報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」 3

2024-10-05 20:22:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月14日10時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子]

 時間ピッタリに、善場係長はホテルにやってきた。

 善場「あら?皆さん、ロビーでお待ちでしたか」
 愛原「レイチェルが、部屋で待つよりは、こういう人のいる所で待っていた方が良いということでしたので」

 善場係長は日曜日だというのに、スーツ姿であった。

 愛原「レイチェル、それはHQの指示ですか?」
 レイチェル「いいえ。私の判断です」
 善場「そうですか……。日本は平和な所ですね」
 愛原「は?」
 善場「何でもありません。それより、部屋に向かいましょうか」
 愛原「はい」

 私達はエレベーターホールに向かい、そこからエレベーターに乗って客室に向かった。

 愛原「あ、ちょっと待ってください」

 リサ達の部屋に行く前に、私は自分の部屋に入り、そこの冷蔵庫で冷やしていたお茶を持って来た。

 愛原「お待たせしました」

 それからリサ達の部屋に入る。

 愛原「こちらのソファでいいですか?」
 善場「はい、ありがとうございます」

 私は部屋から持って来たお茶を善場係長に差し出した。
 使っていないグラスもそこに置く。

 善場「お構いなく」

 善場係長は1人用の椅子に座り、私とリサは丸テーブルを挟んで向かいのソファに座った。
 レイチェルは窓のカーテンを閉める。

 レイチェル「今はサーモグラフィで位置を特定できるのですが、念の為です」
 善場「さすがBSAAは、その辺りの教育もしっかりしてますね」

 もちろんドアには鍵を掛け、ドアチェーンもしている。

 善場「それでは明日の事を話す前に、今日の注意事項からお話し申し上げます」

 善場係長の言は、予想通りの物だった。
 ホテルから出ないようにという注意事項だったが、部屋からもなるべく出ないのが望ましいという。

 愛原「私はいいですが、このコ達が大変そうですね」
 善場「それを承知で付いて来たのでしょう?」
 リサ「まあね。今日は部屋でテスト勉強でもしてるよ」
 レイチェル「来週には、中間テストです」
 愛原「その鞄には、それが入っていたというわけか。通りでね……」
 リサ「そうだよ。ま、今日我慢すれば、明日は体育があるし。そこで思いっ切り体を動かすよ」
 愛原「……まあ、程々にな」
 善場「今日の話はこれで終わりにするとしまして、明日以降の話をさせて頂きます。これは内密にして頂きたいのですが、高橋容疑者に関しては、明日、逮捕状が出る予定です。既に緊急逮捕という形を取っていますが、容疑者コロナ陽性につき、今は中野区の警察病院にて入院中です。もちろん、数名の警察官が24時間体制で見張っております」
 愛原「まだ私の頭をいじくったという証拠も出ていないのに、よく逮捕状が取れますね?」
 善場「他にも容疑があるようですよ。いわゆる、別件逮捕というヤツですね。バイオテロの場合、本人が直接関与していなくても、その組織に所属しているというだけで拘束して良いことになっていますから」
 愛原「まあ、テロ組織は存在だけで悪ですからね。ましてや、そのメンバーとあらば……。まさか、高橋が……」
 善場「その真相についても、まもなく分かると思いますよ。バイオハザード・リベレーションズです」
 愛原「ヴェルトロですか……」
 善場「ヴェルトロの残党の件は偽情報で、実際はコネクションですね」
 レイチェル「コネクション……」
 愛原「コネクション?コネクションとは?」
 善場「今現在、BSAAが最も警戒しているバイオテロ組織です。あのエブリンを造り出した組織ですよ」
 愛原「ええっ!?」
 リサ「そこだったんだ!」
 善場「ルーマニアの菌根からエブリンの材料を受け取り、それで造り出したと言われています」
 愛原「高橋はそこのメンバーだと?」
 善場「それはまだ不明ですが、何らかの繫がりはあるとの疑いがあります」
 愛原「それはどうして、そのような疑いが出たのでしょう?」
 善場「1つは霧生市内ですね」
 愛原「霧生市!?」
 善場「どうしました?」
 愛原「あ、いえ……。霧生市がどうかしたんですか?あそこはまだ、安全宣言が出ていないんですよね?」
 善場「そうです。ですが以前、1度そこを探索したことがありましたよね?」
 愛原「ええ。そこでリサ以外の日本版リサ・トレヴァー達を倒しましたが……」
 善場「そこで私はある物を発見しました。今ここではお見せできませんが、高橋助手が旧UBCSのメンバーだったという証拠です」
 愛原「UBCS?」
 レイチェル「……Umbrella Bio Hazard Countermeasure Service.」
 善場「その通りです。さすが、レイチェルですね」
 愛原「何でしたっけ、それ?」
 善場「記録では、愛原所長も霧生市のバイオハザードに巻き込まれた時、一時期共に行動されていますよ?」
 愛原「ええっ!?」
 善場「記録によりますと、霧生市郊外山中にある仏教寺院、大山寺にて、UBCSの隊員と行動したとありますが?」
 愛原「えーと……あっ!あったあった!結局は死んでしまったけど……。抗ウィルス剤の存在とか、彼のおかげで知ったんだ!」
 リサ「お兄ちゃんはその仲間だったってこと!?」
 善場「あくまでも、まだその『疑い』です」
 愛原「仲間だったにしては、あんまり高橋、そのUBCS隊員を知ってるようではなかったけど……」
 善場「顔見知りではなかったのでしょうね。所長も昔は大手の警備会社にお勤めだったそうですが、都内以外の事業所の社員の方を御存知ですか?」
 愛原「いや、あまり知りませんな。……ああ、まあ、そういうことですか」
 善場「はい。UBCSは非合法組織です。“青いアンブレラ”と同様に。高橋容疑者、やたら銃の扱いが上手いと思いませんでしたか?」
 愛原「確かに……」
 リサ「お兄ちゃん、しばらく帰って来れない?」
 善場「そうですね。もう何年も……」
 リサ「また、お別れか……」

