報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサと再会」

2024-10-31 20:34:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月9日17時00分 天候:晴 静岡県富士宮市某所 NPO法人デイライト静岡事務所B3階→1階]

 搬入用の大型エレベーターでゆっくりと地下3階に下りる。

 愛原「!?」

 エレベーターを降りると、武装した男2人が私達を出迎えた。
 手にはいずれにもショットガンやマシンガンを持っている。
 BSAAの制服とも違うが、デイライト特有の制服なのだろうか?
 廊下の途中に鉄格子のドアがあり、その先へと入っていく。

 愛原「これは……?」
 坪井「いいですか?他言無用ですよ?」
 愛原「そ、それはもちろん……」

 鉄扉の並んだ区画へとやってくる。
 この鉄扉、鉄格子の扉にすると、独房の入口みたいに見えるのではないだろうか。
 実際その通りで、こちら側からしか開かない小窓から覗いてみると、中が独房のようになっているのが分かった。
 リサのヤツ、こんな所に押し込められていたのか……。
 武装看守が外側から鉄扉を解錠する。
 解錠自体は簡単なようだ。
 そして、重々しい音を立てて鉄扉が開かれた。

 武装看守「JLT2番、出ろ!」
 リサ「…………」

 リサは粗末な囚人服のようなものを着させられており、手足をほぼ拘束されていた。
 ただ、坪井氏によると、いつもこうしていたわけではなく、今日は私と再会することで、興奮して変化することを警戒してこのようにしているだけだという。

 愛原「リサ!迎えに来たぞ!」

 薄暗い独房の奥から、ボウッと赤い光がやってくる。
 リサの瞳の色だ。

 リサ「ア……イ……ハ……ラ……?」

 奥からやってきたリサは第2形態、即ち鬼形態から更に変化した姿になっていた。
 辛うじて人の姿を保っている状態である。
 それが、シュウシュウと音を立てて第1形態の鬼姿に戻る。

 リサ「愛原先生!」

 リサが私に飛び掛かろうとしたが、拘束している鎖がそれを阻止する。
 なるほど。
 坪井氏が言っていた措置は、強ち間違いだとも言えないか。

 愛原「リサ、着替えを持って来たから、これに着替えて。あとは急いでここを出よう」

 私は持って来たキャリーバッグの中からリサの着替えを取り出した。

 坪井「以上で手続きは終了です」

 リサが私が持って来た服に着替え、再び地上に向かうエレベーターに乗り込むと、坪井氏がそう言った。

 坪井「お疲れさまでした」
 愛原「……ありがとうございます」

 エレベーターには坪井氏の他、銃火器で武装した看守もいる。
 リサが完全にここを出て行くまで油断はできないということか。
 地上に出て建物の外に出た時、所長が私にタクシーチケットを渡した。

 所長「タクシーはもう来ていますから、これを渡しておきます」
 愛原「ありがとうございました」

 送ってはくれないが、タクシー代は面倒看てくれるというわけか。
 駐車場には、タクシーが1台止まっていた。
 運転手が荷物を載せる為に、トランクを開けくれた。
 そこにキャリーバッグを載せて、ハッチを閉める。
 リアシートに乗り込んだ。

 愛原「ひばりヶ丘のスーパーホテルまでお願いします」
 運転手「スーパーホテルですね。かしこまりました」

 タクシーが走り出す。
 特に職員達からの見送りは無かったが、2階の事務所からこちらを見ている所長の姿はあったので、私達がちゃんと敷地外に出たどうかの確認はしたらしい。
 リサは疲れた様子で、運転席後ろのリアシートにもたれかかった。
 少し体臭がする。
 あまり、入浴とかもさせてもらえなかったのかもしれない。
 ホテルには温泉があるから、そこでゆっくり浸かってもらおう。
 私は揺れる車内で、善場係長にメールを送った。
 すぐに返信があって、了解したとのことだ。
 リサの健康状態を質問されたが、特に大きな問題は無さそうとの返信をしておいた。
 そして今、タクシーで宿泊先に向かっていることを付け加えておいた。

