているのです」
 稲生:「あー……。スーパーグレート火山があるもんね。そりゃ確かにありそうだわ」
 横田:「アルカディアシティに住む日本人達は、『魔界富士』と呼びます。私の分析によりますと、形が富士山に似ているからですね。富士山とどうやら連動しているようでして、もしも富士山が噴火しようものなら、スーパーグレート火山も噴火します」
 稲生:「えっ、そうなの!?」
 横田:「そして、それは逆もまたしかりなのです」
 稲生:「ふーん……」
 横田:「アルカディアシティには地熱発電と豊富な地下水脈を利用した水力発電でもって、電力をもたらしてくれている火山ではありますがね」
 稲生:「らしいね」
 横田:「そして次なる資源が温泉なのです」
 稲生:「それを魔王城に引こうっての?」
 横田:「我らが崇高なる女王、ルーシー・ブラッドプール陛下は日本文化に大変興味を持たれております。温泉もその1つなのです」
 稲生:「あー、何か正式に即位される前までは、安倍春明首相と一緒に御忍びで人間界に行ってたんだって?」
 横田:「ラーメン二郎の『メンカタカラメヤサイニンニクマシマシ』事件は有名です」
 稲生:「知らないよ、そんなの!え、なに!?あの女王様、ラーメン二郎行ったの!?……てか、ヴァンパイアなのに堂々と昼間に出て二郎のそれもニンニクマシマシ食べて!?」
 横田:「私の分析によりますと、陛下は人間界生まれ、人間界育ちですので、中世のドラキュラ伯爵とはまた違った吸血鬼なのでしょうな」
 稲生:「関係あるの、それ?」
 横田:「稲生君。吸血鬼が全てニンニクが弱点とは思わない方がいいですよ。確かにあの陛下にも弱点はありますがね。クフフフフフ……」
 稲生:「十字架に弱いってのは?」
 横田:「それはキミの所の魔女さんも同じでしょう?吸血鬼もまた、キリスト教会から見れば討伐の対象なのですから」
 稲生:「そういうことか。逆に顕正会や日蓮正宗に破折はされるけどね」
 横田:「私もケンショーレンジャーに所属していた時、キリスト教会に突撃したことがありましたが、いやはや彼らはとても油断ならぬものです。あとは宗門に任せます」
 稲生:「丸投げ!?」
 横田:「さて、私は今度はサウナの視察に行って参ります」
 稲生:「あ、これ視察だったの!?」
 横田:「陛下に御満足頂ける温泉施設を造る為には、綿密な視察が必要なのです。それでは……」

 横田はザバッと上がると、サウナへと入っていった。

 稲生:「ムッツリスケベの変態理事だけど、根は真面目なんだろうなぁ……」

 明らかに火病持ちで直情的に女性を襲うケンショーブルーは在日、そしてこちらのケンショーグリーンはちゃんとした日本人であることが分かる。
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“大魔道師の弟子” 「人間界へ戻る」

2020-02-28 15:09:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日本時間2月11日15:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 魔界の病院をあとにした稲生とマリアは来た道を引き返し、再びワンスターホテルに戻って来た。

 稲生:「冥鉄に便乗できたら、そのまま白馬まで帰れそうですけどね」
 マリア:「そんな権限あるの師匠クラスだから、私達じゃ無理だな」

 そんなことを話しながら、エレベーターで魔法陣のある地下階から地上階へ上がる。

 オーナー:「おっ、これはこれはどうもお疲れさまです」
 稲生:「オーナー、エレーナは元気でしたよ」
 オーナー:「転んでもタダでは起きない性格ですからね。その辺はあまり心配してませんでしたよ」
 稲生:「でも潰れた肺が修復されるまで、もう少し時間が掛かるみたいです」
 オーナー:「そうですか。私としては、なるぺく早くエレーナに戻って来てもらいたいものです」
 稲生:「やっぱり臨時のバイトでは難しいですか」
 オーナー:「普通の仕事なら大丈夫なんですが、いかんせんカラスなので、羽は散らかるし、食い意地は張ってるで、ちょっと扱い難いんですよ」
 稲生:「カネに汚いエレーナよりは安上がりっぽそうですけど?」
 オーナー:「逆を言えば、給料プラスαで何でもやってくれるということです」
 稲生:「なるほど……」