 リサは寂しそうに呟いた。

 善場「新たな出会いもありますよ。レイチェルがそうでしょう?」
 リサ「でも、レイチェルも今年度までだけだし……」
 善場「大学に進学すれば、リサのことですから、友達もできると思いますよ」
 愛原「忘れがちですけど、斉藤早苗のことはどうなりました?」
 善場「鋭意捜索中です。沖縄の、それも本島から出た形跡が無いので、専らそこを捜索中です」
 愛原「そうですか……」
 善場「リサ達は明日、どうされますか?」
 愛原「あ、はい。JR八王子駅から出る特急に乗せて通学させる予定です。リサ達には、もうキップを買ってあります」
 善場「かしこまりました。それでは、ここまでの経費を精算しましょう。領収証はありますか?」
 愛原「あ、はい。全て取ってあります」
 善場「それでは、こちらの書類に記入をお願いします。その間、私はリサ達と話をしていますので」
 愛原「分かりました」

 私はレイチェルが座っていたライティングデスクの椅子を譲ってもらい、代わりに私が座っていたソファに座ってもらった。
 善場係長が2人に話していた内容は、何だか私に関する話よりも重要そうに聞こえた。
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“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」 2

2024-10-05 16:53:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月14日07時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子]

 今朝は7時に起きた。
 昨夜はリサと話をした後、マッサージをしてもらった。
 リサの目的は私の血中老廃物を吸い取ることだろうが、これが今はリサに認められている『吸血』である。
 リサにとっては私の血や、老廃物とはいえ、私の体の一部を『捕食』できるということで、折に触れてマッサージしてくることがあった。
 最初は鬼型BOWに捕食されているようで怖かったが、終わった後はスッキリするので、今では重宝している。
 おかげで昨夜は、よく眠れたものだ。
 リサ曰く、これができるのは、自分だけであろうとのこと。
 起きた後はバスルームに行って顔を洗ったり、髭を剃ったり、歯を磨いたり……。
 着替えてから、隣の部屋に内線電話を掛けた。

 レイチェル「おはようござ……Oh!」
 リサ「先生、おはよ!」

 レイチェルが最初電話を取ったのだが、すぐにリサに変わった。

 愛原「あ、ああ、おはよう。その様子だと、2人とも起きたみたいだな」
 レイチェル「リサはさっきまで寝て……」
 リサ「わたしはちゃんと時間通りに起きたよ!?」

 レイチェルの言葉が、それが嘘だと否定する。
 『鬼はすぐウソをつく』と善場係長が言ってたな。
 いや、上野利恵だったかな?
 まあいいや。

 愛原「準備ができたら朝食会場に行こうと思うんだが……」
 リサ「そうだね!急いで準備するから、先生は部屋で待ってて!」
 愛原「分かった」

 準備が終わったら迎えに行くという意味かと思ったのだが、違ったようだ。

 リサ「先生がわたし達の部屋で待ってるんだよ?」
 愛原「ええっ!?」

 大丈夫かな?
 護衛の為かと思い、私はスマホや財布など、貴重品だけ持って隣の部屋に向かった。

 レイチェル「愛原センセイ、おはようございます」
 愛原「ああ、おはよう。レイチェルは準備できてるみたいだな」
 レイチェル「はい。私はいいのですが……」

 レイチェルはバスルームを見た。

 レイチェル「リサが準備中です」
 愛原「だろうと思った。あいつ、寝相大丈夫だった?」
 レイチェル「朝起きたら、ベッドから落ちてました」
 愛原「だろうな」

 レイチェルが寝ていたベッドは、さすが軍人の卵だ。
 キチンと整えられている。
 しかし、リサのベッドは掛布団が半分ほど床に落ちてしまっている。
 恐らく頭を下にして落ちたのだろう。