 善場「かしこまりました。静岡事務所では事務的な対応をされたでしょうが、今回はゆっくりお休みください。但し、少しでも異常を感じましたら、すぐに御連絡をお願いします」

 との返信だった。

[同日17時30分 天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 スーパーホテル富士宮]

 タクシーは国道139号線沿いのホテルに到着した。
 支払いはデイライトの所長からもらったタクチケを使わせてもらうことにする。
 トランクを開けてもらって、そこからキャリーバッグを下ろした。

 愛原「疲れたか?もう寝る?」
 リサ「ううん……。お腹空いた。向こうじゃ、ロクに食べさせてもらえなかったから……」
 愛原「マジかよ……」

 いくらリサが人間じゃないからって、随分ヒドい話だな。

 愛原「チェックインしたら、何か食べに行こう。この近く、国道沿いに色々とありそうだ」
 リサ「うん」
 愛原「それと……その前に、先に体洗った方がいいかもな……」
 リサ「やっぱりそう思う?」
 愛原「うん、悪いけど……。このホテル、温泉もあるからさ?」
 リサ「部屋にシャワーとかあるよね?まずはそれにしておく。お腹も空いたし」

 どうやら食欲の方が強いらしい。

 愛原「分かったよ」

 建物の中に入り、チェックインする。
 今は自動チェックイン機があり、それでその手続きをすることができる。
 そして、2枚のチケットが出て来た。
 チケットには、4桁の暗証番号が書かれている。
 このホテルの客室の鍵は、暗証番号式となっているからだ。
 部屋ごとに、そしてその客ごとに番号を変えているのだろう。

 愛原「あ、そうだ。これも渡しておくよ」

 私はキャリーバッグを開けると、その中からリサのスマホとバッグを取り出して渡した。

 愛原「お前の私物だろ?」
 リサ「うん」
 愛原「それと、お前のPasmoにも満額近くまでチャージしておいたから」
 リサ「ありがとう」

 リサは早速、自分のスマホの電源を入れた。
 そして、エレベーターに乗り込み、客室フロアへと向かう。

 愛原「このホテル、WiFiもあるから、それでLINEとかもできるぞ」
 リサ「そうだね」

 客室フロアでエレベーターを降り、客室へ向かう。

 リサ「……先生と一緒の部屋じゃないんだ?」
 愛原「さすがに、それはちょっと……。でも、こうして隣同士だし!」
 リサ「まあ、いいけど。あそこから出れただけでも……」
 愛原「だろ!……先にシャワー浴びるんだったな?終わったらLINEで教えてくれないか?その後、一緒に夕飯食いに行こう!」
 リサ「分かった」

 私は自分の部屋の鍵を開けると、中に入った。
 荷物を置いて、まずはトイレに入る。
 リサのシャワーの時間はだいたい30分くらいだから、18時過ぎには夕食を食べに行けるだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「富士宮市に到着」

2024-10-31 17:54:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月9日15時55分 天候:晴 静岡県富士宮市中央町 富士宮駅バス停]

 私を乗せた路線バスは、地元民や通学生達を途中で乗り降りさせた後、富士宮駅に接近した。
 この時点で、私以外に10人弱の乗客が乗っている状態だ。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく、富士宮駅です。お降りの方は、お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスが富士宮駅北口のロータリーに到着する。
 一般の路線バスだけでなく、地元のコミュニティバスや高速バスも発着する。
 前扉が開いて、乗客達がそこに向かう。
 私も後に続いた。
 バスはここが終点ではなく、次の富士山世界遺産センター前が終点のようだが、そこまで行く乗客はいないようだ。