 稲生は如何にオーナーがエレーナの扱いについて慣れているかが分かった。

[同日15:08.天候:晴 同地区内 都営地下鉄森下駅]

 23時過ぎの夜行バスが出るまで、当然まだ時間があった。
 この間どうやって時間を潰そうか稲生は迷ったが、それなら買い物に付き合って欲しいとマリアが言った。
 大きなショッピングセンターのある所に行こうとすると、どうしても電車かバスで移動しなければならなくなる。
 取りあえず秋葉原へ行くことにした。
 御徒町にはエレーナ御用達の魔法具店があるということだが、さすがに行く気にはなれなかった。
 多少興味を持てたとしても。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。……〕

 魔界では地下鉄には乗らなかったが、向こうは湧水が流れる中を電車が走っていたりする。
 東京の地下鉄でも、雨でもないのに側溝を水が流れていたりするが、アルカディアメトロに比べればあからさまではない。

 稲生:「東京都交通局か……」

 やってきた電車は乗り入れてきた京王電鉄ではなく、東京都交通局の車両だった。
 ラインカラーが黄緑である為、車両にもその塗装が施されている。

〔1番線の電車は各駅停車、新宿行きです。森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 2人は電車に乗り込んだ。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 急行停車駅だが、停車時間は僅か。
 すぐにドアチャイムを3回鳴らして閉扉する。
 アルカディアメトロにはホームドアが一切無いのでこれですぐに発車するが、ホームドアのある森下駅では、更にそれも閉まってから発車する。

〔この電車は各駅停車、新宿行きです。次は浜町、浜町、明治座前です。お出口は、右側です〕
〔This is a local train bound for Shinjyuku.The next station is Hamacho(S10).〕

 マリア:「魔女が日の当たる所に住んではいけない、か……」
 稲生:「何が?」
 マリア:「エレーナが言ってた。だからあいつは地下室に住んでるんだと……」
 稲生:「その割には地上にあるホテルのフロントにいたり、昼間から堂々とホウキで空飛んでますけどね」
 マリア:「それだ。本当は昼間から堂々と飛ぶのはおかしいぞ。だったらまだアナスタシア先生のように、ヘリで飛べばいい」
 稲生:「エレーナも変な事言ってましたねぇ……」
 マリア:「ママに肺だけでなく、頭もやられたんだろう」
 稲生:「マリアのお母さん、どうなるんだろう?」
 マリア:「知らない。大師匠様に拷問でも処刑でも、好きなようにされればいいんだ」
 稲生:「マリアぁ……」
 マリア:「勇太の御両親は私を受け入れてくれたのに、あの毒親は……!」
 稲生:(ヤベ、まだちゃんとした紹介してなかった。いつの間にか受け入れられていたって感じだったからなぁ……)

 稲生は気を取り直して……。

 稲生:「因みにマリアのお父さんは?」
 マリア:「もっと知らない。事業に失敗して露頭にでも迷ってろってんだ」
 稲生:(もしかしてマリアさんち、家庭崩壊だったのか!?)

 “魔の者”は他の悪魔から見ても狡猾であるという。
 確かマリアの父親は事業をやっていて、それが個人商店から企業へと発展できるか否かの状態になっていた。
 家庭より事業を優先したあまり、マリアが“壮絶な迫害を受けた際にも全く無関心であったとされている。

[同日15:13.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→秋葉原]

〔1番線の電車は各駅停車、新宿行きです。岩本町、岩本町〕

 稲生達はここで電車を降りた。
 名前は秋葉原ではないが、そこへは歩いて行ける所にある。
 JR秋葉原駅と神田駅の間の場所と言えば分かるだろうか。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 各駅停車が急行の通過待ちをすることもある駅だが、稲生達が乗って来た電車はそうせず、本線ホームに停車して、すぐに発車して行った。