 愛原「今度、その時の寝相を写真に撮って報告書に載せてやれば?」
 レイチェル「Hum...それは良いレポートになりそうですね」
 リサ「ちょっと!勝手なことしないでよね!」

 リサがバスルームから顔を出した。
 白い下着姿のままだった。

 愛原「こらこら!ちゃんと服着ろ!」
 レイチェル「愛原センセイの前ですよ」
 リサ「先生が変なこと言うからぁ……」

 リサはブツクサ文句を言いながら、またバスルームに戻った。

 レイチェル「リサが白いインナーを着るのは珍しいかもです。いつもは黒のインナーなのに。何かありましたか?」
 愛原「そういえば昨夜、マッサージが終わった後に、『明日は白と黒、どっちがいい?』なんて聞いてきたんだ。俺が何の事か聞いたら、下着を2つ取り出して、どっちがいいかって」

 

 リサ「レイチェルじゃ、大人過ぎて、却って先生には刺さらないからね」

 リサは服を着て部屋から出て来た。
 昨日の服とは違って、白いTシャツと、下のショートパンツは変わらない。

 レイチェル「センセイは、あまり派手なインナーはお好きではないようですね」
 愛原「そうかもな」
 レイチェル「私のもナイキのインナーですが?」

 レイチェルはシャツの隙間から、黒いナイキのインナーを少しだけ見せてきた。

 愛原「レイチェルは、いつでも軍服に着替えられるように、ということだろ?」
 レイチェル「そんなところです。任務中ですからね」

 任務の内容によっては、BSAAの軍服を着用する。

 レイチェル「リサ、それだとショーツがセンセイに見えませんよ?」
 リサ「あっ、そうか!スカート持ってくれば良かったなぁ……。制服に着替えようか?」
 愛原「いや、いいよ。可愛い子は何着ても似合うってもんだ。それより、早いとこ朝食会場に行くぞ」
 リサ「おー!」

 リサは『可愛い』と言われて、少し嬉しかったようだ。
 レイチェルはシャツの上からパーカーを羽織った。
 そこに銃でも仕掛けているのだろう。

[同日08時00分 天候:晴 同ホテル2階・レストラン『ル・クレール』]

 朝食会場に着いた私達は、そこでバイキングを楽しんだ。
 基本的にこのレストランは、朝食も昼食も夕食もバイキング形式であるらしい。
 当然リサは、皿に山盛りに料理を載せていた。

 リサ「レストランのバイキング最高!」
 愛原「それは良かった……」

 私はというと、普通に好きな物を皿に載せている。

 愛原「10時に善場係長が来るから、それまでに部屋に戻っておかないとな」
 リサ「分かった!」
 レイチェル「そのことなんですが、センセイ」
 愛原「何だ?」
 レイチェル「ロビーで待っていて、そこで合流して、一緒に部屋までというわけには行かないのでしょうか?」
 愛原「それはアリかもな。15分くらい前になったら、ロビーで待っていよう」
 レイチェル「部屋で不審者の訪問に警戒するよりは、ロビーで待っていた方が良いかもです」
 愛原「確かにな」
 リサ「ねぇ、先生。このレストランって、昼も夜もバイキングなんだよね?」
 愛原「らしいな」
 リサ「善場さんは、今日1日このホテルから出るなって言ってるんだよね?」
 愛原「ああ、そうだが……」
 リサ「むふー!」

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「昼食は別の店で食べような」
 リサ「えー……」
 愛原「ルームサービスでもあれば、部屋から出ずに済むのだが……」
 レイチェル「それはそれで危険ですよ。ルームサーバーに扮したテロリストが訪問してくるかもしれません」
 愛原「あ、そうか……。まあ、とにかく、善場係長の話が終わってからだ。いいな?」
 リサ「はーい……」

 これだけ食べても、リサは太らないどころか、日本の高校生女子3年生の平均にようやく届くか否かの体型とは……。
 余分なエネルギーは、全てGウィルスが吸収してしまうそうだ。
 そしてそれで満腹中枢の働きが鈍るので、リサはあまり満腹感を感じないとのこと。
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