 ???「すいません、愛原さんですか?」

 バスを降りると、待合所の方から1人の男がやってきた。
 年の頃は私と大して変わらないが、白峰氏よりも小柄だった。

 愛原「あ、はい。愛原です」
 坪井「私、NPO法人デイライト静岡事務所の坪井です。東京事務所の職員からの依頼で、お迎えに参りました」
 愛原「お手数をお掛けして、申し訳ございません」
 坪井「いいえ。早速、事務所にご案内致しますので、ついてきてください」
 愛原「はい」

 私は坪井氏の後ろをついていった。
 そして、富士宮駅構内に入る。
 しかし改札口は素通りし、そのまま南口に出た。
 南口は規模が小さく、ロータリーもこぢんまりとしている。
 しかし、一般車の送迎はこちらで行われているようで、送迎用の駐車スペースもあった。

 坪井「この車に乗ってください」
 愛原「はい」

 東京事務所の場合はアルファードとかセレナだったが、こちらは軽のトールワゴンだった。
 坪井氏のマイカーだろうか?
 いや、個人の車にしては内装は飾られていないから違うか。
 私は坪井氏にスライドドアを開けてもらい、助手席後ろのリアシートに乗り込んだ。

 愛原「ここから遠いんですか?」
 坪井「市内ですけど、街からはやや離れていますね」

 坪井氏はスライドドアを閉めると、運転席に回って車を動かした。

 愛原「あの……リサは元気ですか?」
 坪井「はい。ですので、早く引き取りに来て頂いて助かります。本当でしたら今日の午前中にでもと思っていたのですが、担当がどうしても外せない打ち合わせがありまして、愛原さんにも御迷惑をお掛けしてしまいました」
 愛原「すぐに解放して頂けるのでしたら結構ですよ」
 坪井「はい。書類の方は特に何の不備も無いようですし、あとは事務所の方で手続きをして頂ければ、すぐにお引き取り頂けるかと」
 愛原「そうですか」

 どうやら本当に、すぐに引き取りができるようである。

[同日16時30分 天候:晴 同市内某所 NPO法人デイライト静岡事務所?]

 富士宮駅から30分ほど走り、周囲には民家がポツリポツリとしか建っていないような所に、静岡事務所はあった。
 東京事務所とはエラい違いだ。
 本当に、事務所なのだろうか?
 佇まいは事務所というよりは、倉庫という感じだ。
 倉庫会社の倉庫みたいな感じ。
 事務所のような場所には照明が点いていたから、確かに職員が常駐しているのだろうとは思うが……。
 坪井氏はそこの駐車場に車を止めた。

 坪井「着きましたよ」
 愛原「ありがとうございます」

 私は車を降りた。

 坪井「まずは事務所へどうぞ」
 愛原「あ、はい」

 大きなシャッターの横に、小さなガラス扉がある。
 そこから中に入ると、まるでうちの事務所のように、すぐ2階に上がる階段があった。
 その階段を昇って、2階の事務所に行く。
 そこで用意された書類に目を通す。
 改めてここで何か書類を作成するというよりは、同意書のようなものだった。
 デイライトの取り決めに従い、再びリサの監視者、監督役を引き受けるかどうかの同意書。
 所長らしき男が、私にそれを説明する。

 所長「……以上です。異論ございませんね?」
 愛原「はい」
 所長「それでは、こちらの欄にサインを……」

 私は自分の名前を書きながら、スキンヘッドに眼鏡の所長に聞いた。

 愛原「リサ、このまま連れて行ってもいいんですよね?」
 所長「はい。愛原さんは、うちの職員の車で来ましたね?」
 愛原「そうです」
 所長「今からタクシーを呼んでおきましょう。『JLT2』を引き取った後は、愛原さんの責任でお連れしても良いことになっています」

 JLT2とはリサのこと。
 どうやら、帰りは送ってくれないらしい。
 同意書にサインをすると、所長は控えを私に1枚くれた。
 5枚写しになっていて、1枚は私の控え。
 1枚は静岡事務所、1枚は東京事務所、1枚はBSAA、もう1枚は公安調査庁らしい。