 稲生:「何が買いたいですか?」
 マリア:「うーん……色々」
 稲生:「時間はたっぷりあるから、ゆっくり見て回って大丈夫」
 マリア:「分かった」

 地上に出ると、そこは昭和通り(国道4号線)の前。
 そこを北に向かって歩くと秋葉原駅に着く。

 稲生:「コロナウィルスとか大丈夫かな?」
 マリア:「師匠は何も言って無かったからね。ただ、うちの門内でも日本行きを取りやめる組も出たらしいから、現時点では何とも言えない」
 稲生:「それはマリアのお母さんの件では?」
 マリア:「表向きはね」
 稲生:「“魔の者”の揺さぶりですかね?」
 マリア:「どうだろう……。もちろん悪魔の中には、疫病を振り撒くヤツもいる。その度に教会が動いて悪魔祓いとか、魔女狩りとかやったわけだよ」
 稲生:「ただのデマなのにねぇ……」
 マリア:「仏教では?仏教ではウィルスの蔓延について、ブッダの話は無いのか?」
 稲生:「あー……十羅刹女の話とか?」
 マリア:「ジューラセツニョ?」
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“大魔道師の弟子” 「マリアの謝罪行脚」

2020-02-26 19:51:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間2月11日14:00.天候:曇 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ49番街 国立病院]

 他の病室に見舞い……というより謝罪に向かったマリアは、更なる受難を受けることとなった。

 魔女A:「マリアンナッ!きさま、よくも私の先生を!!」
 魔女B:「グレタ、やめろ!……私が代わりに殴るから」
 稲生:「ちょっと!暴力はやめてくださいよ!」
 魔女B:「『流血の惨を見る事、必至であります』」
 稲生:「それは妙信講の脅迫文兼作者の座右の銘!」

 たまたま見舞いに来ていた他の魔道士からの怒りの矛先を受けたり……。

 魔女C:「人殺し!私の先生返してよぉ!!わぁぁぁぁぁぁっ!!」
 マリア:「いや、死んでないから!アンタが殺してどうする!」

 メンヘラ魔女に泣きつかれたり……。

 エレーナ:「あぁ?マリアンナ、てめぇ、どのツラ下げて来たよ?あぁ?もし謝罪する気があるのなら、前に渡した金貨全部返せ」
 マリア:「アホか!元はと言えばオマエの情報漏洩のせいだろうが!」
 エレーナ:「それで手ェ打ってやるってんだから、ありがたく思え!」
 マリア:「思うか、ドアホ!!」
 稲生:「まあまあまあ!」

 あくまでも金銭に拘るエレーナに絡まれたりした。

 ルーシー:「マリアンナのママ、凄かったね。『執念の魔女』って感じ」
 マリア:「いや、本当申し訳ない」

 マリアはもう一度謝罪した後で、ルーシーの手を取った。

 マリア:「あっさり許してくれたの、ルーシーだけだよ!」
 ルーシー:「あー……うん。周りの部屋が騒がしかったから、何となく分かる」
 稲生:「ベイカー先生は大丈夫なのかい?」
 ルーシー:「うちの先生は早めに離脱したからね。本当は私もそうしろと言われたんだけど、最後まで見届けたかったから。そしたら、このザマよ。まあ、私の場合は自業自得の部分もあるから、それで私はマリアンナを責める権利は無いのね」
 稲生:「さすがベイカー先生。1期生の古株」
 ルーシー:「先生からも、『マリアンナは悪くないから責めるな』とも言われてるし……」
 マリア:「そうか……」
 ルーシー:「あ、でも、どうしてもお詫びしてくれるのなら、今度また新幹線に乗せて欲しいかな」
 稲生:「うん、そうだね」