 愛原「承知しました……」
 所長「タクシー1台、予約しておいて。坪井君、愛原さんを御案内して」
 坪井「はい」

 所長は事務室内にいる事務員と、坪井氏にそれぞれ命令した。

 坪井「それでは愛原さん、こちらへ」
 愛原「はい」

 私は坪井氏に促され、事務室を出た。
 再び階段を下りるが外に出るわけではなく、シャッターの内側に向かう。
 階段の横にはもう1つドアがあり、そこから入った。
 そこには広大な倉庫があるが、物資は殆ど無い。
 どうやら、倉庫は隠れ蓑のようである。
 ただ、NPO法人には似つかわしくない装甲車や護送車が格納されていたが。
 もしかしたら、これでリサを輸送したのかもしれない。
 その奥には、無骨な荷物用のエレベーターがある。
 普通にボタンを押しても操作できないらしく、坪井氏が自分のIDカードを操作パネルに読み込ませた後、何か暗証番号のような物を打ち込んで、それでようやくエレベーターのドアが開いた。

 坪井「どうぞ」
 愛原「はい」

 エレベーターの籠内は、まるで搬入用のそれのように、床も壁も無機質な鉄板で構成されていた。
 そして、ガコンとドアが閉まると、エレベーターは下に向かって行った。
 坪井氏が押したのは、最下層の地下3階。
 なるほど。
 そのくらい地下なら、アンテナなどが無いと、確かにケータイの電波は入らないだろう。
 本当に、リサはこの先にいるのだろうか……。
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“私立探偵 愛原学” 「静岡に向かう」 2

2024-10-29 20:25:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月9日13時57分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東海道新幹線731A列車1号車内]

〔「レピーター点灯です」〕

 ホームから発車メロディが微かに聞こえて来る。
 かつて、300系“のぞみ”の車内チャイムで使用されていたものだ。

〔16番線、“こだま”731号、新大阪行きが、発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側まで、お下がりください〕

 

 私は窓の外を眺めて発車を待っていた。
 “こだま”の先頭車ということもあり、乗客数は少ない。
 それでも、次の品川駅からも結構な乗客が乗って来るだろう。

〔「ITVよーし!乗降、終了!16番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 車両のドアとホームドアの両方が閉まり、列車は東京駅を出発した。

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”イントロ)♪♪。 今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、新大阪行きです。終点、新大阪までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 私はスマホを取り出すと、善場係長に定時報告のメールを送った。
 即ち、『予定通り、東京駅を出ました』とのメール。

 善場「お疲れさまです。列車に変更はございませんか?」
 愛原「はい。予定通り、“こだま”731号です」

 といったやり取り。
 これが週末であれば、レイチェルも付いてくるのだろう。
 善場係長は東京にいないといけないようだし、往路は私1人だ。
 富士宮駅に行けば、デイライト静岡事務所の人が迎えに来てくれるらしい。
 私が直接、静岡事務所の職員とやり取りすることは無い。
 富士宮駅に着くまでは、全て善場係長を介して連絡することになる。
 だから、私の定時連絡も、静岡事務所の方に伝わっているだろう。

[同日15時03分 天候:晴 静岡県富士市川成島 JR東海道新幹線731A列車1号車内→新富士駅→富士急静岡バスS7系統車内]

 列車は品川駅からも、多くの乗客を乗せた。
 私の隣には誰も座らなかったが、先頭車でさえも全ての窓側席が埋まり、グループ客が通路側や3人席の中央や通路側にも座った。
 それは新横浜駅や、小田原駅もそう。
 明らかに車内が空いたのは、三島駅から。
 三島駅で多くの乗客が降りて行った。
 また、通過線のある駅では、確実に数分停車した。
 “のぞみ”や“ひかり”に抜かれるからである。
 すぐに発車したのは、品川駅と新横浜駅、そして熱海駅くらいか。

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”サビ)♪♪。 まもなく、新富士です。お出口は、左側です。新富士を出ますと、次は、静岡に停まります〕
〔「まもなく新富士、新富士です。お出口は変わりまして、左側です。ホーム進入の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、お近くの手すりにお掴まりください。新富士駅で、5分ほど停車致します。発車は15時8分です」〕

 新富士駅のホームは、本線を外れた副線にある。
 ポイントを通過するので、ガクンと揺れるということだ。
 私は列車がポイントを通過してから、網棚から荷物を下ろした。
 そしてリクライニングを戻し、ホームに戻る。
 お茶のペットボトルは、デッキのゴミ箱に捨てておいた。
 停車して、ドアが開く。

〔しんふじ、新富士です。しんふじ、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 

 列車を降りて、ホームを歩く。
 すぐに轟音を立てて、後続列車が本線を通過していった。
 東北新幹線ならそれ1本の通過待ちで発車だが、東海道新幹線はそうはいかない。
 更に1本、もしかしたらもう1本の列車にも抜かれるかもしれない。
 東京の通勤電車並みの本数とはよく言ったものである。

 

 階段を下りて、改札口を通過する。
 今度はバスに乗り換える為、北口(富士山口)に向かった。

 

 そちら側に行くと、ASTY新富士の前を通るが、今回は立ち寄らない。
 ……いや、待て。
 私は踵を返すと、その中に入った。
 ここにはセブン銀行のATMがあり、そこで私は少し現金を下ろした。
 別に持ち合わせが少ないわけではなく、何ならクレカもある。
 だが、一応、ここでリサが持っていたPasmoにできるだけ満額チャージしてあげようと思ったのだ。
 リサのヤツ、暴走直前はトイレに行っていた為、Pasmoを入れていたパスケースは教室に置いており、破損させずに済んでいた。
 チャージもセブン銀行で、手数料無しでできる。
 あとはこれからバスに乗るので、自分のSuicaも少しチャージしておいた。
 ここから富士宮まで、乗り換え無しで行けるバスがあることは知っていて、時刻も調べていたのだが、運賃までは調べていなかった為。
 それから、バス乗り場に向かった。
 駅前広場に行くと、角度が悪いのか、ここから富士山は見えなかった。
 まあ、天気はいいし、更に富士山に近づくので、バスに揺られているうちに、見えるようになるだろう。
 バス停に行って暫くバスを待っていると、1台の大型バスがやってきた。
 特段変わった車種というわけではなく、都営バスでも見かけるような大型ノンステップバスだった。
 私はバスに乗り込むと、後ろの席に座った。
 乗客は少なく、私以外に数人の乗客しかいない。
 恐らく、途中のバス停から乗って来るのだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「静岡へ向かう」

2024-10-29 16:11:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月9日13時31分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR総武快速線1146F電車11号車内→JR(東日本)東京駅]

 『……事前の書類手続きが終わりましたので、この通知書が届きましたら御連絡願います……』

 NPO法人デイライト静岡事務所からそのような通知を受けたのは、8日のことであった。
 静岡県内から普通郵便で通知書が送付されたので、2日掛かったというわけだ。
 私が書類をレターパックで送ったのが6日。
 レターパックなので郵送は早く、7日の午前中にはデイライト静岡事務所に届いている。
 それから先方で書類の確認が行われ、不備が無いことが確認されたのだろう。
 善場係長の話では、先方はなるべく早くリサの解放をしたいということだ。
 それでも通知書の郵送が普通郵便だったので、2日くらい掛かった。
 どうしてもお役所的な先方のこと、事務関係の費用も限られているのだろう。
 とにかく、8日の午前中に通知書を受け取った私は、すぐに先方に電話を掛けた。
 通知書の中に連絡先が書かれていた為。
 ところが、担当者がどうしても午前中は都合が付かず、16時以降でヨロシクとのことだった。
 あれだけ、リサを解放したがっていたというのに……。
 少しでも早くリサを解放したかった私は、それで約束をし、これから向かうことになった。
 平日ということもあり、パールには事務所で留守番しててもらうことになった。
 そういうわけで、まずは東京駅に向かう。
 都営バスで錦糸町駅に向かい、そこから総武快速線で東京駅に向かうというルートを採った。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。お出口は、右側です。この電車は横須賀線直通、逗子行きです。東京駅で7分停車致します。発車は13時38分です。引き続き横須賀線をご利用のお客様は、ご乗車のまま、しばらくお待ちください」〕