 生真面目な性格のルーシーだが、日本の新幹線が好きで、それに乗る時にはテンションが物凄く上がる。

 ルーシー:「“シンカリオン”人気だね」
 稲生:「ここじゃ観れないでしょ?」
 ルーシー:「観れるのが魔道士の特権」
 稲生:「んんっ!?」

 ベッドの横の棚にはタブレットが置かれていた。
 時々、現代人間界の科学をも魔法具として使うダンテ一門。

 ルーシー:「屋敷にはどうやって帰るの?」
 稲生:「こ、高速バス」
 ルーシー:「なーんだ……」
 稲生:「先生が入院してらっしゃるので、経費節減……」

 イリーナとしては敗北に値するので。
 ゲームオーバーになったら所持金が減る法則。
 ルーシーの見舞を最後に、稲生達は病院をあとにしようとした。

 エレーナ:「待て」

 そこへエレーナに呼び止められた。

 マリア:「何だ、守銭奴。そんなに金貨が惜しいのか?」
 エレーナ:「いや、それは情報料としてそっちに渡しておくぜ」
 稲生:「情報料?」
 エレーナ:「オマエのママとの最後の戦いの時、何があったか教えてくれ。私が戦闘不能になって、どうしてアナスタシア先生が勝ったのか知りたいんだ」
 稲生:「んん?」

 稲生は首を傾げた。

 エレーナ:「下の食堂で話そう。飯まだなんだろ?何だったら、私が出すぜ」
 稲生:「そりゃ凄い。だけど、エレーナは食べていいの?下の食堂は一般用みたいだけど……」
 エレーナ:「私はお茶だけでいい」
 稲生:「まあいいや。付き合おう」

 エレーナの話とは、アナスタシアがアレクサに対して銃を使った時の位置関係だった。

 エレーナ:「アナスタシア先生が使ったのはトカレフだ。それは知ってる。私もアンナから、アナスタシア先生の愛用はトカレフだって聞いてるからな。問題はアナスタシア先生が、どうしてアレクサに気付かれずに撃てたかなんだ」

 エレーナは白い紙にペンで位置関係を書き出した。

 エレーナ:「ヘリがここに堕ちたとする。そして、大師匠様やイリーナ先生、うちのポーリン先生がこの辺りに倒れていらしただろ?他の先生達については、この際どうでもいい。私は先に倒れてしまったから、その後のことが分からない。稲生氏とマリアンナは最後まで生き残っただろ?私が倒れた後、何があったか……ぶっちゃけ、どうしてアナスタシア先生だけが1人勝ちできたか教えてくれ。……どうした、2人とも?」
 稲生:「……こんな戦い、あったか?」
 エレーナ:「は?」
 マリア:「こういう戦いがあって、ママが皆に迷惑を掛けたって聞いたから謝罪に来たんだ。エレーナこそ何言ってる?」
 エレーナ:「いや、オマエら、バァル城からアナスタシア先生のヘリで脱出しただろ?」
 稲生:「それは知ってる。だけど急に眠くなって、気がついたら大宮のパレスホテルのベッドの上だったんだ。どうやら、大師匠様が全てを解決してくれたみたいだね」
 マリア:「結局私は、何の役にも立たなかったってわけだ」
 エレーナ:("゚д゚)ポカーン
 稲生:「というわけでエレーナ、申し訳ない。僕達もその場にいなかったんで、知らないんだ。他、当たってくれないか」
 エレーナ:「いやいやいやいや!いただろ!オマエら何言ってんだぜ!?私がアレクサの魔法をモロに受けて、血ヘド吐いて倒れたのを見ただろ!?」
 稲生:「マリアさん?」
 マリア:「私はアナスタシア先生からそう聞いただけで、直接は見ていない。エレーナこそ、何を言ってるんだ?記憶操作でもされたのか?
 エレーナ:「記憶操作されたの、オマエらだぜ!?……一体誰が?」

 
(エレーナの脳裏に浮かぶアナスタシア)

 エレーナ:「くっ、やっぱりそうか!何か調べられたらマズいことでもあるんだな……!」
 稲生:「何だか気味悪くなってきた。マリアさん、そろそろ行きましょう」
 マリア:「そ、そうだな」
 エレーナ:「くっそー!……ゲホッゲホッ!ガハッ!!」
 マリア:「おい、大丈夫か?肺をやられたんだろ?部屋に戻って寝てろ」

 エレーナは悔しそうに部屋に戻り、稲生とマリアは足早に病院を出た。

 

 アナスタシア:「気づいた観点については高得点だけど、まだまだ甘いわね。ポーリンに代わって採点してあげるわ。ふふふふ……」
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