 私を乗せた総武快速電車は、地下ホームに到着した。

 

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。この電車は、当駅で、少々停車します〕

 私はキャリーバッグを手に電車を降りた。
 成田空港から来た電車ということもあり、周囲には外国人乗客も多い。
 私の荷物よりも遥かに大きい荷物を持っていた。
 私のそれもキャリーバッグとはいえ、機内持ち込み可能のサイズである。
 前回のはもっと大きく、飛行機に乗るなら預けないとダメなサイズではあったが。
 今回は違う。
 それでも、それほどのサイズのバッグを何故持って行くのかというと、リサの着替えが入っているからである。
 昨日電話した際、持って行くのに必要な物を聞いた。
 するとその中に、リサの着替えが入っていたのである。
 どうやら向こうの施設では、ロクに着替えも用意していなかったらしい。

 『BOWは裸でいても大丈夫ですから』

 とのこと。
 いや、そりゃそうだけどさぁ……。
 曲がりなりにも、それまで人間として暮らしていたのだから、もう少し人間扱いしてあげても……。
 私のわがままかなぁ……?
 とにかく、リサの着替えが中に入っている。
 どういった服がいいか悩んだが、パールと選んだ結果、制服の夏服を持って行くことにした。
 停学でしばらく着る機会が無いからと……。
 あと、夕方ということもあり、向こうで1泊泊まってから帰ることにした。
 リサの健康状態は悪くないとのことだが、解放されてすぐに長旅というのもアレだと思ったので。

[同日13時46分 天候:晴 同地区 JR(東海)東京駅→東海道新幹線731A列車1号車内]

 地下総武線ホームから新幹線ホームまで移動しようすると、平均して15分掛かる。
 昔は『赤帽』がいて、長距離客の大きな荷物を運んでもらえるサービスがあったそうだが、今では存在しない。ヤマト運輸がJR東日本から委託を受けて、赤帽サービスを復活させたとのこと。
 JR東日本との契約なので、JR東海エリアまでは運んでくれないだろう。
 分割民営化の弊害がここに。

 私は既に錦糸町駅で新幹線のキップも購入していたので、そのまま乗換改札口から東海道新幹線のコンコースに入る。
 静岡事務所があるのは、静岡県富士宮市。
 新幹線で行こうとすると、最寄り駅は新富士駅となる。
 新富士駅には“こだま”しか止まらないので、それに乗ることになる。
 今日は平日ではあるが、ビジネス客の他に、旅行客も多かった。
 特に、外国人観光客が目立つ。

 愛原「16番線か……」

 今度の“こだま”号は、新大阪行きらしい。
 名古屋止まりよりは乗客が多いのかもしれないが、それでも“のぞみ”や“ひかり”よりは空いているだろう。
 どうしてもリサと一緒だった頃の名残で、先頭車とかに乗りがちだ。
 昼食は既に家で済ませて来たので、ホームでお茶を買うに留まった。
 旅にはビールだが、さすがにこれからデイライトの職員と会うのに、飲酒するわけにはいかない。

 

 JR東海の駅ということもあり、駅員の制服も変わり、駅名看板も色が変わる。
 ハングルや中国語が無い方が、看板がスッキリしていて良い。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく、16番線に、13時57分発、“こだま”731号、新大阪行きが、入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に、停車致します。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は、1号車から、6号車と、13号車から、16号車です。……〕

 私がホームの先端まで歩いていると、列車が入線してきた。
 大井の車両基地から回送されてきたのか、既に座席は新大阪方向を向いている。
 JRマークが水色だったことから、JR西日本の車両のようだ。
 車内整備が無いことから、比較的早く乗車できた。
 そして、荷物を網棚の上に載せると、2人席の窓側に座った。
 帰りはリサを窓側に座らせることになるだろうから、最後の一人旅だ。
 と、またビールとおつまみを買いたい衝動に駆られたが、我慢しておいた。
 こんな先頭車まで来たら、すぐ近くに自販機はあっても、売店は無い。
 それも、我慢できた理由だった。
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“私立探偵 愛原学” 「月曜日にやること」

2024-10-29 13:03:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月5日09時00分 天候:曇 東京都江東区木場三丁目 警視庁深川警察署]

 私はパールを伴って、高橋が収監されている深川警察署に足を運んだ。
 昨日は日曜日であったが、顧客の方々へのメール送信や探偵業協会にメールを送ったりしていた。
 あと、意外なのは高橋の担当弁護士が訪ねてきたこと。
 高橋には表立った身寄りはパールしか無く、その次が私だということで、今後のことについて話をしに来た。
 それと、弁護士費用の話とか。
 要は高橋が逮捕された時、高橋やパールには、私選弁護人を依頼する資力は無く、当番弁護士制度を利用していた。
 しかし、事務所では高橋の上司であり、公私共に長年生活している私に、弁護士費用を負担して、私選弁護人を依頼しないかというものだった。
 もちろん、私は肯定した。
 要は今の高橋は、余罪の追及の為に拘留されている状態だ。
 その後、裁判が始まるまでの間に、私選弁護士を依頼しても良いわけで、私にそれを勧めて来たというわけだ。
 私のような後見人のような人物がいない場合は、ずっと高橋は国選弁護人制度を利用することになる。
 月曜日に改めて、弁護士事務所を訪れることになる。
 なので、今日は忙しい日になりそうだ。
 まずは警察署にて、高橋と面会。
 面会は収監者から見て、1日1回とされている。
 但し、弁護士はこの限りではない。
 なので今日、私達が面会すると、あとの人達は弁護士以外、もう面会できない。

 愛原「高橋……!」

 面会室に行くと、向こう側から警察官に伴われて高橋がやってきた。

 高橋「先生……!大変、申し訳ありませんっしたーっ!!」

 高橋は私の顔を見るなり、いきなり全力土下座を始めた。

 パール「マサ……」
 愛原「高橋!別に、俺は怒ってないから!」

 警察官に促され、高橋は立ち上がり、椅子に座る。
 その後、私は自分の頭や体には何の異常も無いこと、リサが学校で暴れてデイライトの施設に収容されていること、弁護士も私の費用で私選弁護人を依頼することを伝えた。

 高橋「ありがとうございます……」

 高橋は俯いてポロポロと涙を流した。

 愛原「余罪は無いんだな?」
 高橋「無いです!俺、闇バイトみたいな感じで騙されたんスよ!」
 愛原「闇バイトみたいな感じの割には、よく俺の脳に影響無く手術ができたな?オマエ、本当は医大出身者か何かだろ?」
 高橋「…………」
 パール「マサぁ?先生に黙秘権は通用しないよ?」

 元ヤンキーの割には良過ぎる地頭、根っからのヤンキーに慕われるほどの頭の良さだ。

 高橋「……医者を目指していたことがあったんで」
 愛原「やっぱりか。それ、警察に話したか?」
 高橋「はい」
 愛原「いいか?当番弁護士さんにも言われたと思うが、警察にウソは付くんじゃないぞ?もしも本当の事を喋ると、“コネクション”か何かに消されるというのなら、それも警察に言うんだ」
 高橋「先生?!」

 終始俯き加減だった高橋が、びっくりしたように顔を上げた。

 高橋「どうしてそれを……!?」
 愛原「公安調査庁ナメんなよ?善場係長が教えてくれたぞ?」
 高橋「そんな国家機密……」
 愛原「いや、おかげで俺も狙われるようになったんだよ。だから、オマエには警察に洗いざらい喋ってもらわないと困るの!」
 高橋「サーセン……いえ、すいません……」

 因みに高橋に言いたいことを言ったせいで、面会時間はあっという間に過ぎてしまった。
 最後に……。

 愛原「明日には東京拘置所に移送だろ?手紙、書いて寄こせよ?向こうでも色々と欲しい物あるだろう。俺達で差入品として持って行くから、それに書いてくれ。遠慮しなくていいから」
 高橋「ありがとうございます……」

 そして高橋は警察官に伴われて、向こう側のドアから出て行った。
 尚、今日においても差入品として現金を送っている。
 それが終わった後は、1度事務所に戻る。
 善場係長が、デイライト静岡事務所に提出する書類をメールで送ってくれることになっているからだ。
 pdfで送ってくれるので、それを印刷して作成し、あとはレターパックで送れば良い。

[同日16時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 愛原「あー、疲れた……」

 1度事務所に戻り、事務所のPCでメールを確認すると、約束通り、善場係長からメールが届いていた。
 それを印刷すると、書類は何枚も出て来た。
 何枚も出て来たのは、記入例も係長は送信してくれたからだった。
 パールと協力して記入例通り、書類を作成した。
 まるで、役所に提出する書類みたいだ。
 実際、NPO法人と言いながら、実態は公安調査庁の隠密調査の隠れ蓑的な団体なので、そこを通して公安庁に提出されるのかもしれない。
 だから、役所に提出する書類みたいな感じになっているのかもしれない。
 その作成が終わると、レターパックに詰めてポストに投函。
 その足で弁護士事務所に向かい、改めて高橋の弁護を依頼。
 高橋の当番弁護士ゆかりの事務所だったらしく、既に私や高橋のことは知っていたらしい。
 余罪の証拠が無く、警察がそれらの立件を断念したとあらば、かなり裁判は有利に進めるという。
 被害者は私だけであり、その私自身に処罰感情が無いことも伝えた。
 ただ、執行猶予が付くかどうかは正直微妙であるという。
 というのは、高橋はこれまでに暴行や傷害の罪で少年院や少年刑務所を出入りしている。
 今回は内容は違うとはいえ、前科を見られて、執行猶予が付かない可能性もあるという。
 また、“コネクション”のメンバーとしての犯行であったとしたなら、背後関係とかも徹底的に調べられるので、裁判も長引くかもと……。

 パール「お疲れさまでした。夕食、まもなくできますので……」
 愛原「悪いな。弁護士先生にも頑張ってもらって、何とか高橋に執行猶予付けてもらうからな?」
 パール「はい、ありがとうございます」

 尚、さすがに保釈はムリとのこと。
 あれは政治犯とか、経済犯向きの話らしい。
 それだけではないのだろうが、今の高橋ではいくら金を積もうが、保釈の条件には満たしていないので。
 もっとも、“コネクション”に狙われているのは、高橋もだろう。
 保護してもらうという意味でも、警察署や拘置所にはしばらくいた方がいいのかもしれない。

 愛原「明日には、デイライト静岡事務所に送ったレターパックが届くだろう」

 速達郵便と同じラインで輸送される為、宛先が静岡県であっても、明日には届く。
 確実に届くよう、受領印ありの赤いレターパックで送った。
 そこで書類を精査してもらい、先方からの連絡を待って迎えに行くという寸法だ。
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